FerroptoCure「フェロトーシス」を研究|細胞のイラスト

株式会社FerroptoCure(フェロプトキュア)

FerroptoCure「フェロトーシス」を研究|研究領域=細胞死を誘導する・経口の抗がん剤/強み=2つの防御を・同時に阻害/将来性=幅広いがん種と・海外展開へ

企業紹介|株式会社FerroptoCureとは?

がん細胞の防御を崩して細胞死へ導く、新しい治療戦略として注目を集める「フェロトーシス」。株式会社FerroptoCureは、その社会実装を目指す、慶應義塾大学発のバイオ系ディープテック企業です。がん細胞を守る2つの防御を同時に阻害する経口(口から飲む)の抗がん剤を、研究しています。

キーワード「フェロトーシス」

「フェロトーシス」は、酸化ストレス(活性酸素などが細胞に与える負荷)で脂質の酸化が進み、鉄に依存して起こる細胞死です。従来の抗がん剤と異なる仕組みのため、既存の治療に抵抗性を示すがんにも有効な可能性があるとされています。FerroptoCureは、がん細胞がこの細胞死から身を守る仕組みを狙う抗がん剤を、開発しています。

市場課題|難治性のがんは有効な治療の選択肢が限られる

現状のがん治療の課題|現状は、耐性を持つがんに効く薬が限られる|難治性がんは・選択肢が限られる/抗酸化の防御で・薬が効きにくい

難治性がんは選択肢が限られる

再発や転移を繰り返す難治性がんには、化学療法や免疫療法などが進歩した今も、治療の選択肢が限られています。使い続けると薬が効きにくくなる治療抵抗性も、治療を難しくする要因です。治療法が十分でないがんには、新しい作用の薬が求められています。

抗酸化の防御で薬が効きにくい

がん細胞は、抗酸化システム(活性酸素を中和する仕組み)を強め、酸化ストレスによる細胞死から自分を守っています。増殖と代謝が盛んなため、正常な細胞より強い酸化ストレスにさらされており、この防御が欠かせません。防御の強化は治療抵抗性の獲得にも関わると示唆されているため、既存の薬だけでは、がん細胞を追い込みにくい場合があります。

他にも、既存薬への耐性、再発や転移の抑制、治療法が十分でないがん種の存在、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 治療抵抗性がん細胞が治療を受けるうちに薬への反応を失い、効きにくくなる性質を指す。再発や治療の長期化につながる要因とされ、新しい作用の薬が求められている。

FerroptoCureの強み|「フェロトーシス」を研究

FerroptoCureが「フェロトーシス」を研究|現在は、2つの防御の阻害を研究|フェロトーシスで・耐性がんを狙う/2つの防御を・同時に阻害

フェロトーシスで耐性がんを狙う

耐性を持つがんは、従来の抗がん剤では細胞死に至りにくくなります。

同社は、フェロトーシスを誘導する経口投与の低分子化合物(飲み薬にできる小さな分子の薬)を研究しています。既存の抗がん剤に耐性を持つがんはフェロトーシスへの感受性が高いことが知られており、その性質を治療に生かすことが狙いです。この薬はアポトーシス(細胞が自ら起こす死)や免疫の働きに頼らない経路で働き、標的とする仕組みは複数のがん種で、がん細胞の生存に欠かせません。実用化すれば、既存の抗がん剤が効きにくくなった患者にも、別の仕組みで効く治療を使えるようになる可能性があります。

がんの2つの防御を同時に阻害

活性酸素を増やすだけではフェロトーシスは起こらず、複数の経路からなる防御網を突破する必要があります。

同社は、防御の主要な2分子、xCT(シスチンを取り込む輸送体)とALDH(有毒な脂質アルデヒドを解毒する酵素)を同時に阻害する「フェロトーシス合成致死」の手法を採ります。がん細胞はxCTで取り込んだシスチンから、活性酸素を中和するグルタチオンを作り、ALDHで脂質の酸化で生じる有毒物質を無毒化します。この2経路を同時に止め、がん細胞を細胞死へ導く狙いです。複数のがん種で生存に欠かせない防御を狙うため、対象のがん種を広げられれば、治療の選択肢が少ない患者にも新しい薬を届けられるようになります。

FrontJournalの解説
  • 合成致死2つの分子の働きを同時に止めたときにだけ、細胞が死に至る現象を指す。片方だけを止めても細胞は生き残る点が特徴である。

フェロトーシスの未来|治験から海外展開、幅広いがん種へ

フェロトーシスが変える未来|治験から海外展開、幅広いがん種へ|国内で第I相の・治験を開始/FC-004の・海外治験を準備/幅広いがん種へ・展開を目指す

国内で第I相の治験を開始

2024年に、「FC-001」の第I相の医師主導治験(医師が主体となって行う治験)が国内で始まりました。第I相は、人に薬を投与して、まず安全性を確かめる段階です。がんの治験は、患者に投与して副作用を確かめるため、安全性の評価にも難しさがあります。第I相の結果は、次の段階の試験へ進むかどうかを判断する材料になります。

