SAW&SPR-Tech有限会社は液滴の振動と接触面積で接触角を測る静岡大学発の企業

SAW&SPR-Tech有限会社(ソーアンドエスピーアールテック)

SAW&SPR-Tech「ポータブル接触角計」を研究|研究領域=液滴の振動と面積で・濡れ具合を測定/強み=手のひらに載る・持ち運べる計測器/将来性=実験室から・製造や施工の現場へ

企業紹介|SAW&SPR-Tech有限会社とは?

表面が水をはじくか、水がなじむかを、その場で数値にする小型の計測器「ポータブル接触角計」。SAW&SPR-Tech有限会社は、その社会実装を進める、静岡大学発の計測系ディープテック企業です。液滴の振動を使う「撥水性テスター」と、液滴の接触面積を使う「親水性テスター」の2種類を製造し、材料や部品の濡れ具合を確かめる装置として販売しています。

キーワード「ポータブル接触角計」

「ポータブル接触角計」は、固体の表面へ落とした液滴の広がり方から接触角を測る、持ち運べる大きさの計測器です。接触角は、値が大きいほど水をはじき、小さいほど水がなじむ指標で、おおむね90度を境に撥水性と親水性を分けます。実験室に据え付けた装置と違い、工場の製造ラインや施工の現場でも、その場で濡れ具合を数値にできます。

市場課題|撥水や親水の加工が広がる一方、形の崩れた液滴は測りにくい

現状の濡れ具合の検査の課題|現状は、真横から撮る方式で形の崩れた液滴が測りにくい|撥水と親水の加工が・広がり検査が増加/真球でない液滴は・測りにくい

撥水・親水加工の広がりで検査増

水をはじく撥水加工と、水をなじませる親水加工が広がり、効き目を数値で確かめる場面が増えました。加工の対象は自動車のガラスや太陽電池パネル、衣類まで広がり、測る場面も材料の開発中から出荷の前や施工の後へと増えました。測る対象が散らばるほど、試料を運ぶ手間が増えます。

真球でない液滴は測りにくい

真横から撮る従来の測定法のうち、液滴の幅と高さから角度を逆算する方式は、液滴が真球に近いことを前提とします。輪郭の傾きを直接読む方式でも、布のように粗い表面や曲面の部品では輪郭が乱れがちです。輪郭を鮮明に写すには光学系と安定した設置面が要るため、据え置いて使う構成が主流で、現場へ持ち出しにくくなります。

他にも、測る人ごとに読み取りが変わる判定のばらつき、据え付けた製品をそのまま測れない制約、水滴が転がり落ちる傾いた面での測りにくさ、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 接触角固体の表面に置いた液滴の縁で、液体の表面と固体の表面がなす角度を指す。値が大きいほど液滴は球に近づいてはじかれ、小さいほど広がってなじむ。濡れ具合を数値で比べるための共通の指標である。

SAW&SPR-Techの強み|「ポータブル接触角計」を開発

SAW&SPR-Techが「ポータブル接触角計」を開発|今後は、輪郭を読まずに測定が可能に|液滴の振動数から・接触角を算出/真上からの撮影で・接触面積を測定

振動数から接触角を求める

真横から撮る方式は、輪郭が鮮明に写ることを前提とするため、粗い表面や曲面では同じ試料でも値がぶれることがあります。

同社の「撥水性テスター」は、落とした液滴が着地の衝撃で揺れる現象を利用し、その振動数から接触角を求めます。同じ液体を使う場合、液滴の自由振動の振動数は体積と接触角で決まるため、体積を一定にすれば振動数から角度を逆算できます。装置はLEDの光を当てて振動数を読み取るので、輪郭を読み取る工程そのものが要りません。測定値のばらつきは、繰り返し測ったときの散らばりを表す標準偏差で0.5度以下とされています。輪郭の写り方に左右されないため、粗い表面や曲面でも同じ値を得やすくなります。

真上の撮影で接触面積を測定

液滴が楕円や不定形に広がる親水性の高い面では、断面の輪郭から角度を読み取ること自体が難しくなります。

同社の「親水性テスター」は、液滴を真上からデジタル顕微鏡で撮り、その接触面積から接触角を求める装置です。体積を一定にすれば、広がった面積が大きいほど接触角は小さくなり、この関係から角度を求められます。読み取るのは、広がった液滴の内接円と外接円をもとにした面積で、対象は断面の一か所ではなく接触面の全体で、測定値が平均化される点が特徴です。試料を切り出さずに済むため、サイドミラーや布のような製品も、そのままの形で測れます。

FrontJournalの解説
  • 自由振動外から力を加え続けなくても、物体がそれ自身の性質だけで繰り返す揺れを指す。液滴の形は接触角で決まるため、同じ液体を同じ量なら、揺れの速さが形の違いを映す。輪郭を読み取らずに角度を出せる理由である。

