Barcodebody「VHH抗体」を研究|小型の抗体のイラスト

株式会社Barcodebody(バーコードボディ)

Barcodebody「VHH抗体」を研究|研究領域=動物を使わず・抗体を作製/強み=バーコードで・結合力を同時比較/将来性=医薬から観察まで・多様な用途へ

企業紹介|株式会社Barcodebodyとは?

研究や診断、医薬品の開発に使える小型の抗体として、注目を集める「VHH抗体」。株式会社Barcodebodyは、その社会実装を目指す、京都大学発のバイオ系ディープテック企業です。動物を使わない抗体の作製技術を、ライセンス供与や共同研究を通じて、企業や大学の研究室へ提供する事業を掲げています。

キーワード「VHH抗体」(ナノボディ)

「VHH抗体」は、ラクダ科の動物が持つ、重鎖だけでできた抗体の可変領域(標的に結合する部分)を取り出した小型の抗体です。特徴は、分子量が従来の抗体の約10分の1と小さく、構造が単純で安定性が高い点にあります。研究の現場を中心に、目的の分子だけに結合する道具として期待されています。

市場課題|VHH抗体の作製は動物の免疫と評価の難しさが課題

現状の抗体作製の課題|現状は、多くの場合、動物の免疫から始まり手間がかかる|動物の免疫に・時間と手間/固定の影響で・結合力を測りにくい

動物の免疫に時間と手間がかかる

VHH抗体の作製は、多くの場合、動物の免疫が出発点となるため、時間と飼育の手間が大きな負担です。アルパカなどのラクダ科動物に目的の分子(抗原)を投与し、生じた抗体の遺伝子を血液の細胞から取り出して、候補を作製します。新しい標的に合わせた抗体を用意するたびに、時間とコストがかかります。

固定の影響で結合力を測りにくい

候補を大量に調べるディスプレイ技術(細胞やウイルスの表面に抗体を並べて選び出す手法)では、抗体を表面に固定するため、結合力を正確に測りにくくなります。固定された抗体は、働きが変わったり、複数の抗体がまとまって結合して見えたりして、遊離した状態の結合力と食い違うことがあります。大量に調べられても、正確な比較には限界がある点が課題です。

他にも、動物の飼育施設の負担、動物愛護の観点での配慮、製造ごとの品質のばらつき、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 抗体体内に入った異物の目印(抗原)に結合するタンパク質を指す。研究や診断、治療で、調べたい分子だけを見分ける道具として使われる。

Barcodebodyの強み|「VHH抗体」を研究

Barcodebodyが「VHH抗体」を研究|現在は、動物を使わない作製を研究|酵母の培養で・抗体を作製/バーコードで・結合力を同時比較

酵母の培養で抗体を作製

従来のVHH抗体の作製は、動物の免疫から始まり、飼育と免疫の期間が必要になります。

ペプチドバーコード法は、抗体の遺伝子に短いアミノ酸の配列(ペプチドバーコード)を目印として付け足す手法で、この目印を付けた抗体が「バーコードボディ」です。酵母(核をもつ単細胞の微生物)に産生させると、動物の免疫を使わず、試験管内で候補をそろえて、目的に合うモノクローナル抗体(1種類の細胞に由来する均一な抗体)を選び出せる仕組みです。必要なのは酵母の培養と分析機器だけで、小さな実験室でも作製できるといわれています。動物の飼育施設がなくても、研究室の設備で抗体の候補を用意できるようになります。

バーコードで結合力を同時比較

従来のディスプレイ技術では、抗体を表面に固定して調べるため、結合力の評価に固定の影響が混ざります。

ペプチドバーコード法では、候補の抗体それぞれに固有のバーコードを付け、固定しない遊離の状態で混ぜたまま、標的の分子と反応させます。結合した抗体のバーコードを質量分析(分子の重さで物質を見分ける測定)で読み取ると、どの候補がどれだけ結合したかを定量できます。原理の検証では、バーコードを付けてもナノボディの性質は変わらず、2種類のナノボディの結合力を一度の実験で同時に測定できました。このため、候補を1つずつ測らなくても、固定の影響を避けて結合力の高い抗体を効率よく見つけられるようになります。

FrontJournalの解説
  • ペプチドバーコード抗体の遺伝子に付け足した、質量分析で読み取りやすい短いアミノ酸の配列を指す。候補の抗体ごとに固有の目印となり、混ぜた状態でも見分けられる。

