株式会社フツパーは製造ラインの外観検査をAIで自動化する広島大学発の企業

株式会社フツパー

フツパー「外観検査AI」を研究|研究領域=カメラの画像から・AIが不良を見分ける/強み=AIがその場で判定し・不良品を自動で排除/将来性=検査から・工場全体の自動化へ

企業紹介|株式会社フツパーとは?

製品の傷や異物を、カメラの画像からAIで見分ける技術として、注目を集める「外観検査AI」。株式会社フツパーは、その社会実装を目指す、広島大学発のAI系ディープテック企業です。外観検査AI「メキキバイト」を、食品や電子部品、樹脂部品などを製造する工場へ提供しています。

キーワード「外観検査AI」

「外観検査AI」は、カメラで撮影した製品の画像から、傷・汚れ・異物といった不良をAIが見分ける検査システムです。特徴は、良否の基準を人が細かく数値で決めなくても、画像の学習をもとに違いを判定できる点にあります。焼き菓子や錠剤の製造ラインで、人が一つずつ目で確かめていた検査を自動化できます。

市場課題|製造現場の検査に人手と調整の手間がかかる

現状の外観検査の課題|現状は、労働力不足と基準設定の手間で検査が滞る恐れ|検査の人手確保が・困難になっている/従来の画像検査は・良否の基準設定が煩雑

製造業で検査の人手確保が困難

製造業では、働き手の確保が難しくなっています。2025年版「ものづくり白書」(経済産業省などによる製造業の年次報告書)でも、労働力不足は多くの事業者が挙げる課題です。このままでは目視検査に人手が回らず、生産を増やしたくても検査が追いつかなくなる恐れがあります。

画像検査は良否の基準設定が煩雑

従来の画像検査は、良否の条件を人が数値で決めるルールベース方式(決めた条件に当てはめて判定する方式)が主流で、調整に手間がかかります。形や色が一つずつ違う食品では、条件を厳しくすると良品まで不良と判定し、緩めると不良を見逃しやすくなります。調整が追いつかない製品では、目視検査を続けることになりかねません。

他にも、検査員ごとに異なる判定の目安、長時間の作業による集中力の低下、品種の切り替えに伴う検査条件の見直し、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • ルールベース方式明るさや寸法といった判定の条件を人があらかじめ数値で決め、画像がその条件に当てはまるかで良否を判断する方式を指す。条件が明確な部品に向く一方、見た目の差が一定しない製品では調整に手間がかかる。

フツパーの強み|「外観検査AI」を開発

フツパーが「外観検査AI」を開発|今後は、AIで少ない人数でも検査が可能に|カメラとAIで・検査を自動化/画像から学び・再学習で精度を向上

カメラとAIで検査を自動化

目視検査は、検査員が製品を一つずつ目で確かめるため、検査できる量が人数と作業時間で決まります。

同社の外観検査AI「メキキバイト」は、製造ラインにカメラと照明を取り付け、流れる製品を撮影し、良否をAIで判定するシステムです。判定には現場のパソコンに載せたエッジAI(サーバーでなく現場の機器の中で動くAI)を使い、画像をその場で処理します。不良と判定した製品は、ラインの制御装置と連携した排除機構で取り除く仕組みです。照明とカメラの選定から排除機構との連携まで、同社が一括で担います。確認作業を機械に任せられるため、検査員の負担が減り、少ない人数でも出荷前の検査を続けられるようになります。

画像から学び再学習で精度を向上

ルールベース方式の画像検査では、製品の形や色の変化に合わせて、人が判定の条件を設定し直す必要があります。

「メキキバイト」は、製品の画像をAIに学習させ、良否を見分ける基準を作ります。導入後も画像を集め続け、AIの再学習(新しく集めた画像で判定の基準を学び直すこと)によって精度の向上を図り、新しい品種の追加にも対応可能です。判定はライン上で行い、結果は管理用のクラウド「Hutzper Insight」で数値やグラフとして確認できます。条件が明確な項目では、AIの判定にルールベース方式を組み合わせることもできます。判定の条件を設定し直す手間が減り、形や色がそろわない食品でも検査の自動化が容易です。

FrontJournalの解説
  • エッジAIインターネットの先のサーバーではなく、工場のパソコンやカメラといった現場の機器の中で計算を行うAIを指す。判定に使う画像を外部のサーバーへ送らずに処理できるため、判定の結果を短い時間で返せる。

外観検査AIの未来|工場全体の自動化への応用

工場の外観検査AIが変える未来|フツパーの技術を検査から工場全体へ|食品から・電子部品まで導入拡大/人員配置と研究開発へ・AIを展開/フツパーは工場全体の・自動化を目指す

