メタジェンセラピューティクス株式会社は潰瘍性大腸炎を対象に腸内細菌叢移植を開発する大学発のベンチャー

メタジェンセラピューティクス株式会社

メタジェンセラピューティクス「腸内細菌叢移植」を研究|研究領域:健康な人の腸内細菌を患者へ移す/強み:抗菌薬の併用で菌を定着させる/将来性:がんや神経の病気へ広げる

企業紹介|メタジェンセラピューティクス株式会社とは?

健康な人の腸内細菌を患者の腸へ移し、乱れた腸内環境を整える医療技術として、注目を集める「腸内細菌叢移植」。メタジェンセラピューティクス株式会社は、その社会実装を目指す、順天堂大学・慶應義塾大学・東京科学大学発のバイオ系ディープテック企業です。潰瘍性大腸炎向けの移植療法と経口の腸内細菌医薬品を、大学病院やがん専門病院とともに、臨床研究と治験で開発しています。

キーワード「腸内細菌叢移植」

腸内細菌叢移植」(FMT)とは、健康な人の便から調製した菌液を患者の腸へ入れ、腸内細菌叢(腸にすむ細菌の集まり)を組み直す技術です。従来の治療は炎症を薬で抑える方法が中心で、腸内細菌の乱れそのものへは手が届きにくいとされてきました。国内では順天堂大学の石川大氏らが臨床研究を重ねてきました。

市場課題|潰瘍性大腸炎は再燃を繰り返す

現状の潰瘍性大腸炎の課題|寛解と再燃を繰り返す難病/条件を満たすドナーが限られ供給が不安定

寛解と再燃を繰り返す難病

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に炎症が起きて下痢や血便が続く指定難病(国が医療費を助成する難病)です。2023年度の受給者証の所持者数は146,702人にのぼります。症状が治まる寛解の状態になっても再び悪化し、長期の通院と服薬が欠かせません。

ドナーが限られ供給が不安定

腸内細菌叢移植には健康な人の便が必要ですが、条件を満たすドナー(便を提供する健康な人)は限られます。問診に加えて医療機関での詳しい検査があり、基準を満たした人だけが腸内細菌ドナーに認定されます。移植に使う便を安定して集める体制が整わなければ、臨床研究の拡大は困難です。

他にも、人によって菌の組成が異なることから生じる効果のばらつきや、移植の前後で必要となる検査の負担も指摘されています。保険が適用されるまでの費用の扱い、治療を担える医療機関の少なさ、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 寛解症状が治まり、検査でも炎症が抑えられている状態を指す。潰瘍性大腸炎は寛解と再燃を繰り返すため、症状を抑える寛解導入と、その状態を保つ寛解維持の二段構えが治療の目標となる。

強み|抗菌薬の併用で菌の定着を高める

メタジェンセラピューティクスが「腸内細菌叢移植」を開発|今後は、抗菌薬の併用で菌の定着が可能に|抗菌薬の併用で移植した菌が定着/献便施設とバンクで便の供給を確保

抗菌薬の併用で定着を促す

便を移植するだけでは、もとの腸内細菌が残って新しい菌が定着しにくく、効果にばらつきが残ることが課題でした。

実用化が進められているのは、抗菌薬併用腸内細菌叢移植(A-FMT)です。移植の前にアモキシシリン、ホスホマイシン、メトロニダゾールという3種類の抗菌薬を投与し、患者の腸内細菌叢をいったん減らします。腸内では先にすみついた菌が場所と栄養を占めるため、数を減らしてから菌液内視鏡で注入すると、移植した菌は定着しやすくなります。この方法の臨床研究では、対照群を置かない全37症例で、8週後の寛解導入率が45.9%となりました。あらかじめ定めた有効性の目標を満たし、重い有害事象も報告されていません。

献便施設とバンクで供給確保

移植に使う便は、医療機関ごとに集められてきました。採取から菌液の調製までの手順品質の基準は、施設によって異なります。

同社は、ドナーの募集から便検体の管理、菌液の調製品質管理までを一つの体制にまとめた腸内細菌叢バンク「J-Kinsoバンク」を、ドナー支援サービス「ちょうむすび」を窓口として運用しています。採取の場は、山形県鶴岡市に2025年4月に開いた日本初の献便施設「つるおか献便ルーム」です。集めた便から調製する菌液は、治験では薬にあたります。そのため同社は神奈川県川崎市に「FMT治験薬製造センター」を設け、製造の工程を自社で管理しています。

FrontJournalの解説
  • A-FMT抗菌薬併用腸内細菌叢移植の略称である。移植の前に抗菌薬を投与して腸内細菌をいったん減らす点が、抗菌薬を使わない従来の腸内細菌叢移植との違いにあたる。

腸内細菌叢移植の未来|がんや神経へ

腸内細菌叢移植が変える医療の未来|がん治療との併用研究が進む/飲むカプセルの治験が日米で開始/保険診療への実装を目指す

がん治療との併用研究が進行

消化器がんの治療では、免疫チェックポイント阻害薬とA-FMTを組み合わせる臨床研究が進んでいます。免疫チェックポイント阻害薬は、免疫細胞にかかったブレーキを外し、がん細胞への攻撃を続けさせる薬です。腸内細菌は免疫のはたらき方に影響するとされ、この薬の効き目にも関わると考えられています。国立がん研究センター中央病院を中心とする臨床試験として、食道がんと胃がんの患者を対象に進められています。

