株式会社DFCは細い管の中で化学反応を進めるフロー合成装置を開発する京都府宇治市発の企業

株式会社DFC(ディーエフシー)

DFC「フロー合成装置」を研究|研究領域=細い管の中で連続して合成/強み=条件入力だけで自動合成/将来性=研究から生産へ用途を広げる

企業紹介|株式会社DFCとは?

細い管の中で溶液を流し、温度や反応時間を精密に制御して化学品を合成する装置として、注目を集める「フロー合成装置」。株式会社DFCは、その社会実装を目指す、京都府宇治市発のものづくり系ディープテック企業です。創薬研究向けの自動合成装置「OptimFlow」や背圧弁(流路の出口側に圧力をかけて保つ弁)等を、医薬品や化学品の研究の現場へ提供しています。

キーワード「フロー合成装置」

「フロー合成装置」は、細い管の中で原料の溶液を流しながら化学反応を起こし、目的の物質を連続して合成する装置です。特徴は、管が細いため熱交換が速く、温度を精密に制御しながら原料を短時間で混合できる点にあります。フロー合成では、溶液を流す速さを変えるだけで、反応にかける時間を調整できます。

市場課題|化学合成は条件検討に手間がかかり、製造への移行にも検証が要る

現状の化学合成の課題|現状は、条件ごとの作業と規模ごとの検証で手間がかかる|条件の検討に手間がかかる/製造への移行に検証が要る

条件の検討に手間がかかる

医薬品のシード探索(新薬の候補となる化合物を探す研究)では、少量の試料で多くの反応条件を試すため、条件の検討に手間がかかります。条件を1つ試すごとに、試薬の前処理や反応時間の調整、器具の洗浄が必要です。そのため試す条件が増えるほど、研究者の作業の負担が大きくなります。

製造への移行に検証が要る

実験室で決めた条件を製造へ移す際、バッチ法では規模ごとに検証作業が必要です。容器が大きくなると熱伝達(容器の壁と液体の間で熱が移動すること)や撹拌効率が変化し、スケールアップ(設備を大型化して生産量を増やすこと)の際に再現性を確保しにくい場合があります。検証が重なるほど、研究から製造への移行は長期化しかねません。

他にも、大型容器で発熱反応を行う際の安全性の確保、各工程で必要な中間体(合成の途中で生じる物質)の精製、反応後に出る多量の廃棄物、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • バッチ法反応容器に原料を入れ、温度を調整しながら撹拌して反応させる合成方法である。容器を大きくすると熱の伝わり方や混ざり方が変わるため、規模ごとに条件の検証が必要になる。医薬品の製造で広く用いられてきた。

DFCの強み|「フロー合成装置」を開発

DFCが「フロー合成装置」を開発|今後は、自動合成で多くの条件検討が可能に|条件入力だけで合成を自動化/条件を記録し製造へ引き継ぐ

条件入力だけで合成を自動化

フロー合成を手作業で行う場合、目的の濃度・比率・反応時間になるよう、各ポンプの送液量を人が計算して設定するほか、条件を変えるたびに試薬の前処理や器具の洗浄も行う必要があります。

同社の研究用の自動合成装置「OptimFlow」は、試薬の濃度や比率、反応時間を入力するだけで、送液量をソフトウェアが自動で算出する装置です。試薬の前処理から反応時間の調整、器具の洗浄まで装置が自動で行います。装置の構成は、最大4流路・3リアクタ(反応器)です。複数の実験条件をまとめて一度に入力すれば、最大100実験まで連続で自動合成できます。そのため研究者の段取りの負担が減り、多くの反応条件を試しやすくなります。

条件を記録し製造へ引き継ぐ

バッチ法は、容器を大きくすると熱伝達や撹拌の状態が変わるため、実験室の条件をそのまま製造の検討へ引き継ぎにくい方法です。

「AltaFlow」は、プロセス検討用(製造に向けて条件を詰める工程向け)の自動合成装置で、最大6ライン(送液の系統)・5リアクタを備えています。条件は、流量を指定する方法のほか、滞留時間と試薬の濃度・モル比(物質量の比)を指定する方法でも設定できます。合成中の流速や背圧、液温を記録してグラフで示し、終了時にはレポートも自動で作成する仕組みです。フロー合成は同じ流路を並べて生産量を増やせるため、規模を変えやすいといわれています。研究者はこの記録を起点に、製造に向けた条件の検討を進められます。

FrontJournalの解説
  • 滞留時間溶液が反応器の中にとどまっている時間を指す。フロー合成では流路の容積と流量(単位時間に流す溶液の体積)で決まり、反応にかける時間に当たる。温度や試薬の濃度と並び、条件検討で設定する基本の値である。

DFCの未来|装置の用途をペプチド合成と生産へ広げる

研究から生産へ広がるフロー合成装置が変える未来|装置の用途をペプチド合成と生産へ広げる|ペプチド並列合成を自動化/旭製作所と生産用途へ展開/化学研究の自動化を目指す

