株式会社estieは商業用不動産の情報をAIで構造化しデータ基盤として提供する企業

株式会社estie(エスティ)

estie「不動産データ基盤」を研究|研究領域=物件の情報を集め・検索できる形に整理/強み=資料をAIで表に整理・同じ建物を1件に集約/将来性=物流・住宅へ拡大し・取引の支援を目指す

企業紹介|株式会社estieとは?

散らばった物件の情報を集め、不動産の投資や賃貸の判断に使える形へ整える技術として、注目を集める「不動産データ基盤」。株式会社estieは、その社会実装を目指す、AI系ディープテック企業です。オフィスを調べる「estie オフィスリサーチ」をはじめ、物流施設や賃貸住宅向けのサービスを、不動産デベロッパーやJ-REIT(不動産投資信託)へ提供しています。

キーワード「不動産データ基盤」

「不動産データ基盤」は、建物・募集・賃料・入居テナントといった情報を、建物ごとに検索や分析に使える形でまとめる仕組みです。特徴は、書式のそろわない資料から情報を取り出し、同じ建物の情報を1件にまとめて扱える点にあります。利用者は、オフィスの賃料の相場確認や投資物件の比較で、資料を集め直さずに市場を把握できます。

市場課題|不動産の物件情報が紙やPDFに分散している

現状の不動産情報の課題|現状は、情報の散在と表記ゆれで比較と照合に手間がかかる|空室情報が・紙やPDFで散在/同じ建物でも・資料ごとに表記が違う

空室情報が散在し比較に手間

オフィスビルの空室情報は、ビルオーナーから仲介会社へ、紙やPDFで個別に配られてきました。仲介会社が多数のオーナーの資料を比べるには、一つずつ開いて読み込む手間がかかります。仲介会社の確認が追いつかないと空室情報が資料の中に埋もれ、その物件は借り手に届きにくくなる恐れがあります。

表記ゆれで同じ建物の照合が困難

資料を一つにまとめる際は、表記ゆれ(同じものが違う文字で書かれること)が障壁です。同じ建物でもビル名の略し方や住所の書き方が資料ごとに異なるため、同じ建物かどうかを見分けにくくなります。人の目で照合すれば、物件が増えるほど照合の負担が重くなります。

他にも、詳しい取引データの開示の少なさ、賃貸借契約や共益費に関する情報の不足、冷凍冷蔵倉庫のような特定用途の市場データの乏しさ、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 表記ゆれ同じものを指す語が、書き手や資料によって異なる文字で書かれる現象を指す。建物名の略し方や番地の書き方、全角と半角の違いなどが該当する。照合では、文字が違っても同じ対象かを判断する処理が要る。

estieの強み|「不動産データ基盤」を開発

estieが「不動産データ基盤」を開発|今後は、AIで物件の迅速な比較が可能に|散在する資料を・AIで表に整理/同じ建物の情報を・機械学習で1件に集約

散在する資料をAIで表に整理

紙やPDFの資料は、項目の並び方や書式が一つずつ異なります。そのため、データベースへ登録するには、人が内容を読み取って入力する必要がありました。

同社は、50社以上の不動産会社から日々届く情報を、データパイプライン(データを自動で整理する仕組み)で処理しています。中心の工程は、OCR(画像から文字を読み取る技術)が書式のそろわない資料をテキストに変換し、LLM(大量の文章で学習した言語処理のAI)が必要な項目を抜き出して表に整理する流れです。資料を表の形に整える構造化の時間を、手作業に比べて約65%短縮できるとされています。新しい空室情報を短い時間でデータベースへ反映できるため、仲介会社や投資家が物件を早く比べられます。

同じ建物を機械学習で1件に集約

規則やキーワードの一致で建物を照合する方法は、ビル名や住所のわずかな違いに対応しにくく、照合の精度に限界がありました。

同社は、名寄せ(同じ建物の情報を1件にまとめる処理)に機械学習を用いています。教師データ(正解を付けた学習用のデータ)で学習させたモデルが、2件の建物情報が同じ建物かを判定する仕組みです。そのうえで、確信度(判定の確からしさを示す値)が低い組だけを人が確認・修正し、その結果を次の学習に使うHuman-in-the-loop(人の確認を学習に組み込む手法)を採用しています。物件が増えても照合の負担を抑えられます。利用者にとっては、重複のない建物ごとの情報で物件を比べられる点が利点です。

FrontJournalの解説
  • 名寄せ複数の資料やデータベースに散らばった情報のうち、同じ対象を指すものを見つけて1件にまとめる処理を指す。不動産では名称や住所の書き方が違っても同じ建物かを判定する必要があり、正しく集計する前提となる。

不動産データ基盤の未来|物流・住宅と取引への応用

不動産データ基盤が変える未来|データ基盤が、投資や賃貸の判断を支える|オフィスから・物流・住宅へ拡大/不動産会社の・AI活用を支援/不動産取引の・支援を目指す

オフィスから物流・住宅へ拡大

同社のデータ基盤は、オフィスから物流施設、賃貸住宅へと対象を広げてきました。2024年5月に始めた「estie 物流リサーチ」は、大和ハウス工業や東京建物などが導入した物流施設向けのサービスです。同年10月には、賃貸住宅向けに全国約220万棟の建物情報を扱う「estie レジリサーチ」が加わりました。2025年3月からは、用途の違う物件を1か所で調べられる「estie 不動産情報ポータル」も運営しています。

