TopoLogic|熱を0.01秒で検知するトポロジカル材料の東京大学発ディープテックスタートアップ

TopoLogic株式会社

トポロジカル物質を活用した熱流束センサ「TL-SENSING™」と次世代メモリ「TL-RAM™」を開発。SBIインベストメント・東大IPC・大和企業投資・JST・IT-Farm・JMTCキャピタル・Plug and Play Japan などから累計約8.3億円を調達。複数の協業企業とPoCを進める東京大学発DeepTechスタートアップ。

TopoLogicの技術とは

図解:TopoLogicの主力プロダクト(熱流束センサ TL-SENSING/次世代メモリ TL-RAM)
図解:TopoLogicの主力プロダクト(フロントジャーナル作成)

TopoLogic株式会社は、東京大学発のディープテックスタートアップ。中核技術は「トポロジカル物質」と呼ばれる量子科学に基づく新しい材料群を、社会実装可能なデバイスとして製品化する独自の技術力。東京大学の中辻知教授の研究グループで生み出された材料を基盤に、世界の産業が抱える「熱」と「演算」の課題に向けて、熱流束センサ「TL-SENSING™」や次世代メモリ「TL-RAM™」などを主に開発している。

何が画期的なのか

図解:従来センサとTL-SENSINGの比較(検知速度・適用範囲)
図解:従来センサと、TL-SENSING™を比べる(フロントジャーナル作成)

トポロジカル物質はノーベル物理学賞(2016年)の対象となった量子科学の最先端領域。TopoLogicは、その学術成果を実産業のデバイスとして量産可能な形に落とし込み、特に「呼吸レベルの微小な熱を0.01秒未満で検知できる熱流束センサ」を世界に先駆けて製品化した点で画期的だ。

熱を0.01秒未満で検知する世界最速級の熱流束センサ

プロダクトの一つ「TL-SENSING™」は、呼吸レベルの微小な熱の動きを0.01秒未満で検知できる熱流束センサ。バッテリーの異常発熱の予兆検知、熱快適性のリアルタイム制御、化学・ガスセンサなど、従来の温度センサでは対応が難しかった用途への展開が期待されている。

異常ホール効果を活用した不揮発・低消費電力メモリ

もう一つの「TL-RAM™」は、トポロジカル物質特有の物理現象「異常ホール効果」を活用した次世代メモリ。データを保持するのに電力を必要としない不揮発性を保ちながら、低消費電力かつ高い環境耐性を両立できる可能性を持つ。データセンターや車載半導体など、消費電力が課題の領域で実装が見込まれる。

累計約8.3億円調達、量子科学を産業実装する東大発スタートアップ

2021年7月の設立以降、第三者割当増資により累計約8.3億円を調達(2026年5月25日時点)。直近では7億円のラウンドにおいて、SBIインベストメント、東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC)、大和企業投資、JST、IT-Farm、JMTCキャピタル、Plug and Play Japan が引受先となった。事業モデルはエンジニアリングとIPライセンスを軸に、複数の協業企業とPoC(技術実証)を進めている。

社会にどんな変化をもたらすか

出典:WSTS(世界半導体市場統計)/経済産業省 関連資料/各種業界調査(2026年5月時点)
図解:TopoLogic技術の社会インパクト(EV電池/データセンター/IoT快適制御)
図解:技術が広がると、社会はこう変わる(フロントジャーナル作成)

TopoLogicの技術は、世界の産業が抱える「熱」と「演算」の課題を解決する基盤になる。EV・バッテリーの安全性向上、データセンターの省電力化、IoTでの熱快適性制御 ―― 産業の脱炭素と高度化の双方を後押しする技術として期待されている。

EV・バッテリーの安全性向上

熱流束センサ「TL-SENSING™」を用いれば、電池セル内部の異常発熱を従来より早い段階で検知し、熱暴走の予兆を捉えられる可能性がある。EV・蓄電池の安全性向上に直結する技術となる。

データセンター・車載半導体の省電力化

次世代メモリ「TL-RAM™」が実装されれば、データセンターや車載半導体の消費電力を大幅に下げられる可能性がある。生成AIの普及で電力需要が急増する中、半導体省電力化は社会的に重要な課題

