株式会社Lead accel|放射性廃棄物の核変換を目指す東京科学大学発の企業

株式会社Lead accel(レッドアクセル)

Lead accel「核変換」を研究|研究領域=加速器駆動型未臨界炉/強み=液体重金属の耐食合金/将来性=管理を次の世代に委ねない社会へ

企業紹介|Lead accelとは?

原子力の廃棄物を減らす手段として、世界で研究が進む「核変換」。株式会社Lead accelは、その社会実装を目指す、東京科学大学発のディープテック企業です。加速器と未臨界炉を組み合わせた「加速器駆動型未臨界炉」(ADS)を、設計と要素技術の両面から開発しています。

キーワード「核変換」

従来、半減期の長い放射性物質は、地層処分などで長期にわたり隔離して管理する対象でした。「核変換」は、中性子を当てて原子核を変え、放射性物質を安定な核種や半減期の短い核種にする手法です。「ADS」は、加速器で加速した陽子から生じる中性子で、この変換を原子炉の中で進める装置です。

市場課題|原子力の廃棄物は長期の管理が必要

現状の放射性廃棄物の課題|現状は、数万年の隔離で管理が長期化/数万年の隔離で管理が長期化/核種を減らす手段が限定的

数万年の隔離で管理が長期化

原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物は、数万年にわたって生活環境から隔離する必要があります。約400基の原子炉が稼働する世界では、廃棄物の発生が続きます。このままでは、長期の管理を将来の世代に委ねる負担が残る見通しです。

核種を減らす手段が限定的

廃棄物は地層処分(地下深くに埋める処分)で隔離し、放射能の減衰を待つのが基本です。使用済み燃料に含まれる「マイナーアクチニド」(ネプツニウムやアメリシウムなど、長寿命の放射性元素)は、ネプツニウム237の半減期(放射能が半分になるまでの時間)が約214万年に及びます。核変換を担う「加速器駆動型未臨界炉」(ADS)は導入実績がなく、液体金属の腐食など材料の課題も残ります。

他にも、使用済み燃料の累積量、半減期が約21万年のテクネチウム99など長寿命核分裂生成物の扱い、処分場の面積の確保、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • マイナーアクチニド原子炉の中でできる、ネプツニウムやアメリシウムなどの長寿命の重い放射性元素の総称である。半減期が長いものでは数百万年に及ぶため、廃棄物の管理期間を長くする要因になる。

Lead accelの強み|「核変換」を研究

Lead accelが「核変換」を研究|今後は、中性子で核変換が可能に/中性子で長寿命の核種を変換/耐食合金で標的を保護

長寿命の核種を中性子で変換

高速炉(高速の中性子を使う原子炉)の主な目的は、発電とウラン・プルトニウムの有効利用です。

同社が開発する「ADS」は、核変換を主な目的とする原子炉システムです。加速した陽子を液体の鉛ビスマス合金に当てると、核破砕反応(陽子が重い原子核に当たり、中性子が多数飛び出す反応)で中性子が生まれる仕組みです。この中性子で、マイナーアクチニドを多く含む燃料を未臨界(連鎖反応が自力では続かない状態)のまま核分裂させ、安定な核種や半減期の短い核種へ変えます。出力は、陽子ビームの調整や遮断で制御する方式です。長寿命の核種を減らせれば、廃棄物の管理を将来の世代に長く委ねる負担が軽くなります。

耐食合金で液体金属の腐食に対処

ADSの標的に使う液体の鉛ビスマス合金は腐食性が高く、構造材料が陽子と中性子の照射や熱を同時に受けます。

同社が基盤とする東京科学大学の液体重金属技術では、候補材料のFeCrAl合金(鉄・クロム・アルミニウムの合金)を使います。この合金は、表面にアルミニウムに富む保護性の酸化被膜を形成する性質があります。流動する約450℃の鉛ビスマス合金に最大4,000時間浸した試験では、被膜を人工的にはがした部分でも腐食は進まず、被膜が再び形成されました。標的まわりの構造材料の信頼性が向上し、廃棄物を減らす装置の運転を支える材料の候補になります。

FrontJournalの解説
  • 核破砕反応高エネルギーの陽子が鉛などの重い原子核に当たり、原子核が砕けて多数の中性子が飛び出す反応である。ADSでは、加速器とこの反応で、核変換に使う中性子を得る。