飲むカプセルの治験を開始

潰瘍性大腸炎を対象とした経口腸内細菌医薬品「MGT-006」は、2026年6月に第1/2相臨床試験が始まりました。内視鏡を用いる移植と違い、カプセルを飲む方法のため、体への負担は小さくなります。開発はAMED(日本医療研究開発機構)の「創薬ベンチャーエコシステム強化事業」に採択され、事業費の一部が助成の対象です。試験は日本と米国の患者を対象とした国際共同試験で、第1相で安全性、第2相で適切な投与量を調べます。

保険診療への実装を目指す

同社が描く将来像は、「腸内細菌叢移植を限られた施設の研究から通常の医療の一部へ広げること」です。潰瘍性大腸炎を対象とした移植療法については、標準治療化と保険診療での実装が目標です。腸と脳は神経や免疫、菌が生み出す物質を通じて影響し合うとされ、パーキンソン病を対象とした臨床研究も順天堂大学と進んでいます。腸内細菌を用いた治療を、より多くの患者のもとへ届けることを目指しています。

会社概要|メタジェンセラピューティクスの事業

株式会社メタジェンから独立

メタジェンセラピューティクス株式会社は、2020年1月に株式会社メタジェンの子会社として創業しました。同年12月に親会社の出資比率が下がり、独立した会社になっています。共同創業者の中原拓氏が代表取締役社長CEOを務め、共同創業者で医師の石川大氏が取締役CMO(最高医学責任者)として臨床開発を担っています。共同創業者の福田真嗣氏と山田拓司氏は、最高科学顧問です。本社は山形県鶴岡市にあり、東京都千代田区にも事務所があります。

採択・連携

2021年に、東京工業大学(現在の東京科学大学)から大学発ベンチャーとして認定されました。2022年4月には順天堂大学に共同研究講座を開設しています。潰瘍性大腸炎を対象としたA-FMTは、先進医療B(保険診療と併せて実施できる先進的な医療として国が承認する枠組み)として2023年1月より実施され、順天堂大学が代表機関、同社が共同研究機関として参画しました。2023年にはJ-Startup(国が有望な企業を選ぶ制度)に選定されています。

資金調達/ビジネスモデル

2026年2月に完了したシリーズBラウンドでは総額約35.2億円を調達し、2026年9月には大学ファンドを引受先とするエクステンションラウンドで約1.9億円を追加しました。助成金を含む累計調達額は約68.4億円です(2026年9月時点)。調達した資金は、経口薬の臨床試験と移植医療技術の開発、供給網の最適化にあてられます。事業は、移植の医療技術を提供する医療サービス事業と、腸内細菌医薬品を開発する創薬事業の二本立てです。

会社情報

会社名メタジェンセラピューティクス株式会社(Metagen Therapeutics, Inc./略称 MGTx)
所在地山形県鶴岡市覚岸寺字水上246-2。東京事務所:東京都千代田区大手町1-6-1 大手町ビル6階
設立2020年1月
代表共同創業者・代表取締役社長CEO:中原 拓。共同創業者・取締役CMO:石川 大。取締役CSO(最高科学責任者):寺内 淳。共同創業者・最高科学顧問:福田 真嗣、山田 拓司
資本金9,000万円
調達シリーズB 総額約35.2億円(2026年2月)。シリーズBエクステンション 約1.9億円(2026年9月)。助成金を含む累計調達額 約68.4億円(2026年9月時点)
事業マイクロバイオームサイエンスを活用した創薬・医療事業。開発品:MGT-001(潰瘍性大腸炎)、MGT-006(潰瘍性大腸炎・経口)、MGT-007(消化器がん)、MGT-008(パーキンソン病)
技術領域腸内細菌叢移植(FMT)、抗菌薬併用腸内細菌叢移植(A-FMT)、腸内細菌医薬品、腸内細菌叢バンク
連携順天堂大学/国立がん研究センター中央病院/鶴岡市立荘内病院
採択東京工業大学(現在の東京科学大学)発ベンチャー認定(2021年8月)/J-Startup(2023年)/AMED「創薬ベンチャーエコシステム強化事業」/NEDO「ディープテック・スタートアップ支援基金/国際共同研究開発」
URLhttps://www.metagentx.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

腸内細菌の研究は、健康との関わりを語る話題として広がってきました。メタジェンセラピューティクスが取り組んでいるのは、その知見を治療という形へ落とし込む工程です。抗菌薬で腸内を整えてから移植するという手順を臨床研究で確かめ、寛解導入率という数字で示しました。

目を引くのは、便の供給という目立ちにくい部分に体制を築いた点です。献便施設バンク、そして治験薬の製造拠点まで自社で抱え、治療の材料が途切れない仕組みを整えています。研究の成果は、材料が届き続けて初めて医療になります。

鶴岡の研究拠点から生まれた技術が、難病の治療をどこまで変えるのか。今後の展開を注視したいところです。ほかの大学発ベンチャーの取り組みは企業検索でも紹介しています。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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