COLUMN / コラム

メカノクロスは、
なぜいま10億円
調達したのか。

株式会社メカノクロス 2026.05.25
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CONTENTS / 目次
  1. 章1:なぜ、いま10億円なのか
  2. 章2:社会はどう変わるのか
  3. 章3:これまでの道のりと、10年後の景色
  4. 章4:誰と、未来をつくるのか
  5. プロフィール
  6. 関連リンク
▼ このニュースを見て、インタビューに行ってきました

2025年9月5日、北海道大学発スタートアップ 株式会社メカノクロスPre-Series A ラウンドで累計約10億円の資金調達 を発表した。掲げるのは「メカノケミカル有機合成」──機械の力だけで化学反応を起こし、溶媒を100倍以上削減する技術だ。なぜこのタイミングで10億円なのか、資金は何に使われるのか。札幌のオフィスを訪ね、代表取締役CEO 齋藤智久氏に話を聞いた。

CHAPTER 01なぜ、いま10億円なのか

2025年9月、Pre-Series A ラウンドで累計約10億円の調達を完了。新規投資家にXTech Ventures、Spiral Innovation Partners、Angel Bridge、三菱UFJキャピタル、北海道ベンチャーキャピタルが名を連ねる。資金使途と、タイミングの理由をまず聞いた。

10億円、何に使う?

図解1:10億円の主な使途(① 商用反応装置の開発・量産体制 / ② 受託合成企業との協業ネットワーク)

今回の約10億円は、具体的にどの領域へ投じられるのでしょうか。

大きく2つです。①商用反応装置の開発と量産体制の構築。これまでは研究室スケールの装置でしたが、ここから先は工業スケールの装置を開発し、化学メーカーの現場に設置できる水準まで仕上げます。②受託合成企業との協業。私たちの技術を現場の合成工程に組み込むためのパートナーネットワークを、一気に拡大します。

数あるタイミングのなかで、なぜ"いま"だったのでしょうか。

大学発の研究フェーズで「できる」が証明できたこと。そして、製薬・素材・電池の各業界が同時に 脱炭素プレッシャーと新材料ニーズに直面している こと。技術と市場のタイミングが重なったのが、まさにいまこの瞬間です。5年遅れれば、世界の競合に主導権を握られかねない。それほど現在のタイミングが重要だと考えています。

投資家の顔ぶれが、国内のメガベンチャーキャピタルから地域金融機関まで幅広く揃いました。この座組みは意図的なものですか。

はい、強く意図しています。私たちは技術を世界に届けたい一方で、研究と量産の拠点は北海道に置き続けます。グローバル展開のスピード地域への根の深さ──両方を持ち続けるための投資家構成です。XTech、Spiral、Angel Bridge、三菱UFJキャピタルといった全国メガと、北洋銀行・北海道ベンチャーキャピタルといった地元勢が同じ船に乗っている。この組み合わせは、私たちの戦略そのものを表しています。

CHAPTER 02社会はどう変わるのか

メカノクロスが手掛ける「メカノケミカル有機合成」は、機械の力だけで化学反応を起こす技術である。この技術が社会のどこに効くのか、なぜ"いま"その可能性が大きいのか──齋藤氏に聞いた。

この技術が広がると、社会はこう変わる

図解2:3つの社会インパクト(① 医薬/② エネルギー/③ 地球環境)

メカノクロスの事業を、ひと言で説明していただけますか。

私たちは、「機械の力で化学反応を起こす」技術(メカノケミカル合成)を社会実装する会社です。従来の化学では大量の溶媒(液体)を使って反応を進めますが、私たちは溶媒をほぼ使わず、粉と粉を機械でぶつけ合うことで反応を起こします。この技術を、製薬・素材・電池などの業界に、共同研究やライセンス供与のかたちで届けていく──それが事業の中心です。

この技術が社会に普及すると、具体的にどんな変化が起きますか。

大きく3つの領域で変化が起こります。
医薬:「設計はできても、溶媒に溶けないから作れない」抗がん剤や中枢神経薬の候補が、患者の手に届くようになります。
エネルギー:全固体電池やナトリウムイオン電池の材料が量産可能になり、EVや再エネ蓄電の経済性が一段変わります。
地球環境:化学産業が抱える世界のCO₂排出の約7%を、構造から削減できます。