未来・展開|廃棄物の管理期間を短くする

核変換が変える未来|管理を次の世代に委ねない社会へ/大学内の拠点で設計を検討/共同研究で導入シナリオ/世代を超えない管理を目指す

大学内の拠点で設計検討が始動

同社は2026年10月、東京科学大学に「拠点創成プラットフォーム」を開設したと発表しました。研究テーマは「加速器駆動型未臨界炉の信頼性および経済性に関わる検討」で、2026年6月から2029年5月までの3年間、共同研究として進みます。数値計算を中心に原理実証炉の設計を検討し、液体重金属ターゲット周辺の材料技術の信頼性向上も図ります。目標は、ADSの概念設計の精度向上と、実証に向けたロードマップの具体化です。

共同研究で導入シナリオを検討

共同研究の成果をもとに、ADSの導入シナリオ(導入の進め方の筋書き)を検討します。並行して、陽子加速器の経済性と信頼性の検討にも取り組んでいます。論点は、長期間安定して運転できる信頼性と、エネルギーシステムとして採算が取れる経済性です。あわせて、パートナー企業や研究機関との連携の拡大を目指しています。

世代を超えない管理を目指す

同社は、ADSの導入によって、廃棄物の管理を将来の世代に委ねない形への移行を目指しています。検討中のシナリオでは、使用済み燃料から分けたマイナーアクチニドをADSで繰り返し核変換し、人が監視や維持を続ける能動的な管理を100年程度に抑える想定です。代表の近藤氏が原子力委員会に示した資料では、長寿命の廃棄物を直接処分する場合、10万年以上の管理が必要とされています。実現すれば、廃棄物の管理を次の世代に委ねない社会に近づきます。

会社概要|株式会社Lead accel

2025年8月設立の大学発企業

株式会社Lead accelは、東京科学大学発のスタートアップとして、2025年8月8日に設立されました。本店は、東京都港区芝浦の東京科学大学キャンパス・イノベーションセンター内に置いています。代表取締役の近藤正聡氏は、同大学総合研究院ゼロカーボンエネルギー研究所の准教授で、核融合炉や高速炉、ADSなどを研究してきました。2025年度には、東京科学大学認定ベンチャー(授与番号20)の称号を授与されています。

GAPファンドの採択と受賞

首都圏の大学の研究成果の事業化を支えるGTIE(Greater Tokyo Innovation Ecosystem)の起業家支援プログラム「GAPファンド」で、エクスプロールコースに採択されています。ピッチイベント(事業計画の発表会)では、優秀賞を受賞しました。2026年10月には、東京科学大学に拠点創成プラットフォームを開設したと発表しました。

シードで6000万円を調達

同社は、シードラウンド(事業の立ち上げ期に行う、ごく初期の資金調達)で、総額6000万円を調達しています。引受先は、ANRI-GREEN1号投資事業有限責任組合です。調達した資金は、ADSの研究開発の促進と、早期の社会実装に向けた事業の推進に充てる予定です。

会社情報

会社名株式会社Lead accel(Lead accel Co., Ltd)
所在地東京都港区芝浦三丁目3番6号 東京科学大学キャンパス・イノベーションセンターINDEST ROOM 306
設立2025年8月8日
代表近藤 正聡(代表取締役)
調達シードラウンドで総額6000万円(引受先:ANRI-GREEN1号投資事業有限責任組合)
事業加速器駆動型未臨界炉(ADS)の研究開発・技術提供。ADSの設計(中性子輸送計算を中心とする核的な側面と、効率的なエネルギー変換を目指す熱的な側面)。液体重金属冷却システムの主要機器(熱交換器、ポンプなど)の開発
技術領域加速器駆動型未臨界炉、核変換、液体重金属、溶存酸素濃度制御、先進的な構造材料
連携東京科学大学との共同研究(2026年6月〜2029年5月)
採択GTIE GAPファンド エクスプロールコースに採択。東京科学大学認定ベンチャー(授与番号20、2025年度)。ピッチイベントで優秀賞
URLhttps://leadaccel.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

原子力の廃棄物をどう減らすかは、原子力を使う社会が避けて通れない問いです。Lead accelは、その答えの一つとして、核変換を担うADSの設計と、それを支える液体重金属の技術に取り組んでいます。この取り組みは、原子力の出口をめぐる議論に、具体的な技術の選択肢を加えるものです。

注目したいのは、廃棄物を隔離して待つだけでなく、廃棄物そのものを別の核種へ変える道を描いている点です。大学が20年以上積み上げてきた液体重金属の知見を、事業の形に移そうとする姿勢も印象に残ります。液体重金属の耐食性を示した試験結果が、その土台になっています。

核変換の技術が実用に近づけば、廃棄物の管理を将来の世代に長く委ねる状況が変わり、エネルギーの選択をより落ち着いて議論できる社会が見えてきます。編集部は、その実現に向けた研究の進展を楽しみにしています。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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