アクチュアライズ「角膜内皮再生医療」を開発|凍結した細胞の小瓶と注射器のイラスト

アクチュアライズ株式会社

アクチュアライズ「角膜内皮再生医療」を開発|研究領域=角膜の内側の細胞を・培養して注入/強み=培養した細胞を・凍結し解凍して注射/将来性=移植を待つ患者の・選択肢を広げる

企業紹介|アクチュアライズ株式会社とは?

角膜移植を待つ患者に、細胞の注入による治療の選択肢を広げる技術として、開発が進む「角膜内皮再生医療」。アクチュアライズ株式会社は、その社会実装を目指す、同志社大学発のバイオ・ヘルスケア系ディープテック企業です。培養した角膜内皮細胞の凍結製剤「AE101」を、眼科の治療現場へ向けて開発しています。

キーワード「角膜内皮再生医療」

「角膜内皮再生医療」は、傷んだ角膜内皮(角膜の内側を覆う細胞の層)を、培養した細胞で再生させる治療の手法です。特徴は、ドナー角膜を用いる移植に代えて、細胞の注入で治療を目指す点にあります。眼科で、角膜が濁って視力が落ちた患者の治療に向けた研究が進んでいます。

市場課題|角膜内皮の損傷による視力低下とドナー角膜の不足

現状の角膜内皮の治療の課題|現状は、ドナー角膜が少なく移植を待つ患者が残る|角膜内皮の損傷で・視力が低下/移植に使う角膜が・足りにくい

角膜内皮の損傷で視力が低下

角膜の内側を覆う角膜内皮(角膜の透明さを保つ細胞の層)が傷むと、角膜が白く濁り、視力の低下につながります。この状態は水疱性角膜症(角膜内皮の障害で角膜が濁る病気)と呼ばれ、現在の治療はドナー角膜を用いた角膜移植のみといわれています。移植を受けられない間は、視力が戻らない状態が続く点が課題です。

移植のドナー角膜が足りない

角膜移植はドナー角膜の提供が前提で、提供される角膜の数が患者数に追いつきにくい状況です。世界では、移植を必要とする患者70人のうち、移植を受けられるのは1人といわれています。フックス角膜内皮ジストロフィ(角膜内皮の細胞が減っていく病気)は、世界の角膜移植の約40%の原因といわれています。

他にも、国内で約2,200人とされる移植の待機患者、提供量に左右されるドナー角膜の供給、移植を待つ間に続く視力の低下、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 角膜内皮角膜の裏側(眼の内側)にある細胞の層である。この層の働きによって角膜の透明さが保たれ、傷むと角膜が濁る原因になる。

アクチュアライズの強み|「角膜内皮再生医療」を開発

アクチュアライズが「角膜内皮再生医療」を開発|これまでに、大学で細胞注入療法を実現|細胞を注入して・角膜内皮を再生/凍結製剤で・多数の患者に対応

細胞注入で角膜内皮を再生

従来は、傷んだ角膜内皮を治すために、ドナー角膜を用いた角膜移植が行われてきました。

同社の創業メンバーである小泉範子教授と奥村直毅教授らの研究では、角膜内皮細胞の培養に成功し、培養した細胞をROCK阻害剤(Rhoキナーゼという酵素の働きを抑える薬)と同時に眼内へ注射すると、移植に代わる治療法になりうることが見いだされました。この治療は、細胞を前房(角膜と虹彩の間の空間)に注入して角膜内皮を再生させるもので、細胞の培養と薬剤の併用が特徴です。ドナー角膜の移植に代えて眼内への注射で治療できるようになれば、移植を待つ患者の治療の選択肢が広がります。

凍結製剤で多数の患者に対応

角膜移植は、ドナー角膜の提供量が、治療できる患者の数を左右します。

同社の製剤「AE101」は、ヒト角膜内皮細胞を体外で増やし、ROCK阻害剤を含む保存液に浮かべて凍結したものです。体外で増やすため、1人のドナー角膜から50〜80人分の製品を作れるといわれています。凍結した製剤は、解凍してそのまま注射する形で用いる点が特徴です。このため、1人のドナーから得た材料を多くの患者の治療に回せるようになり、ドナー角膜の提供量に左右されにくくなるので、より多くの患者に治療を届けられる可能性が広がります。

FrontJournalの解説
  • ROCK阻害剤Rhoキナーゼ(細胞の形や動きを調節する酵素)の働きを抑える薬剤である。AE101では、培養した角膜内皮細胞を浮かべる凍結保存液に含まれる。

角膜内皮再生医療の未来|移植を待つ患者への治療の広がり

角膜内皮の再生医療が変える未来|臨床研究を重ね、海外への提供も目指す|京都府立医科大学で・50名超が治療/第Ⅱ相の観察を・終え第Ⅲ相を準備/中国・台湾・韓国で・提供を目指す

