鉄鋼業の脱炭素を支える水素還元製鉄を研究する Stegra(スウェーデン発)

鉄鋼業の脱炭素を支える「水素還元製鉄」を研究【Stegra|スウェーデン発】

自動車や建物に使う鉄は、製造工程で大量のCO2を生む素材です。この課題に挑むのが、スウェーデンのステグラ(Stegra)です。同社は石炭の代わりに水素を用いる「水素還元製鉄」を研究しています。同社は2025年10月に約14億ユーロ(約2,100億円)の資金調達を発表し、建設と試運転の費用を確保しました。

鉄鋼業の課題

鉄鋼業の課題を示す図。高炉の断面図とともに石炭に依存しCO2排出が多いこと、自動車と建物の鉄骨とともに脱炭素鋼材の供給は限定的であることを示す

石炭に依存しCO2排出が多い

鉄の製造は、世界のエネルギー利用にともなうCO2の約7%を占めています。高炉と呼ばれる設備では、石炭を原料とするコークス鉄鉱石を還元します。この方式が主流のままでは、鉄を使う自動車や建設の脱炭素が進みにくい状況が続きます。

脱炭素鋼材の供給は限定的

自動車や建設の分野では、脱炭素鋼材の需要が拡大しています。一方で供給できる製鉄所は世界的に限られ、必要な量を調達しにくい状況です。素材を確保しにくければ、完成品全体のCO2目標も達成しにくくなります。

FrontJournalの解説
  • 高炉鉄鉱石とコークスを上から入れ、下から熱風を送って鉄を取り出す縦型の炉。現在の製鉄の主流であり、鉄鋼業のCO2排出の大部分がここから生じる。
  • コークス石炭を高温で蒸し焼きにした燃料。燃やして熱を出すと同時に、鉄鉱石から酸素を奪う役割を担う。この過程でCO2が発生する。
  • 還元物質から酸素を取り除く化学変化。製鉄では、鉄鉱石から酸素を外して鉄を取り出す工程を指す。

Stegraが水素還元製鉄を研究

水素還元製鉄の研究を示す図。再生可能エネルギーの電力で水素を製造し、水素で鉄鉱石から酸素を取り除く

課題解決に挑むStegra

Stegraは、水素で鉄鉱石を還元する水素還元製鉄を研究するスウェーデンの企業です。2020年に設立され、旧社名はH2 Green Steelで、北部ボーデンに製鉄所を建設しています。

水素による鉄鉱石の還元

水素還元製鉄は、石炭の代わりに水素で鉄鉱石を還元する方式です。反応で生じるのは水であり、この工程からCO2はほとんど発生しません。取り出した鉄は直接還元鉄(DRI)と呼ばれ、電気炉で溶かして鋼にします。同社は一連の工程で、従来の製法と比べCO2を約95%削減する目標を掲げています。

欧州最大級の水電解装置

水素は、再生可能エネルギーの電力で水を電気分解して製造します。ボーデンの工場には、20メガワットのモジュール37基からなる水電解装置があります。設置は完了し、稼働後は年10万トンを超える水素の製造を計画しています。同社は北部スウェーデンの安価な再エネ電力と、鉄鉱石の産地に近い立地を選定の理由に挙げています。

FrontJournalの解説
  • 還元物質から酸素を取り除く化学変化。製鉄では、鉄鉱石から酸素を外して鉄を取り出す工程を指す。
  • 水素還元製鉄石炭の代わりに水素を用いて、鉄鉱石から酸素を取り除く製鉄方法。酸素は水素と結びついて水になるため、この工程からCO2はほとんど生じない。
  • 直接還元鉄(DRI)鉄鉱石を溶かさずに、固体のまま酸素を取り除いた鉄。海綿状の形をしており、電気炉で溶かして鋼の原料にする。
  • 電気分解水に電気を流し、水素と酸素に分ける方法。再生可能エネルギーの電力を使えば、製造の過程のCO2排出を大きく抑えた水素を得られる。
  • 電気炉電気のアークで発生する熱を使い、鉄を溶かす炉。電気の熱だけで鉄を溶かせる点が高炉と異なる。

水素還元製鉄の未来

水素還元製鉄の未来を示す図。自動車や家具の脱炭素、データセンターへの鋼材供給、約2,100億円の資金調達

自動車や家具の脱炭素が可能に

水素還元製鉄が広がると、自動車や家具に使われる鉄のCO2排出量が下がります。Stegraはメルセデス・ベンツやポルシェ、部品大手のZF、IKEAなどと供給契約を結びました。2024年11月の時点で、計画生産量の約60%にあたる年約150万トンが長期契約(オフテイク契約)で決まっています。契約先に届く鉄が、そのまま脱炭素鋼材へ置き換わる可能性が生まれます。

データセンターにも供給を目指す

同社は供給先を拡大し、データセンターの建材への供給も目指しています。2025年9月にはMicrosoftと契約し、欧州のデータセンター向けに鋼材を供給することが決まりました。同社は供給範囲の外にある拠点へ、環境価値証書でCO2の削減分を割り当てます。計画上の生産能力は年約250万トンで、2030年には年約500万トンを目指しています。

約2,100億円の資金を調達

Stegraは2025年10月、約14億ユーロ(約2,100億円)の資金調達を完了しました。スウェーデンのワレンバーグ系投資会社や、シンガポールのテマセクなどが参加しました。生産開始は2026年後半を目標としており、時期は当初の計画から延期されています。資金の確保により、同社は建設と試運転を完了する道筋を得ました。

FrontJournalの解説
  • オフテイク契約製品ができる前に、買い手が長期の購入を約束する契約。工場の建設費を借り入れる際、収入の見込みを示す材料になる。
  • 環境価値証書低CO2で製造したという価値を、製品そのものと切り離して取引する仕組み。現物が届かない地域の拠点にも、削減分を割り当てられる。

まとめ

Stegraは、水素還元製鉄を大規模な製鉄所で成立させる段階に入りました。欧州最大級の水電解装置を設置し、2024年11月時点で計画生産量の約60%長期契約で確保しました。鉄の使い道は自動車から建設・データセンターまで広く及びます。日本の鉄鋼業も、高炉からの転換という同じ課題を抱えています。FrontJournal編集部は、水素還元製鉄が製鉄の選択肢に加わることに期待しています。

※ 本記事は各社の公式発表・主要報道をもとに、FrontJournal編集部が再構成したものです。数値は各社・各媒体の公表値です。ユーロの円換算は1ユーロ=約150円で概算しています。生産開始時期と2030年の生産量は目標値です。
主な出典:Stegra 公式(ボーデン工場/グリーン水素/ニュースリリース)、IEA「Iron & steel」。

この記事の作者

FrontJournal編集部

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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