こころみ「半導体バイオセンサ」を開発

株式会社こころみ

こころみ「半導体バイオセンサ」を開発

企業紹介|株式会社こころみとは?

唾液や汗に含まれる分子から、体の状態を調べる技術として、注目を集める「半導体バイオセンサ」。株式会社こころみは、その社会実装を目指す、早稲田大学発のバイオ・ヘルスケア系ディープテック企業です。研究機関、医療機関、健康関連企業向けに、バイオセンサ関連システムの試作・販売や測定サービスを事業としています。

キーワード「半導体バイオセンサ」

「半導体バイオセンサ」は、半導体チップの表面で捉えた生体分子の量を、電気信号に変えて読み取るセンサです。特徴は、チップの上に小さな素子を集積できるため、小型で複数の項目を同時に測りやすい点にあります。将来は、家庭や職場で、唾液や汗から手軽に健康状態を確かめる場面での活用が期待されます。

市場課題|健康状態を日常的に測る手段が限られる

現状の健康チェックの課題

採血中心で日常の把握が難しい

体内の状態を示す指標となる分子(バイオマーカー)を調べる検査では、血液を採取する方法が広く使われています。採血には専用の器具と施設が必要で、日常的に繰り返すには負担が大きい検査です。そのため、体調の小さな変化を継続して追いにくく、不調への気づきが遅れる恐れがあります。

機器が大きく現場で測りにくい

唾液や汗といった身近な試料をその場で測るには、測定器の小型化やワイヤレス化が重要とされています。専用の装置を検査室に据えて分析する方式は、家庭や職場で繰り返し測るには難しい方式です。その結果、体調の変化を日常の中で捉える機会が限られます。

他にも、免疫やストレスなど複数の指標を同時に調べる手間、言葉で症状を伝えられないペットや家畜の体調把握の難しさ、繰り返し測っても結果がぶれにくい精度と再現性の確保、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • バイオマーカー体内の状態や変化の指標となる分子や物質である。血液、唾液、汗などに含まれ、病気や体調の評価に用いられる。

こころみの強み|「半導体バイオセンサ」を開発

こころみが「半導体バイオセンサ」を開発

半導体チップで生体分子を検出

従来の検査は、試料を検査施設へ運んで分析する流れが多く、結果が出るまでに手間と時間がかかります。

こころみの「半導体バイオセンサ」は、特定の生体分子を捕らえるタンパク質と核酸(DNAやRNAの総称)を、半導体チップの上に均一な分子膜として固定したものです。半導体バイオセンサでは、標的の分子がチップの表面に結合すると表面の電荷が変わり、その変化が電気信号として読み取られます。複数回の測定が可能で、精度と再現性に優れるとされる点が特徴です。免疫の指標分子の測定は今後の目標で、唾液や汗に含まれるこの分子を測れるようになれば、家庭や職場で、採血なしに体調の変化を確認できるようになります。

集積化で小型の多項目計測

一つの素子で測れる指標の数は限られ、多くの指標を測るには装置が大がかりになりがちでした。

こころみは、シリコン半導体を活用した集積バイオセンシング技術(小さな素子を1枚のチップに多数並べて測る技術)で、身近なバイオマーカーを簡単に検出できるデバイスの提供を目指しています。素子をチップの上に集積すると、1枚のチップで複数の指標を同時に測りやすくなり、機器の小型化にもつながります。試作品は、極めて薄い膜状の材料であるナノシートを使い、汗のイオン濃度を測る貼り付け型のセンサで、測る対象はイオンです。測定器が小さくなれば、家庭や職場で、その場で繰り返し測定できるようになります。

FrontJournalの解説
  • 分子膜分子が整然と並び、平面状に広がった薄い膜である。バイオセンサでは、標的を捕らえる分子をこの膜としてチップの表面に固定する。

半導体バイオセンサの未来|家庭や職場での健康チェックへ

半導体バイオセンサが変える未来

汗で測る貼り付け型を試作

こころみは、汗のイオン濃度を測る貼り付け型センサの試作品を、デモンストレーションで示しています。試作品にはナノシートが使われています。汗は採取が容易な試料で、肌に貼るだけで測れる形にすれば、採血のような負担がありません。この試作は、日常の中で体の状態を測るセンサの一例です。

