株式会社ポーラスター・スペース|「精密リモートセンシング」を研究。計測用カメラを積んだドローンのイラスト

株式会社ポーラスター・スペース(Polar Star Space)

ポーラスター・スペース「精密リモートセンシング」を研究|研究領域=衛星とドローンで葉の光を計測/強み=病害の兆しを数値で捉える/将来性=農業から漁業や防災の監視へ

企業紹介|株式会社ポーラスター・スペースとは?

広い農地の作物の状態を離れた場所から把握する技術として、「精密リモートセンシング」が注目されています。株式会社ポーラスター・スペースは、北海道大学発の宇宙・農業系ディープテック企業です。超小型衛星とドローン、分光器で、葉や土壌が反射する光の波長を計測しています。主な事業は、観測データにもとづく病害の早期発見と、施肥や農薬の使用を最適化する支援等です。

キーワード「精密リモートセンシング」

精密リモートセンシングは、対象に触れずに反射光を波長ごとに分けて計測し、状態を推定する観測手法です。特徴は、人の目では見分けにくい葉の色の差を、数値として捉えられる点にあります。葉緑素(光を吸収する緑の色素)や水分の量が変われば反射の強さも変わるため、その差が生育や病害を判断する指標になります。東南アジアの大規模な農園では、診断士が樹を一本ずつ見て回る必要がありました。

市場課題|広大な農園は病害の把握が遅れる

現状の農園の病害対策の課題|現状は、目視の巡回で発見が遅れる。並ぶアブラヤシで示す農園が広く巡回が届きにくい課題と、斑点のある葉で示す初期症状が小さく判別しにくい課題

広大な農園ほど目視確認が遅れる

アブラヤシ農園(パーム油の原料となるヤシの農園)の病害対策で壁になるのは、農地の広さです。感染の有無は診断士の目視で確かめられてきましたが、農園が広いほど巡回の周期は長くなります。人手で全体を回るには限りがあり、異常に気づいた時点で被害が広がっている場合があります。

初期症状は微細で判別しにくい

見つけにくさのもう一つの理由は、初期症状の変化が小さいことです。ガノデルマ属の菌に感染したアブラヤシは、水を運ぶ機能が妨げられて実の収量が下がり、やがて枯死します。初期の変化は葉の色や形にわずかしか現れないため、熟練の診断士でも判断に差が出やすくなります

薬剤の散布量を決める根拠も、樹ごとの状態が分からないままでは定めにくくなります。他にも、感染木の伐採による収量の減少、農園ごとに異なる生育条件の把握、記録を現場で共有する手間、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • リモートセンシング対象に触れずに、離れた場所から反射光や放射を測って状態を調べる技術。人工衛星や航空機、ドローンによる観測が代表例である。
  • ガノデルマアブラヤシなどに感染する糸状菌の総称。感染した樹は水を運ぶ機能が妨げられ、収量の低下を経て枯死に至るとされる。

強み|スペクトル計測で病害を早期に把握

ポーラスター・スペースが「精密リモートセンシング」を開発|今後は、上空の計測で感染木の判別が可能に。カメラを積んだドローンで示す上空から農園を面として観測、葉と分光器で示すスペクトルで初期感染を判別

上空から農園全体を短時間で計測

従来の巡回調査は、診断士が樹を一本ずつ見て回る方法が基本でした。確認の周期は数か月に一度となり、農園全体を同じ精度で把握しにくくなります。

同社が用いるのは、ドローンと超小型衛星から農園を面としてとらえる精密リモートセンシングです。機体には波長ごとに光を選び取るカメラを積み、地上約100メートルの高さから、20センチメートル前後の細かさで農園を撮影します。撮影した画像は自動で処理され、樹ごとの反射スペクトルとして記録される仕組みです。広い農園でも短い日数で一巡できるため、数か月に一度だった確認の周期は大きく縮まり、対策に使える時間も増えます。

スペクトルで初期の感染を判別

感染の初期に現れる変化は、葉の色や形のわずかな差にとどまります。目で見て判断する方法では、健康な樹との違いを一定の基準で切り分けにくくなります。

同社は、計測したスペクトルを現地の標本木(実地で状態を確認する見本の樹)と突き合わせ、感染木を判別する機械学習のアルゴリズムを構築しています。人の目では捉えにくい波長ごとの差を、判別に使う数値の特徴として学習させる方法です。精度を高めるため、標本木を確認する周期を3か月ごとから2週間ごとへ短縮しました。現場では、380〜1050ナノメートルの波長域を約4ナノメートルの細かさで測れる分光器「スペクトル・キャッチャー」も併用します。

FrontJournalの解説
  • スペクトル光を波長ごとに分けて並べたもの。物質によって反射や吸収の強さが異なるため、対象の状態を推定する手がかりになる。
  • 分光器光を波長ごとに分けて強さを測る装置。植物の葉緑素や水の濁りなど、目視では区別しにくい状態を数値で示せる。
  • 機械学習多数のデータから規則性を見つけ、判別や予測に使う手法。標本と結果を与えるほど、判別の基準が精緻になる。

