環境大善|牛の尿を「善玉活性水」に変える北海道北見市発のディープテック企業

環境大善株式会社(Kankyo Daizen)

環境大善「善玉活性水」を研究|研究領域=牛の尿を微生物で発酵させた液体/強み=酪農家から尿を買い取り製品化/将来性=消臭から土壌と水の改善へ

企業紹介|環境大善とは?

家畜排せつ物の悪臭と水質汚濁を抑える技術として注目を集める「善玉活性水」。環境大善株式会社は、この技術を事業の柱に据える、北海道北見市発の環境・バイオ系ディープテック企業です。酪農家から買い取った牛の尿を環境微生物群で発酵・培養し、消臭液「きえ〜る」や液体たい肥「土いきかえる」として製品化しています。北海道大学や北見工業大学と連携し、効果の科学的な検証にも取り組んでいます。

キーワード「善玉活性水」

「善玉活性水」は、牛の尿を乳酸菌などの環境微生物群で発酵・培養した液体で、消臭・土壌改善・水質改善の効果に着目して製品化されています。原料になるのは、酪農の現場で毎日発生しながら用途の限られてきた牛の尿です。効果が生じる仕組みは科学的な解明が進む途上にあり、環境大善は北海道大学大学院工学研究院の佐藤久教授と、水質浄化のメカニズムを調べる共同研究を進めています。

市場課題|家畜排せつ物が悪臭と窒素流出を招く

現状の家畜排せつ物の課題|排せつ物の悪臭が苦情の一因に/たい肥は需要期が偏り余りやすい

排せつ物の悪臭が苦情の一因に

畜産の現場では、家畜排せつ物の悪臭が近隣の苦情を招くことがあります。国内で1年間に発生する家畜排せつ物は約8,000万トン(2023年度)で、畜産経営への苦情の過半は悪臭です。対策が追いつかない地域では、畜舎の増設や新規参入が進めにくくなります

たい肥は需要期が偏り余りやすい

たい肥化は普及していますが、需要期が春と秋に偏るため、使い切りにくい状況です。散布時期が限られる一方、排せつ物は毎日出るため、保管の場所と手間がかかります。余った分が野積み(屋外保管)で残ると、雨や雪どけの水とともに窒素が流れ出し、地下水に硝酸性窒素がたまる恐れもあります。

他にも、香りで覆い隠す消臭剤では悪臭そのものを抑えにくいこと、たい肥の運搬や散布にかかる燃料費があります。化学肥料の使用が続くことによる地力の低下、酪農地域の労働力不足、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 家畜排せつ物牛や豚などの家畜が排出するふんと尿。悪臭や水質汚濁の原因になる一方、窒素やリンを含む肥料資源でもある。
  • 硝酸性窒素窒素化合物が微生物に酸化されてできる物質。水に溶けやすく地下水にたまるため、飲用水の基準が定められている。

環境大善の強み|牛の尿を発酵させ資源化

環境大善が「善玉活性水」を開発|微生物の働きで悪臭成分を抑制/牛の尿を買い取り液体たい肥へ

微生物の働きで悪臭成分を抑制

「きえ〜る」は、善玉活性水に含まれる微生物の働きで悪臭成分に作用するバイオ消臭液です。一般的な消臭剤の多くは香りで悪臭を覆い隠す方式で、悪臭成分が残る点が課題です。環境大善は、乳酸菌を含む環境微生物群で牛の尿を発酵・培養し、有効成分となる善玉活性水を製造しています。無香・無色透明のため、畜舎用からペット用、室内用、排水管用まで、用途別に製品を展開しています。化学的な消臭成分を使用しないため、子どもやペットのいる住宅でも扱いやすい点が特長です。

牛の尿を買い取り液体たい肥へ

環境大善は、酪農家から牛の尿を買い取って原料とする「アップサイクル型循環システム」を確立しています。背景にあるのは、たい肥として使い切れない分の保管と処理が、今も酪農家の負担として残る状況です。買い取った牛の尿は発酵・培養を経て善玉活性水となり、液状で散布しやすい液体たい肥「土いきかえる」や水質改良材になります。水耕栽培を用いた試験では、葉の色の濃さや根の重量の増加が確認されています。処理の負担だった排せつ物が、酪農家にとっては収入源に変わる仕組みです。

FrontJournalの解説
  • 善玉活性水牛の尿を乳酸菌などの環境微生物群で発酵・培養した液体。環境大善の製品に共通する原料である。
  • アップサイクル型循環システム未利用の資源を、元より価値の高い製品に変えて地域内で循環させる仕組み。同社が自社の事業モデルを指して用いる。
  • 液体たい肥有機物を微生物で分解・発酵させた液状の土壌改良材。固形のたい肥より散布しやすく、養分を吸収しやすい。

善玉活性水の未来|水と土の再生へ広がる

牛由来の善玉活性水が変える未来|家庭やペットの消臭に普及/養殖の水質管理へ北海道大学と研究/酪農地域の負荷を下げる循環へ

家庭やペット向けに製品が普及

善玉活性水を使った製品は、酪農の現場を越えて家庭にも普及しています。ペットの臭気や室内、排水管など、生活の場面ごとに製品が揃っています。デザイン面でも評価され、2022年にはパッケージデザインがニューヨークADC賞に入賞し、同年度のグッドデザイン賞も受賞しました。畜産向けに生まれた技術が、日常的に使える消臭液として定着しています。