ペプチド並列合成を自動化

同社は、ペプチド(アミノ酸がつながった分子)の並列合成も装置で自動化しています。2023年3月に販売を始めた「CYCROSS」は、固相合成(樹脂の粒にアミノ酸を1つずつつなげていく方法)を用い、最大8種類を同時に合成できる装置です。8機のシリンジポンプ(注射器の形をしたポンプ)で吸引と吐出を行い、反応と洗浄のサイクルを繰り返します。反応条件やサイクルは設定して保存でき、保存した条件を切り替えて使えます。

旭製作所と生産用途へ展開

2026年3月、同社は理化学用ガラス器具等を手がける旭製作所資本業務提携(出資を伴う業務上の協力)を結び、生産用途への展開を進めています。提携では、旭製作所の国内ネットワークと、フロー合成装置メーカーである同社の技術を組み合わせ、研究開発から商用生産までを一貫して支える体制を目指します。国内販売とカスタマーサポートの体制も強化する計画です。展示会や学会を通じた技術の普及にも、両社で取り組みます。

化学研究の自動化を目指す

同社は、研究の自動化に役立つ装置の開発に経営資源を投入する方針です。2025年1月には、京都市伏見区にラボオートメーション研究所(研究作業を自動化する拠点)を開設しました。旭製作所との提携でも、ラボオートメーション関連の装置を共同開発する計画です。研究所と提携の両面から、同社は化学研究の自動化を目指します。

会社概要|DFCの設立背景と事業

宇治でフロー合成機器を開発

株式会社DFCは、2014年4月に京都府宇治市で設立された、フローケミストリー(フロー合成を中心とする化学の手法)向けの理化学機器メーカーです。代表取締役の松本一希氏は、化学者が「あったらいいな」と思える装置の開発を第一に考えてきました。設立から3か月後の7月には超低温温度調整器「COOLABO」、8月には小型背圧弁の販売を始めています。掲げる基本コンセプトは「機械の力で化学に貢献」です。

京都大学との共同開発と受賞

同社は2015年10月、京都大学と共同で「非常用電源のためのオン・サイト型水素発生装置」の開発に着手しました。2016年9月には京都市ベンチャー企業目利き委員会でAランク企業に認定され、2017年7月には同大学の第2回インキュベーションプログラムに「固体水素源の実用化研究」で採択されました。「第2回知恵-1グランプリ」のイノベーション部門では、小型ペプチド自動合成装置の開発プランが優秀賞に選ばれています。経済産業省の大学発ベンチャーデータベースには、同大学の関連ベンチャーとして掲載されています。

自社製品と他社機器を販売

事業の中心は、自社で開発・製造するフロー合成装置と周辺機器の販売です。自動合成装置のほか、送液ポンプやチューブヒータ、インライン圧力計(流路の途中で圧力を測る計器)、触媒充填カラム(触媒を詰めた筒状の反応器)等を取りそろえています。生産にも使えるフロー合成反応器「SMCR」(多数の流路を並べて大容量化した反応器)は、神戸製鋼所との共同開発品です。サイテム製の水素ガス発生装置等の他社製品も取り扱っています。

会社情報

会社名株式会社DFC(Device for Flow Chemistry)
所在地本社:京都府宇治市大久保町西ノ端1-25 宇治ベンチャー企業育成工場2号棟。ラボオートメーション研究所:京都府京都市伏見区治部町105番地 京都市成長産業創造センター506号室
設立2014年4月15日
代表松本一希(代表取締役)
資本金700万円
事業理化学機器の製品開発と販売。自動合成装置「OptimFlow」「AltaFlow」、ペプチド自動固相合成装置「CYCROSS」、小型背圧弁、自動背圧弁、光反応リアクタ、電解リアクタ、超低温温度調整器「COOLABO」等
技術領域フローケミストリー(フロー合成装置・背圧弁等の周辺機器)。ラボオートメーション
連携京都大学(2015年10月に水素発生装置の共同開発に着手)。旭製作所(2026年3月16日に資本業務提携契約を締結)。神戸製鋼所(フロー合成反応器「SMCR」を共同開発)
採択ものづくり・商業・サービス革新事業に係る補助金(平成25年度補正・2014年6月)。京都エコノミック・ガーデニング支援強化事業(平成27年度・平成28年度ステップアップ)。京都市ベンチャー企業目利き委員会 Aランク企業認定(2016年9月)。京都大学第2回インキュベーションプログラム(2017年7月)。第2回知恵-1グランプリ イノベーション部門 優秀賞
URLhttps://dfc-kyoto.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

DFCが手がけるのは、フロー合成を研究者が日々の実験で使える装置に落とし込む仕事です。化学者の使い勝手を起点にした製品開発に、この会社らしさがあります。背圧弁のような小さな部品から自動合成装置まで、化学者の手元で使う機器を幅広くそろえています。

注目したいのは、OptimFlowでは条件を入力するだけで合成が進み、AltaFlowでは合成の経過まで記録に残るという発想です。計算や段取りを装置に任せられれば、研究者は反応そのものの検討に時間を使えます。記録が残れば、研究の成果を次の検討へ引き継ぎやすくなります。

「機械の力で化学に貢献」という言葉どおり、宇治から生まれた装置が、研究から生産へ用途を広げる姿を期待しています。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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