NanoSuit「ナノスーツ法」を開発

NanoSuit株式会社(ナノスーツ)

NanoSuit「ナノスーツ法」を開発

企業紹介|NanoSuitとは?

生体になじむ高分子の水溶液を試料に塗って薄い膜で覆い、水分を含む生物を元の形を保ちやすい状態で電子顕微鏡(電子線で拡大して見る装置)で見る技術である「ナノスーツ法」。NanoSuit株式会社は、その社会実装を目指す、浜松医科大学発のバイオイメージング(生物の構造を画像で捉える技術)系ディープテック企業です。「NanoSuit溶液」の販売と、受託での観察を提供しています。

キーワード「ナノスーツ法」

「ナノスーツ法」は、NanoSuit社の、昆虫や細胞などの生物試料に水溶液を塗って薄い膜で覆い、電子顕微鏡で調べる方法です。電子顕微鏡の内部は高真空(空気をほぼ抜いた状態)のため、水分の多い生物試料は、そのままでは形が崩れやすい点が課題です。同社は、試料の表面に薄い膜を形成する溶液で、この課題の解決に取り組んでいます。

市場課題|生物試料は、電子顕微鏡で元の形を保ちにくい

現状の電子顕微鏡観察の課題

前処理で形が変わる

生物試料は、電子顕微鏡で観察する前の処理で、形が変わりやすい点が課題です。走査型電子顕微鏡(SEM、試料の表面を電子線でなぞって拡大する装置)は内部が高真空のため、水分を多く含む生物試料は、そのまま入れると水分が蒸発します。このため、薬品で固める固定、水分を抜く脱水、乾燥といった前処理(観察前に試料を整える作業)が必要になり、その過程で形が変わります。

電気を通さない試料は像が乱れる

ガラス上の病理標本のように、電気を通しにくい試料は、電子線を当てると電気がたまる帯電を起こし、像が乱れやすくなります。帯電を防ぐため、金属を薄く付ける蒸着という処理が使われますが、工程が増えます。前処理によるアーティファクト(観察の過程で生じる、実際にはない構造)の発生も課題です。

他にも、観察までの作業時間、前処理に使う薬品の取り扱い、試料ごとの手順の違い、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • アーティファクト試料の処理や観察の過程で生じる、実際には存在しない構造や変形のことである。電子顕微鏡で生物試料を観察するときに問題になる。

NanoSuitの強み|「ナノスーツ法」を開発

NanoSuitが「ナノスーツ法」を開発

薄い膜で形を保ちやすく

従来は、固定や脱水、乾燥で試料を処理するため、元の形を保つのが難しい場合があります。

「NanoSuit溶液」は、生体になじむ高分子(小さな分子が多数つながった物質)の水溶液です。観察の前に試料の表面へ塗ると、ごく薄い膜ができ、試料を宇宙服のように包んで守ります。この膜が水分の蒸発を抑えるため、高真空の電子顕微鏡の中でも、試料は乾燥しにくい状態です。この処理は、従来の固定や脱水に代わる前処理として使われます。その結果、元の形を保ちやすい試料を、電子顕微鏡で詳しく観察できるようになります。

病理標本とCLEMに対応

従来は、電気を通しにくい試料に金属を蒸着するため、観察までの工程が増える場合があります。

病理(病気の組織を調べる分野)の標本と、CLEM(光学顕微鏡と電子顕微鏡を組み合わせた観察法)には、「NanoSuit溶液」のType IIを使います。CLEMは、光学顕微鏡で見た場所の構造を、電子顕微鏡で確認する観察法です。浜松医科大学の資料では、NanoSuit法の膜は、水分の蒸発を抑えるだけでなく、試料に導電性(電気を通す性質)も与えるとされています。電気がたまる帯電は像の乱れの原因になるため、有用な性質です。これにより、病理標本やCLEMを、電子顕微鏡で詳しく観察できるようになります。

FrontJournalの解説
  • CLEM光学顕微鏡で得た情報と、電子顕微鏡で得た情報を、同じ場所で対応づけて調べる手法である。同じ場所の情報を重ねて調べるのに用いられる。

電子顕微鏡観察の未来|受託観察、迅速検査、医療への広がり

電子顕微鏡観察が変える未来

溶液の販売と受託観察

NanoSuit溶液は、Type I(微小生物・個体・生体組織向け)、Type II(病理標本・CLEM向け)、Type III(細胞向け)の3種類で、購入先は公式サイトの日新EMのページで案内されています。受託観察の対象は、昆虫の表面、植物の葉、培養細胞、細菌、血液細胞、皮膚、病理などです。依頼は、ヒアリングシート、見積もり、発注の流れで進みます。依頼者は設備を自前で用意しなくても、観察の結果を得られます。

イムノクロマトの高感度化

イムノクロマト(試薬を含む試験紙で、ウイルスなどの有無を調べる簡易検査)の高感度化を進めています。NanoSuit技術を使うと、試験紙の金属ナノ粒子(ごく微小な金属の粒)を電子顕微鏡で直接観察でき、目視の判定に比べて100〜数100倍の高感度で検査できるとしています。小型の装置は開発中で、約1.5分で検査できる設計です。粒子は自動で数える方式で、同社は共同パートナーを募集中です。

迅速検査の実現を目指す

同社は、感染症の迅速検査の実現を目指しています。浜松医科大学は、日立社会情報サービスやNanoSuitなどの協力のもと、2020年12月から2021年10月にかけて、新型コロナウイルス感染疑い患者45人から採取した88検体で、この方式の検証を行いました。電子顕微鏡では、肉眼より陽性を判定しやすかったと報告されています。研究チームは、各社と協力して、感染症の検査への応用を進める予定としています。

会社概要|NanoSuitの事業内容・設立背景

2019年に設立

NanoSuit株式会社は、浜松医科大学の研究成果を引き継ぎ、2019年4月に設立され、静岡県浜松市中央区の半田山に本社を置いています。代表取締役は針山孝彦氏です。事業は、NanoSuit溶液の販売、受託観察、迅速検査向けの装置の開発から成ります。

大学の研究成果を引き継ぐ

NanoSuitの技術は、針山氏らの研究成果を引き継いでいます。ショウジョウバエの幼虫の体表の物質に、電子線やプラズマ(電気を帯びた気体)を当てると、50〜100ナノメートルの膜ができる現象を見つけ、2013年に米国科学アカデミー紀要(PNAS)で発表しました。この2013年の研究は、東北大学の下村政嗣氏らとの共同研究です。同社は、こうした研究成果を引き継いで設立されました。

浜松医科大学発の根拠

NanoSuitは、浜松医科大学発のベンチャーです。経済産業省の大学発ベンチャーデータベースでも、関連大学は浜松医科大学で、研究成果ベンチャーという分類です。設立の経緯は、公式サイトにも記載があります。

会社情報

会社名NanoSuit株式会社(ナノスーツ)
所在地静岡県浜松市中央区半田山1丁目20-1(〒431-3192)
設立2019年4月
代表代表取締役 針山孝彦
事業NanoSuit溶液の販売、電子顕微鏡による受託観察、イムノクロマト検査の高感度化に向けた装置の開発
URLhttps://nanosuit.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

生物は水分が多く、電子顕微鏡の高真空とは相性がよくありません。NanoSuitは、その問題を溶液で解くという筋道を示しています。前処理の工程を減らせる点は、観察する側の負担を考えると、大きな意味を持つと感じます。

溶液の販売、受託観察、検査への応用に取り組んでいる点も特徴です。感染症の検査への応用が、今後どう進むのかを見守りたい取り組みです。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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