ニューロジカ「時系列基盤モデル」を開発

株式会社ニューロジカ

ニューロジカ「時系列基盤モデル」を開発

企業紹介|株式会社ニューロジカとは?

電力需要や心拍のように、時間とともに変わる数値や波形を一つのモデルで予測する「時系列基盤モデル」。株式会社ニューロジカは、その社会実装を目指す、経産省のデータベースで明治大学と慶應義塾大学が関連大学に挙がるAI系ディープテック企業です。予測に加えて異常検知や欠損補完も担うモデルとして、電力や医療などでの利用が想定されています。

キーワード「時系列基盤モデル」

「時系列基盤モデル」は、電力需要や心拍のように時間とともに変わるデータを、多様な分野にわたって事前に学習しておくAIモデルです。特徴は、トレンドや周期、急な変化といった分野を越えて共通する構造を捉え、未知のデータにも適応できる点にあります。製造や医療、エネルギーなどの現場で、需要や状態の見通しを立てる材料になります。

市場課題|時系列予測は成分の混在と専用モデルの負担が重い

現状の時系列予測の課題

成分の混在で予測が難しい

電力でも気象でも設備のセンサーでも、観測される時系列データは、ゆっくり変わるトレンド、日や週で繰り返す周期、不規則な残差(説明できない変動)が混ざった一本の系列です。移動平均のような固定ルールの分解は、合わないパターンを取りこぼします。成分を切り分けられなければ予測の精度が上がらず、需要や設備状態の見通しを誤りかねません。

専用モデルを作る負担が大きい

対象ごとに専用の予測モデルを作る方法では、分野や現場が変わるたびに開発をやり直す負担が生じます。電力にも金融にも医療にも、トレンドや周期といった同じ構造が現れるとされています。共通の構造を生かせなければ、モデルの数だけ開発と運用の費用が増え、導入先が限られかねません。

他にも、予測根拠の説明、不規則な間隔のデータの扱い、欠測値の補完、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 時系列データ一定の時間の間隔などで順に記録された数値の列である。電力需要、気温、心拍、株価などが該当し、過去の並び方から将来の値を予測する分析の対象になる。

ニューロジカの強み|「時系列基盤モデル」を開発

ニューロジカが「時系列基盤モデル」を開発

成分ごとに時間の速さを調整

前処理で周期成分を切り出す従来の方法は、分解が予測の学習と切り離されており、予測精度に合わせて分解を調整できません。

同社の「DecompSSM」は、トレンド、周期、残差を専任で担当する3本の並列分岐を持ち、全体を一つの予測モデルとして一括で学習します。各分岐は「Gated-Time SSM」(状態空間モデルの一種)で、トレンドは粗く長い時間、残差は細かく短い時間と、成分ごとに異なる速さで系列を読みます。標準ベンチマーク4種の32設定のうち28設定で、比較した代表的な手法の中で最高精度となり、時系列基盤モデル開発の土台とされる技術です。予測の外れが小さくなれば、需要や設備状態の見通しの誤りを抑えられます。

分野を越えて共通構造を学習

対象ごとに専用の予測モデルを作る方法は、分野や現場が変わるたびに学習をやり直す必要があります。

同社の「時系列基盤モデル」は、電力、医療、金融、気象など多様な時系列データを横断的に事前学習し、トレンドや周期性、急激な変化といった分野を越えて共通する構造を捉えます。未知のデータや新たな現場にも適応できるとされ、対象ごとに専用モデルを作る負担の軽減につながります。予測のほか、異常検知、状態分類、欠損補完、不規則な間隔の系列や高頻度の波形、予測根拠の説明まで、モデル自体に組み込んでいる点も特徴です。

FrontJournalの解説
  • 状態空間モデル時間とともに変わる内部の状態を数式で表し、その状態の推移から系列を予測するモデルの総称である。長い系列の時間依存を扱うのに用いられる。

時系列基盤モデルの未来|医療と意思決定への応用

予測に基づく意思決定が変える未来

脈波から生体波形を再構成

脈波(PPG)から心電図、呼吸、動脈血圧の波形を再構成する生成モデル「PENGUIN」を、ニューロジカは開発しました。PPGは、光で血流の変化を測る脈波の計測方式です。6つの実データセットで評価し、8指標のうち7指標で、比較した手法の中で最良の値を示しました。非侵襲の連続的な健康モニタリングの土台になる技術とされています。

