株式会社マテリアル・コンセプト|銀に代わる銅ペーストで太陽電池の配線コストを抑える東北大学発の企業

マテリアル・コンセプト(Material Concept)

マテリアル・コンセプト|研究領域=銀に代わる銅の配線材料/強み=原料コストを100分の1に/将来性=太陽電池から電子部品へ拡大

企業紹介|マテリアル・コンセプトとは?

太陽電池や電子部品の配線コストを抑える技術として、注目を集める「銅ペースト」。マテリアル・コンセプトは、この「銅ペースト」を配線材料「Cuペースト」として実用化した、東北大学発のディープテック企業です。太陽電池セルや電子部品のメーカーへ、Cuペーストを提供しています。

キーワード「Cuペースト」(銅ペースト)

「Cuペースト」は、銅(Cu)の粉末を練り込んだペースト状の配線材料で、太陽電池や電子部品の配線・電極を形成する材料です。特徴は、銀とほぼ同じ導電性を保ちながら、原料コストを大幅に抑えられる点にあります。太陽電池パネルや自動車部品、通信機器の配線にそのまま使え、既存の製造ラインでも扱えます。

市場課題|銀配線がコストと調達の壁になる

現状の配線材料の課題|銀の価格がコストを左右/銅は拡散や酸化が起きやすい

銀配線が太陽電池のコストを圧迫

太陽電池セルの製造コストを、銀(Ag)の相場変動がそのまま押し上げる従来の配線材料。太陽電池セルの電極や配線の多くは、銀の粉末を練った銀ペーストで形成されてきました。銀ペーストは確立された手法である一方、セルの材料コストの約3割を銀が占め、相場変動の影響を強く受けるという課題があります。

銅は拡散と酸化で性能が落ちる

銀に代わる安価な配線材料として銅(Cu)が検討されてきたものの、実用化を断念する例が少なくありません。従来の焼成条件では、銅がシリコン基板の中へ拡散したり、加熱中に酸化して抵抗値が高まったりするからです。一方で、電子機器の小型化・高集積化への対応から、より微細で信頼性の高い配線材料も求められています。

他にも、銀の供給量に左右される調達リスク、微細配線ほど高まる断線や接合不良のリスク、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 銀ペースト銀(Ag)の粉末に樹脂などを混ぜたペースト状の材料。太陽電池や電子部品の配線・電極を、スクリーン印刷で形成するのに使われる。

マテリアル・コンセプトの強み|銅ペースト技術

マテリアル・コンセプトが「銅ペースト」を開発|バリア層で拡散と酸化を防止/印刷技術で微細配線を形成

原料コストを大幅に抑えられる

銅は安価な金属である一方、拡散と酸化という課題ゆえに、配線材料としては使いにくいとされてきました。

「Cuペースト」は、銅(Cu)の粉末を主原料にした配線材料で、原料の価格は銀の約100分の1です。銅の原子は焼き付けの加熱でシリコン基板の内部へ入り込み、半導体としての働きを損ないます。マテリアル・コンセプトは、基板と銅配線の境目に銅の原子を通さない薄い膜「バリア層」を挟む構造を実用化しました。加熱中に銅が酸素と結びついて酸化銅(電気を通しにくい化合物)へ変わる反応も、焼成条件の制御で抑えます。結果は、銀ペーストと同等以上の変換効率を保ちながら太陽電池セルの材料コストを約2割削減できる水準です。

スクリーン印刷で微細配線を形成

銅による配線形成は、従来は真空蒸着やめっきなど工程数の多い手法が中心でした。

銅ペーストの塗り方は、スクリーン印刷(版に開けた隙間からペーストを押し出して図柄を刷る方法)が基本です。注射器のような容器から空気圧で線を描く方法もあり、装置を大きく替えずに既存の製造ラインへ組み込める点が特徴です。印刷した配線の幅は60マイクロメートル以下に制御でき、条件によっては20マイクロメートルほどの微細な配線も形成できるとされています。熱に弱いポリイミド基板(樹脂製の柔らかい基板)に使える配合もあり、応用先は曲げて使う電子部品まで広がります。

FrontJournalの解説
  • バリア層シリコン基板と銅配線の間に形成する薄膜。銅の原子が基板側へ拡散し、電気的な性能を損なうのを防ぐ役割を持つ薄い層である。

