グローバルエナジーハーベスト「波力発電」を開発|岸壁に固定した装置と、波で上下するフロートのイラスト

株式会社グローバルエナジーハーベスト

グローバルエナジーハーベスト「波力発電」を開発|研究領域=波の上下動を・電気に変える/強み=発電機を海水から・隔離して岸壁へ固定/将来性=港や離島から・国内各地を目指す

企業紹介|株式会社グローバルエナジーハーベストとは?

波の動きを電気に変える技術として、注目を集める「波力発電」。株式会社グローバルエナジーハーベストは、その社会実装を目指す、慶應義塾大学発のエネルギー系ディープテック企業です。港の岸壁に置く小型の波力発電装置の研究開発と実証を、港や自治体の現場で進めています。

キーワード「波力発電」

「波力発電」は、海面の波の上下動が持つエネルギーを電気に変える発電方法です。同社の装置の特徴は、港や防波堤の岸壁に固定して、波の動きから発電できる点にあります。港湾内の未活用の岸壁に、小型の装置を1〜2基から設置でき、導入を検討する自治体からの相談も受け付けています。

市場課題|波力発電は付着対策の費用と高波への強度が課題

現状の波力発電の課題|現状は、付着対策の費用と高波への強度が課題|海洋生物の付着対策に・費用を要する/高波に耐える・強度が課題

付着対策に費用を要する

海に設置する波力発電では、海洋生物の付着への対策に費用を要します。フジツボなどが装置に付着するため対策が欠かせず、波力発電のコストの課題として挙げられています。対策に費用がかかる装置は、導入の判断が難しくなる点が懸念材料です。

高波に耐える強度が課題

波の力で発電する装置は、台風などの高波に耐える強度の確保が課題です。波力発電は海外でも開発が進められていますが、高波に対する強度などが課題となり、商用化は途上にあるといわれています。強度の確保が難しいままでは、設置できる海岸が限られかねません。

他にも、漁業との兼ね合い、発電効率の向上、量産体制の整備、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 波高波の谷底から頂上までの垂直の高さを指す。波が高いほど取り出せるエネルギーが増えるため、波力発電では装置を置く場所を選ぶ条件になる。

グローバルエナジーハーベストの強み|「波力発電」を開発

グローバルエナジーハーベストが「波力発電」を開発|現在は、岸壁設置の波力発電を研究|発電機を海水から・隔離する構造/防波堤の裏側で・高波を避ける

発電機を海水から隔離

発電機が海水に触れる構造では、海洋生物の付着の影響を受けやすくなります。

同社が開発する「往復型回転加速式発電」は、岸壁などに設置した小型の発電機で、海面に浮かせたフロート(波で上下する浮き)の上下動を発電機の回転に変えて発電する方式です。構造上、発電機を海水から隔離しており、海洋生物の付着の影響が少ないとされています。素材は汎用的な鉄鋼製品で、港湾内の未活用の岸壁や防波堤の周辺に設置する構成です。港にある既存の岸壁や防波堤を活かし、1〜2基から波の力で発電できるようになります。

防波堤の裏側で高波を避ける

高波の直撃を受ける場所では、装置の強度の確保が課題になります。

同社の装置は、港や防波堤の裏面などの岸壁に、アンカーボルト(構造物に埋め込んで機器を固定するボルト)で固定して設置します。設置には、高波の直撃を避ける位置が適しています。あわせて、波高50cm以上、干潮時の水深1m以上、岸壁の高さ1〜3mが条件です。初期モデル1基の参考仕様では、波高約50cmのときの出力が1.0kWとされています。高波の直撃を避けた位置に固定するため、高波の影響を受けにくく、設置できる港の岸壁の選択肢が広がります。

FrontJournalの解説
  • フロート波を受けて海面で上下する浮きを指す。波力発電では、このフロートの上下動を発電機の回転に変えて電力を得る。

波力発電の未来|港や離島から国内各地への応用

岸壁設置の波力発電が変える未来|導入事例と実証を重ね、国内各地を目指す|海士町の港に・導入事例がある/沖縄で実証を・広げる計画/国内各地での・実装を目指す

海士町の港で導入事例

島根県海士町(人口2,267人、2020年国勢調査)は、同社の波力発電装置の導入事例です。海士町では、思ったより小型で既存の港に設置できそうだという声が聞かれています。大きな音がなく、安心したという声もあります。小型で静かな装置は、離島の港に置く電源として検討しやすい点が特徴です。