FC-004の海外治験を準備

同社は、リードパイプライン(開発の中心になる薬の候補)の「FC-004」について、海外での臨床試験の実施を計画しています。「FC-004」は承認されている既存薬を用いつつ新薬として創出する戦略のため、安全かつ早期に開発を進められることが期待されています。これまでの治験は日本人のデータに限られるため、人種による薬の効き方の違いを調べることも目的です。2026年にはオーストラリアに子会社「FerroptoCure Australia Pty Ltd」を設立し、海外展開の足場を整えています。

幅広いがん種へ展開を目指す

フェロトーシスを誘導する抗がん剤を、最初の対象とする乳がんから幅広いがん種へ広げることが、同社の目標です。基礎研究では、複数のがん種で効果が示されています。ただし、臨床試験はがん種ごとに必要なため、まず乳がんで承認を得て、その実績を基に次のがん種へ進める戦略です。製薬企業へのライセンス(開発や販売の権利を許諾する契約)を通じて海外にも展開でき、治療の選択肢が限られていた世界の患者に、新しい薬が届く可能性が広がります。

会社概要|東京・千代田区でフェロトーシスを誘導する抗がん剤を開発する会社

慶應義塾大学の研究を事業化

株式会社FerroptoCureは、2022年5月に設立された、慶應義塾大学発のバイオベンチャーです。JST(科学技術振興機構)が支援した研究の成果を基に、アカデミアの研究者5名で設立しました。代表取締役CEOの大槻雄士は、外科医を経て研究者となり、同大学医学部でフェロトーシスを標的とした抗がん剤の研究に取り組んできました。本社は東京都千代田区にあり、研究所は川崎市殿町のナノ医療イノベーションセンター(iCONM)内に置いています。

AMED採択とJST出資

2025年6月には、AMED(日本医療研究開発機構)の「創薬ベンチャーエコシステム強化事業」に採択されました。この事業の補助金は、同年9月発表のシリーズAの4.6億円と合わせて、総額9.6億円となる見込みです。JSTも、出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)を通じて、同社に追加出資しています。2023年には、大学発ベンチャー表彰でアーリーエッジ賞を受けました。

シリーズAで4.6億円を調達

2025年9月19日に、シリーズAで4.6億円の調達を発表しました。2023年には、シードラウンドの資金調達も行っています。引受先は、ANRIや東京理科大学イノベーション・キャピタルなどのベンチャーキャピタル(新興企業に出資する投資会社)と、JSTです。資金は「FC-004」の海外臨床試験、他のパイプラインの非臨床試験、体制の強化、海外展開の基盤整備に充てる方針です。

会社情報

会社名株式会社FerroptoCure
所在地東京都千代田区富士見1-3-11 富士見デュープレックスB's4F。研究所は神奈川県川崎市川崎区殿町3-25-14 ナノ医療イノベーションセンター(iCONM)内
設立2022年5月
代表代表取締役CEO 大槻雄士。共同創業者は佐谷秀行(藤田医科大学 腫瘍医学研究センター長)、永野修(藤田医科大学 教授)、夏目徹(産業技術総合研究所 主席研究員)、西山伸宏(東京科学大学 教授)
調達シードラウンド(2023年)。シリーズA(2025年9月)で4.6億円。AMEDの補助金と合わせ総額9.6億円となる見込み。引受先はANRI、東京理科大学イノベーション・キャピタル、Diamond Medino Capital、ビジョンインキュベイト、JSTなど
事業フェロトーシスを標的とした創薬開発。リードパイプラインは「FC-004」。子会社はFerroptoCure Australia Pty Ltd(オーストラリア)
技術領域フェロトーシス合成致死(xCTとALDHの同時阻害)
採択AMED 創薬ベンチャーエコシステム強化事業(2025年)。大学発ベンチャー表彰2023 アーリーエッジ賞
URLhttps://ferroptocure.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

抗がん剤が効かなくなる場面は、治療を受ける患者にとって大きな壁です。FerroptoCureは、がん細胞が自分を守る防御に着目しています。その防御を崩して細胞死へ導く道を、探っています。

同社の特徴は、xCTとALDHという2つの防御を同時に止める「フェロトーシス合成致死」にあります。従来の抗がん剤とは異なり、がんが生き延びる仕組みそのものを狙う点が、価値の核心です。既存の薬とは異なる角度から、治療抵抗性の壁に挑んでいます。

治験の進展と海外展開の準備が進めば、治療の選択肢が限られていたがん患者のもとへ、新しい治療が届く可能性につながります。日本発の創薬が世界の患者の選択肢を広げる未来も、視野に入ります。その歩みが楽しみです。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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