空気と電力から微生物タンパク質を生む Solar Foods(フィンランド発)

空気と電力から生む「微生物タンパク質」を開発【Solar Foods|フィンランド発】

世界の人口が増えるなかで、タンパク質の需要が拡大し、農地に頼らない供給方法が各国の関心を集めています。この課題に挑むのが、フィンランドのソーラーフーズ(Solar Foods)です。空気中の二酸化炭素と再生可能エネルギーの電気を原料に、微生物の発酵でタンパク質「Solein」(ソレイン)を生産します。ヴァンタの工場は2025年10月に想定の生産量へ到達し、シンガポールでは販売も始まりました。2026年6月には、次の工場に向けて総額約7,780万ユーロ(約134億円)の公的支援が決まっています。

タンパク質供給の課題

Solar Foodsの紹介と、タンパク質の需要が拡大する一方、農地の拡大が頭打ちに近づいていることを示す図

タンパク質需要が拡大

世界のタンパク質の需要は、人口の増加とともに拡大しています。農林水産省の資料によると、世界人口は2050年に約97億人となり、食料の需要は約1.7倍に増えると見込まれています。需要の伸びに供給が遅れると、価格の上昇や調達の不安定さにつながります。

農地の拡大が頭打ち

需要に合わせて農地を広げる方法は、拡大の余地が少なくなっています。畜産や大豆の生産には広い土地と大量の水が必要で、農地の拡大は森林の減少をともないます。この状態が続けば、天候の変動や国際情勢に左右されやすい供給構造が残ります。

FrontJournalの解説
  • タンパク質体を構成する主要な栄養素の一つ。肉・魚・卵・乳製品・大豆などから摂取するのが一般的で、供給源をどこに求めるかが食料政策の論点になっている。

Solar Foodsが微生物タンパク質を研究

微生物タンパク質の研究を示す図。再生可能エネルギーの電気で水を分解して水素を得て、発酵槽の細菌に与え、屋内で通年の生産を行う

課題解決に挑むSolar Foods

Solar Foodsは、2017年にフィンランドで創業した食品技術の企業です。VTT(国立技術研究センター)とLUT大学の研究から生まれ、ヴァンタを拠点に開発を進めています。

電気分解と発酵で生産

同社は、空気中の二酸化炭素と再生可能エネルギーの電気からタンパク質を生産します。まず電気で水を分解して水素を取り出し、その水素と二酸化炭素、少量のミネラルを発酵槽の水素酸化細菌に与えます。細菌は水素をエネルギー源として増殖し、その菌体(細菌の体)がタンパク質の原料です。最後に乾燥させると、黄色みを帯びた粉末のSoleinになります。

屋内生産で通年供給

この方法は、食料の生産を農地の広さから切り離します。発酵槽の中で条件を一定に保てるため、砂漠でも寒冷地でも生産が可能です。天候や季節の影響を受けにくく、年間を通じた計画的な供給が可能になります。同社によると、Soleinは乾燥重量の約80%がタンパク質で、鉄やビタミンB12、9種類の必須アミノ酸を含みます。

FrontJournalの解説
  • 微生物タンパク質細菌や酵母などの微生物を培養し、その菌体そのものを食用のタンパク質として使うもの。植物でも動物でもない第三の供給源として研究が進む。
  • 水素酸化細菌水素を酸化して得たエネルギーで、二酸化炭素から菌体を合成する細菌。土壌や水中に広く存在する。
  • 発酵槽微生物を培養するための大型のタンク。温度・栄養・気体の量を一定に保ち、屋内で計画的に増殖させる。糖ではなく気体を栄養源とする点が、一般的な発酵と異なる。
  • 必須アミノ酸体内で十分に合成できないため、食事から摂取する必要があるアミノ酸。人では9種類あり、これらがそろうと栄養価の高いタンパク質として扱われる。

微生物タンパク質の未来

微生物タンパク質の未来を示す図。身近な食品への配合が可能になり、年1万トン超の生産を目指し、約134億円の公的支援を調達した

身近な食品への配合が可能に

微生物タンパク質は、日常の食品の原料として使用できます。Soleinは味やにおいが穏やかで、パンや麺、代替肉、飲みものなど幅広い食品に配合できます。シンガポールでは2022年9月に新食品(ノベルフード)として承認されました。現地ではチョコレートバーやアイスクリームに配合され、日本でも既存の原料を置き換える形で広がる可能性があります。

年1万トン超の生産を目指す

同社は、生産の規模を段階的に引き上げることを目指しています。ヴァンタの「Factory 01」は2024年4月に稼働し、2025年10月に設計能力である年160トンへ到達しました。2026年には、この工場の設計能力を年230トンへ引き上げる計画です。次の「Factory 02」はラッペーンランタに建設し、2028年に年12,800トンの生産を目指します。

約134億円の公的支援を調達

同社は2026年6月、ビジネス・フィンランドから総額約7,780万ユーロ(約134億円)の支援を発表しました。内訳は補助金が約3,960万ユーロ、研究開発向けの融資が約3,810万ユーロです。この資金はEUの重要プロジェクト(IPCEI)の枠組みで、「Factory 02」の建設に充てられます。量産の体制が整えば、微生物タンパク質は試験的な食材から日常の原料へ近づきます

FrontJournalの解説
  • ノベルフードこれまで食習慣のなかった新しい食品のこと。EUやシンガポールでは、販売の前に安全性の審査を受ける制度が定められている。
  • ビジネス・フィンランドフィンランド政府が設ける、研究開発と輸出を支援する公的機関。補助金や融資を通じて、企業による技術開発を後押しする。
  • IPCEI欧州共通の利益に適合する重要プロジェクトの略称。EUが戦略分野と定めた領域で、加盟国が例外的に大型の公的支援を出せる枠組み。

まとめ

Solar Foodsは、空気中の二酸化炭素と電気からタンパク質を生産する方法を実用の段階へ進めました。ヴァンタの工場は想定の生産量へ到達し、シンガポールでは商品としての販売も始まっています。一方で、EUと米国の審査は進行中であり、価格と生産量の面では規模の拡大がこれからの段階です。FrontJournal編集部は、この生産方法が日本の食料調達の選択肢を広げることに期待しています。空気と電気から生まれるタンパク質が、日常の食卓にどこまで浸透するかが今後の焦点です。

※ 本記事は各社の公式発表・主要報道をもとに、FrontJournal編集部が再構成したものです。数値は各社・各媒体の公表値です。ユーロの円換算は、あわせて公表されたドル相当額(約8,900万ドル)をもとに1ドル=約150円で概算しています。
主な出典:Solar Foods 公式(Solein/Factory 01/ニュースリリース)、農林水産省「世界の食料需給の動向」。

この記事の作者

FrontJournal編集部

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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