テイクアウト容器を海藻で作る Notpla

【インペリアル・カレッジ|Notpla】テイクアウト容器を海藻で作る

マラソンの給水で、ランナーが海藻のカプセルをひと口でぐっと飲み込む。テイクアウトの紙容器は、使い終わったら家庭の堆肥でそのまま分解する。そんな「海藻で包む暮らし」を本気で広げようとしているのが、英国インペリアル・カレッジ・ロンドン発のスタートアップ「Notpla(ノットプラ)」です。世界の使い捨てプラスチック生産は年間約4億3,000万トン、その3割以上が包装。この巨大な課題に「海藻」で挑み、約38億円を調達したNotplaが、いま欧州で何を変えはじめているかを紹介します。

使い捨て包装は、年4億3,000万トンのプラごみを生んでいる

世界のプラごみは年4.3億トンも生まれている図。1人あたり54kg分を作り、3割以上が使い捨て包装。海と体に長く残る化学物質PFASも問題に

世界のプラ生産の3割超が、包装に使われている

テイクアウトのお弁当容器、ケチャップやしょうゆの小袋、ペットボトル、お菓子の袋、ストロー。気がつけば、暮らしのまわりは使い捨てプラスチックだらけです。OECD(経済協力開発機構)の調べでは、世界のプラスチック生産量は2024年で約4億3,000万トン。地球上の1人あたりに換算すると、年間54kgを生み出している計算になります。そのうち3割以上が包装、つまり「使ったらすぐ捨てる」用途で、日々あちこちで確実に増え続けています。

マイクロプラと「永遠の化学物質」PFASが残り続ける

プラスチックは便利ですが、自然のなかでは数百年たっても完全には分解されません。砕けて小さくなったマイクロプラスチック(5mm以下の細片)は、海面だけで約15兆個漂っているといわれます。地球の人口の約1,800倍。魚を介して、私たちの食卓にも戻ってきます。

「紙だから安心」と思われがちな紙コップや紙容器にも、油や水を漏らさないために内側にPFAS(有機フッ素化合物)が塗られているものが少なくありません。リサイクルにも回りにくく、しかもPFASは「永遠の化学物質」と呼ばれるほど、人体や環境に長く残ります。

FrontJournalの解説
  • マイクロプラスチック5mm以下に砕けた小さなプラスチック片。海や食卓にも入り込む。
  • PFAS(有機フッ素化合物)水や油をはじく性質をもつ人工化学物質。分解されにくく「永遠の化学物質」と呼ばれる。

Notplaはテイクアウト容器とカプセルを作っている会社

Notplaが作る2つの製品の図。紙容器の内側コーティングと、海藻の膜で水を包んだ食べられるカプセルOoho

主力は「紙容器の内側コーティング」と「食べられるカプセル Ooho」

この使い捨てプラを別の素材で置きかえようと、世界中で素材スタートアップが動いています。なかでも「海藻」という意外な原料で実用化に踏み込んでいるのが、英国インペリアル・カレッジ・ロンドン発のNotpla(ノットプラ)。中心になる製品は2つあります。

1つめは、テイクアウト用の紙容器の内側コーティング。お弁当箱の内側にうすく塗る素材で、油やソースが漏れないのにPFAS(有機フッ素化合物)を使いません。食べ終わったら、紙容器ごと家庭の堆肥(コンポスト)に入れれば、土にもどります。

2つめは、海藻の膜で水やスポーツドリンクを包んだ「Ooho(オーホー)」というカプセル。文字どおり膜ごと噛んで飲み込めるので、マラソンやイベントの給水で、ペットボトルの代わりに配られはじめています。ほかにも、サラダの調味料やケチャップを包む食品フィルム、家庭の堆肥でくずれる使い捨てカトラリーなど、暮らしのまわりのプラを少しずつ置きかえようとしています。