VHH抗体の未来|動物を使わない作製が研究の現場へ広がる

VHH抗体が変える研究の未来|PD-1の抗体選抜から用途を探る|PD-1に結合する・抗体を選抜/医薬探索から・顕微鏡観察まで/手元で抗体を・作製する未来へ

PD-1に結合する抗体を選抜

ペプチドバーコード法は、がん治療薬の標的の1つであるPD-1に結合するVHH抗体の選抜に使われました。免疫チェックポイント阻害薬は、PD-1とPD-L1という分子どうしの結合を遮ることで、免疫細胞の働きを調節する薬です。京都大学の研究グループは、数千種類の抗体の集まりから、PD-1に強く結合する3種類を見つけ、その3種類がPD-1とPD-L1の結合を妨げることも確かめました。得られた抗体は、研究用の道具や抗がん剤の候補として使える可能性があります。

医薬探索から顕微鏡観察まで

同社は、VHH抗体の用途として、医薬品の探索から顕微鏡による観察まで幅広く挙げています。具体的には、分子を見分けるセンサー、超解像イメージング(通常の光学顕微鏡より細かい構造を見る技術)、分子標的薬(病気に関わる分子を狙う薬)の探索などです。VHH抗体を使った目印(標識)の製品は、超解像顕微鏡で観察したい分子に付ける用途でも販売されています。低分子の化学物質に結合する抗体や抗体農薬も、挙げられている用途です。

手元で抗体作製を目指す

同社は、研究者が自分の手元で、目的の抗体を必要なときに作製できる状態を目指しています。将来は、カクテル抗体(複数の抗体を混ぜたもの)や特殊な結合分子も、柔軟に作製できるようになるといわれています。動物を使わず、小さな実験室で作製できることが、この構想の土台です。実現すれば、目的の抗体を入手しにくく止まっていた研究を、研究者が自ら進められるようになります。

会社概要|京都市で動物を使わない抗体作製を掲げる大学発の会社

京都大学の研究から事業化

株式会社Barcodebodyは、2019年11月22日に設立された、京都大学発のバイオベンチャーです。創業の中心となった宗川昇と植田充美は、JST(科学技術振興機構)のCRESTという研究事業から生まれた技術を、事業化しました。代表取締役は宗川昇が務め、COO(最高執行責任者)の植田充美は、京都大学の特任教授でもあります。

KUViC入居と共同研究

同社は、京都大学ベンチャーインキュベーションセンター(KUViC)に入居し、企業や大学の研究室と共同研究・製品開発を行うとしています。2020年度と2021年度にはAMED(日本医療研究開発機構)の研究課題があり、2022年度からはJSTの共創の場形成支援プログラムへの参画が予定されていました(2021年10月時点)。提携先は、佐々木化学薬品株式会社です。

ライセンス供与で事業を展開

事業の柱は、動物を使わずにVHH抗体を作る作製技術について、非独占の使用権を提供するライセンス供与です。このほか、バーコードボディを基盤に、バイオと材料・分析など異分野の技術と融合する事業も掲げています。大学・企業・弁理士事務所の間での技術の仲介と、バーコードボディの製造も、事業の項目に挙げられています。

会社情報

会社名株式会社Barcodebody
所在地京都市左京区吉田本町36番地1 京都大学国際科学イノベーション棟104 ベンチャーインキュベーションセンター内
設立2019年11月22日
代表代表取締役 宗川昇。COO 植田充美(京都大学 特任教授)
事業VHH抗体「バーコードボディ」の作製技術のライセンス供与。異分野技術との融合。大学・企業・弁理士事務所の間での技術の仲介。バーコードボディの製造
技術領域ペプチドバーコードによるVHH抗体の作製と評価
連携京都大学ベンチャーインキュベーションセンター(KUViC)に入居。佐々木化学薬品株式会社と提携(2021年10月時点の公式サイトの記載)
URLhttps://www.barcodebody.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

抗体は、研究や診断、治療を支える基本の道具です。Barcodebodyは、その作製方法に、酵母と分析機器を使う選択肢を加えようとしています。動物の免疫に頼らない作製は、研究の進め方にも新しい余地を生みます。

特徴は、候補の抗体に目印のバーコードを付け、固定しない状態のまま結合力を比べられる点です。この手法は、京都大学の研究グループによって、PD-1に結合する抗体の選抜にも使われました。単なる作製の効率化ではなく、固定の影響を受けにくい評価を可能にする点に、この方法の価値があります。

動物を使わない抗体作製が広がれば、研究者が必要な抗体を自分の手元で用意できるようになります。目的の抗体が手に入りにくくて止まっていた研究が進めば、医薬品の探索を含む研究全体の進み方も変わる可能性があります。その歩みは、これからが楽しみです。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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