e-Gle「インホイールモーター」を開発

株式会社e-Gle(イーグル)

e-Gle「インホイールモーター」を開発

企業紹介|株式会社e-Gleとは?

車輪の中にモーターを収め、電気自動車の駆動効率と車内の空間を高める技術として、注目を集める「インホイールモーター」。株式会社e-Gleは、その社会実装を目指す、モビリティ系ディープテック企業です。インホイールモーターの研究開発と、電気自動車の開発に関するコンサルティングを手がけています。

キーワード「インホイールモーター」

「インホイールモーター」は、タイヤホイールの中にモーターを内蔵し、車輪を直接駆動する装置です。特徴は、エネルギー効率が高く、車内の空間を広く使え、車輪ごとの制御もしやすい点にあります。電気自動車の開発現場では、車体の設計の自由度を高める駆動方式の選択肢になります。

市場課題|電気自動車の駆動に損失が残る

現状のオンボード型の課題

オンボード型はギアで損失が出る

「オンボード型」(エンジンの代わりにモーターを車体へ搭載し、既存の自動車の構造を大きく変えずに済む方式)では、電力を駆動力に変える過程で、ギアなどの動力伝達によるエネルギー損失が生じます。自動車の電動化は、この方式を主体に進んでいます。損失が残る限り、電力の利用効率が下がり、省エネの効果も限定的です。

冷却と搭載空間に制約が残る

駆動用のモーターとインバータ(直流電力を交流に変換する装置)は発熱するため、冷却の装置が欠かせず、搭載の面でも制約が残ります。水冷式では、冷却水を循環させる電動ポンプが必要で、冷却にもエネルギーを使います。モーター、インバータ、冷却の装置が別々に載ると、追加のバッテリを置ける車内の空間も限られやすい状態です。

他にも、モーターの小型化と軽量化、滑りやすい路面での走行の安定性、車体設計の自由度の確保といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • オンボード型エンジン車のエンジンの位置にモーターを搭載し、ギアなどを介して車輪を回す電気自動車の駆動方式である。既存の車体構造を大きく変えずに電動化できる一方、動力の伝達でエネルギー損失が生じる。

e-Gleの強み|「インホイールモーター」を開発

e-Gleが「インホイールモーター」を開発

ギアを介さず車輪を直接駆動

e-Gleは、駆動の構造そのものを変えることで、ギアに由来する損失の低減に取り組んでいます。

e-Gleのインホイールモーターは、タイヤホイールの中にモーターを内蔵する方式です。第4世代は、回転する部分(ロータ)が固定された部分の外側を回る「アウターロータ」の構造で、ギアを介さずに車輪を直接回す「ダイレクトドライブ」です。モーターの小型化と高効率化によって、外形399mm×92.5mm、重量35kgでホイール内に収めています。ギアで失われていたエネルギーを減らせ、同じ電力で走れる距離を伸ばせます。

空冷方式で冷却を簡素化

e-Gleは、冷却を水冷から空冷へ切り替えることで、冷却に使うエネルギーの低減に取り組んでいます。

第4世代は、冷却水の循環が不要な空冷式のインホイールモーターです。最高トルク620Nm(車輪を回す力の大きさ)と最高出力65kW(単位時間あたりにできる仕事の大きさ)を、空冷で出します。水冷式の先行事例がある中で、空冷式でこの出力を出す点が特徴です。次の第5世代では、液体が沸騰して気体になるときの熱で冷やす「沸騰冷却」への切り替えを進めています。冷却水を循環させるポンプが要らなくなり、冷却に使うエネルギーを抑えられます。

FrontJournalの解説
  • ダイレクトドライブモーターの回転を、ギアや減速機を介さずに車輪へ直接伝える駆動方式である。伝達の過程で生じるエネルギー損失を減らせるほか、部品が少なく、構造を簡素にできる。

インホイールモーターの未来|電気自動車への応用

インホイールモーターが変える未来

中国の国家標準の認証を取得

第4世代の空冷モーターシステムは、2021年3月2日付で、「GB/T18488」(電気自動車用モーターシステムに関する中国の国家標準)の認証を取得しました。上海試験センターでの試験を経て、日本製の試作モーターで取得しています。中国では、国内での生産と販売に、国が定める認証の取得が求められます。中国での事業化を進めるため、取得を目指していました。

