札幌試薬株式会社|国産原料でウシ血清アルブミン(BSA)を一貫生産

札幌試薬株式会社(さっぽろしやく)

札幌試薬「ウシ血清アルブミン」を研究|研究領域=ウシ由来の基準となる試薬/強み=国内原料から一貫生産する/将来性=診断と研究へ原料を供給する

企業紹介|札幌試薬株式会社とは?

研究と診断に用いる原料を国内で確保する手立てとして、機能性タンパク質の国産化が注目されています。札幌試薬株式会社は、札幌発のバイオ系ディープテック企業です。同社は国産原料から「BSA」(ウシ血清アルブミン)を一貫生産する体制の構築を進めています。

キーワード「BSA」(ウシ血清アルブミン)

「BSA」(ウシ血清アルブミン)は、ウシの血清から精製したアルブミン(血液中に最も多く含まれるタンパク質)を製品化した研究用試薬です。特徴は、ほかのタンパク質や酵素を安定させ、余分な吸着や反応を抑えられる点にあります。もともとは生体内で脂質やホルモン、金属イオンを運搬するタンパク質であり、試薬としての働きもこの性質によるものです。ELISA(酵素免疫測定法)などの測定では、余分な吸着を防ぐブロッキング剤として使われ、タンパク質の定量では濃度をはかる基準にもなります。

市場課題|試薬の原料は輸入品が中心

現状の試薬原料の課題|現状は、輸入中心で調達計画が立てにくい/原料の多くを輸入品が占める/ロットが変わると測定値がぶれる

輸入中心で調達計画が立てにくい

研究用試薬や診断薬の原料となるタンパク質は、輸入品が中心です。「BSA」(ウシ血清アルブミン)のような動物由来の原料は、産地の畜産事情や輸出入の規制、為替の影響で価格と供給量が動きやすく、必要な量を確保しにくくなります。そのため研究機関や診断薬メーカーは、調達の計画を立てにくい状況です。

ロット差で検査値がばらつく

動物由来の原料は、ロットごとに性質がわずかに異なります。血清は個体差や採取時期の影響を受けるうえ、精製の工程でも夾雑タンパク質の残り方が変わるため、純度と活性に幅が生まれます。測定に使う試薬では、この差が検査値のばらつきとして表れ、ロットごとに性能の確認が必要です。

他にも、海上輸送の遅れで生じる納期の変動、産地を限定する規制への対応、少量多品種の注文に応える生産体制の確保、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 夾雑タンパク質目的のタンパク質に混じって残る、別のタンパク質。残ると測定の妨げになるため、精製の工程で取り除く。
  • ロット同じ条件でまとめて製造した製品の一群。原料が生物由来の場合、ロットが変わると性質がわずかに変動する。

札幌試薬の強み|国産原料でBSAを生産する

札幌試薬が「ウシ血清アルブミン」を開発|今後は、国産の一貫生産で安定供給が可能に/調達から製品化までを国内で/独自の精製技術で品質を安定

国内原料から一貫生産する

札幌試薬が研究開発の中心に据えるのは、原料の調達から製品化までを国内で行う「BSA」(ウシ血清アルブミン)の生産体制です。国内で流通する「BSA」は海外で精製されたものが中心とされ、採取から製品化までの工程が国外にあります。同社はこの工程を国内で完結させ、研究用・診断薬用の国産供給体制の構築を目指しています。

国内に工程があれば、産地と製造履歴の追跡が可能です。規制の変更時の確認や、仕様の変更にともなう相談も、国内のやり取りで済みます。研究機関や診断薬メーカーは、必要な量を計画的に確保しやすくなります

独自の精製技術で品質を安定

同社は、独自の精製技術でロット間の差が小さい「BSA」を供給することを目指しています。血清から目的のタンパク質だけを取り出す工程が、精製です。夾雑タンパク質(目的以外の混ざったタンパク質)をどこまで除けるかで、純度と活性が決まります。

機能性タンパク質の分離精製(目的の成分だけを取り出す工程)の開発が同社の事業であり、その条件設計を「BSA」の製造へ反映できる点が強みです。精製の条件をそろえれば、ロットごとの差を抑えられるとされています。測定を行う側は、試薬を切り替えるたびに検量線(測定値から濃度を求める基準線)を引き直す負担を抑えられます。

FrontJournalの解説
  • 機能性タンパク質酵素や抗体のように、生体内や試薬のなかで特定の働きを担うタンパク質。「BSA」(ウシ血清アルブミン)は物質を運搬・保持する働きを持つ。
  • 分離精製混合物のなかから目的の物質だけを取り出し、純度を高める操作。試薬や医薬品の品質を左右する工程である。
  • 検量線濃度が分かっている標準液を測り、測定値と濃度の関係を表した線。試料の濃度はこの線に当てはめて求める。

