アイクス「農業AI」を開発

株式会社アイクス

アイクス「農業AI」を開発

企業紹介|アイクスとは?

作物の育ち具合をデータで把握する技術として、注目を集める「農業AI」。株式会社アイクスは、その社会実装を目指す、筑波大学発のディープテック企業です。重さの計測と集計を自動で行うアプリ「ハカドリ」を提供し、レタスの苗をAIで判定するシステムも開発しています。

キーワード「農業AI」

「農業AI」は、作物の画像や重さ、環境のデータをAIで分析し、生育の判断や作業の記録に役立てる技術です。特徴は、これまで生産者の経験や勘に支えられてきた判断を、数値にして共有しやすくする点にあります。収穫量の予測や病気の早期発見などに使われ、現場の作業を減らす手段として研究が進んでいます。

市場課題|農業の生育管理が経験と手作業に左右される

現状の生育管理の課題

経験で決まる生育の判断

作物の生育や病気の判断は、長年の経験を持つ生産者の目で決める場面が多くあります。経験の差によって判断が分かれると、苗の選別や収穫の時期が、人によって変わる場合があります。このままでは、熟練者が減るほど、判断の質を保ちにくくなりかねません。

計測と記録が手作業

出荷する作物の重さの計測と記録は、秤の数値を読み取り、紙や表計算ソフトに書き写す手作業になりがちです。作業が増えるほど、記入の誤りや集計の手間が重なりやすくなります。この状況が続くと、人手の足りない現場の負担が大きくなります。

他にも、天候による生育のばらつき、病害の早期発見の難しさ、植物工場での品質管理の手間、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 植物工場屋内などの閉じた施設で、光や温度、養液を人工的に管理し、作物を計画的に育てる仕組みである。天候の影響を受けにくい。

アイクスの強み|「農業AI」を開発

アイクスが「農業AI」を開発

苗の良否を画像でAIが判定

従来の苗の確認は、人が一枚ずつ目で見て不良を探すため、時間がかかり、判断も人によって変わります。

同社は、多段式の水耕栽培(養液で作物を育てる方法)向けに「AI生育状況管理システム」を開発しています。独自に開発した自動航行の撮影機がレタスの苗を撮影し、AIが不良の苗を判定する仕組みです。撮影から判定までを自動で行うため、人が苗を一枚ずつ見て回る必要がありません。実証試験では、判定精度が2か月で97%に到達し、苗の生育確認と不良苗への対応の工数は98%減りました。人は確認の作業を減らし、育成の判断に時間を使えます。

重さの記録を自動で集計

従来の重量の記録は、秤の数値を読んで書き写す作業が必要で、記入の誤りや集計の手間が避けにくい面があります。

同社の「ハカドリ」は、重量の計測と分析を行うアプリです。QRコード(カメラで読み取る二次元の図形コード)を読み取ってから重量のデータを送ると、集計とグラフ化が自動で行われます。15kgまでと60kgまでの2種類の機種があり、60kgまでのタイプは2025年10月に発売されました。農作物の計量アプリを使った事例では、対応する人員が2人から1人になり、作業時間は導入前の約半分になりました。記録の手間が減り、現場は出荷の作業に集中できます。

FrontJournalの解説
  • 水耕栽培肥料を溶かした水(養液)で作物を育てる方法である。根を養液に浸すため、水や肥料の量を細かく管理しやすく、植物工場でよく使われる。

農業AIの未来|自社栽培と大学との研究への広がり

AI活用の農業が変える未来

機能性レタスを届ける

埼玉県羽生市の植物工場では、無農薬の閉鎖型水耕栽培でレタスを育てています。このレタスは、硝酸態窒素(野菜に含まれる窒素分)の量を、一般的なリーフレタスの15分の1から20分の1に抑えた機能性レタスです。人形町今半が運営する「喜扇亭 吉祥寺店」に採用され、2026年2月からは産直通販サイト「食べチョク」でも販売しています。同社は、高機能性の作物の栽培と生産システムの販売を広げることを目指しています。

生産管理で品質を追う

羽生市の植物工場は、2026年1月に、国際的な農場管理の認証「GLOBALG.A.P.」(リーフレタス)を取得しました。国内大手のネットワークソリューション企業と共同開発した生産管理システムでは、水耕パネルごとに、種まきから収穫までの履歴をたどれます。こうした記録は、栽培の工程を数値で見直す土台です。同社は、誰でも高収益・高品質の農業ができるシステムを目指しています。

大学との共同研究を広げる

アイクスは、筑波大学や愛媛大学との共同研究を進めています。2025年10月には、2019年度に東京都立産業技術研究センターとトーヨーホールディングスが実施した公募型共同研究開発「AI活用実証型研究」の成果と技術が、アイクスに移管されました。取締役CTOの福田直也氏が研究する、植物の成長を人の感覚ではなく数値で解析する技術も、事業の土台です。同社は、農業の技術開発に加え、再生可能エネルギーのプラント運営への展開を目指しています。

会社概要|アイクスの事業内容・設立背景

2022年に設立

株式会社アイクスは、2022年4月に設立されました。本店は、茨城県つくば市の筑波大学内にあり、東京都港区の新橋にも事務所があります。同社は、筑波大学の産学連携による大学発ベンチャー企業で、社名は「Artificial Intelligence Contributes to the Sustainable Society」に由来します。

代表取締役CEOは髙橋優太氏です。取締役CTOの福田直也氏は、筑波大学で、つくば機能植物イノベーション研究センターのセンター長を務めています。福田氏の専門は、作物の生理を対象にした、AIと画像解析による研究です。

参画と連携の体制

同社は、産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム(OPERA)に参画しています。次世代育種技術研究プラットフォームをはじめとする大規模なコンソーシアムにも参加し、筑波大学、愛媛大学と共同研究を行っています。羽生市の植物工場では、国内大手のネットワークソリューション企業と生産管理システムを共同開発しました。

製造業向けクラウドも提供

2026年9月15日には、中小製造業向けのクラウド「SynchroOrder(シンクロオーダー)」の提供を開始しました。引き合いから見積、製造、請求、分析までを、案件を軸にまとめて管理する仕組みで、AIによる操作の案内や、取り込んだファイルの自動構造化の機能を備えます。同社は、AIを使ったシステム開発の領域を、農業以外にも広げています。

会社情報

会社名株式会社アイクス
所在地茨城県つくば市天王台1丁目1番1(筑波大学内)
設立2022年4月
代表代表取締役CEO 髙橋優太
資本金1,000万円
事業農業向けAIシステムの開発、植物工場での機能性レタスの栽培・販売、製造業向けクラウドの提供
技術領域農業AI、AI画像解析、生産管理システム
連携筑波大学、愛媛大学、産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム(OPERA)
URLhttps://ai-css.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

農業の現場では、生育の判断や記録が、生産者の経験と手作業に支えられてきました。アイクスは、画像と重さのデータをAIで扱い、その負担を減らす道具を現場に届けている点が特徴です。苗の判定から重さの記録まで、日々の作業に近い場面を対象にしています。

筑波大学の研究者が取締役CTOを務め、研究の成果を自社の植物工場で栽培と販売まで試している点にも、研究と事業を近づける姿勢が表れています。福田氏は、基礎研究から実用技術を開発し、社会実装まで進めたいという想いから参画したと述べています。大学と企業の両方の立場で、技術を実際の現場に届ける体制です。

農業の担い手が減る中で、判断の基準をデータで共有できる技術の役割は大きくなります。製造業向けのクラウドにも領域を広げており、AIの使い道がどこまで広がるかが注目点です。今後の展開を見守りたい企業です。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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