空気と電気から食べられるタンパク質をつくる Solar Foods(フィンランド発)

【フィンランド発|Solar Foods社】空気と電気から“食べられるタンパク質”をつくる

世界の人口が増えるなか、天候や土地に左右されにくい新しいタンパク質のつくり方が求められています。この課題に、フィンランドのSolar Foods(ソーラーフーズ)は「空気からつくる」という答えで挑んでいます。畑も家畜も使わず、空気中の二酸化炭素と再生可能エネルギーの電気を使い、微生物の力でSolein(ソレイン)というタンパク質をつくります。2024年には世界初の商業工場「Factory 01」がフィンランドのヴァンタで稼働し、2025年末には目標だった年産約160トンに到達しました。すでにシンガポールで食品としての販売が認められ、米国でも事業を始めています。

Solar Foodsは「空気からの食品」をどう始めたのか

Solar Foodsの全体像の図。フィンランドの研究者が2017年に創業し、空気中のCO2・再生可能エネルギーの電気・微生物からタンパク質Soleinをつくる

創業┃フィンランドの研究者が2017年に立ち上げた

Solar Foodsは、フィンランドの研究者らが2017年に立ち上げた会社です。CEOのパシ・ヴァイニッカ氏をはじめ、エネルギーや生物工学を専門とする研究者が集まって創業しました。もともとは「再生可能エネルギーの電気を、どうすれば食べものに変えられるか」という研究から生まれた発想です。畑での栽培や家畜の飼育に頼らず、工場のなかでタンパク質をつくることを目指してきました。

Soleinとは┃微生物がつくる新しいタンパク質

同社の主力製品が、微生物からつくるタンパク質「Solein」です。見た目は少し黄色みのある粉で、乾燥重量のうち約65〜70%がタンパク質です。味やにおいが強くないため、パンや麺、代替肉、飲みものなど、さまざまな食品に混ぜて使えます。植物でも動物でもなく、微生物の体そのものを使う「単細胞タンパク質」の一種で、新しいタンパク源として注目されています。

FrontJournalの解説
  • Solein(ソレイン)Solar Foodsが微生物を発酵させてつくるタンパク質の粉。植物や動物ではなく、微生物由来の食品原料。
  • 単細胞タンパク質微生物(細菌や酵母など)の体そのものを利用したタンパク質。少ない土地と水でつくれる可能性がある。

水素をエサにする細菌が、CO2を食べものに変える

Soleinの製造プロセスの図。電気で水を水素と酸素に分け、水素・CO2・ミネラルを細菌に与えて発酵させ、乾燥させて粉状のタンパク質にする

つくり方┃電気で水を分け、水素を細菌に与える

Soleinのつくり方は、農業とはまったく違います。まず、再生可能エネルギーの電気で水を分解し、水素を取り出します。次に、この水素と、空気中から取り込んだ二酸化炭素、そして少量のミネラルを、大きなタンク(発酵槽)のなかの細菌(水素酸化細菌)に与えます。細菌は水素をエネルギー源にして増えていき、その体そのものがタンパク質になります。最後に水分を飛ばして乾燥させると、粉状のSoleinができあがります。

効率┃畑も家畜も天候も要らない

この方法の大きな利点は、農業のように広い土地や大量の水、晴れや雨といった天候に左右されない点です。工場のなかで条件を一定に保てるため、砂漠でも寒冷地でも、都市の近くでも生産できます。牛や大豆を育てるのに比べて、必要な土地や水を大きく減らせる可能性があると同社は説明しています。食料の生産を「農地の広さ」から切り離す、新しい考え方だといえます。

FrontJournalの解説
  • 水素酸化細菌水素をエネルギー源にして増える細菌。二酸化炭素を取り込み、自らの体をタンパク質としてつくる。
  • 発酵槽(バイオリアクター)微生物を育てるための大きなタンク。温度や栄養を一定に保ち、安定して増やすための設備。

Soleinは工場でつくられ、食卓に届き始めた

Soleinの実用化の現在地の図。2024年にフィンランドで世界初の商業工場Factory 01が稼働し、シンガポールで承認、米国で事業開始、EUでも承認を目指している

世界初の工場┃ヴァンタで2024年に量産を開始

Solar Foodsは2024年4月、フィンランドの首都ヘルシンキに近いヴァンタで、世界初となる商業規模の工場「Factory 01」を稼働させました。ここでは年間で最大約160トンのSoleinをつくることができ、これは約500万〜800万食分にあたります。工場は2025年末までに目標としていた生産量に到達し、2026年にはさらに年産約230トンへ増やす計画も発表しています。

承認の広がり┃シンガポール・米国、そしてEUへ

食品として売るには、国ごとの安全審査を通る必要があります。Soleinは2022年にシンガポールで新食品(ノベルフード)として初めて承認され、実際の商品に使われ始めました。米国では2024年に自社で安全性を確認する手続き(GRAS)を済ませて事業を開始し、2025年にはさらに正式な届け出を当局へ提出しています。加えて、EUでも2026年中の承認を目指して手続きを進めています。ひとつの国から始まった許可が、少しずつ世界へ広がっています。

FrontJournalの解説
  • ノベルフード(新食品)これまで一般的に食べられてこなかった新しい食品。販売の前に、国や地域ごとの安全審査を受ける必要がある。
  • GRAS(グラス)米国で「一般に安全と認められる」という食品の考え方。企業が科学的根拠をそろえて確認し、当局へ届け出る仕組み。

まとめ:日本の食料にも「空気からの食品」が近づく

Solar Foodsの挑戦は、遠い国の実験室の話ではありません。日本は食料の多くを輸入に頼り、天候や国際情勢の影響を受けやすい立場にあります。土地や天候に左右されずにタンパク質をつくれる技術が広がれば、食料をどこで・どうつくるかという選択肢が増えます。フィンランドの一社が示した「空気からの食品」という発想は、これからの日本の食を考えるうえでも、ひとつのヒントになりそうです。

※ 本記事は各社の公式発表・主要報道をもとに、FrontJournal編集部が再構成したものです。数値は各社・各媒体の公表値で、約は概数を表します。
主な出典:Solar Foods公式/Business Finland/Green Queen/vegconomist/FoodNavigator。

この記事の作者

FrontJournal 編集部

ディープテック(科学技術にもとづく事業)を、ビジネスパーソンの視点でわかりやすく紹介するメディアです。