ポータブル接触角計の未来|実験室の測定を、製造や施工の現場へ広げる

ポータブル接触角計が変える未来|実験室の測定から製造や施工の現場へ|2種類の装置を・製品化/測れる対象が・製品全体へ拡大/幅広い産業への・普及を目指す

2種類の装置を製品化

同社はすでに、撥水性テスターと親水性テスターを製品として販売しています。親水性テスターの検出部は直径38ミリ・長さ150ミリ、重さはおよそ100グラムです。電源はAC100Vを使い、カメラと照明はUSBから電力を受け取ります。持ち運びを前提とした構成のため、試料ではなく装置のほうを測りたい場所へ運べます。

測れる対象が製品全体へ拡大

形の崩れた液滴でも測れるため、対象は平らな試験片から製品そのものへ広がります。同社が挙げるのは、ミラーやペットボトル、布、紙パックといった、従来の方式では測りにくかった製品です。試料を切り出す工程が要らないので、完成品も非破壊で確かめられます。工場に据え付けた設備や大きな部材の表面も、その場で数値にできます。

幅広い産業への普及を目指す

同社は、濡れ具合の評価を幅広い産業で使える状態にすることを目指しています。製品の資料では、自動車や航空機、太陽電池パネル、電子部品、繊維製品、塗料やインクなどを用途として挙げています。狙いは流体抵抗の低減着雪の防止、洗浄効果の確認、金型の離型といった工程の管理です。現場で同じ手順の測定が広がれば、材料の開発から出荷後の点検までを同じ数値でつなげられます。

会社概要|静岡大学の研究から生まれ、2種類の接触角計を製造・販売する

静岡大学発の研究成果ベンチャー

SAW&SPR-Tech有限会社は、2004年10月に設立された、静岡大学発の研究成果ベンチャーです。開発と販売の拠点を、静岡県浜松市の静岡大学イノベーション共同研究センターに置いています。登記上の本店は、神奈川県横浜市保土ケ谷区です。

設立したのは、静岡大学工学部の教授だった塩川祥子氏らで、研究成果を事業の種として会社の形にしました。経済産業省のデータベースには、弾性表面波(固体の表面を伝わる波)や表面プラズモンセンサ(光で表面の状態を調べる素子)を手がける同大学の近藤淳教授が研究者として載っています。社名にある「SAW」は弾性表面波、「SPR」は表面プラズモン共鳴の英語の略称です。同社は、これらを応用した計測機器の共同研究も手がけています。

国のデータベースに登録

同社は、経済産業省の「大学発ベンチャーデータベース」に研究成果ベンチャーとして登録されています。大学の研究成果をもとに設立された企業を、国がまとめた資料です。掲載された情報によると、2018年度の調査時点の従業員は2名です。技術の分類は、表面界面物性や計測工学などの分野に置かれています。

2種類の接触角計を製造・販売

同社は2009年から、「ポータブル撥水性テスター」と「ポータブル親水性テスター」の製造と販売を始めました。撥水性テスターは液滴の振動を、親水性テスターは液滴の接触面積を使い、どちらも接触角という同じ数値を出します。測りたい面の性質に合わせて、2つの方式を使い分けられる構成です。製品の情報は、大学の産学連携を紹介するサイトや、製造業向けのカタログサイトでも公開されています。

会社情報

会社名SAW&SPR-Tech有限会社(SAW&SPR-Tech Co. Ltd)
所在地神奈川県横浜市保土ケ谷区藤塚町13-43(登記上の本店)/静岡県浜松市 静岡大学イノベーション共同研究センター内(開発・販売の拠点)
設立2004年10月
代表取締役 塩川 祥子
資本金300万円
従業員2名(経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026・2018年度の調査時点)
事業ポータブル撥水性テスター(液滴振動式)、ポータブル親水性テスター(液滴接触面積測定方式)の製造・販売。親水性テスターは表示分解能0.1度、検出部φ38×150mm、質量約100g、測定の操作環境はJIS R 3257(基板ガラス表面のぬれ性試験方法)に準拠。参考価格は撥水性テスター80万円、親水性テスター45万円(経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026)
技術領域液滴の自由振動の振動数を用いた接触角の測定。液滴の接触面積から接触角を求める測定方式。表面界面物性、計測工学
連携静岡大学(研究成果ベンチャー/同大学イノベーション共同研究センターに開発・販売の拠点)

編集後記|FrontJournal編集部より

水をはじくか、なじませるか。日々の暮らしでは感覚で語られる性質が、産業の現場では角度という数値で管理されています。測る相手は、自動車のガラスから衣類まで広がりました。その数値を測る装置が実験室から出られなかったことが、検査の手間を生んできました。

注目したいのは、同社が液滴の形を読み取ることをやめた点です。揺れの速さ、あるいは真上から見た面積という別の手がかりに置き換えたことで、布や曲面というこれまで測りにくかった相手が測定の対象に入りました。装置が小さくなったのは、その結果でもあります。

手のひらの装置が、感覚で語られてきた濡れ具合を現場の数値に変えていくことを期待しています。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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