セレブロファーマ「認知症予防」を研究|実験用マウス2匹と、異常なたんぱく質の塊の形が異なる脳

セレブロファーマ株式会社

セレブロファーマ「認知症予防」を研究|研究領域=生薬などの素材で・認知症予防を研究/強み=マウス実験で粉末が・抽出物より強い効果/将来性=食品事業と並行し・医薬品を開発

企業紹介|セレブロファーマ株式会社とは?

発症の何十年も前から進む脳の変化に着目し、認知症の発症や進行を遅らせる研究として、注目を集める「認知症予防」。セレブロファーマ株式会社は、その社会実装を目指す、大阪公立大学発のバイオ系ディープテック企業です。事業の中心は、予防薬と治療薬の研究開発です。これとは別に、研究で扱った植物素材を配合した一般食品のサプリメント「CEREACTIS」も販売しています。

キーワード「認知症予防」

「認知症予防」は、生活習慣の改善や脳の変化への働きかけによって、認知症の発症や進行を遅らせることを目指す取り組みです。特徴の一つは、症状が表れる前の段階から取り組む点にあり、脳にたまる異常なたんぱく質標的とする研究も進んでいます。発症前に取り組める手段が増えれば、医療や介護の負担の軽減につながると期待されています。

市場課題|認知症の人は増え続け、発症後の治療では手を打つ時期が遅れやすい

現状の認知症対策の課題|現状は、発症後の治療が中心で手を打つ時期が遅れやすい|認知症の人が増え・介護負担が増大/抗体薬は使える人が・限られる

認知症の人が増え介護負担が増大

厚生労働省の研究班の推計では、2025年の認知症の高齢者は471.6万人MCI(軽度認知障害)の高齢者は564.3万人です。2040年には、認知症の高齢者が584.2万人へ増えると見込まれています。認知症の人が増えるほど、医療や介護の負担はさらに重くなりかねません。

抗体薬は使える人が限られる

アミロイドβ(脳にたまる異常なたんぱく質)を取り除く抗体薬レカネマブとドナネマブは、臨床試験で認知機能の低下を30%程度遅らせたとされます。ただし対象は、アルツハイマー病によるMCIや軽度の認知症で、アミロイドβの蓄積を検査で確かめた人に限られます。投与は定期的な点滴で、副作用を確かめるMRI(磁気で脳の断面を撮る検査)も欠かせません。アミロイドβは発症の20〜30年前からたまり始めると考えられており、症状が出てからの治療では手を打つ時期が遅れやすいといわれています。

他にも、発症前に脳の変化を見つける検査の受けにくさアルツハイマー病以外の認知症に使える薬の乏しさ、本人や家族が気づきにくい初期の変化、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • MCI記憶力などの認知機能が年齢相応より低下しているが、日常生活はおおむね自分で送れる状態を指す。認知症の一歩手前にあたり、認知症へ進む人がいる一方、元の状態に戻る人もいる。

セレブロファーマの強み|「認知症予防」を研究

セレブロファーマが「認知症予防」を研究|今後は、植物素材で予防法の研究が可能に|生薬粉末で・マウスの病変を改善/複数の病型の・マウスで改善

生薬粉末でマウスの病変を改善

生薬の研究では、有効成分を取り出した抽出物を調べる方法が多く、抽出の過程で未知の成分が失われる恐れがあります。

同社が研究の中心に置くのは、漢方薬の素材「酸棗仁(さんそうにん。サネブトナツメの種子)」を抽出せずに砕いた粉末です。認知症のモデルマウス(人の認知症に似た病変が現れるように作られたマウス)に1か月経口投与する実験では、脳にたまるオリゴマー(異常なたんぱく質が集まった小さな塊)が減り、認知機能や運動機能の回復がみられました。この粉末は、既知の有効成分が抽出物より少なくても、より強い効果を示しました。未知の有効成分を含む可能性があり、抽出物では見落とされていた成分の探索ができるようになります。

複数の病型のマウスで改善

抗体薬は、アミロイドβという1種類のたんぱく質を狙うため、アルツハイマー病以外の認知症には使いにくいという弱点があります。

同社の狙いは、神経細胞が失われる前に、有害なオリゴマーを減らすことです。タウ(たまると神経細胞を傷めるたんぱく質)やαシヌクレイン(レビー小体型認知症に関わるたんぱく質)がたまるモデルマウスに、「ママキ」(ハワイの植物)の葉や実、酸棗仁の粉末を与えた実験でも、脳の病変と記憶の改善がみられました。病気のない老齢のマウスに酸棗仁を与えた実験でも、細胞の老化を示す指標が下がり、認知機能が若いマウスと同じ水準まで回復しました。アミロイドβ以外が原因の病型でも改善がみられ、研究の対象が広がります。

FrontJournalの解説
  • オリゴマーアミロイドβやタウなどのたんぱく質が、数個から数十個集まってできた小さな塊を指す。大きな沈着になる前のこの塊が、神経細胞どうしのつながりを傷つけると考えられており、認知症の予防で減らす標的とされる。

