LMusubi「細菌迅速検査」を研究|培養を待たずに細菌を数時間で測る北海道大学発のディープテック企業

株式会社LMusubi(エルムスビ)

LMusubi「細菌迅速検査」を研究|研究領域=蛍光プローブで菌を光らせる・強み=培養を待たず数時間で測定・将来性=食品と工業排水の衛生管理へ

企業紹介|株式会社LMusubiとは?

食品や水に含まれる細菌の数を、その場で数時間のうちに把握する技術として、「細菌迅速検査」が注目されています。株式会社LMusubiは、北海道大学大学院工学研究院・水環境保全工学研究室発の、環境・食品系ディープテック企業です。「蛍光プローブ」と独自のアルゴリズムを組み合わせ、大腸菌や一般生菌数を数時間で測る受託検査(依頼を受けて自社の設備で行う検査)と検査キットを提供しています。拠点は札幌市、設立は2026年です。

キーワード「細菌迅速検査」

細菌迅速検査は、細菌を培養して増やす工程を経ずに、試料(検査の対象として採取した水や液)に含まれる菌数を短時間で測る検査です。特徴は、蛍光を目印にして菌を数えられる点にあります。狙った細菌に結合して光る「蛍光プローブ」(対象に付着して発光する試薬)を加え、その光の分布を画像として取り込み、独自のアルゴリズムが菌数へ換算します。食品工場では製造ラインの拭き取り、水処理の現場では工業排水が主な対象です。公定法(法令や規格で定められた試験方法)と高い相関を示すことが確認されており、最短1時間で速報を受け取れます。

市場課題|細菌検査は結果まで日数を要する

現状の細菌検査の課題|寒天培地のコロニー=結果まで1〜2日で出荷が滞る・顕微鏡=設備と検査員が検査室に必要

検査結果を待つ間は出荷が滞る

食品や水の細菌検査は、公定法である寒天培地培養法が基本で、結果まで1日から2日を要します。寒天培地の上で細菌をコロニー(培地の上にできる細菌の集落)へ増やしてから数える方式だからです。異常に気づくのは製造から1日以上あとで、その間、食品の出荷や水の供給は判断を待ちます

培養検査は設備と人手を要する

培養検査には、恒温器(一定の温度を保つ装置)や無菌操作(雑菌の混入を防ぐ手順)の環境に加え、判定に慣れた検査員も必要です。試料を検査室へ運んで培養し、コロニーを読み取る一連の作業には、知識と時間を要します。そのため検査の頻度を上げにくく、設備の限られた事業者ほど確認が難しい状況です。

他にも、培地や器具のコスト、拭き取りから判定までを人手で記録する負担、設備の整わない地域で衛生水準を保ちにくいこと、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 培養法栄養を含む培地で細菌を増やし、目に見える数にしてから数える検査。判定の基準として長く使われてきた。
  • 一般生菌数試料に含まれる細菌の総数を示す指標。特定の菌種ではなく全体の汚染度を表し、食品の衛生管理で広く測定される。

LMusubiの強み|光で菌数を数時間で測る

LMusubiが「細菌迅速検査」を開発|蛍光プローブで数時間で測定・試薬とキットで現場でも測れる

培養を待たず数時間で菌数を測定

LMusubiの「細菌迅速検査」とは、「蛍光プローブ」で細菌を光らせ、その像を独自のアルゴリズムで菌数へ換算する手法です。従来の培養法は、菌を増やしてコロニーとして数える方式が基本でした。同社の方式では、試薬を加えた時点で菌が個々に光るため、増殖を待つ工程が不要です。測定開始から数時間以内、速報であれば最短1時間で結果を受け取れます。精度を保ったまま、判定までの時間を短縮できるとされています。

専用の検査室に依存せず測る

同社は検査を現場で完結させる手段として、迅速検査用の試薬と検査キットの開発・販売を進めています。受託検査では、食品製造ラインの拭き取りや工業排水の試料を預かり、大腸菌・大腸菌群・腸球菌・緑膿菌・一般生菌数に対応します。判定をアルゴリズムが担うため、コロニーの読み取りに習熟していない担当者でも扱える設計です。さらに、食品工場や水処理工場のスマート化(機器の自動化とデータ活用による効率化)に向けて、全自動型の検査ラインを開発しています。検査の頻度を上げやすくなれば、異常の早期発見と原因の切り分けにつながるとされています。

FrontJournalの解説
  • 拭き取り検査製造ラインの表面を綿棒などで拭い、付着した細菌を調べる方法。清掃の効果や衛生状態の確認に用いられる。
  • 緑膿菌水回りや土壌に広く分布する細菌。消毒剤への抵抗力が比較的強く、水質や医療環境の管理で監視の対象になる。
  • アルゴリズム目的の答えを導くための計算手順。同社は蛍光の像から菌数を求める処理に独自の手順を用いる。

