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空の脱炭素を進める「CO2由来の航空燃料」を実用化【Twelve|米国発】

航空業界は脱炭素の目標を掲げていますが、石油由来のジェット燃料に代わる燃料の供給が追いついていません。この課題に対し、米国のトゥエルブ(以下Twelve)は、回収した二酸化炭素(CO2)と水に再生可能エネルギーの電気を加えてジェット燃料を製造する「CO2由来の航空燃料」を実用化しました。2026年6月には、ワシントン州モーゼスレイクで米国初となる商業規模の製造工場「AirPlant One」が稼働を開始したと発表しています

従来の航空燃料の課題

Twelveの紹介と、代替燃料の供給が不足していること、バイオ原料の確保が制約になることを示す図

代替燃料の供給が不足

航空業界では、石油由来のジェット燃料に代わる「持続可能な航空燃料」(SAF)の供給量が、需要に対して不足しています。国際航空運送協会(IATA)によると、2026年のSAFの供給量は世界の航空燃料の約0.8%にとどまる見通しです。この状態が続けば、航空各社が掲げる2030年の導入目標との差が開き、空の移動にともなうCO2の削減は遅れます。

バイオ原料の確保が制約に

現在のSAFの大半は、廃食用油や植物油といったバイオ原料(動植物からできた資源)から製造されるため、その確保が生産量の制約になっています。国際エネルギー機関(IEA)は、廃食用油などの原料が食品や他の燃料の用途と競合し、調達できる量に限りがあると指摘しています。調達先が広がらないままでは、生産量を大きく伸ばしにくく、航空燃料に占めるSAFの割合は低いままになります。

FrontJournalの解説
  • 持続可能な航空燃料(SAF)廃食用油、植物油、回収したCO2などを原料とする航空燃料の総称。既存のジェット燃料に混ぜて使う形で導入が進んでいる。
  • 廃食用油飲食店や食品工場で使い終えた調理用の油。以前は飼料や石けんの原料に回されており、SAFの原料としても奪い合いが起きている。

Twelveが「CO2由来の航空燃料」を実用化

Twelveの仕組みを示す図。回収したCO2と水に再生可能エネルギーの電気を加え、電気分解で石油由来と同じ組成の燃料を製造し、既存の設備のまま利用できることを示す

課題解決に挑むTwelve

Twelveは、回収したCO2を原料に航空燃料や化学品を製造する米国の企業です。同社は2015年に創業し、カリフォルニア州バークレーに本社を置いたのち、ローレンス・バークレー国立研究所の育成プログラム「Cyclotron Road」の第1期に参加しました。創業したのは3人で、スタンフォード大学の研究室で同じ課題に取り組んでいたケンドラ・クール氏とエトーシャ・ケイブ氏、そして同大学のビジネススクールに在籍していたニコラス・フランダース氏です。

電気分解で石油を代替

同社の製造方法は、回収したCO2と水に再生可能エネルギーの電気を加え、電気分解を経てジェット燃料を合成するものです。中心にあるのは、水の電気分解に使われる電解装置を応用して、CO2を一酸化炭素などの反応しやすい分子へ変える工程です。そこで得た分子をつなぎ合わせると、石油由来のジェット燃料と同じ種類炭化水素(炭素と水素からできた物質)ができ、燃料の原料が石油から回収したCO2へ置き換わります。同社によると、この燃料は原料の調達から燃焼までを通したCO2の排出量を、従来のジェット燃料と比べて最大で約90%抑えられます。

既存の設備のまま利用可能

同社の航空燃料「E-Jet SAF」は、代替ジェット燃料の国際規格ASTM D7566の付属書A1に適合しており、石油由来のジェット燃料に上限50%まで混ぜる形で既存の旅客機へ給油できます。航空会社は、機体やエンジン、空港の給油設備を改修する必要がないため、追加の設備投資を抑えながら導入を進められます。あわせて製造される「E-Naphtha」は、プラスチックや包装材、溶剤、合成繊維の原料となるナフサ(原油から取り出す石油化学の原料)と同じ性質を持つ物質です。燃料と化学品の両方で石油を置き換えられるため、導入する企業は既存の工程を保ったまま脱炭素を進められます。

