アイラボ「手書き認識」を開発

アイラボ株式会社

アイラボ「手書き認識」を開発

企業紹介|アイラボ株式会社とは?

電子教材の解答欄などで、手書きの文字や式をデータに変える「手書き認識」。アイラボ株式会社は、その社会実装を目指す、東京農工大学発のAI系ディープテック企業です。文字に加えて数式・物理式・化学式まで読み取る認識エンジン「iHandify」を開発し、アプリに組み込む形と、クラウドから呼び出す形で提供しています。

キーワード「手書き認識」

「手書き認識」は、画面や紙に書いた文字や記号を、コンピューターが扱える文字データに変換する技術です。アイラボは、筆の動きを座標で記録して読む「オンライン認識」と、静止画像から読む「オフライン認識」の両方を提供しています。対象は文字だけでなく、数式や化学式のように位置関係で意味が決まる記号にも及びます。

市場課題|手書きの式は読み取りと採点に手間がかかる

現状の手書き読み取りの課題

式の配置が読み取りを難しくする

手書きの数式や化学式は、文字の並びだけでなく配置が意味を決めるため、機械が読み取りにくい入力です。分数は上下、累乗は右上に書き、化学式では原子数を右下、イオンの電荷を右上に小さく添えます。配置を読み誤ると式の意味が変わるため、デジタル化した後にも人の目による確認が残りやすくなります。

手書きの採点に工数がかかる

手書きの答案や帳票は、人が読んで入力し採点すると、工数のかかる作業です。電子教材では、画面に書いた解答を読み取って正誤判定まで進められれば、入力と採点にかかる人手を減らせます。読み取りを人の手に残したままでは、学習者や帳票の数が増えるほど、採点と転記の工数も増え続けます。

他にも、日本語の縦書きで書かれた文字の読み取り、「dL」「えん・こ」のような単位の判別、ベトナム語など多言語の手書き文字への対応、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 正誤判定解答が正しいか誤りかを、機械が自動で判定する処理を指す。選択式だけでなく、手書きの解答も対象にできる。

アイラボの強み|「手書き認識」を開発

アイラボが「手書き認識」を開発

構造解析で式の配置まで認識

文字を1字ずつ切り出して読む方式では、分数の上下や累乗の右上といった位置の関係を捉えにくく、式全体の意味を取り出しにくくなります。

アイラボの数式認識エンジン「iHandify Math」は、ディープラーニング(深層学習)と構造解析(記号どうしの位置関係を調べる処理)の組み合わせで、分数やルートを含む式を読み取ります。複雑な式も約1秒でテキストに変換するとされています。出力はLaTeX(数式を表すテキスト形式)で、自動採点ソフトへ連携できる形式です。化学式の「iHandify Chemistry」の対象は、元素記号・原子数・イオン・化学反応式です。これらのエンジンにより、解答を打ち直さずに採点へ回せ、入力の手間が減ります。

筆跡を使い手書きを即時に認識

静止画像から読む方式では、手がかりが書き終えた後の画像に限られ、書き順や筆の動きは使えません。

アイラボの「iHandify Ink」は、画面に書く筆跡を位置の座標データとしてリアルタイムに取得し、書き順も含めて認識するオンライン認識のエンジンです。紙の答案や帳票向けは、静止画像から読むオフライン認識(OCR)の「iHandify OCR」です。iHandifyには、日本語・英語・ベトナム語の文字から、数式・物理式・化学式まで、用途に応じたエンジンがあります。画面に書いた解答はその場で認識でき、紙の答案も取り込んで読めるため、入力と転記の工数が減ります。

FrontJournalの解説
  • オンライン認識タブレットなどの画面に書いた筆跡を、位置の座標と書き順の情報として取得し、文字を判別する方式を指す。静止画像を読む方式より手がかりが多い。

手書き認識の未来|教育現場から業務・研究へ

手書き認識が変える未来

電子教材の解答入力で採用

手書き認識は、電子教材の解答入力と正誤判定の場面で、すでに実用になっています。アイラボは、2014年に教育業界での採用を始め、タブレットを使った教材に適用しています。既存ユーザーの電子教材から化学式を認識したいという要望があり、数式認識の技術を応用して、化学式の認識エンジンの開発と製品化が決まりました。開発を決めた当時は、画面に手書きする方式の化学式認識が市販されていなかったことも理由でした。

