イルミメディカル「血管内光照射」を研究|心臓と血管を描いたイラスト

イルミメディカル株式会社

イルミメディカル「血管内光照射」を研究|研究領域=カテーテルで・体の奥へ光を届ける/強み=血管の壁ごしに・患部を照らす/将来性=がん以外の病気にも・治療を広げる

企業紹介|イルミメディカル株式会社とは?

内視鏡や開頭手術でしか届けにくかった光を、血管を通り道にして患部まで運ぶ「血管内光照射」。イルミメディカル株式会社は、その社会実装を目指す、名古屋大学発の医療機器系ディープテック企業です。中核にあるのは、心筋梗塞などの治療に使う血管内治療(カテーテルを血管に通して行う治療)の技術を応用した光照射システム「ET-BLIT」です。

キーワード「血管内光照射」

「血管内光照射」は、細い管を血管に通し、体の内側から目的の組織へ光を当てる手法です。光は体の組織で吸収と散乱を受けるため、体の外から当てる方法では深い場所ほど弱まりますが、血管を経路にすれば、光源が臓器のすぐ近くまで届きます。光に反応する薬剤と組み合わせることで、深部にある臓器の治療に道が開けると期待されています。

市場課題|光を使うがん治療は、光源を届けられる経路で適応が決まる

現状の光によるがん治療の課題|現状は、光源を運ぶ経路が限られ治療できる臓器が狭い|光治療の適応は・照射の経路で決まる/体の中からでも・光を運びにくい

光治療の適応は経路で決まる

光線力学療法(光に反応する薬剤を投与し、レーザー光を当ててがん細胞を壊す治療)を使える病気の範囲は、薬剤の効き目よりも光源を運べる経路で決まります。国内では早期の肺がんや食道がんで内視鏡から、原発性の悪性脳腫瘍では開頭手術中に照射する形などで保険診療に使われてきました。経路を確保しにくい膵臓のような臓器では、薬剤が効く仕組みがあっても治療の選択肢が増えにくい状況です。

体の中からでも光を運びにくい

体の中から当てる方法でも、光が届く範囲は限られます。内視鏡や針を使う照射でも、光が及ぶのは管の内側や針の周りです。離れた光源から光ファイバーで送る方式でも、長い経路を通るあいだに減衰が生じ、奥の臓器へ十分な量を届けにくいままです。

他にも、体内に届いた光の量を確かめにくいこと、照射中に組織が温まること、扱える医療機関が限られること、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 光線力学療法光に反応する薬剤を投与したうえで病変にレーザー光を当て、その部位のがん細胞を選んで壊す治療法を指す。日本では早期の肺がんや食道がん、原発性の悪性脳腫瘍などで保険診療に使われている。

イルミメディカルの強み|「血管内光照射」を開発

イルミメディカルが「血管内光照射」を開発|今後は、血管から体の奥へ光照射が可能に|ET-BLITで・体の内側を照らす/先端の光源で・光の損失を防ぐ

血管から体の内側を照らす

体の外から当てる照射では、光が届く深さが浅く、奥にある臓器まで及びにくくなります。

同社が開発する「ET-BLIT」は、心筋梗塞などの治療で使われてきた血管内治療の技術を、光の運搬に応用した装置です。太ももの付け根から細いカテーテルを血管に入れ、肝臓や腎臓など目的の臓器の近くまで進めたうえで、血管の壁ごしに光を当てます。血管を通り道に使うため、途中の組織を切り開かずに患部へ近づけます。ブタを使った実験では、肝臓や腎臓へ至る評価した血管のすべてで、壁を越えて外側まで光が届くことを確認できました。動物実験の段階ではありますが、開胸や開腹をせずに奥の臓器へ光を届けられる見通しです。

先端の光源で損失を防ぐ

光ファイバーで光を送る方式では、失われる分を見込んで出力を上げる必要があり、出射する先端と組織の表面に熱がかかりやすくなります。

同社は、カテーテルの先端に超小型半導体レーザーを載せ、患部のすぐそばで光を発生させます。光線力学療法や光免疫療法で使う薬剤は種類ごとに反応しやすい波長が違うため、選べる光源は、664nmの赤色光や730nmの近赤外など、薬剤に合う波長のものです。装置は、発熱を抑える冷却機構と、安全を監視するセンサー、照射した光の向きを把握する仕組みを備えます。光源が患部の近くにあるため、経路で失われる光はわずかです。弱い出力でも必要な量の光が届き、熱による体への負担を抑えられると見込まれます。

FrontJournalの解説
  • 近赤外目に見える赤い光よりわずかに波長が長く、人の目には見えない光を指す。生体の組織を通り抜けやすい性質があり、光免疫療法をはじめとする体内の治療や計測で広く使われる。

