欧州の宇宙輸送を目指す小型ロケットを開発する Isar Aerospace(ドイツ発)

欧州の宇宙輸送を目指す「小型ロケット」を開発【Isar Aerospace|ドイツ発】

人工衛星の需要が世界で拡大する一方、打ち上げの機会は限定的です。打ち上げ回数は国や地域で大きな差があり、欧州は独自の打ち上げ手段の確保が課題になっています。この課題に挑むのが、ドイツのIsar Aerospace(イザール・エアロスペース)です。2018年の創業以来、小型ロケット「Spectrum(スペクトラム)」を開発しています。同社は2025年3月に初飛行を実施し、2026年6月に約2億7,000万ユーロ(約430億円)を調達しました。

小型ロケット打ち上げの課題

Isar Aerospaceの紹介と、小型衛星の打ち上げ枠が不足し、欧州域内の打ち上げ手段が課題であることを示す図

衛星の打ち上げ枠が不足

小型衛星の打ち上げ需要が拡大し、打ち上げ枠の確保が難しくなっています。通信や地球観測の分野で衛星が増え、相乗りの便では希望の軌道や時期を選びにくい状況です。枠を待つ間に衛星の設計が古くなれば、事業の計画そのものが遅れます。

欧州域内の打ち上げ手段が課題

欧州域内の打ち上げ手段は限られており、域外の企業に依存しやすい状況です。2025年の打ち上げ回数は、米国の年190回超に対して欧州は10回に届きませんでした。必要な時期に主体的に衛星を打ち上げにくければ、通信や安全保障の計画が左右されます。

FrontJournalの解説
  • 相乗り複数の衛星が1機のロケットに同乗して打ち上げられる方式。費用を抑えられる一方、軌道や時期は主となる衛星に合わせる必要がある。

Isar Aerospaceが小型ロケットを開発

Isar Aerospaceが小型ロケットを開発することを示す図。設計から製造までを自社で手がけ、1トン級の機体が2025年3月に初飛行した

課題解決に挑むIsar Aerospace

Isar Aerospaceは、小型衛星を運ぶロケット「Spectrum」を開発しています。2018年にミュンヘン工科大学の学生だった3人が創業し、本社はミュンヘン近郊のオットーブルンです。

設計から製造まで自社一貫

同社は設計から製造までを自社で手がけ、量産に必要なコストを抑えられるとしています。ロケットは多数の企業から部品を調達して組み立てる方式が主流です。同社は主要な部品を内製し、ミュンヘン近郊パルスドルフの約4万平方メートルの工場で製造します。工程の集約による利点は、機体の改良を次の号機へ反映しやすくなる点です。

1トン級の機体が初飛行

「Spectrum」は最大約1トンの小型衛星を低軌道LEO)へ運ぶ2段式ロケットで、全長は約28メートルです。2025年3月30日の初飛行で、機体は離陸しました。飛行は約30秒で終了し、機体の落下先は海上です。同社は飛行と分離のデータを取得したとしています。

FrontJournalの解説
  • 低軌道(LEO)高度およそ2,000キロメートルまでの地球周回軌道。通信や地球観測の衛星が多く配置される領域である。
  • 2段式ロケット燃料を使い切った段を切り離しながら加速する構造。機体を軽くしながら速度を上げられるため、軌道投入に広く用いられる。

小型ロケットの未来

小型ロケットの未来を示す図。顧客の衛星輸送を計画し、年40機の量産体制を目指し、約430億円を調達した

顧客の衛星輸送を計画

欧州の企業が域内の発射場から衛星を打ち上げられる体制が近づいています。同社は2号機「Onward and Upward」を、ノルウェーのアンドーヤ宇宙基地から打ち上げる計画です。小型衛星5基と実験装置1件を載せ、太陽同期軌道への投入を目指します。同社は打ち上げ時期を2026年1月の計画から見直し、直近の予定は同年8月以降です。

年40機の量産体制を目指す

同社はパルスドルフの工場で、年間最大40機の生産体制を目指しています。すでに製造の工程にあるのは3号機から7号機までです。カナダのノバスコシア州でも、発射場の運営会社と専用の打ち上げ施設を整備する契約を結びました。同社はこの施設からの初の軌道投入を、2028年に想定しています。

約430億円を調達

同社は2026年6月、約2億7,000万ユーロ(約430億円)の調達を発表しました。シリーズDにはNATOイノベーションファンドやMolten Venturesなどが参加しています。累計の調達額は約8億7,000万ユーロ(約1,390億円)です。資金は量産と海外への展開に充てられ、欧州が域内で宇宙へ到達する体制づくりにつながります。

FrontJournalの解説
  • 太陽同期軌道衛星が常に同じ地方時に同じ地点の上空を通る軌道。地球観測の衛星が、条件をそろえて撮影するために利用する。
  • シリーズD創業から数えて4回目にあたる大型の資金調達。事業の拡大や量産の段階で実施されることが多い。

小型ロケットの課題と将来性

小型衛星の需要が拡大するなかで、欧州は自らの打ち上げ手段の確保を進めています。Isar Aerospaceが進めるのは、設計から製造までの自社集約量産の体制づくりです。2号機の飛行と工場の立ち上げが、その体制を確かめる次の段階になります。日本でも、基幹ロケットと民間のロケットの開発が並行中です。FrontJournal編集部は、小型ロケットの選択肢が広がることに期待しています。

※ 本記事は各社の公式発表・主要報道をもとに、FrontJournal編集部が再構成したものです。数値は各社・各媒体が公表しています。ユーロの円換算は1ユーロ=約160円の概算です。
主な出典:Isar Aerospace 公式(プレスリリース/ミッションアップデート)、Andøya Space、SpaceNews。

この記事の作者

FrontJournal編集部

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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