APIで導入期間を短縮

クラウドで使えるREST API(外部から機能を呼び出す仕組み)は、認識サーバーの構築と運用が不要で、導入にかかる期間を抑えられる点が特徴です。提供開始は、2026年5月20日付で告知されています。月間3,000リクエストまで無料の版もあり、最短即日で導入できるとされています。機密性の高いデータを扱う場合の選択肢は、外部の認識サーバーへデータを送らずに認識を完結できるNative SDK(アプリに組み込む開発キット)です。

精度向上と可能性を追求

アイラボは、手書き認識のさらなる精度向上と可能性の追求を掲げています。2023年に化学式とベトナム語、2025年に物理式のエンジンをリリースし、対象は文字から理科の式へ広がっています。個別の対応も行っており、例は字種の追加や外字の登録などです。手書きを扱う教育・業務・研究のシステムに認識エンジンが組み込まれれば、現場の担当者が入力と転記に費やす時間を減らせます。

会社概要|アイラボの事業内容・設立背景

東京農工大学の研究が源流

アイラボは、2011年12月28日に設立された東京農工大学発の企業です。技術の源流は、同大学の中川研究室で1980年代に始まった手書き文字認識の研究にあります。1990年から2005年には、科学研究費補助金による方式研究、情報処理推進機構(IPA)の助成による研究開発、大手企業数社との共同研究開発が続きました。2008年には、JST(科学技術振興機構)の「大学発ベンチャー創出推進」委託研究開発で、ビジネス化を目標に開発を進めました。

採択・連携

2012年には、MetaMoJi社の「7notes with mazec」に採用され、スマートフォンや電子辞書への搭載が始まりました。2015年から2016年には、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「中堅・中小企業への橋渡し研究開発促進事業」で、東京農工大学中川研究室との共同開発テーマ「自動採点システム」が採択されています。2021年に数式認識、2024年に化学式認識で、「中小企業優秀新技術・新製品賞」のソフトウエア部門奨励賞を受けました。

SDKとAPIで提供

事業は、手書き認識技術の研究開発・販売・サービス、手書きアプリケーションの研究開発・販売・サービス、手書きインターフェースの研究開発です。クラウドは初期費用0円でリクエスト数に応じた課金、Native SDKは購入による初期費用でリクエスト数は無制限、年間保守は購入後1年が無償です。筆順や文字のバランス、とめ・はね・はらいから字形の整い具合を自動で判定する、書写学習支援「iHandify CAS」も提供しています。

会社情報

会社名アイラボ株式会社
所在地東京都武蔵野市中町1-11-4 武蔵野ニッセイプラザ4F
設立2011年12月28日
代表ファン ヴァン チューエン(代表取締役)。取締役は中川 正樹
資本金3,440万円
事業手書き認識技術の研究開発・販売・サービス。手書きアプリケーションの研究開発・販売・サービス。手書きインターフェースの研究開発
技術領域手書き認識。オンライン認識、オフライン認識(OCR)、数式・物理式・化学式の認識、書写学習支援
連携東京農工大学中川研究室(NEDO「自動採点システム」の共同開発、2015年から2016年)。MetaMoJi社の「7notes with mazec」に採用(2012年)
採択NEDO「中堅・中小企業への橋渡し研究開発促進事業」(2015年から2016年)/中小企業優秀新技術・新製品賞 ソフトウエア部門奨励賞(2021年、2024年)
URLhttps://ilabo.biz/

編集後記|FrontJournal編集部より

手書きは、学校の答案から現場のメモまで、いまも身近な入力方法です。アイラボは、その手書きを文字だけでなく数式や化学式の形まで読み取る技術を磨いてきました。土台は、大学の研究室で積み重ねた長年の研究です。

注目したいのは、書き順を含む筆跡を使うオンライン認識と、画像から読むオフライン認識を使い分けられる点です。提供の形は、SDKとREST APIの両方です。機密性を重んじる環境にも、クラウドで素早く試す場面にも合わせられます。

手書きがそのままデータになる流れが教育現場に広がれば、採点や転記に使う時間を減らせます。化学や物理の式へ広がる対応範囲が、今後どこまで伸びるのかに期待します。今後の焦点は、認識できる対象が文字や式からさらに広がるかどうかです。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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