株式会社BioPhenoMAは血中やエクソソームの極微量タンパク質を測定する早稲田大学発の企業

株式会社BioPhenoMA(バイオフィノーマ)

BioPhenoMA「極微量タンパク質検出」を研究|研究領域=わずかでも測れる血液のタンパク質/強み=信号を大きくする酵素の反応の往復/将来性=病気を早く見つける血液や尿から

企業紹介|株式会社BioPhenoMAとは?

血液や尿から病気の兆候を早くつかむ技術として、注目を集める「極微量タンパク質検出」。株式会社BioPhenoMAは、その社会実装を目指す、早稲田大学発のライフサイエンス系ディープテック企業です。測定試薬「TN-cyclon ELISA キット」と受託研究サービスを、製薬企業や大学の研究現場へ提供しています。

キーワード「極微量タンパク質検出」

「極微量タンパク質検出」は、血液などにごくわずかしか含まれないタンパク質を数値で測る技術です。特徴は、抗体で捕まえた信号を酵素の反応で増幅し、多くの研究室にある吸光プレートリーダー(光の吸われ方から濃度を読む装置)で測れる点にあります。大型の専用装置をそろえずに、がんや神経の病気に関わるタンパク質の量の変化を追えます。

市場課題|見つけにくい微量のタンパク質

現状の微量測定の課題|初期ほど見つけにくい血中の量が少ない/専用装置が要る高感度の測定には

血中の量が少なく発見が遅れる

がんや神経の病気は、発症の初期ほど血液に出る目印のタンパク質が少なく、とらえにくくなります。病変から出たタンパク質が、全身をめぐる血液で希釈されるためです。手がかりのないまま時間が過ぎると、治療の選択肢が狭まりかねません。

高感度化には専用装置が要る

タンパク質の測定に広く使われるELISA(抗体で捕まえ、色の変化で量を測る方法)が扱える下限は、1ミリリットルあたり1ピコグラム(1兆分の1グラム)ほどです。それより薄い信号は背景のノイズに近い大きさとなり、微量域まで届かせるには専用の大型装置が必要になります。装置には費用と設置場所がかかり、微量域に踏み込める研究室は限られがちです。

他にも、目的の成分を取り出す前処理の時間、装置ごとに条件を合わせ直す手間、血液に混ざる夾雑物(目的以外の成分)が信号を乱す点、微量域で値がばらつく点、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • ELISA抗体が特定のタンパク質とだけ結びつく性質を利用して、試料に含まれる量を測る方法である。捕まえたタンパク質に酵素を付け、酵素が起こす色の変化を光で読み取る。装置は簡素で済むが、微量域では感度が足りない。

BioPhenoMAの強み|「極微量タンパク質検出」を開発

BioPhenoMAが「極微量タンパク質検出」を開発|微量でも信号が届く酵素の反応を繰り返す/実験室の設備で測れる吸光プレートリーダー

酵素の反応を繰り返し信号を増幅

従来のELISAは、酵素が起こす色の変化をそのまま読み取る仕組みです。そのため目的のタンパク質が少ないと、信号は背景の色に埋もれやすくなります。

TN-cyclon」は、サンドイッチELISA(2種類の抗体で挟む方式)に酵素サイクリング法を組み合わせた方法です。抗体に付くアルカリホスファターゼ(リン酸を切り離す酵素)が基質(酵素が働きかける材料)を分解し、生じたステロイド(反応の目印になる物質)を脱水素酵素が酸化と還元で何度も往復させます。往復には補酵素(酵素を助ける物質)が使われ、増えるのはチオNADH(別の波長の光を吸う目印)だけです。ステロイドは繰り返し使われるため、1個のタンパク質から届く信号は時間とともに積み上がります。

一般の実験室設備で定量

感度を高めた測定法は外部への委託が前提になりやすく、条件を変えて試すたびに時間と費用がかかります。

「TN-cyclon」の測定は、多くの研究室にある吸光プレートリーダーで完結します。測定できる水準は1ミリリットルあたり0.1ピコグラムで、一般的なELISAの下限とされる1ミリリットルあたり1ピコグラムの10分の1です。血清に加えてエクソソーム(細胞が出す小さな袋)を含む試料にも対応し、測定対象を選べる「TN-cyclon ELISA 開発キット」も用意されています。さらに前処理と分画(成分ごとに分ける操作)の技術で、体内にあった状態のまま量を追えます。

FrontJournalの解説
  • 酵素サイクリング法2種類の反応を交互に繰り返させ、目印となる物質を少しずつためていく方法である。同じ材料が何度も使われるため、出発点の量がわずかでも、時間とともに読み取れる大きさの信号へ育つ。

