建設の脱炭素を進める低炭素セメントを研究する Terra CO2(アメリカ)

建設の脱炭素を進める「低炭素セメント」を研究【Terra CO2|米国発】

建設に欠かせないセメントは、製造時に大量のCO2を排出するため、世界で削減が求められています。

この課題に取り組むのが、米コロラド州のTerra CO2(テラCO2)です。同社は石灰石の代わりに、花崗岩など各地にある「ケイ酸塩岩(けいさんえんがん)」を使います。この原料を用いる技術「OPUS(オーパス)」で、低炭素セメントの材料を製造しています。

2025年にはシリーズBの追加調達で約1億2,450万ドル(約187億円を集め、北米で量産体制の整備を進めています。

セメントの課題

従来のセメントの課題の図。石灰石と加熱用の燃料の両方からCO2が発生し、フライアッシュの供給が減っている

セメント製造が排出の約8%

セメントの製造は、世界のCO2排出の約8%を占めるとされ、削減の効果が大きい分野です。セメントは砂利や水と混ぜてコンクリートになり、道路や橋の土台を形づくる基礎的な材料で、使用量が多いためです。建設需要は新興国を中心に拡大する見込みで、排出量の削減は世界共通の課題になっています。

石灰石と燃料からCO2が発生

広く使われる「ポルトランドセメント」は、主原料の石灰石を焼く工程でCO2が発生します。石灰石は焼くと重さの約44%がCO2になり、1,400度以上へ加熱するための燃料からもCO2が発生します。原料と燃料の両方が排出源のため、燃料の転換だけでは削減しにくい構造です。

フライアッシュの供給が減少

排出を抑える手段として使われてきた混合材は、供給量が減りつつあります。代表的なフライアッシュ(石炭を燃やした際の灰)は石炭火力発電所の副産物で、発電所の閉鎖が進み入手しにくくなりました。新たな供給源の確保が、セメントの使用量を抑える鍵になります。

FrontJournalの解説
  • ポルトランドセメント世界で最も広く使われる一般的なセメント。石灰石を焼いて製造するため、製造時にCO2が多く発生する。
  • フライアッシュ石炭火力発電所で石炭を燃やした際に出る灰。セメントの一部を置き換える混合材として長く使われてきた。

Terra CO2が「低炭素セメント」を研究

Terra CO2が低炭素セメントを研究する図。ケイ酸塩岩を原料に活用し、既存設備のままセメントを置き換える

課題解決に挑むTerra CO2

Terra CO2は、2016年に設立された米コロラド州ゴールデンの企業です。ケイ酸塩岩を原料とするセメント材料の技術「OPUS」を開発し、北米での量産を進めています。

ケイ酸塩岩を原料に活用

OPUS」は、石灰石の代わりに「ケイ酸塩岩」を原料とすることで、原料そのものに由来するCO2を抑えます。ケイ酸塩岩は花崗岩や玄武岩を含み、地殻の大半を占める岩石です。炭素をほとんど含まないため、加工で出るCO2は加熱用の燃料が主になります。既存の採石場の石や鉱山で生じる残さ(掘削で出る岩くず)も利用でき、原料を新たに掘り出す負担も抑えられます。

既存設備のまま置き換え

OPUS SCM」は、ポルトランドセメントの最大およそ50%を置き換えられる混合材です。同社は「OPUS SCM」1トンあたりのCO2を、同量のポルトランドセメントに比べて約70%少ないとしています。製造では、ケイ酸塩岩を融点の手前まで加熱し、水と反応して固まるガラス質の粉末へ変えます。既存のセメント工場や工事現場の設備をそのまま使えるため、導入の負担が小さいことも特徴です。

FrontJournalの解説
  • ケイ酸塩岩地殻に広く存在する、ケイ素を主成分とする岩石。花崗岩や玄武岩が代表例で、石灰石と違い炭素をほとんど含まない。
  • 混合材(SCM)セメントの一部を置き換えて混ぜる材料。セメントの使用量を抑え、CO2の削減につなげる。「OPUS SCM」もこの一種。
  • ガラス質原子が規則正しく並ばない状態。この状態の粉末は水と反応しやすく、セメントとして固まる働きを持つ。

低炭素セメントの未来

低炭素セメントの未来の図。身近な建物で低炭素化が可能になり、セメント全量の置き換えを目指して約187億円を調達した

身近な建物で低炭素化が可能に

ビルや住宅、道路や橋といった身近な構造物を、CO2の少ない材料で建設できるようになります。「OPUS SCM」はコンクリート全般に使える混合材で、用途が広い点も特徴です。工事現場は、今の設備と作業手順のまま切り替えられます。設備改修の負担が小さい点が、普及を後押しします。

セメント全量の置き換えを目指す

同社は、ポルトランドセメントを全量置き換える「OPUS ZERO」の実用化を目指しています。2026年5月時点ではコンクリートでの試験段階にあり、混合材に加えてセメントそのものとしての用途を見込みます。同社はテキサス州クレバーンで年24万トン規模の工場を計画し、2027年半ばの稼働を予定しています。同社は北米で、ほかの拠点でも工場の建設準備を進めています。

約187億円を調達

Terra CO2は2025年、シリーズBの追加調達で約1億2,450万ドル(約187億円)を集めました。Breakthrough Energy Ventures など複数の投資家が、出資を共同で主導しました。あわせて米エネルギー省から、ユタ州マグナの工場向けに約5,260万ドル(約79億円)の助成を受けています。量産の拠点が立ち上がれば、低炭素セメントの供給量は増える見込みです。

FrontJournalの解説
  • シリーズBスタートアップが事業を広げる段階で受ける投資のこと。製品の実証を終え、量産や工場建設へ進むときに多い。
  • OPUS ZEROTerra CO2が実用化を目指す、ポルトランドセメントを全量置き換える材料。一部を置き換える「OPUS SCM」の次の段階にあたる。

まとめ

セメントは暮らしを支える基礎素材であり、同時に大きなCO2排出源です。Terra CO2は、原料を石灰石からケイ酸塩岩へ替える発想で、この課題に取り組んでいます。既存の設備をそのまま使えることから、導入の負担は小さく抑えられます。FrontJournal編集部は、日本でも建設分野の脱炭素が共通の課題になるとみています。身近な建材から進む低炭素セメントの広がりに期待しています。

※ 本記事は各社の公式発表・主要報道をもとに、FrontJournal編集部が再構成したものです。数値は各社・各媒体の公表値で、約は概数を表します(1ドル=約150円で換算)。
主な出典:Terra CO2公式/BusinessWire/GlobeNewswire/ESG Today/Global Cement/Grist。

この記事の作者

FrontJournal編集部

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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