人型ロボットが工場で働く時代をつくる Figure AI(米国発)

【米国発|Figure AI社】人型ロボットが工場で働く時代をつくる

人と同じ形のロボットが、もう自動車工場で実際に働き始めています。

人の腕や脚と同じ形をした「人型(ヒューマノイド)ロボット」が、決められた1つの作業をくり返すだけでなく、自分で周りを見て判断しながら働く。そんな未来をいち早く現実にしようとしているのが、米国カリフォルニアのFigure AI(フィギュアAI)です。2022年の創業からわずか数年で、ドイツの自動車大手BMWの工場に導入され、評価額(その会社にどれだけの値段が付くかの目安)は約390億ドルまで上がりました。なぜここまで注目されるのか、その正体を紹介します。

人型ロボットとは|「専用機」から「何でもこなす」へ

人型ロボットの図。これまでの工場ロボットは1つの作業の専用機だったが、人型なら人のために作られた職場や道具をそのまま使い、いろいろな作業をこなせる

これまでの工場ロボットは「1つの作業の専用機」だった

自動車などの工場で長く活躍してきた産業用ロボットは、溶接や塗装といった決まった作業を、すばやく正確にくり返すのが得意です。ただ、置き場所も動きも固定されていて、別の作業に変えるには大がかりな組み替えが必要でした。ロボットは「決まった場所で、決まった動きをする機械」というのが、これまでの常識だったのです。

人型なら「人のための職場」をそのまま使える

人型ロボットの大きな利点は、人のために作られた場所や道具をそのまま使えることです。工場の通路、階段、棚、手で握る工具。これらはどれも、人の体に合わせて作られています。人と同じ形なら、設備を大きく作り替えなくても、人の代わりに作業へ入れます。1台でいろいろな作業をこなせる可能性があるため、いま世界中の企業が開発を競っています。

FrontJournalの解説
  • ヒューマノイド(人型ロボット)頭・胴体・腕・脚など、人と似た形をしたロボット。人のために作られた建物や道具をそのまま使える点が強み。

Figure AIとは|AI「Helix」で自分で考えて動く

Figure AIのAI「Helix」の仕組みの図。カメラで見る、人の言葉を理解する、その場で手や腕の動かし方を決めて動かす、という働きを1つの仕組みでまとめて担う

2022年に米国で創業、数年で世界の注目企業に

Figure AIは、起業家のブレット・アドコック氏が2022年に米国カリフォルニアで立ち上げた会社です。最初の機体「Figure 01」から改良を重ね、2025年10月には3世代目の「Figure 03」を公開しました。Figure 03は、米国の雑誌タイムが選ぶ「2025年の優れた発明」にも選ばれています。

強みは自社で開発したAI「Helix」

Figure AIの中心にあるのが、自社で開発したAI「Helix(ヘリックス)」です。Helixは「見る」「言葉を理解する」「体を動かす」という働きを、1つの仕組みでまとめて担います。カメラで周りを見て、人からの言葉の指示を受け取り、その場で手や腕の動かし方を自分で決めます。一度も見たことのない小物でも、つかんで運べるのが特徴です。

対話AIの会社と組み、その後は自前路線へ

もともとFigure AIは、対話AI「ChatGPT」で知られるOpenAI(オープンエーアイ)と組んでいました。しかし2025年2月にこの提携を解消し、ロボット専用のAIを自社で作る道を選びます。ロボットの体(ハードウェア)と頭脳(AI)を、ひとそろいで自社開発する。この戦略が、いまのFigure AIの強みになっています。

FrontJournalの解説
  • Helix(ヘリックス)Figure AIが自社開発したロボット用のAI。「見る・言葉を理解する・体を動かす」を1つの仕組みでこなす。
  • OpenAI(オープンエーアイ)対話AI「ChatGPT」を開発した米国の企業。Figure AIは当初提携していたが、2025年に解消して自社開発に切りかえた。

BMW工場で実働|実証から量産・巨額調達へ

人型ロボット「Figure」が働き出した図。本物の工場での実績が量産と期待を呼び込んだ。研究所のデモではなく実際の生産ラインで実証し、手作りの少数から専用の工場で量産する段階へ進み、名だたる投資家が出資して大きな期待が集まっている

BMWの工場で約11か月、実際のラインで働いた

Figure AIの代表的な導入先が、ドイツの自動車大手BMWの米国サウスカロライナ州の工場です。2世代目の「Figure 02」が約11か月にわたって実際の生産ラインで稼働し、約9万個の部品を扱いました。人気SUV「X3」の約3万台分の組み立てに関わったと報告されています。研究所のデモではなく、本物の工場で長く働いた実績が高く評価されています。

後継機を導入し、自社の量産工場も立ち上げ

BMWはその後、最新の「Figure 03」を導入し、こんどは大きな箱から必要な部品を選び出して運ぶ、物流の作業に使い始めています。Figure AI自身も、ロボットを大量に作るための専用工場「BotQ(ボットキュー)」を2025年3月に立ち上げました。BotQは1年あたり最大で約1万2,000台のロボットを作れる能力を持つとしています。少数を手作りする段階から、工場で量産する段階へ進もうとしているのです。

評価額は数年で大きく上がった

資金の集まり方も急です。2024年2月には約6億7,500万ドルを集め、このとき会社の評価額は約26億ドルでした。さらに2025年9月には10億ドルを超える追加調達を実施し、評価額は約390億ドルに達しています。これまでの出資には、名だたる企業や投資家が名を連ねてきました。2024年の調達には、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏や、半導体大手のエヌビディアも加わっています。多くの大企業が「人型ロボットは次の大きな市場になる」と見ている表れです。

FrontJournalの解説
  • 評価額投資家が出資するときに付ける「会社全体の値段」の目安。事業への期待が高いほど大きくなる。
  • BotQ(ボットキュー)Figure AIが2025年3月に立ち上げた、人型ロボットの量産用工場。1年あたり最大約1万2,000台を作れるとしている。

まとめ:人型ロボットは「実験」から「現場」へ

これまで人型ロボットは、研究所のデモ映像で見るものという印象が強くありました。Figure AIの歩みは、その印象を「実際の工場で働く存在」へと変えつつあります。人と同じ形のロボットが、人のための職場でそのまま働く。その動きは、自動車工場から物流倉庫へ、そして将来は家庭へと広がろうとしています。日本もロボットや精密な部品づくりに強い国です。人型ロボットが当たり前になる時代に、日本の技術が活躍する場面も増えていくはずです。

※ 本記事は各社の公式発表・主要報道をもとに、FrontJournal編集部が再構成したものです。数値は各社・各媒体の公表値で、約は概数を表します。
主な出典:Figure 公式(Series C/Figure 03/BotQ)/The Robot Report/BMW 関連報道/TIME。

この記事の作者

FrontJournal 編集部

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