株式会社FLOSFIA
コランダム型酸化ガリウム(α-Ga₂O₃)を用いた次世代パワー半導体「GaO®」と、水を原料・真空不要・低温プロセスの独自成膜技術「ミストドライ®法」を世界に先駆けて開発。京都大学発DeepTechスタートアップ。資本金約42億円。
FLOSFIAの技術とは
図解:FLOSFIAの技術の3ステップ(フロントジャーナル作成)
株式会社FLOSFIAは、京都大学発のディープテックスタートアップ。中核技術はコランダム型酸化ガリウム(α-Ga₂O₃)と、それを実用化する独自の成膜技術「ミストドライ®法」。京都大学の藤田静雄教授・金子健太郎助教との共同研究を起点に、世界に先駆けてα-Ga₂O₃ MOSFETのノーマリオフ動作を実証し、酸化ガリウム最大の課題だったP型半導体層の世界初発表にも成功している。
何が画期的なのか
図解:従来パワー半導体と、α-Ga₂O₃ を比べる(フロントジャーナル作成)
酸化ガリウム(Ga₂O₃)は、SiCやGaNを超えるバンドギャップを持つ「ウルトラワイドバンドギャップ半導体」として、次世代パワー半導体の有力候補とされてきた。FLOSFIAは、安定相のβ型ではなく準安定相のα-Ga₂O₃(コランダム型)を量産可能な形で扱う世界唯一級の技術力で、複数の世界初を達成している。
世界初のα-Ga₂O₃ ノーマリオフ型MOSFET
2018年7月、京都大学の藤田静雄教授・金子健太郎助教との共同研究により、世界で初めてα-Ga₂O₃ MOSFETのノーマリオフ動作を実証。さらに2024年12月、トレンチゲート型MOSFETで10A超の大電流ノーマリオフ動作を世界初達成。次世代パワー半導体としての実用化に向けた基盤を築いている。
世界初のP型半導体「酸化イリジウムガリウム」
酸化ガリウム系材料はP型半導体層が作れないことが量産化最大の課題とされてきた。2023年3月、FLOSFIAはJSRと共同で、世界初のP型半導体「酸化イリジウムガリウム(α-(IrGa)₂O₃)」の量産向け成膜材料を開発したと発表。長年の難問を突破した。
ミストドライ®法:SiCの10分の1以下の設備投資
独自の成膜技術「ミストドライ®法」は、水を原料とし、真空が不要・低温プロセスで結晶を作る世界初級の技術。SiC結晶成長装置(MOCVD・HVPE)と比較して設備投資額が10分の1以下と公表しており、セミファブレスモデルでの資本効率の高い事業展開を可能にしている。
社会にどんな変化をもたらすか
- パワー半導体 世界市場:2030年 約5.3兆円規模
- SiCパワー半導体:2035年 約3.15兆円/酸化ガリウムパワー半導体:2035年 約385億円
- FLOSFIAは、SiCに次ぐ第3のウルトラワイドギャップ半導体α-Ga₂O₃を社会実装
出典:富士経済『パワーデバイス世界市場 2022/2024』(民間調査・2024年時点)
図解:FLOSFIAの技術の可能性(フロントジャーナル作成)
パワー半導体は、EV・データセンター・再エネ・電源など、現代社会のあらゆる電力変換を支える基盤デバイス。脱炭素と電力需要急増が同時に進む中、電力変換ロスを下げる新材料は世界中で求められている。FLOSFIAのα-Ga₂O₃は、SiCに次ぐ第3の選択肢として注目されている。
EV(電動化車両)の効率向上
車載パワー半導体は、走行性能・航続距離・充電速度に直結する。α-Ga₂O₃ MOSFETがEVに採用されれば、電力変換ロスをさらに下げ、車両の航続距離や効率向上に寄与する可能性がある。デンソーとの協業もこの領域を視野に入れている。
データセンターの省電力化
生成AIの普及でデータセンターの電力需要は急増している。サーバー電源や電力変換装置の効率を上げる次世代パワー半導体は、世界中のデータセンター事業者にとって重要課題。α-Ga₂O₃は省電力化の有力なソリューションになりうる。
再生可能エネルギーと電力グリッド
太陽光・風力・蓄電池・スマートグリッドなど、再エネ普及には電力変換効率の高いパワー半導体が不可欠。α-Ga₂O₃の特性は、高耐圧・低損失が要求されるこの領域に適している。
どんな事業をやっているのか
図解:FLOSFIAの主な事業(フロントジャーナル作成)
FLOSFIAは、セミファブレスモデルでα-Ga₂O₃パワーデバイスを世の中に届ける。中核となるα-Ga₂O₃ MOSFETとSBD(ショットキーバリアダイオード)のプロダクト開発に加え、独自のミストドライ®法の技術ライセンス、デンソー・三菱重工業・三井金属・JSRなどとの共同開発・協業を組み合わせて、新材料の社会実装を加速している。
どんな会社なのか
設立の背景
FLOSFIAは2011年3月、京都大学 工学研究科の藤田静雄教授の研究室での成果を基盤に設立された。長年研究されてきたコランダム型酸化ガリウムを、産業として実装するための事業会社として、京大発の最先端材料を世界市場に届けることを目的としている。
経営チームのストーリー
創業者・人羅 俊実氏が代表取締役会長として技術・戦略を率い、現在は四戸 孝氏が代表取締役社長として事業を統括する体制。京都大学の金子健太郎助教を含む産学連携で、世界初の技術ブレイクスルーを連続して生み出してきた。
会社の特徴・事業モデル
セミファブレスモデルを採り、自社では新材料・新プロセスの開発に集中、量産は委託や提携企業と組み合わせる方針。これにより、資本効率の高い事業展開と、複数の世界初を生み出す研究開発力を両立している。資本金は約42億円(2025年4月時点)、デンソー・三菱重工業など大手企業からの出資も受けている。