IoT・空調:熱を測ることで人と環境を最適化

高速・高感度な熱流束センサは、空調や住宅・オフィスの熱快適性制御、化学・ガスセンサなど、これまで温度センサでは捉えにくかった領域に応用が広がる。人の体感を起点とした次世代IoTの基盤となる。

どんな事業をやっているのか

図解:TopoLogicの事業(TL-SENSING/TL-RAM/エンジニアリング/IPライセンス)
図解:TopoLogicの主な事業(フロントジャーナル作成)

TopoLogicは主にプロダクト開発と事業モデルの両面で活動を展開している。自社プロダクトとしては「熱流束センサ TL-SENSING™」(呼吸レベルの熱を0.01秒未満で検知。サンプル提供を開始)と、研究開発フェーズの「次世代メモリ TL-RAM™」(異常ホール効果を活用した不揮発・低消費電力メモリ)。事業モデルとしては「エンジニアリング受託」と「IPライセンス」を組み合わせ、協業企業とのPoCで用途を磨きつつ、東大発の独自IPを半導体・センサ業界にライセンス供与する。これらを組み合わせ、トポロジカル物質の社会実装を進めている。

どんな会社なのか

設立の背景

TopoLogicは2021年7月15日、東京大学 大学院理学系研究科の中辻知教授(東京大学物性研究所 特任教授/中辻・酒井研究室主宰)が技術顧問として関与する形で設立された。中辻研究室では企業からの共同研究の依頼が年々増えており、研究者が本来注力すべき基礎研究との両立が難しくなっていたことが背景にある。「研究者は研究に専念し、社会実装は専門組織が担う」という分業を明確にするため、独立した事業会社として立ち上げられた。

代表のストーリー

代表取締役CEOの佐藤太紀氏は、東京大学大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻 修士課程を修了後、マッキンゼー・アンド・カンパニーで6年間にわたり製造業を中心としたコンサルティングに従事。その後、産業用ドローンのスタートアップで大企業との共同事業構築を経験した。マッキンゼー時代の先輩から中辻教授を紹介され、トポロジカル物質の話を聞くなかで「日本が強みを持つ半導体・電子デバイス分野で世界と戦えるポジションが取れる」と確信し、2021年11月にCEOへ就任した。

会社の特徴・働き方

研究は東京大学の中辻・酒井研究室、社会実装はTopoLogicの事業チームという「分業モデル」を採るのが大きな特徴。学術と事業の双方のスピード感を両立しやすい体制になっている。事業面では、特定顧客向けの受託エンジニアリングと、業界横断のIPライセンスを組み合わせ、量子科学発の新材料を実産業に流し込むことに集中している。

会社情報

会社名 TopoLogic株式会社(TopoLogic, Inc.)
所在地 東京都
設立 2021年7月
代表 佐藤 太紀(代表取締役 CEO)
東京大学大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻 修士課程 修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーで6年間、製造業を中心としたコンサルティングに従事。その後、産業用ドローンのスタートアップで大企業との共同事業構築を経験し、2021年11月にTopoLogicのCEOへ就任。

取締役・技術顧問:中辻 知
東京大学 大学院理学系研究科 教授/東京大学物性研究所 特任教授。中辻・酒井研究室を主宰し、トポロジカル物質の基礎研究で世界をリードする物理学者。TopoLogicの中核技術の源流となっている。
調達額 累計 約8.3億円(直近:第三者割当7億円)/2026年5月25日時点
技術領域 トポロジカル物質(量子科学に基づく新規材料)/熱流束センサ/不揮発メモリ
関連大学 東京大学
URL https://www.topologic.jp/

編集後記

日本の物理学が世界に誇るトポロジカル物質研究。その学術的成果が、研究室の中だけで終わらず、社会実装の事業として動き出している事実そのものに、フロントジャーナル編集部としては大きな期待を寄せている。「熱」と「演算」という、これからの社会で誰もが向き合う基盤課題に、東大発のディープテックがどこまで踏み込めるのか。TopoLogicの今後の動きを、引き続き追いかけていきたい。

— フロントジャーナル編集部

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