Helios「衛星データ解析」を研究|東京科学大学発ベンチャーのサムネイル

株式会社Helios(ヘリオス)

Helios「衛星データ解析」を研究|研究領域=衛星やドローンの画像を読み解く/強み=対話で解析の手順を自動化/将来性=防災と環境の判断を支える

企業紹介|株式会社Heliosとは?

防災やインフラ点検の判断を早める技術として、注目を集める「衛星データ解析」。株式会社Heliosは、その社会実装を目指す、東京科学大学発の宇宙系ディープテック企業です。自然言語で操作できる解析プラットフォームを、自治体やインフラ事業者へ提供しています。

キーワード「衛星データ解析」

衛星データ解析」は、人工衛星が観測した画像から地表の状態を読み取る技術です。従来は、大気による散乱や吸収の影響を取り除く補正や座標の合わせ込みなど、専門の技術者が担う工程が欠かせませんでした。東京工業大学(現・東京科学大学)で衛星開発に携わった佐々木謙一氏らが同社を設立し、この工程を自動化する研究に取り組んでいます。

市場課題|観測データが増えても現場で使いにくい

現状の衛星データ解析の課題|現状は、担い手と費用の両方が壁になる/解析できる技術者が足りない/高精度な観測データは費用が高い

解析できる技術者が足りない

衛星やドローンが集める地理空間情報は急速に増える一方、解析を担う技術者は限られます。GIS(地理情報システム)の専門人材は需要に対して供給が追いつかず、データがあっても解析まで手が回らない現場が少なくありません。情報が使われないまま積み上がると、災害時やインフラ管理で判断が遅れかねません。

高精度な観測データは高価

地表を細かく捉える高精度な観測データは、取得の費用が大きな負担です。分解能(写し取れる細かさ)の高い衛星画像や、ドローンの撮影は、範囲を広げるほど費用が膨らみます。予算の限られる自治体では、必要な頻度で観測する計画そのものを立てるのが困難です。

課題は費用だけではありません。他にも、雲に覆われて地表が写らない期間、センサーごとに異なる解像度や観測時刻のずれ、PDFやExcelに散らばる現地調査の資料、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • GIS地理情報システムの略で、地形や建物、道路などの情報を地図の上に層として重ね、位置と結びつけて扱う仕組みを指す。解析には専用ソフトの操作と専門知識を要するため、扱える人材が限られる。

Heliosの強み|対話で衛星データ解析を自動化

Heliosが「衛星データ解析」の基盤を開発|今後は、対話だけで解析の実行が可能に/解析手順をAIが自動で組み立てる/少量の高精度で安価な情報を補正

解析手順をAIが組み立てる

従来の地理空間解析では、データを探し、座標系をそろえ、解析の手順を組み立てる作業を、専門ソフトの操作で人が積み上げてきました。

Helios Platform」は、日本語の文章で指示すると、AIが解析の手順を自ら組み立てて実行します。利用者が知りたい地域と目的を書くと、必要なデータを探し、標高や土地利用を重ね、地図上に描くまでを続けて処理します。中核にあるのは、長い工程を扱えるLLM(大規模言語モデル)に、自ら手順を決めて実行する機能を組み合わせた仕組みです。複雑な解析の流れを途中で見直しながら実行します。同社は、専門家が数週間から数ヶ月を要していた取得から解析までの工程を、数時間から数日へ短縮できるとしています。

少量の高精度データで補う

高い品質の解析結果を得るには、高精度で高価な観測データを大量にそろえる方法が一般的でした。

同社が用いるのは、少量の高精度データに安価なデータを混ぜ合わせるマルチセンサーフュージョン(複数の観測装置のデータを融合する技術)です。広い範囲を写す低分解能の衛星画像に、局所を細かく写すドローン画像を重ね、広さと細かさを併せ持つ画像を合成します。同じ土台に載せるのは、光学衛星の画像、SAR(電波で地表を観測する合成開口レーダー)の画像、標高データ、交通や建物の情報です。少量の高精度データを基準に安価なデータの誤差を補うため、単一の観測源では読み取れない状態を、費用を抑えたまま把握できます。

FrontJournalの解説
  • マルチセンサーフュージョン種類の異なる観測装置のデータを重ね合わせ、一つの情報として扱う技術を指す。解像度や観測時刻の違いを補い合うことで、少量の高精度データと多数の安価なデータから、費用を抑えたまま精度の高い結果を得る。

