環境電子株式会社はメダカの動きで水道原水の毒物を監視する装置を開発する福岡市の企業

環境電子株式会社

環境電子「バイオアッセイ」を研究|研究領域=メダカの反応で・水の毒物を検知/強み=メダカの群れを・カメラで自動解析/将来性=国内から海外へ・監視を広げる

企業紹介|環境電子株式会社とは?

生き物の反応から、水道の原水(浄水処理をする前の水)に混じった毒物をいち早く見つける技術として、注目を集める「バイオアッセイ」。環境電子株式会社は、その普及に取り組む、福岡市発の環境系ディープテック企業です。ヒメダカ(黄色みを帯びた体色のメダカの品種)の動きをカメラで見守る水質自動監視装置「メダカのバイオアッセイ」を、浄水場や食品工場などへ提供しています。

キーワード「バイオアッセイ」

「バイオアッセイ」は、生き物の反応を手がかりに、水や物質が生物に与える影響を調べる試験方法です。特徴は、原因となる物質を特定しなくても、生き物に影響が出る水の異常を捉えられる点にあります。浄水場では、川から取り入れた水を魚が泳ぐ水槽へ流し、異常がないかを24時間見守る用途で使われています。

市場課題|川の水質事故は予告なく起き、取水監視の計器では想定外の毒物を捉えにくい

現状の取水監視の課題|現状は、事故で想定外の毒物が流れ込み計器では捉えにくい|河川の水質事故で・取水停止も発生/計器は想定外の・毒物を捉えにくい

河川の水質事故で取水停止も発生

国土交通省が集計した2024年の一級河川の水質事故(油や化学物質が川へ流れ出る事故)は592件で、上水道の取水停止(浄水場が川から水を取り入れるのを一時的に止めること)に至った事故も9件ありました。事故の約8割は油類の流出で、一部はシアン(毒性の強い化合物)や農薬など化学物質の流出です。事故の発見が遅れると、汚染された原水を浄水場が取り込む恐れがあります。

計器は想定外の毒物を捉えにくい

浄水場の水質計器は、あらかじめ決めた項目を測る設備のため、想定外の毒物は捉えにくいのが弱点です。計器が測るのは濁度(水の濁り具合)やpH(水の酸性・アルカリ性の度合い)などの項目であり、川へ流れ込む物質は事故ごとに異なります。項目に無い毒物が混ざると、計器だけでは異常に気づくのが遅れる恐れがあります。

他にも、無人の取水施設での発見の遅れ、夜間・休日の監視体制の手薄さ、大雨で濁った原水の監視の難しさ、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 水質事故河川や水路に油や化学物質などが流れ出し、水質が急に悪化する事故を指す。国土交通省が一級河川での件数を毎年集計しており、下流の浄水場が取水を止める原因にもなる。

環境電子の強み|「バイオアッセイ」を研究

環境電子が「バイオアッセイ」を研究|今後は、メダカの反応で早期警戒が可能に|水槽の映像を・56区画で常時解析/群れの密集で・水の異常を検知

水槽の映像を56区画で常時解析

監視カメラの画面で水槽の魚を人が見守る方法では、夜間を含めて異常を見逃さずに見続ける担当者の負担が大きくなります。

同社の装置は、水槽を上から撮影した映像を、横8列・縦7列の56区画に分けて自動解析します。各区画に64個ずつ並ぶのが、映像の中でメダカの動きを検出するセンサードットです。群れが1か所に固まって動きを止めると、動きを捉える区画の数が減ります。装置は、この区画の数が一定の時間、設定した値を下回ると段階的な警報を出し、原水を自動で採水します。担当者が画面を見続けなくても24時間の監視が続き、汚染された原水が浄水処理へ進む前に、職員が取水を止めるかを判断できる点が利点です。

群れの密集で水の異常を検知

従来の魚の監視は、魚が暴れるように泳ぐ狂奔行動(興奮して激しく泳ぎ回る動き)を異常の目安にしてきました。この動きは給餌や繁殖期にも出るため、誤った警報が起きやすいのが弱点です。

同社の装置が異常の目安にするのは、ヒメダカが群れで密集し動きを止める反応です。小型の魚には、危険を感じると群れで集まって身を守る捕食防御本能(外敵から身を守る本能)があり、水に低い濃度の毒が混じったときにも同じように固まるのが特徴です。この反応は多くの種類の毒で現れるとされ、装置は計器の測定項目に無い毒物に気づく手がかりを得られます。また、群れが一定の時間動きを止めた場合だけを異常と判定するので、給餌や繁殖期の動きを取り違えにくく、誤った警報で現場へ確かめに行く回数が減ります。

FrontJournalの解説
  • 捕食防御本能小型の魚が外敵に襲われそうになると、群れで集まって身を守ろうとする本能を指す。低い濃度の毒物にも同じように反応するとされ、群れの形の変化から水の異常を読み取る手がかりになる。

