軌道上でAI計算を担う宇宙データセンターを開発する Starcloud(米国発)

軌道上でAI計算を担う「宇宙データセンター」を開発【Starcloud|米国発】

生成AIの普及にともない、データセンター(サーバを集約して運用する施設)の電力と冷却水の需要が世界で拡大しています。この課題を地球の軌道上で解こうとしているのが、米国ワシントン州のStarcloud(スタークラウド)です。2025年11月には小型衛星「Starcloud-1」を打ち上げました。米エヌビディア(NVIDIA)の高性能GPU「H100」を積み、軌道上で稼働させています。同社の発表によると、2026年3月には約1億7千万ドル(約255億円)を調達しました。評価額は約11億ドル(約1,650億円)に達しています。

データセンターの課題

従来のデータセンターの課題の図。AI需要で電力が逼迫し、冷却水と用地の確保も課題になっている

AI需要で電力が逼迫

AIの普及で電力需要が急増し、データセンターの電力確保が難しくなっています。米国では新しいデータセンターの建設が相次ぎ、地域の送電網の増強が追いつきにくい地区も出てきました。電力を確保できる用地が限られ、AIサービスの拡大が遅れる可能性があります。

冷却水と用地の確保が課題

サーバを冷やす水と、施設を建てる広い用地の確保も課題になっています。乾燥した地域では冷却水を安定して得にくく、地元との調整にも時間がかかります。立地の選択肢が狭まり、需要が伸びても新設のペースを上げにくい状況が続きます。

FrontJournalの解説
  • データセンターサーバや通信機器をまとめて置き、24時間動かし続ける施設。AIの学習や推論の計算はここで行われる。
  • 送電網発電所から電気を運ぶ設備の全体。増強には用地の取得や工事が必要で、完成までに年単位の期間がかかる。

Starcloudが宇宙データセンターを開発

Starcloudが宇宙データセンターを開発する図。軌道の太陽光で発電量を確保し、サーバの熱を宇宙へ放射する

2024年創業の米国企業

Starcloudは、データセンターを地球の軌道上に置く構想を進める2024年創業の企業です。本社は米国ワシントン州レドモンドにあり、宇宙で動く計算基盤の設計と実証に取り組んでいます。

軌道の太陽光で発電量を確保

太陽同期軌道では日照の時間が長く、太陽電池の発電量を地上より高めやすくなります。大気や地球の影にさえぎられる時間が短く、同じ面積でより多くの電力を得られるのが特徴です。送電網の増強や用地の取得にかかる時間を、地上より抑えやすくなります。電力確保の制約から離れた場所で、AIの計算を回せる可能性があります。

サーバの熱を宇宙へ放射

宇宙空間には空気がなく、サーバの熱は放熱板から赤外線として宇宙へ放射します。水冷式の地上データセンターに比べ、冷却水の使用を抑えられるのが利点です。水源の量で立地を選ぶ、という制約も小さくなります。電力・冷却・用地という地上の制約を、別の条件に置き換える発想です。

FrontJournalの解説
  • 太陽同期軌道人工衛星が地球のまわりを回る道すじのうち、太陽との位置関係が一定に保たれるもの。昼と夜の境目の上を回れば、日照がほぼ途切れない。
  • 放熱板機器の熱を外へ逃がすための板状の部品。宇宙では空気がないため、熱は赤外線として放射で捨てる。

宇宙データセンターの未来

宇宙データセンターの未来の図。宇宙でのAI処理が可能になり、商用の常時稼働を目指し、約255億円の資金を調達した

宇宙でのAI処理が可能に

Starcloudは2025年11月、小型衛星「Starcloud-1」を打ち上げました。重さは約60kgで、エヌビディアの高性能GPU「H100」を1枚積んでいます。2025年12月には、米グーグルが公開する言語モデル「Gemma(ジェンマ)」を軌道上で動かしました。さらに小型モデル「nanoGPT」の学習にも成功し、軌道上での推論と学習を実証しました。

商用の常時稼働を目指す

次の衛星「Starcloud-2」は、顧客の処理を軌道上で請け負う同社初の機体です。エヌビディアの次世代GPU「Blackwell(ブラックウェル)」と、米アマゾンのAWSのサーバ機材を積みます。打ち上げはSpaceXのファルコン9で2027年1月を予定します。早期の利用者として、AI向けクラウド企業Crusoe(クルーソー)が挙がっています。

約255億円の資金を調達

2026年3月、Starcloudは約1億7千万ドル(約255億円)のシリーズA調達を発表しました。投資会社ベンチマークとEQTベンチャーズが主導し、評価額は約11億ドル(約1,650億円)です。Y Combinatorのデモデイから約17か月で、評価額10億ドル(約1,500億円)を超えました。同社はこの資金で次世代機の設計と製造拠点の拡充を進め、商用の運用に向けた開発を続けます。

FrontJournalの解説
  • GPU画像処理やAI計算に使う高性能なプロセッサ。AIの学習や推論の速さを大きく左右する。
  • Blackwell(ブラックウェル)エヌビディアが2024年に発表した次世代のGPU。H100より高い計算能力を目指す。
  • Y Combinator(ワイ・コンビネーター)米シリコンバレーの著名なスタートアップ育成プログラム。宿泊仲介のAirbnbや決済のStripeなどを輩出した。
  • シリーズAスタートアップが事業を本格的に広げる初期に受ける、大型の資金調達の段階。数十億〜数百億円規模を集めることが多い。

宇宙データセンターの課題と将来性

Starcloudは、宇宙データセンターの実現可能性を実証している段階です。軌道上の太陽光と真空を使い、地上の電力・冷却・用地の制約から離れた計算基盤を目指しています。初号機ではAIの稼働と学習の両方に成功し、構想が机上のものではないことを示しました。日本でもAI向けの電力と用地の確保は、これから大きなテーマになります。FrontJournal編集部は、インフラの設計に軌道上という選択肢が加わることに期待しています。

※ 本記事は各社の公式発表・主要報道をもとに、FrontJournal編集部が再構成したものです。数値は各社・各媒体の公表値で、約は概数を表します。
主な出典:Starcloud公式/NVIDIA公式ブログ/TechCrunch/CNBC/Data Center Dynamics/SpaceNews/BusinessWire/Y Combinator。

この記事の作者

FrontJournal編集部

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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