不動産会社のAI活用を支援

蓄積したデータの新たな用途は、不動産会社のAI活用の支援です。同社は2025年に「不動産AI Lab」を設立し、メールやメモを構造化して、売り物件と買い手の条件を照らし合わせる精度の向上に取り組んでいます。同社が研究を進めているのが、価格予測モデルを自動で改善する枠組み「CARRE」(LLMが改善案を立て、検証データでの評価をもとに改善を繰り返す仕組み)です。こうした研究を通じて、不動産会社が自社のデータで賃料や売買価格を予測できる環境の整備を進めています。

不動産取引の支援を目指す

同社は、データの提供にとどまらず、ソフトウェアを通じて、売買や賃貸といった不動産の取引まで支えることを目指しています。掲げるパーパスは「産業の真価を、さらに拓く」です。2026年1月時点で、グループ全体で数千社の顧客がサービスを利用しています。この顧客基盤は、物件の調査から売買や賃貸の取引までを、共通のデータにもとづいて進めるための土台になり得ます。

会社概要|estieの事業内容と設立背景

三菱地所出身の代表が創業

株式会社estieは、2018年12月に設立されました。代表取締役の平井 瑛氏は、東京大学経済学部を卒業後に三菱地所で不動産の投資運用やオフィスビルの賃貸営業に携わりました。物件データの収集と活用に関わる業界の課題を、技術で解決しようと考えたことが創業のきっかけです。取締役CTO(最高技術責任者)は、東京大学大学院の出身でIndeed Japanを経て参画した岩成 達哉氏が務めています。

東京大学との連携と受賞

同社は創業期から、東京大学に関わる支援を受けてきました。東京大学協創プラットフォーム開発(東京大学が出資する投資会社)の第3回起業支援プログラムに採択されています。東京大学エッジキャピタルパートナーズ(ベンチャーキャピタル)は、シリーズA(事業を本格的に立ち上げる段階の資金調達)より前からの株主です。2025年9月には、CTOの岩成氏が「不動産AIテックコンテスト」(不動産業界紙の主催)で優勝しています。2026年7月には、東京大学大学院情報理工学系研究科の山崎研究室との共同研究の論文がIEEE MIPR 2026(マルチメディア情報処理の国際会議)に採択されました。

シリーズBまでに累計約45億円

同社は、2022年1月にシリーズAで約10億円、2024年10月にシリーズB(事業を拡大する段階の資金調達)で28億円を調達しました。これ以外の調達も含めた累計調達額は、2024年10月時点で約45億円です。2025年11月には複数の金融機関から総額22億円の融資を受けました。この資金は、M&A(企業の合併・買収)と不動産AIの研究開発への投資に充てる計画です。

会社情報

会社名株式会社estie(estie, inc.)
所在地東京都港区赤坂9-7-2 東京ミッドタウン・イースト 4F
設立2018年12月11日
代表代表取締役:平井 瑛。取締役CTO:岩成 達哉
資本金1億円
従業員120人(2026年4月1日現在)。グループ全体で約170人(2026年1月時点)
調達2022年1月:シリーズA 約10億円(グロービス・キャピタル・パートナーズ、東京大学エッジキャピタルパートナーズ、グローバル・ブレイン)。2024年10月:シリーズB 28億円(Vertex Growth、日本政策投資銀行ほか・累計約45億円)。2025年1月:シリーズB追加(三菱UFJ信託銀行ほか・ラウンド累計30億円超)。2025年11月:融資 総額22億円(商工組合中央金庫、三菱UFJ銀行、りそな銀行、日本政策金融公庫)
事業商業用不動産のデータ基盤「estie オフィスリサーチ」「estie 物流リサーチ」「estie レジリサーチ」。「estie 不動産情報ポータル」。不動産AI LabによるAIソリューション等
技術領域データパイプライン。OCRとLLMによる非構造化データの構造化。機械学習による名寄せ。AIによる賃料の算出(e-賃料)
連携東京大学大学院情報理工学系研究科 山崎研究室(共同研究)
採択東京大学協創プラットフォーム開発 第3回起業支援プログラム。不動産AIテックコンテスト 優勝(2025年9月)。IEEE MIPR 2026 論文採択(2026年7月)
URLhttps://www.estie.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

不動産は取引の金額が大きい一方で、判断の材料となる情報が紙やPDFに分かれて流通してきた業界です。estieは、その情報を集めて検索できる形に整えることから事業を始めました。注目したいのは、OCRとLLMによる構造化と、機械学習と人の判断を組み合わせた名寄せという、地道なデータ整備を技術で支えている点です。

データの提供から取引の支援へと領域を広げる同社が、不動産の意思決定をどう変えていくのか、今後の展開に期待しています。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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