数日分の電力を蓄える「鉄空気電池」を開発【Form Energy|米国発】
太陽光や風力による発電の比率が世界で高まる一方、発電量は天候によって変動し、曇りや無風が数日続く期間の電力をどう確保するかが課題になっています。この課題に対し、米国のフォーム・エナジー(以下Form Energy)は、鉄が錆びる化学反応を利用して、定格の出力で約100時間連続して放電できる「鉄空気電池」を開発しています。2026年8月には、約7.5億ドル(約1,125億円)の資金調達を発表しました。
太陽光や風力による発電の比率が世界で高まる一方、発電量は天候によって変動し、曇りや無風が数日続く期間の電力をどう確保するかが課題になっています。この課題に対し、米国のフォーム・エナジー(以下Form Energy)は、鉄が錆びる化学反応を利用して、定格の出力で約100時間連続して放電できる「鉄空気電池」を開発しています。2026年8月には、約7.5億ドル(約1,125億円)の資金調達を発表しました。
太陽光や風力による発電は天候に左右され、日照の少ない日や風の弱い日には発電量が大きく下がります。晴天や強風の時間帯には発電量が需要を上回ることがある一方、曇りや無風が重なると供給が不足するため、送電網(発電所と消費地を結ぶ電力網)では需要と供給の均衡を保つ調整が欠かせません。このままでは、再生可能エネルギーの比率を高めるほど調整の負担が増え、二酸化炭素を排出する天然ガスなどの火力発電を待機させておく必要が残ります。
発電の変動を吸収する手段として普及が進むリチウムイオン電池は、送電網向けでは、定格の出力で放電を続けられる時間を数時間程度とする設計が中心です。米国の電力協同組合Great River Energyは、送電網向けのリチウムイオン電池が使える時間を約4時間としています。曇りや無風が数日続く場合は蓄えた電力だけでは足りず、再生可能エネルギーの出力が戻るまでの間を補う別の電源が必要になります。
Form Energyは、数日間にわたって電力を蓄えて送り出す「鉄空気電池」を開発・製造する米国の企業です。2017年に創業し、ウェストバージニア州ウィアトンに量産工場「Form Factory 1」を置いています。マサチューセッツ工科大学(MIT)の教授であるイエットミン・チャン氏が共同創業者に名を連ね、同社はMITが設立したスタートアップ支援組織The Engineの資金と研究室を得て、長時間の蓄電を低い費用で実現する電池の開発を始めました。
「鉄空気電池」は、放電時に空気中の酸素を取り込んで鉄を錆(酸化鉄)に変え、充電時には電気を流して錆を鉄へ戻す仕組みです。充電の際に錆から離れた酸素は、空気の電極から大気中へ戻ります。この可逆的な反応を繰り返して充放電を行い、定格の出力で約100時間、連続して電力を送り出せます。前述の約4時間と比べて放電時間が長く、天候による発電の不足が数日続く期間も、設備の定格出力の範囲で電力を供給し続けられる設計です。
「鉄空気電池」の主な材料は、地球上に豊富にある鉄と水、空気です。各セルには鉄の電極と空気の電極、アルカリ乾電池と同じく水を使った燃えにくい電解液(電気を通す液体)が入っています。同社によると、蓄電容量あたりの費用はリチウムイオン電池の10分の1未満です。電池は輸送用コンテナほどの大きさの専用の容器にまとめて並べる方式のため、送電網の規模に合わせて設置容量を増やせます。
Form Energyは2025年10月、米ミネソタ州の電力協同組合Great River Energyが同州ケンブリッジで進める蓄電プロジェクトに向け、初めての商用の電池の設置を始めました。このプロジェクトは出力1.5メガワットで約100時間の放電に対応し、同組合は複数年にわたって性能を評価するとしています。性能が確認されれば、再生可能エネルギーの出力が数日にわたって下がる期間も、蓄えた電力を送電網へ送り続けられる可能性があります。
2026年2月、Googleと米電力大手Xcel Energyは、ミネソタ州パインアイランドに建設するGoogleのデータセンターへの電力供給で合意し、出力300メガワット、容量30ギガワット時の「鉄空気電池」を導入する計画を発表しました。この合意は、ミネソタ州公益事業委員会の承認を経て正式に決まります。この計画には風力発電1,400メガワットと太陽光発電200メガワットも含まれ、Xcel Energyはこれらの設備を2028年から2031年にかけて段階的に稼働させる見込みです。24時間途切れない電力供給を必要とするデータセンターで、再生可能エネルギーの電気を「鉄空気電池」で補えれば、脱炭素化と安定稼働の両立に近づきます。
Form Energyは2026年8月、米資産運用会社T. Rowe Priceが主導するシリーズGで、約7.5億ドル(約1,125億円)の資金調達を発表しました。これにより株式による累計調達額は20億ドル(約3,000億円)を超え、同社によると受注残も2026年に入って約20ギガワット時から約80ギガワット時に増えています。同社は資金を、ウィアトン工場の生産拡大と商用案件の導入に充てる方針です。生産が拡大すれば、数日単位で電力を蓄える「鉄空気電池」が各地の送電網で使われ、再生可能エネルギーの比率を高めやすくなります。
Form Energyは、鉄が錆びる反応と錆が鉄に戻る反応を繰り返し、数日単位で放電できる「鉄空気電池」を開発する企業で、材料に豊富な鉄と水、空気を使うため、蓄電容量あたりの費用をリチウムイオン電池の10分の1未満としています。2026年にはGoogleのデータセンター向けの計画で「鉄空気電池」の導入が発表されました。量産の拠点はウィアトン工場です。FrontJournal編集部は、数時間単位が中心だった送電網の蓄電が、数日単位へ広がり始めたことに注目しています。天候による発電量の変動が課題となる日本の再生可能エネルギーでも、長時間の蓄電技術が選択肢の一つになることに期待しています。
※ 本記事は各社・各機関の公式発表・主要報道をもとに、FrontJournal編集部が再構成したものです。数値は各社・各機関の公表値です。1ドル=約150円で換算しています。
主な出典:Form Energy 公式(プレスリリース・技術紹介)、Great River Energy、Xcel Energy、MIT Energy Initiative、Latitude Media、Canary Media。
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