食品から電子部品まで導入が拡大

「メキキバイト」は、焼き菓子やナッツといった食品から、ゴム製品、ネジ、電子基板、錠剤まで、幅広い業種の製品の検査に使われています。同社の累計取引社数は、2026年6月時点で270社に達しました。料金は月額制のサブスクリプション(定額で継続して利用する契約)が基本のため、従来の外観検査AIに比べて導入時の投資のリスクを抑えて始められます。人手の確保が難しい中小規模の工場でも、検査の自動化に取り組みやすい仕組みです。

人員配置と研究開発へAIを展開

同社は、外観検査に加えて、工場の人員配置と研究開発の現場にもAIを提供しています。「スキルパズル」は、従業員のスキルや資格、勤務条件を考慮して、シフトの作成と人員の配置を支援するAIです。研究開発の現場向けには、ロート製薬と共同開発した「リアラボAI」を提供しています。データの解析から処方(製品に配合する成分とその割合)の設計、実験ロボットの制御までを、対話を通じて進められるAIです。

工場全体の自動化を目指す

同社は、外観検査にとどまらず、工場全体の自動化と最適化を目指しています。さらにその先では、サプライチェーン(原材料の調達から出荷までの一連の流れ)全体の最適化も構想しています。2026年5月にはタイのバンコクに駐在員事務所を開設し、東南アジアでの市場調査と導入支援の拠点としました。国内の工場で重ねてきた導入の経験を、海外の製造ラインにも広げる方針です。

会社概要|フツパーの事業内容と設立背景

広島大学出身の3人で創業

株式会社フツパーは、2020年4月に、広島大学工学部を卒業した大西 洋氏を中心に設立されました。共同創業者の黒瀬 康太氏と弓場 一輝氏も広島大学の出身です。同社は、広島大学の大学発ベンチャー一覧に掲載された広島大学発スタートアップです。社名は、リスクを恐れず大胆に物事をやり遂げる姿勢を表すヘブライ語に由来します。

表彰や大手企業との提携

同社は2021年、関西の有望な新興企業を選ぶ「J-Startup KANSAI」に選ばれました。2024年には「FOOMAアワード2024」(食品機械の展示会FOOMA JAPANの表彰)で審査委員会賞、2025年には「CEATEC AWARD 2025」(電子機器とITの展示会CEATECの表彰)でネクストジェネレーション部門賞を受けています。2025年3月にはロート製薬と資本業務提携を結びました。技術顧問は、カーネギーメロン大学でコンピュータビジョン(画像をコンピュータで解析する研究分野)を研究する金出武雄氏です。

シリーズAを経て2025年上場

同社は2022年8月、ベンチャーキャピタルのANRIを中心とするシリーズAで約4.2億円を調達し、シードを含む累計の調達額は約5.4億円となりました。シリーズAは、製品の販路拡大と事業の本格展開に向けた段階の資金調達を指します。2025年3月にはオリックスや富士電機、ロート製薬などを引受先とする第三者割当増資(特定の相手に新株を引き受けてもらう資金調達の方法)を行い、同年12月に東京証券取引所グロース市場(成長途中の企業向けの株式市場)へ上場しました。

会社情報

会社名株式会社フツパー(Hutzper Inc.)
所在地大阪府大阪市淀川区西中島1-11-16 新大阪CSPビル北館4階
設立2020年4月1日
代表代表取締役社長CEO:大西 洋。取締役副社長COO:黒瀬 康太。取締役CTO:弓場 一輝
資本金834,700,000円
上場東京証券取引所グロース市場(2025年12月24日・証券コード478A)
従業員111名(アルバイト・インターンを含む)
調達2021年1月:約1億円(ANRI、広島ベンチャーキャピタルほか)。2022年8月:シリーズA 約4.2億円(ANRIほか・シードを含む累計約5.4億円)。2025年3月:第三者割当増資(オリックス、富士電機、ロート製薬ほか)
事業外観検査AI「メキキバイト」。人員配置AI「スキルパズル」。研究開発AI「リアラボAI」等
技術領域画像認識AI。エッジAI。数理最適化
連携ロート製薬(2025年3月・資本業務提携)。カーネギーメロン大学 金出武雄氏(技術顧問)
採択J-Startup KANSAI(2021年11月)。FOOMAアワード2024 審査委員会賞。CEATEC AWARD 2025 ネクストジェネレーション部門賞
URLhttps://hutzper.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

工場の出荷前の検査は、製品の品質を最後に守る工程でありながら、長く人の目に任されてきました。フツパーは、その検査をカメラとAIで自動化してきた企業です。料金を月額制にしたことで、中小規模の工場でも始めやすい形に整えています。

注目したいのは、AIのモデルを作るだけでなく、照明やカメラの選定から不良品の排除までを一括で担い、導入後も再学習で精度の向上を図り続ける点です。現場で使い続けられる仕組みを整えたことが、270社という取引の広がりにつながったと考えます。その取り組みは、人員配置や研究開発のAIにも広がっています。

検査の自動化を入口に、工場全体の自動化へ進む同社の今後の展開に期待しています。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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