elleThermo「排熱発電」を研究

株式会社elleThermo(エレサーモ)

elleThermo「排熱発電」を研究|技術領域=中低温の排熱を・電力に変える/強み=熱で半導体を・励起し直接発電/将来性=データセンターの・排熱を電力に

企業紹介|株式会社elleThermoとは?

工場やデータセンターで使われていない約30〜60℃の熱を、直接電力に変える「排熱発電」。株式会社elleThermoは、その社会実装を目指す、東京科学大学発のエネルギー系ディープテック企業です。半導体増感型熱利用発電素子(STC)を研究し、データセンターの排熱を使った発電の実現に取り組んでいます。

キーワード「排熱発電」

「排熱発電」は、工場やデータセンターなどから出る使われていない熱を、電力に変える技術です。elleThermoが研究するSTCは、約30〜60℃の中低温の熱から、直接電力を取り出す素子です。発電しているときに素子のまわりの温度が下がる挙動も、実証で観測されています。

市場課題|中低温の排熱が使われていない

現状の排熱利用の課題|現状は、温度差の小ささで熱が回収されにくい|中低温の熱は・電力に変えにくい/排熱の冷却に・電力が必要

中低温の熱が活用されず

工場やデータセンターなどには、約30〜60℃の中低温の未利用熱があります。この温度帯は熱源と周囲の温度差が小さく、電力に変える手段が限られているといわれています。そのため、熱の多くは電力として回収されないまま残りやすい状態です。

AI普及で排熱と電力が増加

AIやクラウドサービスの普及で、データセンターの増設と大規模化が進み、電力需要は拡大傾向にあります。サーバー機器の排熱を冷やすためにも相当量の電力が必要で、電力消費量の急増が見込まれています。排熱の扱いが変わらなければ、電力の負担は重くなりやすい状況です。

他にも、熱源ごとの温度のばらつき、発電素子の出力の小ささ、設置スペースの制約、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 未利用熱工場の設備やデータセンターのサーバーなどから出て、回収も利用もされないまま周囲へ逃げていく熱である。温度が低いほど電力に変えにくい。

elleThermoの強み|「排熱発電」を研究

elleThermoが「排熱発電」を研究|これまでに、STCで電力と冷却を実現|熱の励起で・低温から発電/発電しながら・素子を冷却

熱の励起で低温から発電

従来の熱から電力を得る方式は、熱源との温度差が小さい中低温の熱を、電力に変えることが難しいとされています。

STC(半導体増感型熱利用発電素子)は、色素増感太陽電池(光で発電する太陽電池)で、光が色素を励起(エネルギーを受けて電子が高い状態になること)する部分を、熱が半導体を励起する仕組みに置き換えた素子です。半導体が熱で励起されると、その電荷による酸化還元反応を通じて、電力が取り出されます。論文で報告された発電量は、4cm×4cmの素子が40〜55℃で最大約0.2mWです。中低温の排熱が出る場所に素子を置いて使えるため、これまで電力に変えにくかった中低温の熱から、電力を取り出すことができます。

発電しながら素子を冷却

従来は、設備の熱を冷やす仕組みと、熱を電力に変える仕組みを、別々に用意するのが一般的でした。

STCは、周囲の熱を吸収しながら進む吸熱型の発電原理を持つため、発電するときに素子のまわりで局所的な冷却が起こります。論文では、放電と停止を繰り返す断続放電で、放電しない素子に比べて約1℃の冷却が続き、4台を並列に接続すると約5℃に広がったと報告されています。データセンターのラック内の実証でも、放電する側の素子の温度は徐々に下がりました。発電と冷却を同じ素子で担えれば、排熱の多い設備で冷却に使う電力の負担を減らせる可能性があります。

FrontJournalの解説
  • 吸熱型周囲から熱を吸収しながら進む反応の性質である。反応のたびに周囲の熱が使われるため、反応が起きる場所の温度は下がる。

排熱発電の未来|データセンターから広がる

中低温の排熱発電が変える未来|データセンターの排熱を電力に変える|データセンターで・発電を実証/出力をワット級へ・高める/排熱の電力利用を・目指す

データセンターで発電を実証

elleThermoは、2026年5月に、KDDI(通信事業者)の協力によるSTCの実証を発表しました。目黒区のデータセンター内で、サーバーとGPU(画像処理用の半導体)を模擬した高発熱装置を組み合わせたラック内に素子を置いています。約30〜44℃で、サーバーの排熱が電力に変換されることを確認しました。放電側の素子の温度は、スイッチの切り替えを繰り返すと徐々に下がりました。