沖縄で実証を広げる計画

沖縄県与那原町で、波力発電の実証を広げる計画があります。2024年度の内閣府の補助金による沖縄の実証事業は、与那原町役場とNPO法人(非営利の民間団体)の日本波力発電普及推進協会が担っています。2025年9月時点では、同町で6基で始める実証を拡張し、2027年度に約350基の体制を構築する計画です。調達した資金は、発電効率の向上に向けた技術開発と量産体制の整備に充てる方針です。

国内各地での実装を目指す

同社は、2030年代前半に、工業地域近辺の海岸や離島など、国内各地での実装を目指しています。小〜中規模の波には「往復型回転加速式発電」、中〜大規模の波には波のエネルギーで水を汲み上げ、その落差で水力発電を行う「循環型波力揚水発電」を使い分ける構想です。波力発電は、「エネルギーの地産地消」に適した発電と位置づけられています。

会社概要|神奈川県藤沢市で波力発電を開発する会社

音力発電の研究から創業

株式会社グローバルエナジーハーベストは、2006年9月21日に、慶應義塾大学発の技術ベンチャーとして創業しました。創業前の2003年頃から音力発電の研究に取り組み、音以外の振動エネルギーから発電する振動力発電へ応用しています。2017年には波力発電の研究開発を始めました。2022年2月17日に、株式会社音力発電から現社名へ変更しました。代表取締役の速水浩平が最高技術責任者を兼ね、本社と研究所は神奈川県藤沢市にあります。

国や自治体の事業に採択

「循環型波力揚水発電」は、2019年から2022年のNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の事業に採択され、2020年には国土交通省の海上実証にも採択されました。「往復型回転加速式発電」は、2020年に総務省の無線送信実証に採択されました。2022年から2023年にはNEDOの事業、2023年には国土交通省の「スマートアイランド推進事業」、2024年から2025年には内閣府の「沖縄振興特定事業推進費」にも採択されています。2025年には、島根県海士町の「ブルーカーボン事業」(波力の電力を藻場の再生に利用)と東京都の「TOKYO 地域資源等を活用したイノベーション創出事業」にも採択されました。

出資を受け量産体制の整備へ

2025年9月2日に、メタルワンなどから総額約4億円の出資を受けたと発表しました。使途は、発電効率の向上に向けた技術開発と、発電装置の量産体制の整備です。日東工業とアイキテックも出資し、メタルワンが鋼材の調達、日東工業が設備の筐体(機器を収める外装)の製造、アイキテックが歯車加工技術の応用を担います。

会社情報

会社名株式会社グローバルエナジーハーベスト
所在地本社・研究所 神奈川県藤沢市湘南台1-1-6。本店(登記)東京都三鷹市中原4丁目26-7
設立2006年9月21日
代表代表取締役 速水浩平(最高技術責任者を兼務)
資本金1億円
調達2025年9月にメタルワンなどから総額約4億円の出資を発表。主要株主にENEOSホールディングス、大和ハウス工業、安藤ハザマ、KOKUYO、タキロンシーアイ、日本道路、アイキテック、日東工業、メタルワン他
事業エネルギーハーベスティング(環境発電)製品の研究開発・製造・販売。波力発電装置の商品化に注力
技術領域波力発電(往復型回転加速式発電、循環型波力揚水発電)、エネルギーハーベスティング(環境発電)
連携メタルワン(鋼材調達)、日東工業(筐体製造)、アイキテック(歯車加工技術の応用)
採択NEDO、総務省、国土交通省、内閣府、東京都、島根県海士町の事業に採択
URLhttps://globalenergyharvest.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

海に囲まれた日本では、港のすぐ先に波という資源があります。グローバルエナジーハーベストは、音や振動の発電から出発し、波力発電にも取り組む会社です。発電の対象を広げてきた歩みが印象的です。

既存の港の岸壁に置ける小型の装置から始める点が、この会社の特徴です。自治体の現場で実証を重ねています。鋼材や筐体の製造を担う企業と組み、量産への道筋を描いている点も見どころです。

港の電気を地元の波でまかなえる場面が積み重なり、離島や港町の電源の選択肢が広がっていくことを、楽しみに待ちたいと思います。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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