BSAの未来|研究と診断へ用途が広がる

国産のウシ血清アルブミンが変える未来|国産化が進み、診断と研究の原料が安定する/微量元素を測るキット/診断薬の原料を国内で確保/微生物検出へ技術を広げる

微量元素の測定キットを提供

研究試薬事業として同社がすでに提供しているのが、微量元素と電解質(水に溶けて電気を通すナトリウムやカリウムなどの成分)の測定キットです。血清や血漿(血液から血球を除いた液体成分)、尿などの生物試料に含まれる鉄、亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウムを測る用途に向けたもので、「メタロアッセイ」などの製品名で展開しています。あらかじめ調製した「Ready to use」形式のため、使う側は溶液の調製と、そこで生じる誤差を省けます。栄養状態の評価や、微量元素と疾患の関わりを調べる研究が主な用途です。

診断薬原料の国内供給を進める

国産「BSA」(ウシ血清アルブミン)が安定して供給されれば、体外診断用医薬品の原料調達を国内で完結できます。診断薬は原料の性質が検査値に直結するため、産地と製造履歴をたどれることが前提です。国内に製造の拠点があれば、仕様の相談から試作、量産までのやり取りが短く済みます。少量多品種の注文にも応じやすくなり、原料の入手が難しかった領域の研究にも試薬が届くと見込まれます。

微生物検出技術の確立を目指す

札幌試薬は、金ナノ粒子を活用した微生物検出技術の確立を目指しています。金ナノ粒子の特徴は、粒子どうしの距離が変わると溶液の色が変わる点です。色の変化を目印にすれば、大がかりな装置がなくても対象の有無を読み取れるため、検査室の外でも使える検出手段になりえます。食品や水の衛生管理、医療現場での早期検出に向け、これまで培った知見を段階的に広げる計画です。

FrontJournalの解説
  • 体外診断用医薬品血液や尿などの検体を調べ、病気の診断に用いる医薬品。人体へ直接使わない点が治療薬と異なる。
  • 金ナノ粒子直径が数十ナノメートルの金の微粒子。粒子どうしの距離によって溶液の色が変わるため、検出の目印に使われる。

会社概要|札幌試薬株式会社の事業内容・設立背景

2025年に札幌市中央区で設立

札幌試薬株式会社は、2025年6月20日に札幌市中央区で設立された研究開発型ベンチャーです。代表取締役は北條渉が務めています。同社が掲げるのは、国内のバイオ原料を研究と医療の現場で使える形に仕上げ、海外の供給事情に左右されにくい原料の流れを国内に築くことです。

インキュベーション施設に入居

同社が入居するのは、中小企業基盤整備機構(中小企業の支援を担う独立行政法人)が運営する「北大ビジネス・スプリング」です。北海道大学に隣接するインキュベーション施設(創業期の企業に実験室や事務室を貸す施設)で、HILO株式会社など研究開発型の企業が入居しています。施設内では、機能性タンパク質の分離精製プロセスの開発と、金ナノ粒子を活用した微生物検出技術の開発を主なテーマに据えています。

研究開発と試薬提供を展開

事業の柱は、研究開発事業と研究試薬事業です。研究開発事業では、国産原料による「BSA」(ウシ血清アルブミン)の製造プロセス開発を進め、独自の精製技術で品質と供給の安定を図っています。研究試薬事業では、生物試料に含まれる微量元素や電解質を測る「Ready to use」キットを提供し、鉄や亜鉛といった測定項目ごとに製品を用意しています。事業構成の狙いは、試薬事業で得た現場の要望を精製プロセスの開発へ戻すことです。

会社情報

会社名札幌試薬株式会社。法人番号 9430001094741。
所在地北海道札幌市中央区南2条西5丁目31-1 RM Bld. 701。
設立2025年6月20日。
代表代表取締役 北條 渉。
技術領域国産原料による機能性タンパク質の製造プロセス開発。
「BSA」(ウシ血清アルブミン)の分離精製と一貫生産。
金ナノ粒子を活用した微生物検出技術。
製品生物試料中の微量元素・電解質を測定するReady to useキット(メタロアッセイ等)。
拠点中小企業基盤整備機構「北大ビジネス・スプリング」入居。
URLhttps://sapporo-shiyaku.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

試薬の原料は、論文の本文にも製品カタログの表紙にも表立って出てきません。それでも研究の再現性や検査値の信頼性は、原料がどれだけ均一かという土台の上に成り立っています。札幌試薬が取り組む国産「BSA」(ウシ血清アルブミン)の一貫生産は、その見えにくい土台を国内に置き直す試みです。

注目したいのは、同社が製造だけでなく分離精製のプロセス開発そのものを事業に据えている点です。海外の工程を国内へ移すだけであれば、供給の見通しは立っても、品質を設計する力までは手に入りません。プロセスを自ら組み立てられれば、「BSA」(ウシ血清アルブミン)以外の機能性タンパク質にも同じ手法を適用できます。原料を設計する力を国内に蓄えることに、この会社の価値があります。

金ナノ粒子による微生物検出という第二のテーマも含め、札幌から広がる研究基盤の育ち方に期待しています。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら

この企業について、
もっと深く知りたい方へ

パートナーシップ・お問い合わせはこちらから。