出力をワット級へ高める

現在のSTCの出力は単セルあたりミリワット級で、elleThermoはワット級を目指してセルの積層化と大面積化を進めています。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の事業では、耐熱性、出力性能、薄膜性を高める開発を行っています。elleThermoは、2027年度までにパイロット生産に向けた試作ラインを立ち上げる方針です。データセンター向けのSTCセルとサーモパネルを開発し、販売する計画です。

排熱の電力利用を目指す

elleThermoは、50W級の発電出力を持つサーモパネルの開発と商用化、量産技術の確立を目指しています。想定する用途は、工場・データセンター・温泉や鉱山の地熱・家電・太陽光熱・車載などのモビリティです。NEDOは、サーバー機器の排熱を安定的に発電へ使うシステムが、環境配慮型データセンターと地産地消型のエネルギー利用を促すと位置づけています。出力がワット級に届けば、排熱由来の電力でデータセンターの電力負担の一部を補う選択肢になります。

会社概要|elleThermoの事業内容・設立背景

東京科学大学の研究成果から設立

elleThermoは、2023年2月に設立されました。経済産業省の大学発ベンチャーデータベースには、東京科学大学発の研究成果ベンチャーとして掲載されています。代表取締役Co-CEO/CTOは生方祥子で、本社は東京都港区芝浦の東京科学大学キャンパス・イノベーションセンター内です。STCは、東京科学大学(旧・東京工業大学)発の発明であり、その社会実装を目的に事業が始まりました。

採択・連携

NEDOの「新エネルギー等のシーズ発掘・事業化に向けた技術研究開発事業」では、データセンター排熱の主力電源化に向けた開発に取り組んでいます。この事業の参加機関は東京科学大学と横浜国立大学で、電解質の提案などが役割です。KDDIとは、データセンターでの実証で協力しています。

シリーズAで8.3億円を調達

2026年8月に、シリーズAで総額8億3,000万円を調達したと発表しました。リード投資家はSpiral Innovation Partnersで、KDDI Green Partners Fund、Sony Innovation Fundなども参加しています。累計の調達額は約12億円です。資金は、STCの出力向上の研究開発、プロトタイプ開発、量産を見据えた製造設備への投資に使われます。

会社情報

会社名株式会社elleThermo(エレサーモ)
所在地東京都港区芝浦3丁目3-6 東京科学大学キャンパス・イノベーションセンター
設立2023年2月
代表代表取締役Co-CEO/CTO 生方 祥子
資本金1億円
調達累計約12億円(2026年8月のシリーズA 8億3,000万円を含む)
事業未利用の排熱を電力に変える半導体増感型熱利用発電素子(STC)の開発。STCセルとサーモパネルの開発
技術領域排熱発電。半導体増感型熱利用発電
連携東京科学大学。横浜国立大学。KDDI
採択GTIE GAPファンド。NEDO「新エネルギー等のシーズ発掘・事業化に向けた技術研究開発事業」
URLhttps://ellethermo.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

データセンターの増設が進むほど、サーバーの熱と、それを冷やす電力の負担は大きくなります。STCは、約30〜60℃の熱から電力を取り出し、同時に素子のまわりを冷やす素子です。熱を捨てるものと見る発想から、電力の元として使う発想への転換が、この技術の出発点にあります。

elleThermoの特徴は、発電と冷却の両方の挙動を、データセンター内の検証環境のラックで観測した点にあります。現時点の出力はミリワット級で、ワット級への道のりは長い段階です。それでも実証の結果を数値とともに積み上げていけば、排熱を電力として使う場面は広がります。

排熱が電力に変わる設備が増えれば、データセンターの電力負担を減らす選択肢も増えます。STCの出力がどこまで伸びるのかに期待します。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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