株式会社オプティマインドは配送ルートを最適化するAI「Loogia」を開発する名古屋大学発の企業

株式会社オプティマインド(OPTIMIND)

オプティマインド「Loogia」を研究|研究領域=配送ルートを自動で決める技術/強み=実走行データで所要時間を推定/将来性=共同配送や人流の計画にも広がる

企業紹介|株式会社オプティマインドとは?

その日に運ぶ荷物をどのトラックが、どの配送先へ、どの順に届けるかまで決めるクラウドサービスとして、注目を集める「Loogia」。その「Loogia」を開発するのが、名古屋大学発の株式会社オプティマインドです。実際に走った車両の記録を取り込み、現場の制約を反映した配車計画を自動で作成します。

キーワード「Loogia」

Loogia」は、ラストワンマイル(荷物が届く最後の区間)に特化したルート最適化のクラウドサービスです。地図上の距離を基準にルートを引く方式とは異なり、実際に車両が走った記録から区間ごとの所要時間を推定します。開発の起点は、代表取締役社長の松下健氏が名古屋大学大学院で取り組んだ組合せ最適化の研究です。

市場課題|増える荷物と減る運び手

現状の配車計画の課題|現状は、荷物が増えても計画は経験に依存/荷物は増え担い手は不足/条件が多く計画が経験に頼りやすい

宅配便が増え担い手が不足

宅配便の荷物は増える一方で、ドライバーの確保は難しくなっています。国土交通省の集計では、令和5年度(2023年度)の取扱個数は50億733万個でした。2024年4月からの時間外労働の上限規制でドライバーが運転できる時間は短くなり、対策がなければ2030年度に輸送需要の約34%にあたる輸送能力が不足するとの試算も示されています。

配車計画は経験に頼りやすい

配車計画は、熟練した担当者の経験に頼りやすい業務です。時間指定や積載量、道路の幅など条件が多く、訪問順の組み合わせは訪問先が増えるほど階乗で増えます。計画づくりに時間がかかり、担当者が交代すると品質を保ちにくくなります。

計画の精度が下がるほど、同じ荷物量を運ぶのに必要な車両と人員は増えます。他にも、受け取り手の不在で生じる再配達、積み荷が偏る積載効率の低さ、荷待ちによる待機時間、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 配車計画配送する荷物を車両に割り当て、訪問の順序と時刻を決める計画。時間指定・積載量・道路条件を同時に満たす必要があるため、熟練者の勘に頼りやすく属人化しやすい業務とされる。

オプティマインドの強み|現場制約を数式化

オプティマインドが「Loogia」を開発|今後は、走行実績から自動で配車が可能に/GPSデータから所要時間を推定/40以上の現場制約を数式にして計算

実走行データで所要時間を推定

地図上の距離だけで引いたルートは、道路の混み具合や荷降ろしの時間を織り込めず、現場では計画どおりに回りにくくなります。

「Loogia」は、実際に走行した車両から集めたGPSデータを取り込み、区間ごとの所要時間を推定してルートを計算します。同じ道でも時間帯や車両の大きさで走行速度は変わります。走行実績にもとづく推定は、この速度の変動を所要時間へ反映する仕組みです。佐川急便では2021年10月から、集配業務で使う情報端末と「Loogia」をAPI連携(外部システムどうしをつなぐ仕組み)する運用が始まりました。配達の進捗や再配達の発生に応じてルートを再計算するため、出発前に決めた順序が崩れても計画を作り直せます。

現場の制約を数式に置き換え

配送の条件は、時間指定や積載量だけでなく、通行できる道路の幅や荷降ろしの手順にまで及び、担当者の頭の中で処理されてきました。

同社は、こうした条件を配送計画問題として数式で表し、組合せ最適化で解いています。配送計画問題とは、すべての配送先を回りながら、全車両の移動コストの合計を最小にする経路を求める問題です。最適だと保証された解を求めるのは極めて難しいため、近似解法のメタヒューリスティクスで短時間に精度の高い解を求めます。一方通行やUターン禁止、車格や積載容量、時間指定といった40以上の現場制約も式に組み込むため、経験に依存していた工程を自動化できます。この手法の基盤は、松下健氏が名古屋大学大学院で重ねた研究です。

FrontJournalの解説
  • メタヒューリスティクス組合せ最適化問題に広く使える近似解法。最適だと保証された解を求める代わりに、短い時間である程度精度の高い解を求める。配送計画のように組み合わせが膨大な問題で用いられる。

