GAPファンドとは?研究を起業につなぐ資金の仕組み

GAPファンドとは?研究を起業につなぐ資金の仕組み

GAPファンドは、大学の研究成果がビジネスとして成り立つかを、起業する前に検証するための資金です。名前の「GAP」は、研究成果と事業化の間にある隙間(ギャップ)を意味します。科研費は学術研究を、VC出資は設立後の企業を対象とするのに対し、GAPファンドは起業前の研究者・学生が行う事業化の検証を対象とします。

この記事では、早稲田大学、東海地域の「Tongali」、首都圏の「GTIE」の制度を例に、GAPファンドの仕組み、他の資金との違い、採択から起業までの流れを解説します。

1.GAPファンドの仕組み

研究と事業化の溝を埋める

GAPファンドは、大学の研究成果と事業化の間にある溝を埋めるための資金です。この溝は一般に「死の谷」と呼ばれ、研究成果を実用化へつなぐ際に直面する難所を指します。早稲田大学は学内のGAPファンド「早稲田PoCファンド」を、試作・検証・市場調査などの初期段階を支援し、「死の谷」を乗り越えるための仕組みと位置づけています。採択された研究課題には実用化に向けた開発資金が提供され、事業化アドバイザーが事業可能性の検証に伴走します。

GAPファンドの役割を示す図。大学の研究、GAPファンド、起業の順に並び、GAPファンドは大学の研究成果がビジネスとして成り立つかを起業する前に検証するための資金と説明している

資金と起業支援を一体で提供

GAPファンドには、資金の提供と起業に向けた支援を組み合わせたものがあります。例えば、東海地域のプラットフォーム「Tongali」の2023年度「ステップ1」の募集要項によると、15の大学・研究機関を対象に技術シーズを公募・選考し、採択した研究者に研究開発費を配分します。金額は1件あたり最大500万円(直接経費)で、創薬の特別枠は最大1,000万円、採択数は35件程度を想定しています。あわせて、起業の知識の学習、ビジネスモデルの磨き込み、想定顧客への訪問、CxO(経営を担う役員)人材とのマッチング、メンタリングを支援しています。

審査では、達成目標(マイルストン)の設定、シーズ・知財の状況、事業性、実施体制、競合分析などが総合的に評価されます。応募できるのは登記前(起業前)のプロジェクトに限られ、基礎的な研究や起業後の企業は支援の対象外です。目的は、基礎研究の成果を、ビジネスとしての可能性を評価できる段階まで引き上げることです。

首都圏ではGTIEが運営

「GTIE(Greater Tokyo Innovation Ecosystem)」は、首都圏でGAPファンドを運営する大学発スタートアップの支援組織です。東京大学・東京科学大学・早稲田大学が主幹機関を務め、東京都などの自治体と、18の大学、3つのスタートアップ支援機関が参加しています。「GTIE」は、大学で生まれた研究を社会実装(研究成果を製品やサービスとして社会で使える形にすること)につなげるため、GAPファンドを設計・運営しています。財源には「JST(科学技術振興機構)」の委託費が含まれます。

対象は起業前の研究者・学生

「GTIE」のGAPファンドに応募できるのは、大学発スタートアップを目指す研究者・学生です。「エントリーコース」は、起業するかどうかを検討している段階の研究者・学生も対象としています。株式と引き換えに設立後の企業へ出資するVCと違い、GAPファンドは研究者が起業する前に事業化を検証するための資金です。

2.他の資金との違い

資金の目的と審査が違う

科研費・GAPファンド・VC出資は、資金の目的と審査の視点が異なります。科研費は、研究者の自由な発想に基づく学術研究を発展させるための競争的研究費で、ピアレビュー(同じ分野の研究者による審査)を経て交付されます。VC(ベンチャーキャピタル:成長が見込まれる新興企業に出資する投資会社)は、一般に株式と引き換えに設立後の企業へ出資し、事業の成長による投資の回収を目指します。GAPファンドは、この2つの間の段階で、研究成果の事業としての可能性を評価・実証する活動を支えます。例えば「Tongali」の審査では、事業性や競合分析も評価の対象です。

科研費・GAPファンド・VC出資を、目的・対象・重視する点の3項目で比べた表

3.採択から起業までの流れ

段階に合わせて選ぶ3コース

「GTIE」のGAPファンドには、研究の段階に合わせた3つのコースがあります。「エントリーコース」(1年未満)は、研究シーズ(事業化の種となる研究成果)が事業として成り立つかを検証します。「エクスプロールコース」(2年または3年)は、PoC(概念実証:アイデアが実際に機能するかを確かめる検証)を行い、起業にあたって解決すべき課題に取り組みながら、VCが投資を判断できる水準での起業を目指します。「海外市場開拓実践コース」(1年)は、取得済みのデータやプロトタイプを使って海外市場を開拓します。なお、2022年に実施した6か月間のGAPファンドでは、17チームが採択されました。

5つの機能で起業を支援

「GTIE」は、5つの機能で起業を支援しています。経営者人材と研究者のマッチング、GAPファンドの提供、専門家によるメンタリング、シード出資(創業初期の企業への出資)の獲得支援、大企業とのマッチングです。メンタリングでは、GAPファンドに採択されたチームに複数の専門家が伴走します。シード出資の獲得支援では、GTIE内の大学VCなどから出資を受ける手続きを支援し、起業した後も支援を続けます。また、「GTIE事業化推進機関」の候補となる支援機関が、採択された研究者と共に、起業や次の段階の研究開発資金の獲得に向けた活動を進めます。

GTIEのGAPファンドの3コースであるエントリー・エクスプロール・海外市場開拓実践の期間と内容と、採択後の支援であるメンタリングとシード出資の獲得支援

まとめ

GAPファンドは、大学の研究成果がビジネスとして成り立つかを、起業する前に検証するための資金です。学術研究を対象とする科研費と、設立後の企業に投じられるVC出資の間に位置し、研究成果を事業へ進める段階を担います。「Tongali」や「GTIE」のように、資金に加えてメンタリングや経営人材とのマッチングなど、起業に向けた支援を組み合わせている例もあります。

研究成果の事業化を考えている研究者は、まず所属大学の産学連携・起業支援の窓口で、大学が参加しているプラットフォームを確認してください。研究室で生まれた成果を社会に届ける第一歩として、GAPファンドの活用を検討してみてはいかがでしょうか。

出典:早稲田大学 アントレプレナーシップセンター/Tongali GAPファンドプログラム ステップ1 参加者募集要項(2023年度)/GTIE 公式サイト/GTIE GAPファンド/日本学術振興会 科学研究費助成事業(2026年10月28日閲覧)

作成:FrontJournal編集部