次世代で省エネ約14%を見込む

第5世代のインホイールモーターは、オンボード型のモーターと比べて約14%の省エネ効果が見込まれています。SiCインバータ(炭化ケイ素を使った電力変換装置)を内蔵し、沸騰冷却を採る構成で、2024年5月時点で開発中です。ギアが不要なダイレクトドライブに、電動ポンプが不要な沸騰冷却とSiCインバータを組み合わせ、モーター・インバータ・冷却を一体の構造にすることを目指します。追加のバッテリを載せる空間を確保しやすくなる見込みです。

安全で快適な走行を目指す

e-Gleは、各車輪のインホイールモーターを独立に制御する「全輪独立制御」で、走行の安全性・安定性・快適性を高めることを目指しています。各車輪の加速と減速を別々に行い、路面ごとの摩擦力の限界まで制御する仕組みです。インホイールモーターは車輪ごとに駆動力を調整しやすく、この制御に向いた構造です。駆動で失われるエネルギーが減れば、電気自動車の電力使用量が下がり、運輸分野の脱炭素に近づきます。

会社概要|e-Gleの事業内容・設立背景

地球温暖化の解決を目的に設立

e-Gleは、地球温暖化の解決に向け、太陽光に由来するエネルギーを電気自動車に用いる技術の開発と普及を目的に、2013年9月に設立されました。代表取締役社長は、慶應義塾大学名誉教授の清水浩です。2022年7月には、かわさき新産業創造センター(KBIC)から、慶應義塾大学の新川崎タウンキャンパス(K2)へ移転しました。

NEDO採択と日中の連携

2023年度には、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム」に、「沸騰冷却方式SiCインバータ内蔵インホイールモータの開発」が採択されました。共同研究先は名古屋大学です。2021年10月には、国際協力機構(JICA)と中国科学技術部の日中連携事業に採択され、中国側のパートナーは天津大学です。2019年6月には、子会社の上海翼科新能源汽車科技有限公司が、中国中車グループの襄陽中車電機技術有限公司と、インホイールモーターの生産と販売で提携することに合意しました。

研究開発と開発支援の事業

事業は、電気自動車用のインホイールモーターなど基幹技術の研究開発、電気自動車の開発コンサルティング、電気自動車の基盤製造のサポートです。これまでの研究開発には、ネオジム磁石の製法、GaNトランジスタ(窒化ガリウムを使った半導体素子)を内蔵したインバータ、新構造のリチウムイオン電池の実用化技術があります。共同開発のパートナーは、NDFEB株式会社、長岡パワーエレクトロニクス株式会社などです。

会社情報

会社名株式会社e-Gle(イーグル)
所在地神奈川県川崎市幸区新川崎7-1 慶應義塾大学 新川崎タウンキャンパス(K2)O棟202C(2022年7月に移転)
設立2013年9月
代表代表取締役社長 清水 浩(慶應義塾大学名誉教授)
事業電気自動車用インホイールモーターなど基幹技術の研究開発。電気自動車の開発コンサルティング。電気自動車の基盤製造サポート
技術領域インホイールモーター。ダイレクトドライブ。空冷方式と沸騰冷却方式。全輪独立制御
連携名古屋大学。天津大学。NDFEB株式会社。中国中車グループ(襄陽中車電機技術有限公司)。株式会社東海理化(電流センサなどの開発協力)
採択NEDO 脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム(2023年度)。JICA・中国科学技術部 日中連携事業(2021年)
URLhttp://www.e-gle.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

車輪の中にモーターを収める発想は、ギアや冷却水といった駆動まわりの構成そのものを見直す取り組みです。e-Gleは、空冷式の第4世代で中国の国家標準の認証を取得しました。次は、沸騰冷却を採る第5世代の開発に取り組んでいます。

特徴は、エネルギー損失の要因である伝達と冷却の両方に、構造の側から向き合っている点です。単に出力の大きなモーターを製造するのでなく、車体まわりの空間の使い方まで含めた駆動の設計である点に、この技術の価値の核心があります。日本製の試作モーターが中国の国家標準の認証を取得した点も、評価できます。

駆動で失われるエネルギーが減れば、同じ電力でより遠くまで走れる電気自動車が増え、運輸分野の脱炭素が進みます。e-Gleのインホイールモーターが、そのような未来を支える駆動の選択肢として広がっていくことに期待します。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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