ハイドロラボは空気に触れると燃えやすい材料を空気を遮って分析する広島大学発の企業

ハイドロラボ株式会社

ハイドロラボ「空気非接触分析」を研究|研究領域=空気で変質する・材料を分析/強み=合成から分析まで・一か所で対応/将来性=水素源の・試薬化を計画

企業紹介|ハイドロラボ株式会社とは?

水素を蓄える材料や電池材料を、空気で変質させずに調べる技術として、注目を集める「空気非接触分析」。ハイドロラボ株式会社は、その受託に取り組む、広島大学発のエネルギー系ディープテック企業です。空気で変質しやすい材料の受託分析や、試料・試薬の注文製作を、材料開発に取り組む企業などへ提供しています。

キーワード「空気非接触分析」

「空気非接触分析」は、試料を空気に触れさせないまま、準備から測定までを行う材料分析の方法です。特徴は、酸素や水分と反応しやすい材料を、変質する前の状態で測定できる点にあります。エネルギー材料を開発する現場で、材料が持つ本来の性質を確かめられます。

市場課題|空気で変質する材料は正確に測りにくい

現状の材料分析の課題|現状は、試料の変質で正確な測定が困難|空気で変質し・正確に測りにくい/空気を遮る設備の・負担が大きい

空気で変質し正確に測りにくい

水素を蓄える材料や電池の材料は空気に触れると変質しやすく、正確な測定が困難です。これらに多く含まれるリチウムやマグネシウムといった軽元素(原子番号が小さく軽い元素)の化合物は、酸素や水分と反応しやすく、なかには発火するものもあります。このままでは測定中に試料が変わり、開発した材料の本来の性能を見誤りかねません。

空気を遮る設備の負担が大きい

空気を遮る分析は、専用の設備と手順を要し負担が大きくなります。不活性ガス(ほかの物質とほとんど反応しない気体)で満たしたグローブボックス(手袋越しに中を扱う、外気を遮った箱)や外気を遮断できる試料容器を使い、試料を大気にさらさずに装置へ運ぶことが必要です。分析の種類ごとにこの体制を整えることは、材料を開発する企業にとって容易ではありません。

他にも、輸送中に試料が空気に触れる恐れ発火への対策、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 軽元素周期表で原子番号が小さく、軽い元素を指す。リチウム・ナトリウム・マグネシウムなどが該当し、水素を多く蓄える材料や電池の材料に使われる。多くは酸素や水分と反応しやすく、空気を遮った取り扱いが求められる。

ハイドロラボの強み|「空気非接触分析」を研究

ハイドロラボが「空気非接触分析」を研究|今後は、気体の制御で正しい評価が可能に|空気を遮ったまま・試料を測定/合成から分析まで・一か所で対応

空気を遮ったまま試料を測定

不活性ガスを流しながら測る方法は、周りの気体を完全に制御した環境で測る方法より、精度が劣るとされます。

同社は、「空気非接触分析」を受託分析として提供しています。送付前に試料の取り扱い方法を打ち合わせ、輸送中に空気に触れる恐れに備えます。試料を扱うのは、不活性ガスで満たした環境や、真空の中です。X線回折(X線を当てて結晶の構造を調べる分析)や、温度を上げたときの重さの変化を調べる熱重量分析などを、この状態で行えます。試料の周りで気体の制御を徹底した環境で測るため、精度の高い分析ができ、材料を開発する企業は、試作した材料の性質を正しく評価できます。

合成から分析まで一か所で対応

合成や前処理を別の場所で行うと、工程の間で移すたびに試料が大気にさらされる恐れがあります。

同社の受託分析の対象は、前述の分析のほか、PCT測定(一定の温度で、水素の吸蔵量と圧力の関係を調べる測定)や、空気に触れさせない電子顕微鏡での観察などです。さらに、空気中で燃えやすい、リチウムやマグネシウムを含む化合物を、ボールミリング法(金属の球と一緒に容器を回して粉を混ぜ、反応させる方法)などで注文に応じて合成します。合成から分析まで一か所で任せられるため、試料を大気にさらす機会が減り、依頼する企業は自前で設備をそろえる負担も減らせます。

FrontJournalの解説
  • 不活性ガスほかの物質とほとんど反応しない気体を指す。アルゴンやヘリウムが代表例である。容器や装置の中をこの気体で満たして空気を追い出すことで、酸素や水分と反応しやすい試料を変質させずに扱える。