精密リモートセンシングの未来|農業から防災へ

精密リモートセンシングが変える農業の未来|農園の管理から、災害の監視まで広がる。旗を立てたヤシで示すアブラヤシ農園で実証が進む、バナナとゴムの木で示すバナナや生ゴムへ対象を広げる、炎と崩れる斜面で示す山火事や土砂崩れの監視へ応用

アブラヤシ農園で実証が進む

すでに動いているのは、アブラヤシ農園でのガノデルマ病害の実証です。同社は2022年11月に花王株式会社と業務提携し、東南アジアの農園で実証を進めてきました。感染の広がりには農園ごとの差があり、伐採に至る割合が半分近くに達する場合もあるといわれています。早い段階で感染木を絞り込めれば、健全な樹を残したまま対策に着手できます

バナナや生ゴムへ用途を広げる

次に見込まれるのは、観測の対象となる作物の拡大です。同社はバナナや生ゴムなどの農園にも、同じ観測と解析の枠組みを広げようとしています。作物ごとに反射スペクトルの特徴は異なるため、計測した結果はスペクトルライブラリとして蓄積される仕組みです。対象が増えるほど判別の基準もそろい、栽培管理に使える指標が増えます。

災害の監視への応用を目指す

同社は観測の対象を農地の外へ広げ、災害の監視への応用を目指しています。手がかりになるのは、山火事や土砂崩れの前に現れる地表の植生や水分の変化です。波長ごとの反射を継続して測れば、こうした変化を早い段階で捉えられるとされています。漁業や水質、資源の分野も対象で、地上の計測機器と衛星の観測を組み合わせた基盤づくりを進めます。

FrontJournalの解説
  • スペクトルライブラリ作物や土壌ごとに測ったスペクトルを、条件とともに集めた記録。判別の基準として使うため、量が増えるほど精度が上がる。
  • 植生ある土地を覆う植物の集まりを指す語。水分や葉緑素の量が反射光に表れるため、衛星観測で状態を追う対象になる。

会社概要|ポーラスター・スペースの事業内容

宇宙技術を農業へ広げる設立

株式会社ポーラスター・スペースは、2017年4月に株式会社スペースアクセスとして設立され、同年9月に現在の社名へ変更しました。代表取締役を務めるのは中村隆洋氏で、防衛大学校で航空宇宙工学を学び、三菱電機エンジニアリング株式会社を経て同社を創業した人物です。設立と同じ2017年9月には、農業分野の事業計画を競う「アグリテックグランプリ」で最優秀賞を受けました。事業の柱は、観測ソリューションの提供と、データ関連事業等です。

大学発認定と業務提携の広がり

2018年4月、同社は北海道大学から北大発ベンチャーの認定を受けています。2019年6月には、経済産業省が有望なスタートアップを選ぶ「J-Startup」に選定されました。2022年11月には花王株式会社と業務提携し、アブラヤシのガノデルマ病害を対象としたモニタリング技術の実証を開始しました。「衛星地球観測コンソーシアム」にも会員として加わり、2025年4月には「グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金」に採択されています。

複数の投資家から資金を調達

設立から複数回の第三者割当増資(特定の相手に新株を割り当てる資金調達)を重ねてきました。2018年7月には、北洋銀行が組成した「北洋SDGs推進ファンド」から1,000万円の出資を受けています。2019年3月にはインキュベイトファンドなど複数の投資家から調達し、2022年には業務提携先の花王からも出資を受けました。資本金は、資本準備金を含めて5億150万円となっています。

会社情報

会社名株式会社ポーラスター・スペース(Polar Star Space Co., Ltd.)
所在地東京都中央区日本橋本町3-2-14 山一大野ビル4階
設立2017年4月(株式会社スペースアクセスとして設立。2017年9月に現社名へ変更)
代表代表取締役 中村 隆洋
資本金5億150万円(資本準備金を含む)
調達2018年7月 北洋SDGs推進ファンドから1,000万円。2019年3月 第三者割当増資。2022年 花王株式会社から出資。
投資家花王株式会社。インキュベイトファンド。アーキタイプベンチャーズ。岡三キャピタルパートナーズ。北洋SDGs推進ファンド。
連携花王株式会社(2022年11月からアブラヤシのガノデルマ病害モニタリング技術で業務提携)。衛星地球観測コンソーシアム会員。
技術領域精密リモートセンシング。波長可変フィルターを搭載した超小型衛星およびドローンによるスペクトル計測。スマートフォン一体型分光器「スペクトル・キャッチャー」の開発。
採択北海道大学 北大発ベンチャー認定(2018年4月)。J-Startup 選定(2019年6月)。グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金 採択(2025年4月)。
URLhttps://polarstarspace.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

宇宙から地上を観測する技術と聞くと、遠い世界の話に思えます。ところがポーラスター・スペースが向き合う相手は、東南アジアの農園で静かに広がる一本の樹の病でした。上空からの計測が、収穫という足元の営みに直結しています。

目を引くのは、衛星・ドローン・手元の分光器という高さの違う目を、同じスペクトルという物差しでつないでいる点です。単なる衛星データの提供にとどまらず、現場で標本木を確かめる作業まで含めて精度を高めてきました。地道な検証の積み重ねに、実装への手触りがあります。

農園の管理から、山火事や土砂崩れの監視まで。光の波長を読み解く技術が、地上の課題をどこまで拾い上げるのか、期待しています。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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