FrontJournalの解説
  • 電解装置電気を流して物質を分けたり変えたりする装置。水の電気分解では水素と酸素に分かれ、Twelveの装置ではCO2が一酸化炭素などに変わる。
  • ASTM D7566代替ジェット燃料の国際規格。製法ごとに付属書が定められ、適合した燃料は石油由来のジェット燃料に混ぜて既存の航空機へ給油できる。付属書A1では混ぜられる割合の上限が50%である。
  • 一酸化炭素炭素と酸素が1つずつ結びついた気体。ほかの分子と結びつきやすく、燃料や化学品を組み立てる出発点として工業的に広く使われている。

CO2由来の航空燃料の未来

CO2由来の航空燃料の未来を示す図。定期便での利用が可能になり、日用品の原料の転換を目指し、約967億円の資金を調達したことを示す

定期便での利用が可能に

Twelveは2026年6月10日、ワシントン州モーゼスレイクで商業規模の製造工場「AirPlant One」が稼働を開始したと発表しました。回収したCO2から製造した航空燃料を商業規模で供給する工場は、米国で初めてです。アラスカ航空は、この工場で製造された燃料を国内の定期便で使う予定だと公表しています。特別な機体を選ばなくても、乗客が「CO2由来の航空燃料」で飛ぶ便に乗る機会が生まれます。

日用品の原料の転換を目指す

同社は、航空燃料に加えて化学品の分野へ用途を広げることを目指しています。「E-Naphtha」はプラスチックや合成繊維など、身の回りの製品の出発点になる物質です。原料をCO2に置き換えられれば、石油の価格や産地に左右されにくい調達先が増えます。買い物かごに入る日用品が、回収したCO2を原料として製造される可能性があります。

約967億円の資金を調達

Twelveは2024年9月、TPG Rise Climate(気候変動対策に投資する米国のファンド)が主導する6.45億ドル(約967億円)の資金調達を発表しました。内訳は、今後のAirPlantの建設に充てる最大で約4億ドルプロジェクト出資(工場など特定の事業に限って出す資金)、約2億ドルのシリーズC(量産に入る段階で行う3回目の大型調達)、約4,500万ドルの信用枠(必要なときに借りられる融資の枠)です。マイクロソフトは、気候関連の投資枠からの出資と、製造される燃料の引き取り契約の両面で同社を支えています。同社は資金と引き取り先を揃えて次のAirPlantの建設へ進むため、「CO2由来の航空燃料」の供給量は今後さらに増える見込みです。

FrontJournalの解説
  • シリーズC創業から段階を追って行う資金調達のうち、3回目の大型の回を指す呼び方。量産や事業の拡大に入る段階で実施されることが多い。
  • 引き取り契約製品を将来の一定期間、決まった条件で買い取る契約。オフテイク契約とも呼ばれ、工場の建設資金を集める裏づけになる。

まとめ

Twelveは、回収したCO2と水と再生可能エネルギーの電気から、石油由来のものと同等に使えるジェット燃料を製造する道筋を示しました。2026年6月には米国初の商業規模の工場が稼働し、アラスカ航空の定期便で使われる段階に入っています。原料を動植物に頼らないため、廃食用油などの確保に左右されにくい選択肢になります。日本も、2030年に国内の航空会社の燃料使用量の10%をSAFに置き換える目標を掲げており、原料の確保は共通の課題です。FrontJournal編集部は、「CO2由来の航空燃料」が日本の空港や化学産業でも使われ、エネルギーと原料の調達先が広がることに期待しています。

※ 本記事は各社・各機関の公式発表・主要報道をもとに、FrontJournal編集部が再構成したものです。数値は各社・各機関の公表値です。1ドル=約150円で換算しています。
主な出典:Twelve 公式(プレスリリース)、TPG、スタンフォード大学、国際航空運送協会(IATA)、国際エネルギー機関(IEA)、資源エネルギー庁。

この記事の作者

FrontJournal編集部

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