衛星データ解析の未来|防災と環境保全への応用

対話できる衛星データ解析が変える未来|この技術が、地球を読む力を広げていく/河川や設備の状態を可視化/鳥獣害対策の立案を支援/観測と解析を束ねる基盤へ

河川や設備の状態を可視化

インフラの管理や防災に使う解析は、オープンベータ版ですでに利用できます。河川の断面を指定すると、地表の高さと水位の変化を断面図として短い時間で描き出せます。送電線やパイプラインの沿線で見つけるのは、草木の繁茂や設備の異常です。老朽化した設備の広域監視や、災害時の被害把握を、現場の担当者の手元で進められます。

鳥獣害対策の立案を支援

イノシシやサル、シカによる農作物の被害対策にも、解析の対象が広がっています。動物そのものは衛星に写らないため、手がかりになるのは地形や植生、土地利用です。同社の事例では、これらから野生動物の移動経路や生息域を可視化し、対策案をその場で相談できます。自治体の担当者が、効果の見通しを持って計画を立てられるようになります。

観測と解析を束ねる基盤を目指す

同社が目指すのは、「誰もが地球の複雑な情報を使えるようにすること」です。その構想を担うのが、衛星やドローン、地上の観測から地球の状態を推定する大規模地球モデル(LEM)です。人工衛星の設計やセンサーの開発まで自社で扱う体制を生かし、観測から解析までを地続きにする計画を描いています。環境の変化や災害の兆しを早く捉え、対策を選べる社会の基盤となることを目指します。

会社概要|Heliosの事業内容・設立背景

衛星開発の縁から創業

株式会社Heliosは、2024年8月30日に設立されました。取締役CEOの佐々木謙一氏は、東京工業大学(現・東京科学大学)を経て、コロラド大学ボルダー校でリモートセンシング(離れた場所から地表を観測する技術)の博士号を取得しています。代表取締役の八島京平氏は、同じ東京工業大学で航空宇宙工学を学び、在学中から宇宙教育の会社を率いました。八島氏が修士課程で小型衛星の開発に取り組んだ際、佐々木氏へ協力を求めたのが創業の縁です。2025年度には「東京科学大学認定ベンチャー」の称号を受けています。

事業会社との連携が進む

同社は、事業会社や公的な事業を通じて社会実装を進めています。2025年8月には、建設コンサルタントの株式会社長大と、環境データ解析システムの社会実装に向けた基本合意書を締結しました。2025年9月には、株式会社アークエッジ・スペースが環境省の「令和7年度(省庁連結型SBIR)環境保全研究費補助金」に採択され、同社は共同事業者として参画しています。同事業は複数の衛星で自然環境の改変やリスクを検知する手法を開発します。

シードで開発と採用を加速

同社は2025年10月、シードラウンドインキュベイトファンドから総額5,000万円を調達しました。シードラウンドは、構想を製品として形にする、ごく初期の段階です。調達した資金は、アルファ版とベータ版の開発、研究開発と事業開発のチームの採用、都市計画や防災、防衛分野での初期事例の創出に充てるとしています。事業の柱は、SaaS(インターネット経由でソフトを提供する形態)型のAIプラットフォームと、解析の受託です。

会社情報

会社名株式会社Helios(Helios Inc.)
所在地東京都千代田区九段南3-7-8
設立2024年8月30日
代表代表取締役:八島 京平。取締役CEO:佐々木 謙一
資本金2,750万円(2025年12月時点)
調達シードラウンドで総額5,000万円(2025年10月/インキュベイトファンド)
事業リモートセンシングデータ解析。解析プラットフォーム「Helios Platform」の開発。データ取得・整備、マルチモーダル解析、コンサルティング・共同研究、解析業務の受託
技術領域衛星データ解析、マルチセンサーフュージョン、大規模地球モデル(LEM)、SAR、GIS
連携株式会社長大(2025年8月・基本合意書)。株式会社アークエッジ・スペース(2025年9月・共同事業者)
採択環境省「令和7年度(省庁連結型SBIR)環境保全研究費補助金」へ共同事業者として参画(2025年9月)。東京科学大学認定ベンチャーの称号(2025年度)
URLhttps://www.helios-rs.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

衛星が地球を撮り続けてきた歴史は長く、画像そのものは年々増えています。それでも現場の判断に届かなかったのは、画像を意味に変える工程が、限られた専門家の手作業に支えられてきたからです。Heliosが取り組む「衛星データ解析」の自動化は、その詰まりを解く試みだといえます。

興味深いのは、出発点がより高価な観測装置ではなく、手元にあるデータの組み合わせ方だった点です。少量の高精度データに安価なデータを混ぜるという発想は、予算の限られる自治体にとって現実的な選択肢になります。衛星の設計から解析までを自社で扱う体制も、観測の設計そのものを解析側から考え直せる強みにつながります。

地球を読む力が、専門家だけのものから現場の道具へ移っていく。その過程を注視したいところです。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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