認知症予防の未来|同社は食品事業と並行して、予防薬と治療薬の開発を進める

早期の認知症予防が変える未来|食品の販売と並行し医薬品の開発へ|研究した素材を・一般食品で販売/代理店と百貨店で・販路を拡大/認知症の予防薬の・実用化を目指す

研究した素材を一般食品で販売

同社は、研究で扱った素材を使うサプリメントブランド「CEREACTIS」を、2026年4月から販売しています。ママキの葉の「MamaQi」と、酸棗仁の「ZiziPhas」があり、どちらも素材の乾燥粉末を配合した製品です。国内のGMP(品質を保つための製造管理の基準)認定工場で製造され、ヒトでの安全性を確かめる試験も終えています。製品は、疾病の予防や治療を目的としない一般食品として販売されています。

代理店と百貨店で販路を拡大

同社は、代理店が顧客に直接届ける販売と、自社の通販サイトを組み合わせて、販路を広げています。博多大丸との業務提携にもとづき、2026年6月からは百貨店の外商(得意客への訪問販売)と、会員制のWebサイト「connaissligne」で取り扱いが本格化しました。これにより、百貨店の外商と会員制サイトでも製品を購入できるようになりました。今後も代理店や流通パートナーとの連携を軸に、販路を広げる方針です。

認知症の予防薬の実用化を目指す

食品事業と並行して同社が目指すのは、認知症の予防薬と治療薬の実用化です。土台は、神経細胞が失われる前にアミロイドβやタウのオリゴマーを減らす考え方です。同社は、オリゴマーの除去に加えて、老化の仕組みの解明も研究テーマに掲げています。医薬品として実用化できれば、医療機関で発症前から使える選択肢が加わります。

会社概要|大阪公立大学の認知症研究から生まれたセレブロファーマ

大阪公立大学の研究から創業

セレブロファーマ株式会社は、2020年3月に大阪市で設立された、大阪市立大学(現・大阪公立大学)発のスタートアップです。創業の中心となったのは、同大学の大学院医学研究科で認知症の研究を続けてきた富山貴美氏です。研究室が積み重ねてきたアミロイドβやタウのオリゴマーに関する成果を、予防薬や食品として社会に届けることを目的に設立されました。現在は大阪公立大学 大学院医学研究科の特任教授でもある富山氏と、松田和則氏が代表取締役を務めています。

帝人と共同で生薬を研究

同社は、帝人株式会社と連携して、生薬を使う認知症予防の研究を進めてきました。大阪公立大学での研究は同社と帝人株式会社の研究助成を受けて行われ、ママキや石菖(せきしょう。水辺に生える薬草)、酸棗仁の効果を調べた成果が、2023年から2024年にかけて「GeroScience」「Nutrients」「eLife」の各学術誌に掲載されました。酸棗仁などを使う技術について、両社は共同で国際特許を出願しています。

食品販売と医薬開発を両輪に

事業の柱は、サプリメントの販売と、認知症の予防薬・治療薬の研究開発です。サプリメントは代理店や自社の通販サイトで販売し、医薬品につながる研究は大阪公立大学の研究室と一体で進めています。出資は、複数のエンジェル投資家(創業期の企業に個人で出資する投資家)から受けているとされています。

会社情報

会社名セレブロファーマ株式会社(Cerebro Pharma Inc.)
所在地本社:大阪府大阪市中央区南久宝寺町4丁目5番6号 VELTEX本町ビル3階。東京支社:東京都港区虎ノ門5丁目1番4号。大学研究室:大阪公立大学 大学院医学研究科 老化・認知症制御学寄附講座(大阪市阿倍野区)
設立2020年3月26日
代表代表取締役:富山 貴美(大阪公立大学 大学院医学研究科 特任教授)。代表取締役:松田 和則
資本金1200万円(2026年8月時点)
調達複数のエンジェル投資家からの出資(経済産業省 大学発ベンチャーデータベース・2025年度調査)
事業認知症の予防薬・治療薬の研究開発。サプリメントブランド「CEREACTIS」(「MamaQi」「ZiziPhas」)の製造販売
技術領域酸棗仁・ママキ・石菖といった植物素材による、アミロイドβ・タウ・αシヌクレインなどのオリゴマーの低減。国際特許出願 WO2024/143428(帝人株式会社と共同出願)
連携大阪公立大学。帝人株式会社(大阪公立大学での研究への研究助成・国際特許の共同出願)。博多大丸(販売の業務提携・2026年6月から本格展開)
URLhttps://cerebro-p.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

認知症の対策というと、発症してからの治療を思い浮かべがちです。セレブロファーマが向き合うのは、その何十年も前から静かに進む脳の変化です。神経細胞が失われる前に手を打つという考え方を、身近な生薬の研究から形にしようとしている点に、この会社の面白さがあります。

とくに興味深いのは、成分を取り出した抽出物よりも、砕いただけの粉末のほうが動物実験で強い効果を示したという結果です。まだ特定されていない成分が働いている可能性は、昔から使われてきた素材の新しい価値を掘り起こす研究の余地を示しています。こうした発見を、製品や医薬品の開発へつなげていく歩みにも注目しています。

生薬の研究から生まれた成果が、医薬品として形になる日を期待しています。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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