配送の先へ|街全体の最適化

自動化された配車が変える未来|実績を分析して計画を改善/複数社の荷物を1台にまとめる/人の移動も含めた街全体の最適化

配送実績を分析し改善

同社は2025年3月に、配送の実績データを分析する「Loogiaアナリティクス」の提供を開始しました。計画に紐づいた実績データを扱うため、分析に必要なデータの連携や紐付けを簡略化できます。算出できる指標は、実働率や積載率、遅延率、作業完了率などです。車両がどれだけ稼働し、どれだけ積み、計画どおりに完了したかを数値で確認できます。

共同配送の計画を支援

同社は、複数の企業の荷物をまとめて運ぶ共同配送の支援にも取り組んでいます。積載に余裕のある車両へ複数社の荷物をまとめられれば、必要な車両の台数そのものが減るためです。ただし企業ごとに時間指定や荷姿(荷物の形や大きさ)が異なるため、条件を同時に満たす計画づくりは難易度が高いといわれています。制約を数式で扱う技術は、こうした企業をまたぐ配送計画にも応用が見込まれます。

街全体の最適化を目指す

目指しているのは、ラストワンマイルの効率化にとどまらない街全体の最適化です。事業内容には、物流に加えて人流(人の移動)向けのソリューション開発も掲げられています。荷物と人の動きをまとめて計画できれば、道路を走る車両の総量を抑えられると考えられます。同社が掲げているのは「世界のラストワンマイルを最適化する」という目標です。

会社概要|株式会社オプティマインドの事業内容

大学の研究からの創業

株式会社オプティマインドは、2015年6月に名古屋市で設立されました。創業者の松下健氏は、名古屋大学情報文化学部を経て大学院情報学研究科数理情報学専攻に進み、コンテナへの荷物の詰込問題や配送計画問題を研究してきました。きっかけは、2011年の入学後に受けた柳浦睦憲教授の組合せ最適化アルゴリズムの講義だといわれています。設立当初は最適化のコンサルティングを手がけ、2018年に自動配車クラウド「Loogia」をリリースしました。

大手企業との連携

「Loogia」は、佐川急便や日本郵便、ローソンなど、業種の異なる企業へ導入されています。佐川急便では集配用の情報端末とのAPI連携、鋼材加工販売の前田鐵鋼では配車計画業務の削減といった取り組みが公表されています。拠点は名古屋本社に加えて、2021年に東京オフィス、2023年に大阪オフィスを開設しました。事業内容は、物流・人流向けのソリューション開発と販売、物流ネットワークのコンサルティングです。

資金調達の経緯

同社は2019年に、トヨタ自動車などを引受先とする約10億1,300万円のシリーズAの資金調達を実施しました。シリーズAは、製品を市場に出して事業の拡大を図る段階の資金調達にあたります。2022年12月には、未来創生3号ファンドとLogistics Innovation Fund、既存投資家を引受先とするシリーズBで約20億円を調達しました。2022年12月時点の累計調達額は約31億円です。主要株主には、トヨタ自動車、日本政策投資銀行、寺田倉庫、KDDI、三菱UFJキャピタルなどが名を連ねています。

会社情報

会社名株式会社オプティマインド(OPTIMIND Inc.)
所在地愛知県名古屋市中区栄2-11-30 セントラルビル9F
東京オフィス:東京都中央区日本橋3-14-3
大阪オフィス:大阪府大阪市中央区難波5-1-60
設立2015年6月22日(2018年 株式会社化)
代表代表取締役社長:松下 健(名古屋大学大学院情報学研究科 数理情報学専攻)
資本金1億円
調達2019年 シリーズA 約10億1,300万円。2022年12月 シリーズB 約20億円(未来創生3号ファンド/Logistics Innovation Fund/既存投資家)。累計約31億円(2022年12月時点)
事業物流・人流向けソリューションの開発と販売。物流ネットワークコンサルティング。ルート最適化クラウド「Loogia」の提供
技術領域組合せ最適化、配送計画問題、実走行データ解析、ルート最適化
連携佐川急便/日本郵便/ローソン/前田鐵鋼
主要株主:トヨタ自動車/日本政策投資銀行/寺田倉庫/KDDI/三菱UFJキャピタル
URLhttps://www.optimind.tech/

編集後記|FrontJournal編集部より

配車計画は長らく、熟練の担当者が地図と経験を頼りに組み立ててきた業務でした。オプティマインドの「Loogia」は、そこに数学の言葉を持ち込み、走行実績という現場のデータで裏づける試みです。大学の研究室で扱われてきた配送計画問題が、そのまま日々の配送に接続されている点に、この会社の独自性があります。

注目したいのは、単なる配車の自動化ではなく、街全体の移動を設計する技術として広がりうることです。共同配送や人流への応用が進めば、対象は1社の配送から地域の交通全体へ広がります。物流の効率化は、荷主・運送会社・受け取る側のいずれにも関わる論点です。

名古屋大学の講義から生まれた計算技術が、物流の現場をどこまで変えていくのか。今後の展開に注目したいところです。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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