極微量タンパク質検出の未来|創薬と診断への応用

極微量タンパク質検出が変える未来|がんの目印を測れる血清やエクソソーム/検体の解析を請け負う血液や尿や唾液/早期発見をめざす体の負担が小さい検体

がんの目印を血液から測定

「TN-cyclon」は、がんに関わるタンパク質の測定にすでに使われています。2024年10月には、免疫のはたらきを抑えるPD-L1(がん細胞などの表面にあるタンパク質)を測る研究用試薬の受注が始まりました。血清だけでなく、エクソソームに含まれるPD-L1も同じ試薬で扱えます。治療の効き方を調べる研究で、濃度の変化を確かめる材料です。

受託研究で実際の検体を解析

2026年2月には、実際の検体を用いた受託研究サービスが始まりました。血液や尿、唾液、喀痰(たん)を対象に、前処理から抽出、分画、極微量の定量、動態の解析まで一貫して引き受けます。対象とするのは、がんや神経変性疾患(神経の細胞が徐々に失われる病気)、感染症、代謝の病気、薬剤への反応、エクソソームなどです。研究用途に限った支援として、自前の設備で測りにくい領域を補います。

病気の早期発見への貢献を目指す

同社が目指すのは、「極微量のタンパク質を測ることで、病気の兆候を早い段階でつかむこと」です。「TN-cyclon」を用いた研究では、尿から子宮頸がんのウイルスタンパク質を検出した成果が報告され、体への負担が小さい検体でも手がかりを得られる可能性が示されました。アルツハイマー型認知症では、アミロイドβやリン酸化タウ(脳の異常とともに増えるタンパク質)を血液から測る検査試薬の共同研究が始まっています。血液バイオマーカー(病気の状態を映す指標)の研究が広がるほど、測定を支える役割は大きくなるといわれています。

会社概要|BioPhenoMAの事業内容と設立背景

早稲田大学の研究から創業

株式会社BioPhenoMAは、2023年4月18日に東京都新宿区で設立されました。母体となったのは、早稲田大学 教育・総合科学学術院の伊藤悦朗教授らが積み重ねてきた超高感度ELISAの研究です。同社は、研究室で確立された測定法を、製薬や診断の現場で使える形にすることを目的としています。代表取締役は丹羽大介氏で、本社は早稲田大学アントレプレナーシップセンター(大学が起業を支援する拠点)に置かれています。

大学と企業の連携を広げる

同社は、技術の生まれた早稲田大学に加えて、企業との連携も広げています。2024年10月には、メーカーとの間でアルツハイマー型認知症の血中バイオマーカー検査試薬の共同研究を始める契約を結びました。創業時から出資する早稲田大学ベンチャーズは、大学の研究成果の事業化を担う大学系ベンチャーキャピタル(大学の技術に投資する会社)です。

累計約3.9億円を調達

調達額は、2024年11月までに累計で約3.9億円です。創業時に早稲田大学ベンチャーズから約2億円を、2024年11月にはプレシリーズAラウンドで早稲田大学ベンチャーズとJMTCキャピタル合同会社から約1.9億円を受け入れました。プレシリーズAは、研究の成果を製品として形にし、実際の現場で確かめていく初期の資金調達段階にあたります。資金は、共同研究や委託研究の推進、がんと神経変性疾患を中心とした自社研究用試薬の開発、エクソソームなどのバイオマーカーの研究開発に充てられます。

会社情報

会社名株式会社BioPhenoMA(バイオフィノーマ)
所在地東京都新宿区西早稲田1-22-3 早稲田大学アントレプレナーシップセンター
設立2023年4月18日
代表代表取締役:丹羽 大介。技術の開発者:伊藤 悦朗(早稲田大学 教育・総合科学学術院 教授)
資本金197,000,911円(約1.97億円)
調達累計 約3.9億円(2024年11月時点)
事業極微量タンパク質の高感度定量サービス。受託研究サービス。研究用試薬「PD-L1 TN-cyclon ELISA キット」「TN-cyclon ELISA 開発キット」の販売。測定システムの提供
技術領域サンドイッチELISAと酵素サイクリング法を組み合わせた測定技術「TN-cyclon」。前処理・抽出・分画の技術。血清やエクソソームを含む試料の極微量定量
連携早稲田大学(技術の開発元)。メーカーとのアルツハイマー型認知症 血中バイオマーカー検査試薬の共同研究(2024年10月)
URLhttps://biophenoma.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

病気を早く捉えたいという願いは、これまで測る道具の感度に阻まれてきました。BioPhenoMAが選んだのは、装置を大型化する道ではなく、化学反応を往復させて信号を育てるという道です。研究室の実験手法が、そのまま多くの研究者の手元で使える試薬の形になっている点に、社会実装としての手応えを感じます。

注目したいのは、単なる感度の向上ではなく、既存の設備のまま測定できるという導入の容易さです。特別な装置を持つ一部の施設だけでなく、多くの研究室が微量域に踏み込めるようになれば、確かめられる仮説の数そのものが増えていきます。尿や唾液といった負担の小さい検体が使えるようになれば、その広がりはさらに大きくなると見込まれます。

採血や検尿の結果から、体の小さな変化に早く気づける日常が近づくことを期待しています。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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