株式会社ワープスペースは衛星間光通信を支える光モデムを開発する筑波大学発スタートアップです

株式会社ワープスペース

ワープスペース「衛星間光通信」を研究|研究領域=衛星どうしをレーザー光で結ぶ/強み=光通信の端末を規格を越えてつなぐ/将来性=衛星のデータを30分で届ける網へ

企業紹介|株式会社ワープスペースとは?

宇宙で得たデータを速く安全に地上へ届ける手段として、注目を集める「衛星間光通信」。株式会社ワープスペースは、その「衛星間光通信」の産業化を目指す、筑波大学発のスタートアップです。規格の異なる光通信端末をつなぐ光モデム「HOCSAI」と、導入前の検証を担うデジタルツインシステム「DTS」の販売を、2026年から予定しています。

キーワード「衛星間光通信」

衛星間光通信」は、電波の代わりにレーザー光を使い、人工衛星どうしや衛星と地上の間でデータをやり取りする方式です。光は電波よりも収束性(広がらずに直進する性質)が高いため、同じ電力でも多くのデータを遠くまで運べます。電波のような国際的な周波数調整が要らず、第三者に傍受される可能性も低いといわれています。

市場課題|宇宙のデータが地上に届きにくい

現状の宇宙通信の課題|現状は、電波の制約でデータが滞る|1周90分のうち話せるのは10分未満/光通信は導入前の検証に手間がかかる

電波では観測データを送りにくい

地球観測衛星が集めたデータは、地上へ十分に降ろせていません。高度500km付近の低軌道を回る衛星が地上局と通信できる時間は、地球を一周する90分のうち10分未満に限られるためです。観測機器の高解像度化が進むほど、届かない分が増えます。

光通信は導入前の検証が難しい

期待が集まる光通信も、軌道へ投入する前の検証に手間がかかるため、導入が進みにくいのが現状です。衛星の姿勢変化や微振動、温度変動がレーザー光の指向(光を向ける方向)に影響するため、搭載の検討には複雑な計算が必要です。検証の負担と不確実性が、事業者にとって導入の障壁になっています。

宇宙で扱うデータは機密性が高く、傍受されにくい伝送経路も求められます。他にも、電波どうしの干渉を避ける国際的な周波数調整の長期化、50万個を超えるといわれる宇宙デブリの監視に要する即応的な通信、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 低軌道地球のまわりを回る軌道のうち、高度およそ2,000km以下の領域を指す。地球観測衛星の多くがこの高さを利用し、約90分で地球を一周するため、地上の一点と向き合える時間が短い。

ワープスペースの強み|光通信をつなぐ機器

ワープスペースが「衛星間光通信」を開発|今後は、規格の違う端末の接続が可能に|規格の違いを1台でつなぐ/姿勢や振動の影響を仮想空間で再現

規格を越えてつなぐ光モデム

光通信の端末はメーカーごとに規格が異なり、異なるシステムの間では相互に接続しにくい状態が続いてきました。

同社が開発する光モデム「HOCSAI」(ホクサイ)は、マルチプロトコル(複数の通信規格に対応する方式)を採ることで、この規格の違いを機器の側で吸収します。衛星に搭載できる大きさでありながら、多様なレーザー光通信端末に対応する設計です。対応する端末どうしであれば、個別のチューニング(相手に合わせた調整)を行わずにデータを伝送できます。衛星と地上の間の相互通信や、別々の規格をまたいだ伝送にも対応します。特定のメーカーに縛られない構成を選べる点が利点です。

軌道投入前に挙動を再現

レーザー光は指向性が高く、衛星のわずかな姿勢の揺らぎでも受信側から外れやすいため、搭載できるかどうかを机上で見極めるのは容易ではありません。

同社のデジタルツインシステムDTS」(ディー・ティー・エス)は、実物の動きを仮想空間に写し取るデジタルツインの技術を使い、その見極めを行うソフトウェアです。衛星の挙動、システムどうしの連携、データの流れを再現し、姿勢変化や微振動、温度変動が光通信に与える影響をシミュレーションします。多数の衛星を群として運用する衛星コンステレーションの動きも、仮想の環境で模擬できる設計です。搭載の検討から運用計画の検証までを一つの環境で扱えるため、複雑な計算を要した工程が簡略化され、導入の負担が下がります。

FrontJournalの解説
  • マルチプロトコル一つの機器が複数の通信規格に対応し、規格の異なる相手とも接続できるようにする方式。規格ごとに機器をそろえる必要がなくなるため、事業者が機器を選ぶ自由度が高まる。

衛星間光通信の未来|即応の通信網へ

即応の衛星間光通信が変える未来|光通信の導入支援から中継網の構築へ|光通信の導入を段階的に支援/モデムとソフトを2026年から販売/中軌道の3機でほぼ常に通信

光通信の導入を支援

同社は、光通信の導入を包括的に支援するサービス「WarpON!」(ワープオン)を提供しています。光通信端末の選択から、運用に備えたソフトウェアの構築異常事態への対応までを、顧客の開発段階に合わせて支援します。ここで用いるのが、ハードウェアの「HOCSAI」とソフトウェアの「DTS」です。同社は通信網の開発で蓄えてきた知見を、他の事業者が光通信を導入する場面へ開いています。

