株式会社ANRis|変異遺伝子だけを抑える核酸医薬を研究する企業

株式会社ANRis(アンリス)

ANRis「変異遺伝子だけを抑える核酸医薬」を研究|研究領域=変異だけを抑える核酸医薬を研究/強み=一塩基の違いを見分けて抑制/将来性=患者に寄り添う医薬品を目指す

企業紹介|ANRisとは?

正常な遺伝子はそのままに、原因となる変異遺伝子だけを狙って抑える「変異遺伝子だけを抑える核酸医薬」。株式会社ANRisは、その社会実装を目指す、東京大学在籍時の研究成果を基盤とした創薬系ディープテック企業です。一塩基の違いを見分けるsiRNA(短い二本鎖RNAを使う核酸医薬)の設計技術「SNPD-siRNA」で、KRAS変異がんなどの治療薬を開発しています。

キーワード「変異遺伝子だけを抑える核酸医薬」

「変異遺伝子だけを抑える核酸医薬」は、病気の原因となる変異型の遺伝子の働きだけを減らし、正常な遺伝子の働きは保つ医薬品です。遺伝子の設計図を運ぶmRNAを分解するRNA干渉という仕組みを使い、たんぱく質ができる量を抑えます。同社は、配列が一塩基だけ違うmRNAを見分ける設計技術を、この医薬品の基盤にしています。

市場課題|変異遺伝子は薬で狙いにくく、区別も難しい

現状の核酸医薬の課題|現状は、一塩基の違いを見分けにくく副作用が心配/変異遺伝子は薬で狙いにくい/siRNAは変異を区別しにくい

変異遺伝子は薬で狙いにくい

がんや希少疾患の多くは遺伝子の変異が原因で、従来の低分子医薬品や抗体医薬品では標的にしにくい遺伝子があります。KRAS(細胞の増殖を制御する遺伝子)の変異は、肺がん・大腸がん・膵がんなどで多く見られるといわれる変異です。このままでは、治療の選択肢が限られる患者さんが残る恐れがあります。

siRNAは変異を区別しにくい

既存のsiRNAの設計技術では、病気の原因となる変異型の遺伝子と、正常な生理機能に必要な野生型の遺伝子を、区別して抑えることが難しい点が課題です。原因遺伝子は、正常な遺伝子と比べて一塩基だけが変異していることが多いためです。このままでは、正常な遺伝子まで抑えて副作用が生じる可能性があり、患者さんの負担につながります。

他にも、肝臓以外の臓器への展開、正常な遺伝子まで抑える副作用、治療薬がない疾患の多さ、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 野生型変異を持たない、本来の配列の遺伝子を指す。正常な生理機能に必要であり、変異型だけを抑える薬では、この遺伝子の働きを保つことが求められる。

ANRisの強み|「変異遺伝子だけを抑える核酸医薬」を研究

ANRisが「変異遺伝子だけを抑える核酸医薬」を研究|現在は、配列設計で変異の識別を研究/mRNAを狙い標的を広げる/一塩基の違いを見分けて抑制

mRNAを狙い標的を広げる

低分子医薬品や抗体医薬品は、標的のたんぱく質の立体構造に合うかどうかで作用が決まるため、構造が合わないたんぱく質には効きにくい面があります。

同社が使うsiRNAは、たんぱく質の設計情報を運ぶmRNAに働きかける分子です。細胞に入ったsiRNAは、AGO2(RNA干渉の中心となるたんぱく質)に取り込まれ、二本鎖のうち標的のmRNAと対になるガイド鎖だけが残る仕組みです。ガイド鎖と配列が合うmRNAは切断されて分解され、たんぱく質ができる量が減ります。狙いを決めるのは立体構造でなく塩基配列のため、構造が合わないたんぱく質にも対応しやすくなり、治療の対象にできる遺伝子の幅が広がります。

一塩基の違いを見分けて抑制

従来のsiRNAの配列設計は、標的の遺伝子を狙えても、一塩基だけの変異の有無を区別して抑えることが難しく、正常なmRNAまで抑えてしまう場合があります。

同社の「SNPD-siRNA」は、一塩基変異を含むmRNAだけを認識して抑える配列の設計技術です。正常な遺伝子の働きはそのままに、原因となる変異型の遺伝子だけを抑えられます。がんの発生に関わる遺伝子の一つ「KRAS」では、一塩基の違いを識別してRNA干渉が起きることが、実験で確認されたとしています。膵臓がん由来の細胞での培養と、ヒトのがん細胞を移植したマウスでも、有効性が確認されたとの説明です。変異型だけを狙えるため、正常な遺伝子まで抑える副作用を避けやすく、患者さんの負担軽減が期待されます。