ペットや家畜の健康把握へ

ペットや家畜(牛など)の健康状態やストレスの把握にも、この技術の応用が期待されています。動物は体調の変化を言葉で伝えられないため、体から得られる試料で状態を捉える手段が役立ちます。2026年7月には、「免疫センサの酪農への応用」のポスター展示を行いました。牧場で牛の状態を早く把握できれば、不調への対応も早められます。

手軽な健康チェックを目指す

唾液や汗で免疫力の指標となる分子を測り、家庭や職場で手軽に健康チェックができる姿を、こころみは目指しています。あわせて研究開発の対象としているのは、ウイルスや食物アレルゲン、血中の抗がん剤濃度など、医療・健康分野の各種バイオマーカーを簡便に調べる技術です。早稲田大学のナノ・ライフ創新研究機構では、皮膚や口腔の微小物質を検出する電界効果トランジスタ(FET:電圧で電流を制御する半導体素子)センサの検出範囲を、ストレスホルモンや免疫関連物質へ広げる研究が行われています。唾液や汗で免疫の指標分子を測れるようになれば、通院や採血を待たずに体調の変化へ自分で気づく機会が増え、早めの休養や受診につなげやすくなります。

会社概要|こころみの事業内容・設立背景

早稲田大学の研究から設立

こころみは、2022年4月に設立されました。早稲田大学の応用化学科(逢坂・門間研究室)で研究されたバイオセンサ技術を基に、早稲田PoCファンドプログラム(JST〈科学技術振興機構〉の大学発新産業創出プログラム)の支援を受けて生まれた、早稲田大学発のスタートアップです。現在も門間研究室と協力して分子センシング技術を開発しています。代表取締役社長は大橋啓之、チーフサイエンティストは黒岩繁樹で、本社は早稲田大学アントレプレナーシップセンター内にあります。

展示・発表で技術を紹介

2026年10月にパシフィコ横浜で開かれたBioJapan 2026には、早稲田大学が「半導体で免疫力を測る」を出展しました。この出展では、大橋啓之と黒岩繁樹が研究者として紹介されています。2026年3月にはディープテックの挑戦者が集まるイベント「NEP-Lab」でバイオセンサ事業のピッチを行いました。早稲田大学アントレプレナーシップセンターのコミュニティ会員です。

技術提供と試作・測定が事業

事業内容は、バイオセンサ関連のシステム・デバイス・製造プロセス・材料の技術提供と研究開発支援(受託研究を含む)です。研究機関、医療機関、健康関連企業向けには、バイオセンサ関連システムの試作・販売と測定サービスを事業としています。技術の基礎は、大橋啓之と逢坂哲彌の「皮膚貼り付け型のバイオセンサ」(『表面技術』2023年)や、黒岩繁樹らの「電界効果トランジスタを用いたバイオセンサの展開」(『電気化学』2020年)に示されています。

会社情報

会社名株式会社こころみ
所在地東京都新宿区西早稲田1-22-3 早稲田大学アントレプレナーシップセンター12室
設立2022年4月
代表代表取締役社長 大橋 啓之。チーフサイエンティスト 黒岩 繁樹
事業バイオセンサ関連システム・デバイス・製造プロセス・材料の技術提供および研究開発支援。バイオセンサ関連システムの試作・販売、測定サービス
技術領域半導体バイオセンサ。電界効果トランジスタを用いたバイオセンサ
連携早稲田大学(応用化学科 門間研究室)。早稲田大学アントレプレナーシップセンター
採択早稲田PoCファンドプログラム(JST 大学発新産業創出プログラム)の支援を受けて設立
URLhttps://www.kokoromill.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

免疫やストレスといった体の内側の変化は、これまで手軽に調べる機会が限られてきました。こころみは、半導体チップの上のバイオセンサでその指標分子を捉え、家庭や職場で測れる未来を描いています。測るための装置が小さくなるほど、検査は病院から日常へ近づきます。

特徴は、標的を捕らえる分子の固定技術と半導体技術を組み合わせている点です。標的を捕らえる分子をチップに均一に固定する発想は、単なる小型の検査機器ではなく、日常に溶け込む健康の窓口を整える試みといえます。測るという入口を変えることが、健康を考える習慣そのものを変える可能性があります。

ペットや家畜の健康管理から家庭や職場の健康チェックまで、幅広い場面で手軽な計測が役立ちます。体調の小さな変化に早く気づければ、無理のない健康管理を続けやすい社会に近づきます。その土台となる研究の進展が楽しみです。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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