モデムとソフトを製品化

同社は、「HOCSAI」と「DTS」の販売を2026年から予定しています。製造と販売の体制づくりも並行して進めています。同社は全日空商事と、航空産業で培った商社機能を活かし、供給網の整備と海外展開を進める方針です。宇宙戦略基金の事業では、軌道上で動かして性能を確かめた段階まで、技術の完成度を高めることを目指しています。

即応の通信網を目指す

構想の中心にあるのが、光通信機器を搭載した3機の中継衛星を地球中軌道に置く中継サービス「WarpHub InterSat」(ワープハブ・インターサット)です。中軌道は静止軌道より低い一方で低軌道よりは高く、1機あたりの可視範囲(地上を見渡せる広さ)が広いため、3機のうちいずれかがほぼ常に地上局と通信できます。低軌道に近い位置取りのぶん、光通信端末に求められる大きさ、重量、電力の要件も抑えられ、小型の衛星にも搭載できます。同社が目指すのは、観測から30分以内にデータを届ける即応の通信網を築くことです。

会社概要|ワープスペースの事業内容

超小型衛星の開発から創業

株式会社ワープスペースは、2016年8月に茨城県つくば市で設立されました。筑波大学で積み重ねられた超小型衛星の開発経験を基点とし、当初手がけていたのは、衛星用モジュールの供給や打ち上げ機会の提供です。2020年には実験衛星「日輪」を打ち上げました。現在は代表取締役CEOの東宏充氏が経営を率い、つくば市に加えワシントンD.C.(米国)とフランクフルト(ドイツ)にも拠点を置いています。

宇宙戦略基金に採択

同社の技術開発は、公的な支援と第三者からの評価を受けています。2025年12月には、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が実施する宇宙戦略基金の公募事業「衛星光通信の導入・活用拡大に向けた端末間相互接続技術等の開発」の実施事業者に採択されました。開発チームには、光衛星間通信の実証を行った技術試験衛星「きらり」(OICETS)に携わったメンバーも加わっています。2023年には、EYが主催する表彰制度「EY Innovative Startup 2023」の「Space Tech」部門に選ばれました。

シリーズCで体制を強化

同社は2026年1月に、シリーズCラウンドでの資金調達を実施しました。シリーズCは、開発した製品を市場へ投入し、事業を拡大する段階にあたる資金調達です。引受先は、スパークス・アセット・マネジメントが運営する宇宙フロンティア2号ファンドをリード投資家に、湖北工業、全日空商事、トヨタ・インベンション・パートナーズ、MIC6号投資事業有限責任組合です。調達した資金は、「HOCSAI」と「DTS」の商用化と、製造・販売体制を含む事業体制の強化に充てられます。

会社情報

会社名株式会社ワープスペース(WARPSPACE Inc.)
所在地茨城県つくば市吾妻1丁目10番地1 つくばセンタービル1階
設立2016年8月
代表代表取締役CEO:東 宏充
調達2026年1月 シリーズCラウンド(リード投資家:宇宙フロンティア2号ファンド)
事業マルチプロトコル光モデム「HOCSAI」とデジタルツインシステム「DTS」の開発。光通信の導入支援サービス「WarpON!」の提供。衛星間光通信の中継ネットワーク「WarpHub InterSat」の構築
技術領域衛星間光通信、光通信端末の相互接続、衛星運用のデジタルツイン、光中継衛星
連携湖北工業(高信頼性の光デバイス)。全日空商事(供給網の整備・海外展開)。トヨタ・インベンション・パートナーズ(宇宙通信インフラ)。Amazon Web Services(地上でのデータ伝送)
採択宇宙戦略基金「衛星光通信の導入・活用拡大に向けた端末間相互接続技術等の開発」(2025年12月)/EY Innovative Startup 2023「Space Tech」
URLhttps://warpspace.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

宇宙の通信を電波から光へ移す議論は、これまで通信速度の比較として語られがちでした。ワープスペースが選んだのは、速さを競う場所ではなく、規格の違いをつなぐ場所です。端末を作る各社が増えるほど、その間を埋める機器の価値が上がるという読み方には、産業の育ち方への理解がうかがえます。

もう一つ興味深いのは、ハードウェアとソフトウェアを対で開発している点です。機器を製造するだけでは導入は進まず、事業者が事前に判断できる材料まで用意して初めて選ばれます。通信規格の橋渡し役という位置取りは、宇宙通信の標準がまだ定まりきっていない今だからこそ、大きな意味を持ちます。

災害の様子や地表の変化を、観測したその日のうちに手元で確かめられる日は、そう遠くないのかもしれません。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら

この企業について、
もっと深く知りたい方へ

パートナーシップ・お問い合わせはこちらから。