Qolo株式会社は立って乗る車いすと起立訓練機を開発する筑波大学発スタートアップ

Qolo株式会社(コロ)

Qolo「立位モビリティ」を研究|研究領域=立った姿勢のまま移動できる機器/強み=バネの伸びる力で起立を支援する/将来性=病院の訓練から暮らしの移動へ

企業紹介|Qolo株式会社とは?

車いすを使う人が立った姿勢のまま移動できる技術として、注目を集める「立位モビリティ」。Qolo株式会社(コロ)は、その「立位モビリティ」の社会実装を目指す、筑波大学発のディープテックスタートアップです。起立訓練機「Qolo T」を、医療機関や福祉施設へ提供しています。

キーワード「立位モビリティ」

立位モビリティ」は、下肢に障害のある人が、立った姿勢のまま移動できるようにする機器です。従来の車いすは座位(座った姿勢)が前提で、立ち上がるには介助か立位保持装置が必要でした。立った姿勢をとれるようになると、目線が高くなり、手の届く範囲も広がります。

市場課題|車いすで立つ機会が減る

現状の車いす生活の課題|現状は、立つ機会が減り健康を保ちにくい/座位が長く続き骨や関節に負担/立位訓練は介助の負担が大きい

座位が続き健康維持が難しい

車いすを使う生活では座位が長く続き、健康の維持が難しくなりがちです。立つ機会が減ると骨に体重がかからず、骨密度の低下関節の拘縮(関節が硬くなり動く範囲が狭まること)が起こりやすくなります。座位中心の生活が続けば、褥瘡(床ずれ)や血流の停滞といった廃用症候群が懸念されます。

立位訓練は介助の負担が大きい

立つ姿勢をとる訓練は、支える側の負担が大きく、実施できる回数が限られます。体重を受け止めながら姿勢を保たせる作業には複数の職員が必要になることもあり、現場の手順は煩雑です。訓練の回数が限られるほど、立つ力を取り戻す機会は遠のきます。

他にも、車いすでは届きにくい棚や調理台の高さ、目線が合わないことで生まれる会話のしにくさ、立位を保つ機器の導入にかかる費用、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 廃用症候群安静や不活動が続くことで、筋力の低下、関節の拘縮、骨密度の減少などが二次的に生じる状態を指す。原因となった病気やけがとは別に、体を動かさないこと自体によって起こる。

Qoloの強み|バネと外骨格で立位を支える

Qoloが「立位モビリティ」を開発|今後は、外骨格と車輪で立位移動が可能に/バネの力で立ち上がりを支援/外骨格が脚を支え立位のまま移動

バネの力で立ち上がりを支援

従来の立位機器には、モーターで体を持ち上げる方式のものがあり、装置が大型になるうえ電源の確保も欠かせません。

起立訓練機「Qolo T」が使うのは、電気ではなくバネが伸びる力です。人が立ち上がるとき、体はいったん前に傾き、重心が足の上へ移ってから腰が持ち上がります。座っているあいだ縮んでいるバネが、その動きに合わせて伸び、腰を押し上げる向きに力を加えます。加える力は、利用者の筋力に応じて調整が可能です。動力を持たないぶん機構は単純で、本体の大きさは幅61cm・奥行97cm、重さは87kgで、施設のなかを移動させて使えます。

外骨格が脚を支え立位で移動

従来の車いすは座った姿勢で使うことが前提で、立った姿勢のまま移動する使い方には向きません。

同社が開発中の「モビリティモデル」は、脚を支える受動型外骨格と電動の車輪を組み合わせた機器です。外骨格は腰から足元までを骨組みでつなぎ、上半身の重さを脚ではなく骨組みを通して機体へ逃がします。そのため、立位を保つあいだ脚で体重を支える必要がありません。起立のときはガススプリング(圧縮した気体で伸縮するバネ)が伸びて体を押し上げます。研究機は『IEEE/ASME Transactions on Mechatronics』で報告され、利用者が特別な訓練なしに起立と着座ができたとされています。

FrontJournalの解説
  • 受動型外骨格電気や油圧の動力を持たず、体に沿わせた骨組みとバネの力だけで姿勢を支える機構を指す。外骨格そのものは電力を必要としないため、構造を軽くしやすい。

立位モビリティの未来|応用の広がり

立位モビリティが変える未来|立つ機会の広がりが、健康と暮らしを支える/病院の起立訓練ですでに実用化/立って移動する機器を実用化へ/自宅や外出先でも立って過ごせる

起立訓練機が病院で実用化

起立訓練機「Qolo T」の販売は、2026年1月に始まりました。福島県の地域復興実用化開発等促進事業費補助金を活用し、県内のものづくり企業と連携して開発した、医療機器ではない訓練機器です。身長145〜190cm、体重40〜100kgの範囲で使え、標準使用年数は5年とされています。付属のタブレットに訓練の記録を表示するため、職員は利用者の動きの観察や声かけに集中しやすくなります。

