株式会社エヌビィー健康研究所(NB Health Laboratory)|「GPCR抗体創薬」を研究

株式会社エヌビィー健康研究所(NBHL)

エヌビィー健康研究所「GPCR抗体創薬」を研究|研究領域=細胞膜の受容体に結合する抗体/強み=狙った受容体にだけ結合する/将来性=線維症や自己免疫疾患へ

企業紹介|株式会社エヌビィー健康研究所とは?

多くの薬が作用する創薬ターゲット(薬作りの標的となる分子)でありながら、抗体では狙いにくい「GPCR」。株式会社エヌビィー健康研究所は、この「GPCR」に挑む北海道大学発の創薬系ディープテック企業です。「MoGRAA®ディスカバリーエンジン」で、線維症(臓器が硬くなる病気)や自己免疫疾患の抗体医薬を研究開発しています。

キーワード「GPCR」(Gタンパク質共役受容体)

「GPCR」は、細胞の表面でシグナル(外から届く化学的な合図)を受け取り、細胞内へ伝える受容体です。特徴は、現在使われている薬の多くが結合する創薬ターゲットであり、免疫や代謝など体の幅広い働きに関わる点にあります。炎症が長く続く病気や臓器が硬くなる病気でも、この受容体の働きを調節する治療が検討されています。

市場課題|GPCRを狙う抗体医薬の壁

現状のGPCR創薬の課題|現状は、受容体の見分けにくさで開発が滞る/似たサブタイプを見分けにくい/抗体が結合する部分が少ない

GPCR創薬は選択性が課題

創薬ターゲット(薬作りの標的となる分子)にGPCRを選ぶとき、よく似たサブタイプ(構造が似た同系統の受容体)を見分けにくい点が課題です。同系統の受容体が多く、結合部位の形が近いためです。選択性が不十分だと、狙わない受容体にも結合して作用し、開発の継続が難しくなるといわれています。

抗体を得にくい創薬ターゲット

狙った相手だけに結合しやすい抗体医薬でも、GPCRの開発は進みにくい状況です。GPCRは細胞膜(細胞を包む膜)を7回貫く構造のため、立体構造を保ったまま取り出すのが難しく、細胞外に出る部分もわずかです。そのため抗体が結合できる領域が狭く、候補の絞り込みに時間を要します。

他にも、細胞1個あたりの受容体が少ないこと、抗体を選ぶ手法が確立していないこと、動物由来の抗体をヒト化(ヒトの体内で使える形へ改変すること)する難しさ、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • GPCR細胞膜を7回貫く形の受容体。外からのシグナルを細胞内へ伝え、多くの薬の創薬ターゲットとして知られる。
  • 抗体医薬異物を見分ける抗体を成分とする薬。狙った相手にだけ結び付き、副作用を抑えやすいとされる。

強み|GPCR抗体を取得する創薬基盤

エヌビィー健康研究所が「GPCR抗体創薬」を開発|今後は、抗体で難しい標的の創薬が可能に/独自基盤がサブタイプを選別/構造が未知でも抗体を取得

サブタイプを選び分ける抗体

従来の低分子化合物(飲み薬に多い小さな分子の薬)では、形の似たGPCRのサブタイプを厳密に見分けにくい場合がありました。

「MoGRAA®ディスカバリーエンジン」は、GPCRに特異的に結合する(よく似た受容体とは結合しない)モノクローナル抗体を効率よく取り出す創薬基盤(薬の候補を見つける仕組み)です。同社はこの基盤により、脂質をリガンド(受容体に結び付く分子)とする受容体でも、その働きを妨げる抗体を取得できるとしています。基盤を支えるのは、動物に抗原を投与して抗体を得る手順と、スクリーニング(候補の選び出し)の最適化です。

構造が未知でも抗体を取得

立体構造が判明していない受容体は、参照できる情報が乏しく、サロゲート抗体(代用として使う抗体)も得られていません。

同社は、構造が未知でサロゲート抗体のない創薬ターゲット(薬作りの標的となる分子)でも、「MoGRAA®ディスカバリーエンジン」で有用な抗体を開発できるとしています。この基盤の中核はDNA免疫法(受容体ではなく、その設計図にあたる遺伝子を動物に投与する方法)です。動物自身の細胞が受容体を膜上に提示するため、取り出して形を保つ工程が不要です。同社は、動物から回収した抗体産生細胞(抗体を分泌する細胞)を、長時間の培養を挟まず一つずつ選び分けます。異なる創薬ターゲットを並行して進められる点も強みです。

FrontJournalの解説
  • モノクローナル抗体単一の細胞に由来し、決まった一か所だけに結合する抗体。狙った分子にだけ作用させたい医薬品に用いられる。
  • DNA免疫法タンパク質そのものではなく、その遺伝子を投与して免疫する方法。抗原を精製しにくい膜タンパク質の抗体作製で用いられる。

未来|GPCR抗体が広げる治療の選択肢

新たなGPCR抗体創薬が変える未来|治療の選択肢が少ない病気へ広がる/肺線維症の候補が前臨床試験中/AI解析で適応症を探索/自己免疫疾患や感染症も対象

肺線維症の候補が前臨床へ

同社の開発品が向かう先は治療の選択肢が少ない病気です。脂質メディエーター受容体(脂質シグナルを受け取る受容体)「LPA1」を創薬ターゲット(薬作りの標的となる分子)とする「NBG025」は、特発性肺線維症を対象に前臨床試験段階です。ケモカイン受容体(免疫細胞を呼ぶ受容体)「CCR7」を狙う「NBA-1901」も、特発性肺線維症と腎線維症で前臨床試験の準備が進みます。いずれも臓器の線維化に関わる受容体が対象です。