養殖の水質管理へ応用

環境大善が次に見据える応用先は、養殖の水質管理です。「きえ〜る 水槽用」は水槽の臭気と濁りを抑える製品で、海外ではエビ養殖にも使われています。2023年6月からは北海道大学の佐藤久教授と共同研究を始め、ホタテを飼育する水槽の水質分析を通じて浄化の仕組みを調べています。仕組みが明らかになれば、陸上養殖のコスト削減や魚種の多様化にも応用が広がる見通しです。

酪農地域の環境負荷低減を目指す

環境大善は、未利用の排せつ物を原料に変える取り組みを広げ、酪農地域の環境負荷の低減を目指しています。排せつ物が有価物(買い手が付く資源)になれば、野積みや過剰な散布が減り、窒素の流出を抑える後押しになります。2024年8月には、株式会社リバネス農林水産研究センターや鯉淵学園農業栄養専門学校などと、「土いきかえる」で水田のメタン抑制効果を検証する共同研究も始まりました。水田は国内で排出されるメタンのおよそ4割を占めるとされ、ここで効果が確認できれば、善玉活性水の用途は消臭と土壌の改良から温室効果ガスの抑制まで広がります

FrontJournalの解説
  • 陸上養殖陸上の水槽で水を循環させて魚介類を育てる方式。天候に左右されにくい一方、水質管理と電力の費用がかかる。
  • メタン炭素と水素からなる気体で、二酸化炭素より強い温室効果を持つ。水田や家畜の消化管などで発生する。

会社概要|環境大善の事業内容・設立背景

家業の環境商品事業から独立

出発点は、1998年にホームセンターダイゼンで販売を始めた消臭液「きえ〜る」です。当時店長だった窪之内覚氏が商品化し、2000年から全国への製造販売を開始しました。2006年2月、この事業部を譲り受けて「株式会社環境ダイゼン」が設立されます。2019年2月に窪之内誠氏が代表取締役社長に就任し、2020年3月には社名を「環境大善株式会社」へ変更しました。

大学との共同研究と受賞歴

技術面では、2017年6月に北見工業大学との共同研究を開始し、2020年4月には同大学に共同研究講座を開設しました。2023年6月には北海道大学とも連携を始め、同月には令和5年度の成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)にも採択されています。拠点面では、中小企業基盤整備機構が運営する創業支援施設「北大ビジネス・スプリング」に入居しています。知的財産と経営の面では、2024年4月に知財功労賞の経済産業大臣表彰(デザイン経営企業)を受け、同年11月には「アトツギアワード2024」のイノベーション部門でグランプリを受賞しました。

牛の尿を買い取り地域へ返す

事業モデルは、酪農家から牛の尿を買い取り、善玉活性水を経て消臭液・液体たい肥・水質改良材として地域や家庭に届ける流れです。原料の調達から製造・販売までを北見市の拠点が担い、地域内に雇用を生んでいます。資金面では、2023年11月にサステナブルローン(環境や社会への配慮を評価して条件を定める融資)で調達しました。2024年10月には、SDGs私募債(環境・社会の目標を掲げて発行する社債)も発行しています。

会社情報

会社名環境大善株式会社(Kankyo Daizen)
所在地北海道北見市端野町三区438-7
設立2006年2月9日。前身の「きえ〜る」販売開始は1998年7月。
代表代表取締役CEO:窪之内 誠
従業員26人
事業内容「善玉活性水」を原料とする消臭液「きえ〜る」・液体たい肥「土いきかえる」などの開発・製造・販売。
連携北海道大学大学院工学研究院 佐藤久 教授(水質浄化の共同研究)。北見工業大学 共同研究講座。JAオホーツクあばしりと包括的業務提携。中小機構「北大ビジネス・スプリング」入居。
技術領域善玉活性水、微生物発酵、バイオ消臭、水質改善、土壌改良、家畜排せつ物のアップサイクル
採択・受賞成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)採択。知財功労賞 経済産業大臣表彰(デザイン経営企業・2024年)。アトツギアワード2024 イノベーション部門グランプリ。2022年度 グッドデザイン賞。
URLhttps://kankyo-daizen.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

環境大善は、地域の困りごとを製品の起点に変えました。牛の尿を原料にすると聞けば意外に映りますが、背景には酪農地域が長く向き合ってきた悪臭と水質の課題があります。処理に困る対象とされてきた資源が、暮らしのすぐそばで使える消臭液や液体たい肥になっています。

注目したいのは、環境への貢献を我慢や負担ではなく日用品として届けている点です。消臭液を選んだ人が、意識せずに資源の循環に加わっています。効果の仕組みを大学と検証する姿勢にも、家業から出発した企業が科学的な裏づけを重ねる意思がうかがえます。

臭気対策から始まった技術が、水と土の再生にまで届こうとしています。北見から始まった循環がどこまで広がるのか、これからの展開に期待が集まります。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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