血管内光照射の未来|装置を医療現場向けに仕上げ、がん以外の病気へ広げる

体の奥に届く光が変える未来|試作機の完成から、がん以外の病気へ|動く試作機が・すでに完成/2028年の・臨床試験入りが目標/がん以外の病気へ・応用を目指す

実際に動く試作機が完成

先端に超小型レーザーを載せた試作機が、すでに完成しています。2025年11月には、東京で開かれたレーザー技術の展示会で、開発サンプルが公開されました。同社は郡山研究所を開設し、機器の開発と評価を行う体制も整えています。開発は、動物で効果を確かめる段階と並行して、医療機器としての製品化へ進んでいます。

2028年の臨床試験入りへ

同社はいま、医療現場で使える装置へ仕上げる段階です。試作機は、動物実験で使う水準から医師が扱える形へと仕様を詰めています。照射の条件を設定して光源を動かす操作装置「コンソール」についても、量産を見据えた設計が始まりました。想定しているのは既存の心臓カテーテル室でそのまま使える装置で、目標は2028年の臨床試験入りです。

がん以外の病気へ応用を目指す

同社が目指すのは、血管内光照射をがん以外の病気へ広げることです。光に反応する薬剤の開発は各所で進んでおり、光を届ける手段があれば、使える場面は広がります。想定しているのは、アルツハイマー病などの神経の病気や、細胞の働きを光で促す再生医療です。体の奥にある臓器を光で治療できるようになれば、大きく切らずに済む治療の選択肢が広がります。

会社概要|名古屋大学の血管内光照射の研究から生まれたイルミメディカル

名古屋大学の研究から創業

イルミメディカル株式会社は、2023年2月に名古屋市で設立された、名古屋大学発のスタートアップです。土台になったのは、名古屋大学大学院医学系研究科の佐藤和秀特任講師と、朝日インテック株式会社の研究グループが2022年10月に公表した、ET-BLITの開発成果です。この成果は医学雑誌「EBioMedicine」の電子版に掲載されました。

代表取締役社長の塚本俊彦氏は、この論文の筆頭著者です。塚本氏は朝日インテックの研究員時代に、有望な技術でも、採算の見通しが立たずに実用化に至らない状況を経験しています。技術を中途半端に終わらせないために、2023年に同社を設立しました。

国内企業との連携と国の採択

同社は、装置の要素ごとに国内メーカーと組んでいます。光源では、日亜化学工業株式会社と超小型半導体レーザーを搭載したカテーテルを共同開発し、2025年11月に発表しました。操作装置では、太平洋工業株式会社とコンソールを共同開発し、量産化に向けた提携を2026年8月に公表しました。2026年6月には、国の「成長型中小企業等研究開発支援事業」への採択も決まっています。

シリーズAで約5億5000万円

同社は、シリーズA(試作した製品の事業性を検証し、開発を本格化させる段階の資金調達)で、総額約5億5000万円を調達しています(2026年4月時点)。リードインベスター(中心となって出資した投資会社)は UntroD Capital Japan で、地域の金融機関も参加しています。従業員は、役員を除いて2026年7月時点で13名です。

会社情報

会社名イルミメディカル株式会社(Illumi Medical Inc.)
所在地本社:愛知県名古屋市守山区桜坂4丁目201番地 クリエイション・コア名古屋207号室。郡山研究所:福島県郡山市富田町字満水田27番8
設立2023年2月15日
代表代表取締役社長:塚本 俊彦
資本金293,395,110円(2026年3月1日時点)
従業員13名(2026年7月1日時点・役員を除く)
調達シリーズA 総額約5億5000万円(2026年4月時点)。リードインベスター:UntroD Capital Japan
事業血管内光照射システム「ET-BLIT」および光照射デバイスの研究開発
技術領域血管内治療技術を応用した深部組織への近赤外光の照射
連携名古屋大学。日亜化学工業株式会社(超小型半導体レーザー光源の共同開発)。太平洋工業株式会社(コンソールの共同開発・量産化)
採択成長型中小企業等研究開発支援事業(2026年6月公表)
URLhttps://illumimedical.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

光でがんを治すという発想は、ずいぶん前からありました。それでも適応が広がらなかった理由が「薬ではなく光のほうが届かない」ことにあった、という整理の仕方が新鮮でした。イルミメディカルは、その一点だけを解きにいっています。

面白いのは、まったく新しい装置を作ったわけではない点です。心臓や脳の血管の治療で日々使われているカテーテルという既にある道具の先端に、光源を載せた構成です。だからこそ、既存のカテーテル室でそのまま使えるという話につながります。技術の飛躍より、組み合わせの妙で壁を越えようとする姿勢に惹かれます。

2028年の臨床試験入りという目標まで、越えるべき関門は多く残っています。体の奥まで光が届く日を楽しみに待ちたいと思います。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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