ICUの疼痛状態を推定

ニューロジカは東北大学と共同で、ICU(集中治療室)のベッドサイドモニターの生体信号から、看護師が評価する疼痛スコア(CPOT、集中治療室用の痛み観察ツール)が高い状態を推定するモデルを研究し、東北大学病院ICUの891名分、23,092件のCPOT評価と直前180分の16種類の信号を対応づけたデータセットを構築しました。信号を3グループに分けてTransformer(AIの標準的なモデル構造)で統合するモデルは、比較したモデルの中で最高のAUROC(判別性能の指標。0.5が無作為、1.0が完全な判別)0.7124を示しました。研究は過去の記録を分析する後ろ向き研究であり、診断の道具ではなく、再評価を優先すべき患者の特定の支援を目指すものです。

判断が変わる予測の提供を目指す

ニューロジカが掲げる目標は、予測を社会の意思決定インフラにすること。当てることで終わらず、判断が変わるところまで届ける方針です。対象は医療などの現場。同社CTOの長嶋隼矢氏は、予測精度の価値は、その予測が入る意思決定の構造で決まると考えています。

会社概要|ニューロジカの事業内容・設立背景

大学発の時系列予測AI企業

株式会社ニューロジカは、本社を東京都渋谷区に置くAIモデル開発企業です。経済産業省の大学発ベンチャーデータベース2026は、同社の関連大学として明治大学と慶應義塾大学を挙げ、設立を2024年9月としています。代表取締役CEOのピーク・エイダン・ゼファー氏は、アカデミアで脳波による感情解析研究を経験し、イノベーションの社会実装のために創業しました。取締役CTOの長嶋隼矢氏は、時系列予測と信号処理が専門で、コンピュータビジョン分野の国際会議ICCVでの論文採択と、同分野のCVPRのコンペ優勝の経験者です。

ICASSPへの論文採択

2026年3月31日、同社は信号処理分野の国際会議ICASSP 2026に、時系列予測とPPGバイタル再構成に関する論文が採択されたと公表しました。前者は「DecompSSM」、後者は「PENGUIN」として公開されています。いずれもarXiv(論文の公開サイト)に論文があり、コードはGitHubで入手できます。

NEDOチャレンジの審査通過

2026年7月16日、同社はNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の懸賞金活用型プログラム「NEDO Challenge, Baggage-Loading Robot」のコンテスト1(手荷物識別)で、スクリーニング審査を通過した7社の1社として懸賞金候補者に選定されたと公表しました。3D・動画基盤モデルと多視点幾何計測(複数視点で形状を測る技術)を組み合わせた手荷物識別基盤を、株式会社エル・ティー・エスと連携して開発します。開発期間は2026年12月まで、受賞決定は2027年1月の予定です。

会社情報

会社名株式会社ニューロジカ
所在地東京都渋谷区渋谷2丁目19-17 グローリア渋谷ビル7階
設立2024年9月
代表代表取締役 ピーク エイダン ゼファー
事業AIモデル開発、時系列予測を核とするAI研究開発
技術領域時系列基盤モデル、状態空間モデルによる時系列予測、脈波からのバイタルサイン波形の再構成
連携東北大学、株式会社エル・ティー・エス
採択ICASSP 2026(論文採択)、NEDO Challenge, Baggage-Loading Robot コンテスト1(スクリーニング審査通過・懸賞金候補者に選定)
URLhttps://neurogica.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

予測の価値は、精度だけでなく、予測が判断をどう変えるかにもあります。ニューロジカは、その点を重視しています。とくに注目したのは、トレンド、周期、残差に分解する研究が、分野を越えて一つのモデルで扱う基盤モデル開発の土台とされている点です。

なお、経済産業省のデータベースにある製品概要は2024年度の調査時点のもので、公式サイトが現在紹介する時系列予測とは内容が異なるため、本文は公式サイトの掲載を基にしました。公式サイトには大学名の記載がなく、明治大学と慶應義塾大学との関わりの詳細は確認できませんでした。時系列基盤モデルの現場での成果が、今後の公開事例で示されることに期待しています。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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