SUiCTE|宇宙用CMOS/CCDハイブリッドTDIセンサを開発する静岡大学発のディープテックスタートアップ

SUiCTE株式会社

宇宙用リモートセンシング向けのCMOS/CCDハイブリッド型TDIセンサとカメラモジュールを開発。20年以上のイメージセンサ研究を持つ静岡大学電子工学研究所と連携し、企画から量産まで一貫体制で国産宇宙センサを供給する静岡大学発DeepTechスタートアップ。

SUiCTEの技術とは

図解:SUiCTEの技術の3ステップ
図解:SUiCTEの技術の3ステップ(フロントジャーナル作成)

SUiCTE株式会社は、静岡大学発のイメージセンシングデバイススタートアップ。中核技術は、20年以上の研究蓄積から生まれた「CMOS/CCDハイブリッド型TDIセンサ」と関連するカメラモジュール。川人祥二教授が主宰する静岡大学電子工学研究所と連携し、宇宙用リモートセンシング(地球観測)向けに、高速・高感度・耐放射線という特性を備えた国産センサを開発する。企画から量産まで一貫体制を構築し、浜松市を拠点に国内外への展開を目指す。

何が画期的なのか

図解:従来センサとSUiCTEのハイブリッドTDIセンサの比較
図解:従来センサと、SUiCTEのハイブリッドTDIを比べる(フロントジャーナル作成)

小型衛星による地球観測の需要が世界的に高まる一方で、宇宙用イメージセンサは海外勢が大半を占めてきた。SUiCTEは、CMOSとCCDの両方の長所を融合した独自のハイブリッド構造により、「高感度」と「高速読み出し」を同時に成立させ、TDI方式で衛星移動下でも鮮明な観測を可能にする。学術的に裏付けされた高い技術基盤と量産まで含む一貫体制が画期的だ。

CMOS/CCDハイブリッド構造で、高感度と高速読み出しを両立

一般的なCMOSセンサは高速読み出しに優れる一方で、宇宙のように暗くノイズが多い環境では限界がある。SUiCTEのCMOS/CCDハイブリッド構造は、CCDの電荷転送の精度とCMOSの高速・低消費電力という、それぞれの強みを組み合わせる設計。20年以上の研究で培われた回路技術と組み合わせ、自社A/Dコンバータでは0.3e-という超低ノイズ性能を公開している。

TDI方式で衛星移動下でも鮮明に観測

TDI(Time Delay Integration)は、衛星のように動く視点からの撮影で、同じ地点を複数回露光して信号を積算する方式。これにより、限られた光量でも高解像かつ鮮明な観測画像が得られる。SUiCTEは、自社のハイブリッド構造を活かして高速・高感度なTDIセンサを実装し、地球観測ミッションに最適化する。

国産センサの安定供給を、企画から量産まで一貫で

従来、宇宙用センサは海外の特定メーカーに依存する構造があった。SUiCTEは、設計・開発から量産まで国内で完結する一貫体制を整え、低コスト・短納期で高性能な国産センサを安定供給することを目指す。シードラウンドで累計約1.4億円を調達(2025年)し、量産化と顧客開拓を進めている。

社会にどんな変化をもたらすか

出典:内閣府『宇宙基本計画』/経済産業省 宇宙産業課 資料/The Business Research Company(2025年5月時点)
図解:SUiCTEの技術の可能性
図解:SUiCTEの技術の可能性(フロントジャーナル作成)

SUiCTEの技術は、小型衛星の普及で急拡大する地球観測市場の基盤を担う。気候観測・農業・防災・安全保障と、世界的に重要性が高まる多様な領域で、国産センサの選択肢を提供できるようになる。

気候観測・防災での即時把握

小型衛星に高感度TDIセンサを搭載できれば、気象変動の早期把握や、災害発生時の被害状況のリアルタイム観測に貢献できる。低コストで多数機を打ち上げる衛星コンステレーションが現実的になることで、地球観測のカバレッジと頻度が大きく向上する。

農業・林業の精密化

地球観測センサは、農地の生育状況や森林の変化を継続的にモニタリングすることで、精密農業や森林管理に活用できる。SUiCTEの国産センサが普及すれば、国内の農業・林業のデジタル化を後押しする可能性がある。

安全保障・経済安全保障の強化

宇宙用センサは、安全保障や経済安全保障の観点でも重要なコア部品。海外依存度が高い領域に対して、国産で安定供給できる体制を持つことは、政府・防衛・民間の各分野での選択肢拡大につながる。

どんな事業をやっているのか

図解:SUiCTEの主な事業
図解:SUiCTEの主な事業(フロントジャーナル作成)

SUiCTEは、宇宙用イメージセンサ事業を中心に展開する。中核となるCMOS/CCDハイブリッド型TDIセンサの開発・量産に加え、カメラモジュールとして完成形を提供する事業、そして企画から量産までの一貫支援を組み合わせ、宇宙ミッション向けの観測ソリューションを提供している。

どんな会社なのか

設立の背景

SUiCTEは2024年8月、静岡大学電子工学研究所での20年以上のイメージセンサ研究を背景に設立された。同研究所では川人祥二教授を中心に、高速・高感度な独自のCMOSイメージセンサが多数開発されてきた。その学術成果を、宇宙用リモートセンシングという急成長市場で社会実装するため、独立した事業会社として立ち上げられた。

代表のストーリー

代表取締役 社長の赤堀知行氏が、企画・量産までの一貫体制を構築。川人祥二教授が代表取締役会長として研究面を支える、研究と事業の両輪体制を採っている。

会社の特徴・拠点

本社は浜松市中央区の光創起イノベーション研究拠点に置く。静岡大学と地続きの環境で、研究室との緊密な連携を保ちつつ、地域の製造インフラを活かして国産センサの安定供給を進めている。クオンタムリープベンチャーズ、インキュベイトファンド、浜松市ファンドサポート事業などから累計約1.4億円のシード調達を実施している。

会社情報

会社名 SUiCTE株式会社(SUiCTE Co., Ltd.)
所在地 静岡県浜松市中央区
設立 2024年8月
代表 赤堀 知行(代表取締役 社長)
20年以上のイメージセンサ事業経験を持ち、SUiCTEで企画から量産までの一貫体制を構築。

代表取締役 会長:川人 祥二
静岡大学 電子工学研究所 教授。20年以上にわたり高速・高感度CMOSイメージセンサの研究を牽引。SUiCTEの中核技術の源流。
調達額 累計 約1.4億円(シードラウンド)/2025年時点(クオンタムリープベンチャーズ・インキュベイトファンド・浜松市ファンドサポート事業 ほか)
技術領域 CMOS/CCDハイブリッド型TDIセンサ/宇宙用イメージセンサ/カメラモジュール
関連大学 静岡大学
URL https://www.suicte.co.jp/

編集後記

宇宙からの地球観測は、気候・農業・防災・安全保障など、これからの社会で重要性がますます高まる領域。その基盤となるイメージセンサを国産で量産できる体制を整えるという挑戦は、技術と産業政策の双方の観点から大きな意味を持つ。静岡大学発の研究蓄積が宇宙という舞台で社会実装される過程を、フロントジャーナル編集部としても引き続き追いかけていきたい。

— フロントジャーナル編集部

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