立って移動する機器を開発

同社が次に実用化を目指すのは、立ったまま移動できるモビリティモデルです。2027年度の発売に向けて開発が進んでおり、座位でも立位でも走行できます。機体の高さは座位で93cm、立ち上がると153cmです。目線が立っている人に近づくため、棚の上や調理台など、座ったままでは届きにくい場所にも手が届きます。

立つ選択肢の拡大を目指す

同社が目指すのは、立つことを訓練の場だけで終わらせず、暮らしの選択肢として残すことです。病院で立つ力を保ち、退院後も自宅で立って過ごせる機器があれば、訓練と生活が途切れずにつながります。立つ機会が保たれること自体が、健康の維持にとって重要です。下肢に障害のある人が、立つ場面を自分で選べる状態を目指しています。

会社概要|Qoloの事業内容

筑波大学の研究から創業

Qolo株式会社は、2021年4月に茨城県つくば市で設立されました。創業の中心となったのは、代表取締役の江口洋丞氏です。江口氏は筑波大学の人工知能研究室(支援機器やロボットを扱う研究室)で立ち上がりを支える機構を研究したのち、自動車メーカーで先行技術の開発に携わり、2018年に社会人博士課程の学生として同大学へ戻りました。取締役には、「Qolo」の研究に加わってきた門根秀樹氏が就いています。

認定と採択の広がり

同社は、2021年6月に筑波大学発ベンチャーとして認定されました。2024年には本田技研工業の事業創出プログラム「Honda IGNITION」に採択され、同年の週刊東洋経済(ビジネス週刊誌)「すごいベンチャー100」にも選ばれています。2024年11月には、「Qolo T」が出品名「Qolo Rehabilitation」として「CES Innovation Awards 2025」のデジタルヘルス部門で受賞し、2025年1月の見本市CESで展示されました。2026年6月には「Qolo T」が福島県の「メードインふくしまロボット」に認定され、県内の事業者が導入する際の補助の対象となりました。

出資と資本金の状況

資本金は、2026年4月時点で84,625,000円です。2025年3月には、ミライドアが運営する「ふくしまメディカルヒルズ投資事業有限責任組合」から出資を受けました。本社をつくば市に置きながら福島県南相馬市に支店を構え、県内での製造と実証を進めています。

会社情報

会社名Qolo株式会社(コロ/Qolo Inc.)
所在地茨城県つくば市天王台1-1-1 産学リエゾン共同研究センター棟203室。福島支店:福島県南相馬市小高区飯崎字南原65-1
設立2021年4月26日
代表代表取締役:江口 洋丞
取締役:門根 秀樹
社外取締役:徳野 美和子
監査役:熊地 叔子
資本金84,625,000円(2026年4月時点)
調達2025年3月 ふくしまメディカルヒルズ投資事業有限責任組合(ミライドア運営)より出資
事業起立訓練機「Qolo T」(非医療機器)の開発・製造・販売。立位モビリティ(モビリティモデル)の開発。福祉・医療・介護支援・エンターテイメント領域の機器およびサービスの研究開発
技術領域立位モビリティ、受動型外骨格、バネによる起立支援
連携筑波大学(人工知能研究室)/福島県内のものづくり企業
採択筑波大学発ベンチャー認定(2021年6月)/Honda IGNITION(2024年)/CES Innovation Awards 2025(Digital Health部門)/週刊東洋経済「すごいベンチャー100」2024年版/福島県「メードインふくしまロボット」認定(2026年6月)/福島県 地域復興実用化開発等促進事業費補助金
URLhttps://qolo.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

車いすの技術は長いあいだ、いかに快適に座り、なめらかに進むかを軸に磨かれてきました。Qoloが取り組む「立位モビリティ」は、その軸に「立つ」という姿勢を加える試みです。大学の研究室で生まれた機構が、病院に置かれる訓練機として形になり、いま暮らしのなかへ向かっています。

注目したいのは、単なる動作の補助ではなく、姿勢を選べる状態そのものを設計している点です。長く用いられてきたバネを使い、電気に頼らずに立ち上がりを支える構成には、現場で毎日使われる機器としての手堅さがうかがえます。訓練室で取り戻した力を、退院後も使い続けられるかどうか。その連続性に、この会社は正面から向き合っています。

つくばで生まれた技術が、立つという当たり前の選択肢をどこまで広げていくのか。今後の展開を注視したいところです。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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