バイオアッセイの未来|国内の浄水場から、海外への展開を進める

水道のバイオアッセイが変える未来|監視技術が国内の浄水場から海外へ広がる|2020年時点で・累計250台/海外へ・監視技術を展開/毒物の早期警戒の・定着を目指す

2020年時点で累計250台

「メダカのバイオアッセイ」の納入台数は、2020年時点で国内に累計250台です。導入先は公共水道の施設が中心で、食品・飲料工場をはじめ民間の工場にも広がっています。人が常駐しない取水施設でも、遠方監視(離れた事務所から装置の状態を確かめる仕組み)と組み合わせれば、職員が現地へ出向かずに異常を把握することも可能です。製品には、水の臭いの異常を捉える臭いセンサーと組み合わせた機種もあります。

海外へ監視技術を展開

同社は、国内で培った監視技術を海外へ広げる取り組みを進めています。2016年に、中国の環境関連企業の子会社である江蘇小魚環境科技有限公司と提携し、翌2017年から提携先への製品の輸出を始めました。2018年以降は、米国やオランダ、ベトナムの水処理の展示会にも出展しています。2025年には、ベトナム国家大学理科大学と共同で、メダカの行動を画像で解析して水中の微量なシアンを検出する研究を発表しました。

毒物の早期警戒の定着を目指す

同社が目指すのは、生き物の反応と画像解析を組み合わせた監視を、毒物の早期警戒の手段として国内外の水道の現場へ定着させることです。日本水道協会(全国の水道事業者などが加盟する団体)の「水道維持管理指針」は、毒性物質による原水の汚染に備え、魚類による水質監視水槽などでの連続監視を示しています。同じ指針は、テロなどの危機への備えとしても、バイオアッセイなどによる水質管理の徹底を求めています。取水の段階で異常を知らせる監視は、汚染された原水を浄水場へ入れないための備えです。

会社概要|1984年の研究所に始まる、福岡市の水質監視装置メーカー

研究所を2004年に法人化

環境電子株式会社は、代表取締役の山本隆洋氏が1984年に設立した「バイオアッセイ研究所」を前身とし、2004年3月に福岡市で法人化されました。山本氏は2004年に九州大学の客員教授を退き、同じ年に水質自動監視装置の製造販売を本格化させています。山本氏が現在客員教授を務めるのは、福岡大学理学部応用物理学科です。本社は福岡市早良区にあり、東京や大阪をはじめ国内各地に事務所を構えています。

発明功労賞と新連携の認定

同社は、公的な認定や表彰、業界団体からの感謝状を受けてきました。2014年には経済産業省から新連携(異なる分野の企業が組んで新しい事業に取り組む計画)の認定を受け、同じ年に水みらい広島(広島県と民間企業が出資する水道運営会社)と、装置の保守点検業務で業務提携を結んでいます。2018年には日本水道工業団体連合会(水道関連の企業が加盟する業界団体)から長年の貢献に対する感謝状を受けました。日本発明振興協会(発明の振興に取り組む団体)の2021年度の「発明大賞」では、発明功労賞を受賞しています。

装置の販売と保守で事業を運営

同社の事業は、水質自動監視装置の製造販売に、据え付けの計装工事(計測機器を設置し配線する工事)と保守を組み合わせた形です。年間保守契約では、定期的な訪問や消耗品の交換、緊急時の派遣に対応しています。監視に使うヒメダカの配送にも対応しています。資本金は2012年の増資で2,000万円となりました。

会社情報

会社名環境電子株式会社(Kankyo Electronics co.,LTD)
所在地福岡県福岡市早良区田隈2丁目17番1号
設立2004年3月26日(前身のバイオアッセイ研究所は1984年に設立)
代表代表取締役:山本 隆洋(福岡大学理学部応用物理学科 客員教授)
資本金2,000万円
事業水質自動監視装置「メダカのバイオアッセイ」の開発・製造・販売。画像処理センサー装置・電子応用装置の開発・製造・販売。計装工事・保守。国内の納入台数は累計250台(2020年時点)
技術領域魚類の行動を画像処理で解析する水質監視技術。映像を56区画に分け、群れの動きから水の異常を判定する方式
連携水みらい広島(2014年に保守点検業務で業務提携)。江蘇小魚環境科技有限公司(2016年に提携)。ベトナム国家大学理科大学(2025年に共同研究を発表)
採択経済産業省「新連携」認定(2014年)。日本発明振興協会 発明大賞 発明功労賞(2021年度)
URLhttps://www.kankyo-densi.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

蛇口から出る水の安全は、目に見えないところで守られています。環境電子が向き合うのは、川から取り入れた水に何かが混じったとき、それをどれだけ早く知るかという問題です。答えに選んだのが、小さなメダカの群れでした。

注目したいのは、生き物の感覚と画像処理を組み合わせた点です。何の毒かを突き止める前に、「いつもと違う」ことを知らせるという役割は、測る項目を決めて使う計器とは別の強みを持っています。狂奔行動ではなく、群れが固まるという魚の本能を検知の目安に据えた点は、誤った警報という現場の課題に正面から応える選択です。

1984年に始まった研究所から続くメダカの見張り役が、国内の水道を支え、海外の水道の現場にも広がることを期待しています。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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