臨床研究で注入療法を実施

角膜内皮細胞の注入療法は、すでに臨床研究として患者に実施されてきました。2013年12月に京都府立医科大学で細胞注入療法の臨床研究が始まり、50名超が治療を受けています。この療法は、培養した角膜内皮細胞をROCK阻害剤と同時に眼内へ注射する方法です。同社は、この注入療法を凍結製剤「AE101」として開発しています。

第Ⅱ相の観察を終了

「AE101」は国内の第Ⅱ相試験(有効性と安全性を調べる臨床試験の段階)で、2025年11月に最終観察を終えました(最初の被験者への移植は2024年9月、全被験者への投与の完了は同年12月)。安全性では、重要な有害事象(治療中に起きた好ましくない出来事)や因果関係を否定できない重篤な有害事象は確認されませんでした。有効性では、視力の改善が示唆されています。同社は、2026年度中の第Ⅲ相試験(より多くの患者で有効性を確かめる段階)の開始を目指しています。

海外の患者への提供を目指す

同社は、「AE101」を国内にとどまらず、海外の患者にも届けることを目指しています。Arctic Visionとの独占ライセンスの対象は、中国本土・香港・マカオ・台湾と韓国です。国内では、第Ⅲ相試験を準備中です。ドナー不足は世界の患者に共通する課題であり、1人のドナーから多数の製品を作れる凍結製剤が、海外でも治療の選択肢になることが期待されます。

会社概要|アクチュアライズの事業内容・設立背景

同志社大学の研究成果から設立

アクチュアライズ株式会社は、2018年5月1日に設立された同志社大学発のベンチャーです。同志社大学の小泉範子教授と奥村直毅教授らの研究成果の社会実装を目指して、事業を進めています。小泉教授は取締役とCSO(最高科学責任者)を務め、奥村教授も取締役です。本社は同大学の京田辺キャンパス内にあり、2025年4月には松岡靖史氏が代表取締役社長に就任しました。

共同開発と提携

「AE101」は、株式会社デ・ウエスタン・セラピテクスと共同で開発しています。海外では、Arctic Visionに中国本土・香港・マカオ・台湾と韓国での独占ライセンスを許諾しています。点眼薬の分野では、2021年11月に参天製薬と共同開発契約を結び、フックス角膜内皮ジストロフィ向けの点眼薬を開発してきました。米国の臨床試験「PHANTOM study」では、2022年5月19日(米太平洋時間)に最初の患者が登録されました。

シリーズCの資金調達

同社は、2024年11月29日にシリーズCで、国内の製薬会社を引受先とする資金調達を行いました。シリーズCは、事業を広げる段階の企業が行う資金調達のラウンドです。これにより、累計調達額は約8.5億円(2024年11月時点)となっています。

会社情報

会社名アクチュアライズ株式会社(ActualEyes Inc.)
所在地京都府京田辺市興戸地蔵谷1番地 同志社大学京田辺キャンパス業成館 D-Egg 314
設立2018年5月1日
代表代表取締役社長 松岡靖史
資本金1億円
調達2024年11月 シリーズC(引受先は国内の製薬会社)。累計約8.5億円(2024年11月時点)
事業角膜内皮再生医療用細胞製品「AE101」の開発(国内第Ⅱ相試験の最終観察を2025年11月に終了)。角膜内皮障害の治療点眼薬の開発
技術領域角膜内皮細胞の培養と凍結製剤、細胞注入による角膜内皮の再生
連携株式会社デ・ウエスタン・セラピテクス(「AE101」の共同開発)。参天製薬(点眼薬の共同開発、2021年11月)。Arctic Vision(中国本土・香港・マカオ・台湾・韓国の独占ライセンス)
URLhttps://www.actualeyes.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

角膜が濁って視力が落ちたとき、現在の治療の中心はドナー角膜の移植です。提供される角膜の数が限られるなかで、細胞を増やして使う考え方は、治療を待つ患者に新たな治療の機会を示す可能性を持っています。ドナーの不足は、移植を待つ患者にとって切実な問題です。

アクチュアライズの特徴は、研究成果を、凍結して届けられる製剤の形に仕上げて臨床試験を進めている点です。単なる細胞治療の研究にとどまらず、1人のドナー角膜から多数の製品を作る供給の仕組みまで描いています。製剤化は、治療を必要とする現場へ届けるための前提です。

第Ⅱ相の観察を終え、2026年度中の第Ⅲ相の開始を目指す今後に注目しています。同志社大学の研究から生まれた角膜内皮の再生医療が、治療を待つ患者のもとへ届く日を期待しています。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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