Boston Metalは、電気の力で鉄鉱石などの金属酸化物から金属を取り出す「溶融酸化物電解」(MOE)を研究する企業です。2013年に創業し、2026年5月の発表時点では米国マサチューセッツ州ウォーバーンを本社としています。マサチューセッツ工科大学(MIT)のドナルド・サドウェイ氏が2000年代半ばにNASAの支援を受けて進めた、月面での酸素の製造を目指し、酸化鉄を含む岩石に電気を流して酸素を得る研究が出発点で、同氏とアントワーヌ・アラノア氏らがこの研究をもとに同社を設立しました。
Boston Metalは2026年5月、既存の投資家に加えてインドの鉄鋼大手タタ・スチールが参加する形で、7,500万ドル(約113億円)を調達しました。これまでに、鉄鋼大手アルセロール・ミッタルや資源大手BHPの投資部門、マイクロソフトの気候関連ファンドなども出資しており、累計の調達額は5億ドル(約750億円)を超えています。同社は今回の資金を、ニオブやタンタル、バナジウム、ニッケルといった重要金属を生産する商業規模の施設の増設に充てる方針です。施設の増設で重要金属の増産が進めば、電化や先端製造に欠かせない材料のサプライチェーンの強化につながる可能性があります。
Boston Metalは、MITの研究から生まれた「溶融酸化物電解」で、電気で鉄鉱石を還元する製鉄を目指しています。中・低品位の鉄鉱石も使える点は、直接還元法とは異なる特徴です。ブラジルでは同じ技術で重要金属を回収する工場の立ち上げを進め、米国では2025年に工業規模の装置で鋼を製造しました。FrontJournal編集部は、電気を使う製鉄が、鉄鋼業の脱炭素を進める選択肢の1つになることに期待しています。ブラジルの工場の稼働と、鋼の分野での今後の取り組みが公表されることにも注目しています。