銅ペーストの未来|電子部品産業への応用

低コスト銅ペーストが変える未来|スマホやPCの配線に/太陽電池で24.8%を達成/国産材料で資源リスクを緩和

スマホやPCの配線へ応用

銅ペーストは、既存の配線技術が抱えていたコストと性能のトレードオフを解消する技術であり、電子機器の小型化と低コスト化を両立できます。同社は東北大学と共同研究を続けており、成果を国内外の学会や展示会で発表してきました。これらの技術は、スマートフォンやパソコンの電子部品をはじめ、車載センサーやLED照明の配線などへの応用が想定されています。いずれも、電子機器の高性能化とコスト低減が同時に求められる領域の課題解決に直結しています。

24.8%の変換効率を達成

マテリアル・コンセプトの銅ペースト配線を使ったシリコン系太陽電池は、2024年に24.8%の変換効率を確認しました。同社がねらうのは、従来は銀ペーストが使われてきた高性能太陽電池セルの配線でも、銅ペーストを主力材料にすることです。応用先は、結晶シリコン系の太陽電池をはじめ、次世代のペロブスカイト太陽電池や、車載・産業機器向けの高信頼性配線まで広がっています。同社は、これらの領域への展開を、高付加価値な事業機会と位置づけています。

資源リスクの緩和を目指す

電子部品産業では、資源価格の変動を受けやすい配線材料に生産コストが左右されてきました。その中で、価格が安定しやすい国産の配線材料への期待が高まっています。銅ペーストは、この課題を解決する手段として、太陽電池・電子部品の両分野で研究や実用化が広がりつつある技術です。東北大学発の同社は、資源制約の少ない配線材料を国内外へ広げる拠点としての役割を目指しています。

会社概要|マテリアル・コンセプトの事業と沿革

東日本大震災を機に事業化

マテリアル・コンセプトは、2013年4月に宮城県仙台市で設立されました。創業の中心となったのは、東北大学の小池淳一教授です。2011年の東日本大震災を機に、太陽電池の配線に使う銀を銅へ置き換える研究の成果を、産業に応用することを目的としています。代表取締役には小池美穂氏が就任し、小池淳一教授が最高技術責任者(CTO、技術面を統括する役員)を務めています。

大学発ベンチャー表彰で受賞

同社は、公的機関からの評価と、大学・事業会社との連携を軸に事業を広げてきました。2018年8月には、科学技術振興機構と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主催する「大学発ベンチャー表彰2018」で文部科学大臣賞を受賞し、2019年6月には経済産業省の有望企業支援制度「J-Startup」にも選定されています。2018年6月には、非鉄金属大手のJX金属が資本参加し、量産化に向けた技術開発を共同で進めています。

政府系ファンドや事業会社が出資

資金調達では、政府系ファンドや事業会社からの出資を受けてきました。2014年2月には、産業革新機構(現・INCJ、政府系投資ファンド)と大和企業投資から、資本準備金を含め3億円の出資を受け、量産化に向けた設備投資を進めました。2018年6月にはJX金属が5億円を出資して資本参加し、2020年4月にはINCJが保有していた株式もJX金属へ譲渡されています。

会社情報

会社名株式会社マテリアル・コンセプト(Material Concept, Inc.)
所在地宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉468-1-201 マテリアル・イノベーション・センター
設立2013年4月
代表小池美穂(代表取締役)。小池淳一(東北大学教授・最高技術責任者)
調達産業革新機構(現・INCJ)・大和企業投資から3億円出資(2014年2月・資本準備金含む)。JX金属が5億円出資(2018年6月)
事業銅ペースト・バリア製品の研究開発と製造。太陽電池セルや電子部品向け配線・電極材料の販売
技術領域銅ペースト、拡散バリア技術、微細配線、太陽電池向け配線材料
連携JX金属が資本参加(2018年6月)。東北大学と共同研究
採択大学発ベンチャー表彰2018 文部科学大臣賞(2018年8月)。J-Startup選定(2019年6月)
URLhttps://www.mat-concept.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

は、太陽電池や電子部品の配線材料として長く使われてきましたが、その価格は世界の需要に左右され、産業全体のコストを静かに押し上げてきました。震災からの復興を願う東北大学の研究室の発想が、その構造に一石を投じたことに驚かされます。銅への置き換えという一見単純な発想を、拡散と酸化という壁を越えて実用化まで導いた粘り強さが印象に残ります。

マテリアル・コンセプトが手がけるのは、単なる代替材料ではなく、拡散と酸化という銅特有の弱点を乗り越えた「使える銅」の技術です。微細な電子部品の配線から太陽電池の配線まで、需要の裾野は広がりつつあります。同社の基礎技術が、JX金属との資本提携などを通じて事業化の段階へ進んでいる点も見逃せません。

仙台で確立された技術が、世界の配線材料の当たり前を書き換える日が来るかもしれません。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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