軽元素を扱う技術の未来|電池・水素・アンモニアへの応用

軽元素を扱う技術が変える未来|軽元素の技術を電池・水素・アンモニアへ|電池や燃料電池の・特性を評価/水素源を合成し・試薬化を計画/アンモニアの・燃料利用を目指す

電池や燃料電池の特性を評価

電池や燃料電池の特性評価も、同社の受託分析に含まれます。充放電の測定では、リチウムイオン電池の負極(充電時にリチウムを蓄える側の電極)やキャパシタ(電気を短時間で蓄え、放出する部品)の特性を評価しています。燃料電池で測るのは、出力や出力の変動、変換効率です。こうした評価は、性能を高める材料開発の判断に役立ちます。

水素源を合成し試薬化を計画

同社は、燃料電池の水素源となるアンモニアボラン(窒素・ホウ素・水素からなる固体の化合物)の大量合成に取り組み、2022年時点で試薬化して販売する計画を掲げていました。アンモニアボランは空気中で安定しており、重さの約20%に当たる水素を含みます。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の事業(2020年7月〜2025年3月)では、琉球大学を代表とする体制のもと、同社が大量合成技術の開発と安全性評価を担当しました。水素源としては、高圧の水素タンクを使いにくいキャンプや工事現場、非常用電源での利用が想定されています。

アンモニアの燃料利用を目指す

同社は、アンモニアを燃料として使うエネルギー利用技術の普及を目指しています。アンモニアは、多くの水素を含み、効率よく蓄えて運べる物質です。アンモニアを分解して水素を得る水素発生器などの技術開発にも取り組んできました。企業理念として、化石燃料に代わるエネルギー利用技術で、エネルギー問題と二酸化炭素の排出問題の解決に向けて努力を続けることを掲げています。

会社概要|ハイドロラボの事業内容と設立背景

広島大学の研究成果から創業

ハイドロラボ株式会社は、2009年3月に広島県東広島市で設立された、広島大学発のベンチャー企業です。経済産業省の大学発ベンチャーデータベースでは、大学の研究成果をもとにした「研究成果ベンチャー」に分類されています。事業の軸は、軽元素を用いたエネルギー貯蔵技術です。代表は市川友之氏で、広島大学の市川貴之教授と宮岡裕樹准教授が技術顧問を務めています。2011年には再生可能エネルギーに関する業務を事業目的に加え、2021年3月には本店を移転しました。

NEDO事業と共著論文

同社は、前述のNEDOの事業「移動式FC用水素源アンモニアボランの社会実装に向けた先端技術開発」(FCは燃料電池)に参画しました。また2023年には、同社に所属する研究者が広島大学の研究者との共著論文を発表しています。この論文では、リン酸ジルコニウム(リンとジルコニウムを含む固体の化合物)がアンモニアを吸収する性質を、水分のある環境で調べました。

受託分析と試薬の注文製作

同社は、空気を遮った受託分析や、試料・試薬の注文製作と販売等を手がけています。2012年3月には、交流100Vの電源があれば持ち運んで使える簡易アンモニアガス発生器「GASMOBY」を発売し、同年10月には重アンモニア(水素を重水素に置き換えたアンモニア。重水素は中性子を1個多く持つ水素)の製造を始めました。ほかにも、実験の代行や保有する装置の貸し出し、再生可能エネルギーを学ぶ実習の技術支援を行っています。

会社情報

会社名ハイドロラボ株式会社(Hydrolabo Inc.)
所在地広島県東広島市入野中山台4-10-12
設立2009年3月
代表市川 友之。技術顧問:広島大学 教授 市川 貴之、准教授 宮岡 裕樹
資本金100万円
従業員1名(2022年2月時点)
事業空気非接触環境での受託分析。試料・試薬の注文製作と販売。重アンモニアの製造・販売。簡易アンモニアガス発生器「GASMOBY」
技術領域軽元素を用いたエネルギー貯蔵技術。水素・アンモニアのエネルギー利用技術
連携広島大学(技術顧問)。琉球大学、崇城大学ほか(NEDO事業)
採択NEDO「移動式FC用水素源アンモニアボランの社会実装に向けた先端技術開発」(2020年7月〜2025年3月)
URLhttp://hydrolabo.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

水素やアンモニアを使うエネルギーの研究では、材料の性能を正しく測ることが開発の出発点になります。空気に触れると変質する材料を、その性質を保ったまま測る技術は、研究を支える基盤です。ハイドロラボは、その基盤を東広島から材料開発の現場へ届けています。

注目したいのは、分析の受託にとどまらず、試料の合成水素源の大量合成の技術開発にも携わってきた点です。反応しやすい材料を扱う技術そのものが、次のエネルギー材料を世に送り出す力にもなり得ます。分析と合成を同じ場所で担えることは、材料を開発する側にとって心強い支えです。

広島で積み重ねられた軽元素の取り扱い技術が、水素とアンモニアを使う社会を足元から支えることを期待しています。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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