ロンドンの大学院生2人が、卒業制作から立ち上げた

Notplaを立ち上げたのは、英インペリアル・カレッジ・ロンドンの大学院デザイン学科で学んでいたピエール・パスリエ氏ロドリゴ・ガルシア氏です。きっかけは、卒業制作で発表したOoho。そこから「海藻でプラを置きかえる」というアイディアを事業化し、2014年に大学発のスピンアウト(独立した会社)として創業しました。

原料に使うのは、世界の海で育つ褐藻類(昆布やワカメの仲間)。陸の作物とちがって肥料も真水も農地もいらず、育つあいだにCO₂を吸ってくれるので、つくる工程で環境への負担も小さくなります。

FrontJournalの解説
  • スピンアウト大学の研究成果をもとに独立して作られた会社。
  • 褐藻類コンブ・ワカメなど、褐色の色素を持つ海藻のグループ。
  • コンポスト生ごみや植物を微生物の働きで分解して作る堆肥。

約38億円を調達、欧州8か国と母校インペリアルへ

Notplaの海藻包装が世界に広がっている図。2019マラソンで脚光、約38億円調達と環境賞優勝、母校インペリアル全面導入

2019年ロンドンマラソンで世界に知られた

Notplaの名前を一気に世界へ押し上げたのは、2019年4月のロンドンマラソンでした。卒業制作だったOohoが給水ポイントで約3万6,000個配られたのです。中身は英国でおなじみのスポーツドリンクLucozade Sport。ランナーは海藻の膜ごと噛んで飲み込めるので、走りながらでもごみが出ません。ロンドンマラソンは毎年、大量のペットボトルが配られる大規模イベント。Oohoはその常識をひっくり返す試みとして、世界中のメディアに取り上げられました。

約38億円を調達し、Earthshot Prizeも受賞

2022年、英ウィリアム皇太子が主催するEarthshot Prize(環境問題に取り組む企業に贈られる賞)で、「ごみのない世界」部門の優勝企業に選ばれます。2024年には約38億円(£2,000万)のシリーズA+ラウンド(成長初期の資金調達)を実施。フィンランドの林業系ファンドが中心になり、香港・シンガポールの投資家も加わりました。

母校インペリアル・カレッジへ全面導入

製品は英大手フードデリバリーJust Eat Takeawayなどに採用され、欧州8か国に広がっています。2025年夏には、母校インペリアル・カレッジ・ロンドンの学内カフェ・売店に全面導入。学内だけで年間45万個以上の使い捨てプラ容器が置きかわり、削減量はプラ約1.2トン、CO₂約13トンに達する見込みです。

「2年で年1億個の使い捨てプラを置きかえる」。Notplaはそんな目標を掲げます。ロンドンの大学院生2人が学生時代に思いついた「海藻で包む」というアイディアが、欧州の街の食事を、少しずつ変えはじめています。

FrontJournalの解説
  • Earthshot Prize英ウィリアム皇太子が2020年に始めた、環境問題の解決に取り組む企業・団体に贈られる賞。
  • シリーズA+スタートアップが成長段階で受ける、比較的初期の出資ラウンド。

まとめ:これからのパッケージ

これまで“便利だけれど捨てるもの”だった包装が、Notplaの登場で“使い終わったら自然にもどるもの”へ近づいています。デザイン学科の学生が作った食べられるカプセルから始まり、いまや欧州の大手フードデリバリーや母校の学食まで広がっているのが特徴です。日本も海藻・発酵・包装は伝統的に強い分野。Notplaの広がりを見ていると、日本の海藻文化や発酵技術が世界の「脱使い捨て」市場で活躍する未来も、決して遠い話ではないと感じます。

※ 本記事は各社の公式発表・主要報道をもとに、FrontJournal編集部が再構成したものです。数値は各社・各媒体の公表値です。
主な出典:Notpla公式/Imperial College London ニュース/Just Eat Takeaway ニュースルーム/Earthshot Prize(2022〜2026年)。

この記事の作者

FrontJournal 編集部

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