AI解析で適応症探索を加速

AI解析の活用で開発テーマの拡張が見込まれます。同社は2025年10月にFRONTEOと実証実験契約を結び、AI創薬(AIで薬の候補を探す手法)でパイプライン(開発中の候補)の創出を検証しました。2026年2月に共同研究の基本方針で合意し、適応症(薬を使える病気)の探索と導出(開発の権利を他社に許諾すること)を進めます。導出は最短で2026年度中が目標です。

難治性疾患の治療薬を目指す

同社が目指すのは、まだ承認薬のない領域での実用化です。自己免疫疾患ではプロスタグランジンE2受容体(炎症のシグナルを受け取る受容体)「EP4」を狙う「NBA-1603」が、大腸炎や関節症性乾癬(皮膚と関節に炎症が起きる病気)などを対象に最適化段階です。重症のウイルス感染症でも、インフルエンザや新型コロナを想定したリード抗体(改良の出発点になる最初の候補抗体)の探索が進みます。どちらの領域も重症化したときの治療の選択肢が限られるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 前臨床試験人へ投与する前に、細胞や動物で有効性と安全性を確かめる試験。ここでの結果が臨床試験へ進む判断材料になる。
  • 自己免疫疾患異物を攻撃する免疫の働きが、自分の体の組織へ向かう病気。関節や腸などに炎症が続く。
  • 特発性肺線維症原因が明らかでないまま肺の組織が硬くなり、呼吸の機能が低下していく病気。進行を抑える治療が中心とされる。

会社概要|エヌビィー健康研究所の事業内容

札幌へ移し北海道大学と連携

株式会社エヌビィー健康研究所は、代表取締役の髙山喜好氏が2006年7月に設立した創薬企業です。設立当初の拠点は埼玉県川口市にあり、2012年に本社を札幌市へ移しました。現在は、北海道大学発スタートアップが集まる北キャンパスに研究所を構え、産学連携(大学と企業が共同で研究開発を行う体制)を進めています。

認定と特許に加え連携も拡大

同社は、北海道大学が認定する「北大発認定スタートアップ企業」(大学の研究成果や人材を活用する企業に大学が与える称号)に選ばれています。道内の有望な企業を官民で支援する「J-Startup HOKKAIDO」の認定企業でもあります。抗体の権利化も進み、「ヒトCCR7抗体」と「抗ヒトCXCR3抗体」で物質特許(物質そのものを対象とする特許)が成立しました。2026年2月には、代表の髙山氏がFRONTEOの「新共同創薬エコシステム事業」の発表会に登壇しました。

シリーズCで約7.5億円を調達

2021年8月には、シリーズCとして総額682万ドル(約7.5億円)を調達したと公表しています。シリーズCは、開発の実績を踏まえて事業の拡大を図る段階の資金調達にあたります。資本金は1億604万円です。

会社情報

会社名株式会社エヌビィー健康研究所(NB Health Laboratory Co. Ltd.)
所在地〒001-0021 北海道札幌市北区北二十一条西十二丁目 北海道産学官協働センター内。
設立2006年7月。2012年に埼玉県川口市から札幌市へ本社を移転。
代表代表取締役 髙山 喜好
資本金1億604万円
調達2021年8月、シリーズCとして総額682万ドル(約7.5億円)。
連携株式会社FRONTEO(2025年10月に実証実験契約、2026年2月にGPCR抗体創薬の共同研究の基本方針で合意)。
技術領域GPCRを創薬ターゲットとする抗体医薬の研究開発。創薬基盤「MoGRAA®ディスカバリーエンジン」。ハイスループットシングルセル解析。
開発品「NBG025」(LPA1/特発性肺線維症/前臨床試験)。「NBA-1901」(CCR7/特発性肺線維症・腎線維症/前臨床試験の準備)。「NBA-1603」(EP4/大腸炎・関節症性乾癬・強直性脊椎炎(背骨に炎症が続く病気)/最適化)。重症ウイルス感染症のリード抗体探索。
採択「北大発認定スタートアップ企業」。「J-Startup HOKKAIDO」認定スタートアップ。
URLhttps://nbhl.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

多くの医薬品が創薬ターゲット(薬作りの標的となる分子)としてきたGPCRは、抗体医薬にとっては手が届きにくい相手でした。細胞膜に埋もれた受容体を、構造を保ったまま取り出す難しさがあったためです。エヌビィー健康研究所は、その入口にあたる抗体の取得に的を絞り、2006年の設立から20年にわたり研究開発を重ねてきました。

印象に残るのは、その構造が未知の領域にも踏み込む姿勢です。参照できる抗体がない領域は、成果が出るまでの道のりが読みにくく、腰を据えた研究が要ります。物質特許が続けて成立している事実は、その積み重ねが形になりつつあることをうかがわせます。

札幌で磨かれた抗体作製の技術が、治療の選択肢が少ない病気に道を開くことを期待しています。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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