1つの技術で、医薬・エネルギー・地球の3領域が同時に動く──そんな変化を起こしにいきます。

なぜ、その可能性が"いま"大きく開けているのでしょうか。

製薬・素材・電池の各業界が、いずれも 脱炭素プレッシャーと新材料ニーズに同時に直面している からです。従来の溶媒を前提とした化学では、もう答えが出せない領域が増えてきた。一方で私たちは、研究フェーズで「できる」を証明し終え、商用化の手前まで来ています。業界のニーズと技術の準備が、ちょうど重なったのが"いま"。だから一気に押し込みにいくべきタイミングだと考えています。

▼ SOCIAL IMPACT
作れなかった薬が、届く。
電池が、量産できる。
化学産業のCO₂7%が、消える。

医薬・エネルギー・地球環境──3つの巨大な課題を、たった1つの技術ベクトルで動かしにいく。それがメカノクロスの賭けである。

CHAPTER 03これまでの道のりと、10年後の景色

今回の10億円は、ある日突然降って湧いた話ではない。2018年の研究始動から7年。そして10億円調達を通過点に、メカノクロスはどんな未来を描いているのか。過去から未来まで、ひと続きのストーリーとして聞いた。

研究室から、世界の標準へ

図解3:2018研究スタート → 2023創業 → 2025 10億円調達 → 2030 世界標準プロセスへ

ここまでの歩みを、ひとつのストーリーとして振り返るとどうなりますか。

出発点は2018年、北大・伊藤肇研究室でのメカノケミカル合成の本格研究です。世界に先駆けて、数百件規模の合成実績を積み上げてきました。研究室がWPI-ICReDD(化学反応創成研究拠点)として国際的な注目を集めるなかで、製薬・化学大手からの提携打診が増え、社会実装の機が熟したのが2023年11月。会社を設立しました。

そして2025年9月、Pre-Series A 累計約10億円の調達を完了。研究室の成果を、世界の化学産業の標準プロセスへ押し上げる──その仕上げに向かう、ちょうど折り返し地点にいると感じています。

10年後、メカノクロスはどんな会社になっているはずですか。

10年後の到達点は明確です。メカノケミカル合成が、世界中の化学メーカーの「標準プロセス」のひとつとして組み込まれている状態──ここを必ず取りに行きます。

化学産業のカーボンニュートラル達成、新薬の患者到達、全固体電池の量産化。これら3つの大きなテーマすべてに、私たちの技術が下支えとして使われている。そういう景色を描いています。日本発の技術が、化学という巨大産業の前提を書き換える。10年で、そこまで持って行きたい。

CHAPTER 04誰と、未来をつくるのか

調達・経緯・社会インパクト・未来図を聞いたうえで、最後に伺っておきたい質問がある。この会社で、どのような人と、どのような仕事ができるのか。

3層チームで、未来をつくる

図解4:研究 × 事業開発 × 経営 ── 翻訳できる人材が、最も貴重な戦力

現在、どのようなメンバーで構成されているのでしょうか。

大きく3層です。①北大 伊藤研究室出身の博士・研究者(技術の中核)、②製薬・素材・化学メーカーで事業開発や技術営業を担ってきたビジネスサイド、③ファイナンスやオペレーションを担う経営チーム。なかでも 「研究と事業のあいだを翻訳できる人材」 が、現時点で最も貴重な戦力となっています。

これから、どのような仲間を迎え入れたいですか。

率直に申し上げると、化学の専門知識は必須ではありません。むしろ求めているのは、製薬・素材メーカーの現場に足を運び、課題を聞き出し、それを技術の言葉と事業の言葉のあいだで翻訳できる人です。製造業・素材産業での事業開発経験、SaaS・IT領域での無形商材の営業経験、大企業の研究開発部門と対等に対話できるビジネス感覚──これらは化学業界の知識がなくとも、そのまま強みになります。

「100年単位で化学のあり方を書き換える」という大きな賭けに、人生の数年を投じてくれる方と、ともに未来をつくっていきたいと考えています。

PROFILE / プロフィール
氏名齋藤 智久(さいとう ともひさ)
役職株式会社メカノクロス 代表取締役CEO
出身研究室北海道大学 伊藤肇 研究室
(化学反応創成研究拠点 WPI-ICReDD)
創業2023年11月
事業領域メカノケミカル有機合成の社会実装
共同研究/業界研究会/素材開発/ライセンス供与
関連大学北海道大学
関連メンバー取締役:伊藤 肇(北海道大学 卓越教授)/久保田 浩司(北海道大学 准教授)
採択/調達実績Pre-Series A 累計約10億円(2025/9)/J-STARTUP HOKKAIDO/SAPPORO NEXT LEADING/FaSTAR第10期/Circular Valley Convention(独)/Scaleup Hamburg(独)
公式サイトhttps://mechanocross.com/

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