CHAPTER 01メカノクロスの技術を、わかりやすく
化学反応を進めるための液体(溶媒)を一切使わず、機械の力だけで反応を起こす──これがメカノクロスの中核技術「メカノケミカル有機合成」である。一体、何が起きているのか。齋藤氏に、まずは技術の輪郭を聞いた。
あらためてうかがいます。「メカノケミカル有機合成」とは、どのような技術なのでしょうか。
一言で表現するなら「機械の力で化学反応を起こす技術」です。医薬・電池・半導体・プラスチック──化学のものづくりは通常、原料を液体(溶媒)に溶かして反応させます。私たちはこの溶媒を使いません。代わりに ボールミル という装置で粉と粉を物理的に衝突させ、その衝撃エネルギーだけで反応を進めます。原理自体は古くから知られていましたが、産業応用に耐えうる形へと進化させたのは、北海道大学・伊藤肇研究室が世界をリードしてきた領域です。
溶媒を使わずに反応が進む──直感的には不思議です。なぜそれが可能なのでしょうか。
従来の化学では「原料を溶かす」ことが反応の前提でした。だからこそ、原料の100倍を超える溶媒が必要になることもあります。しかし、化学反応に本質的に必要なのは 「分子と分子の出会い」 だけです。溶かさなくても、粉のまま強力に衝突させれば反応は起こる。これを工学的に再現可能にしたのが、メカノケミカル合成です。