細菌迅速検査の未来|食と水の現場へ

数時間で終わる細菌検査が変える未来|拭き取り検査を当日に判定・工業排水の不調に当日気づく・衛生管理の標準化を目指す

食品工場の拭き取り検査に活用

同社の「細菌迅速検査」は、食品製造ラインの拭き取り検査として、すでに受託の形で提供されています。短時間で一般生菌数を把握できれば、清掃と再稼働の判断も同じ日のうちに可能です。同社は期間を限って無料の実証検査を受け付け、企業や研究機関から試料の提供を募っています。提供されたデータは匿名化のうえ学会で発表される場合があり、実運用の条件を検証する機会にもなっています。

工業排水の水質管理に広げる

工業排水の水質管理も、同社が対象に挙げる分野です。排水に含まれる大腸菌群や腸球菌の数は、放流先の水域の衛生に直結する指標。培養を待たずに測れれば、処理設備の不調を当日のうちに把握し、調整に移れます。排水の分野は、水環境技術を専門とする最高技術責任者・佐藤久氏の知見が土台です。

衛生管理の標準化を目指す

同社が目指すのは、細菌の状態を常時把握できる仕組みを衛生管理の標準にすることです。掲げるビジョンは、「バクテリアと共に進化する次世代ライフライン」を世界へ広げること。検査データを蓄積・管理するプラットフォームの開発も、その実現に向けた取り組みの一つです。設備や人材が限られる地域でも扱える検査は、安全な飲み水と食品の確保につながるとされています。

FrontJournalの解説
  • 大腸菌群ふん便による汚染の可能性を示す細菌のまとまり。食品や水の衛生基準で、安全性を判断する指標として使われる。
  • 腸球菌ヒトや動物の腸管にいる細菌。環境中で比較的長く残るため、水質のふん便汚染を調べる指標として測定される。

会社概要|LMusubiの事業内容・設立背景

北海道大学の研究から事業化

株式会社LMusubiの設立は2026年2月12日です。代表取締役兼CEOには羽太優理氏が就任しました。羽太氏は上智大学大学院で生物化学を修めたのち、化学系の専門商社とドイツの化学メーカーを経て、半導体製造装置の営業と管理業務に従事してきました。技術を統括するのは、北海道大学大学院工学研究院 環境工学部門の佐藤久教授です。

北海道大学の認定制度に選定

同社は、北海道大学が学内の研究成果を活用する企業へ付与する称号「北大発認定スタートアップ」を得ています。拠点は、中小企業基盤整備機構が運営するインキュベーション施設(創業期の企業を支援する賃貸施設)「北大ビジネス・スプリング」(札幌市北区)の303号室です。同じ施設にはハルタゴールド株式会社HILO株式会社など、複数のスタートアップが入居しています。

受託検査とキット販売が柱

事業の柱は、受託の細菌検査サービスと、迅速検査用の試薬・検査キットの開発・販売等です。あわせて、衛生・水質安全のコンサルティングと、検査データ管理プラットフォームの開発を手がけています。食品工場や水処理工場のスマート化に向けた全自動型検査ラインの構築は、現在も開発が続いています。

会社情報

会社名株式会社LMusubi(エルムスビ)
所在地北海道札幌市北区北21条西12丁目2 北大ビジネス・スプリング303号室
設立2026年2月12日
代表代表取締役兼CEO:羽太 優理
技術責任者最高技術責任者:佐藤 久(北海道大学 大学院工学研究院 環境工学部門 教授)
資本金200万円
技術領域細菌迅速検査、蛍光プローブ、菌数測定アルゴリズム、食品衛生、水質検査
事業受託細菌検査サービス。迅速検査用の試薬・検査キットの開発・販売。衛生・水質安全コンサルティング。検査データ管理プラットフォームの開発。全自動型検査ラインの構築(開発中)。
採択北大発認定スタートアップ。北大ビジネス・スプリング入居。
URLhttps://lmusubi.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

食品や水の安全は、当たり前のものとして受け取られています。その足元を支えているのは、寒天培地の上で細菌が増えるのを待つ、地道な検査の積み重ねです。1日から2日という待ち時間は、現場の判断をそのぶん遅らせてきました。

LMusubiが取り組むのは、その待ち時間を数時間に置き換えることです。意味があるのは時間の短縮だけではありません。判断の回数そのものが増え、清掃や設備の調整も同じ日のうちに実施できます。検査を重ねられる環境が整うほど、異常は小さいうちに見つかります。

研究室で培われた水環境の知見と、産業の現場を歩いてきた経営者。この二つが結びついた会社が、見えない世界をどこまで手軽に可視化できるのか。これからの広がりを楽しみにしています。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら

この企業について、
もっと深く知りたい方へ

パートナーシップ・お問い合わせはこちらから。