FrontJournalの解説
  • RNA干渉二本鎖RNAと配列が対応するmRNAが特異的に分解される現象を指す。分解によって、そのmRNAから作られるたんぱく質の量が減る。

未来・展開|変異だけを抑える治療の実現へ

負担の少ない核酸医薬が変える未来|変異だけを抑える治療を目指す/JSTの出資で開発を加速/KRAS変異がん治療薬を研究/患者に寄り添う医薬品を目指す

JSTの出資で開発を加速

同社は、2026年9月に、科学技術振興機構(JST)の出資型新事業創出支援プログラム「SUCCESS」から出資を受けました。この資金調達により、KRAS変異がんを治療する医薬品の開発を加速させる計画です。「SUCCESS」は、研究成果の実用化を目指すベンチャー企業にJSTが出資する事業で、民間資金を呼び込む効果も志向しています。2023年11月には、早稲田大学ベンチャーズから2億円の創業投資も受けています。

KRAS変異がん治療薬を研究

ANRisは、KRAS変異がんを治療する医薬品の研究開発を進めています。この変異がんは、細胞が異常に増殖し、がん化した状態です。肺がんや大腸がん、膵がんなどで多く見られるため、対象となる患者さんが多い領域です。変異型のKRASだけを抑える薬が実現すれば、正常な細胞の働きを保った治療に近づきます。

患者に寄り添う医薬品を目指す

目指す姿は、病気の原因となるドライバー遺伝子(がんの発生や進行に直接関わる遺伝子)の変異を標的とする医薬品の提供です。掲げる理念は、がんや遺伝性疾患の患者さん一人ひとりに寄り添う医薬品の創出と、負担の少ない医療の提供です。核酸医薬という手法で、薬が届きにくかった変異を持つ患者さんにも、治療の選択肢を示すことを目標にしています。実現すれば、原因となる変異だけを抑える治療を、より多くの患者さんが受けられるようになります。

会社概要|株式会社ANRis

2023年設立の核酸医薬企業

株式会社ANRisは、2023年9月に設立された創薬企業です。事業は、核酸医薬のうちsiRNAを用いたがん治療薬などの研究開発で、代表取締役は川村渉氏です。社名は、siRNAのパッセンジャー鎖(二本鎖のうち標的と対にならない側の鎖)の配列を「siRNA」と読むと、ガイド鎖が「ANRis」と読めることに由来します。本社は、東京科学大学の8号館内のシェアラボに置かれています。

出資と採択の実績

2023年11月に早稲田大学ベンチャーズから、2024年6月にQB2号ファンドから出資を受け、2026年9月にはJSTも出資しました。2024年7月には、スタートアップ向けの発表会「HVC KYOTO 2024 Demo Day」でKRP賞を受賞しています。2025年2月には、INPIT(工業所有権情報・研修館)の知財支援事業「IPAS」の2024年度第2期の支援先に選ばれました。

発明者が技術顧問を務める

「SNPD-siRNA」の発明者である程久美子氏は、共同創業者として技術顧問とCTOを務めています。東京科学大学の核酸・ペプチド創薬治療研究センター長でもあります。同社の基盤技術は、JSTの大学発新産業創出プログラム「START」に2019年度に採択された研究の成果です。

会社情報

会社名株式会社ANRis(アンリス)
所在地東京都文京区湯島1丁目5番45号 東京科学大学8号館2階 TIP-RCCシェアラボ内
設立2023年9月
代表川村 渉(代表取締役CEO)
事業核酸医薬(SNPD-siRNA)を用いたがん治療薬等の研究開発
技術領域核酸医薬、siRNA、RNA干渉、一塩基変異の識別
URLhttps://anris.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

遺伝子の変異が原因の病気では、変異した遺伝子だけを抑え、正常な遺伝子は守ることが理想です。一塩基という小さな違いを見分ける点に、ANRisの技術の特徴があります。この違いを配列の設計段階で識別する考え方が、副作用を抑える鍵になると編集部は考えます。

核酸医薬は、狙いを塩基配列で決められるため、薬の設計の考え方が従来と異なります。同社の「SNPD-siRNA」は、その配列設計の段階で変異を識別する点が興味深く、研究成果が創薬へ進む過程が分かりやすい事例です。大学の研究成果を出資で事業化へつなげる流れも、ディープテックの典型例といえます。

KRAS変異がんをはじめ、治療の選択肢が限られる患者さんに薬が届く日が来るかどうかが、今後の焦点です。同社は現在、研究開発の段階にあります。実際の治療で変異だけを抑える効果がどこまで確かめられるか、編集部は注目しています。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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