日本材料技研「負熱膨張材料」を開発

日本材料技研株式会社

日本材料技研「負熱膨張材料」を開発

企業紹介|日本材料技研株式会社とは?

温度が上がると体積が縮み、部品の熱膨張を打ち消す「負熱膨張材料」。日本材料技研株式会社は、その社会実装を目指す、素材系ディープテック企業です。大学や企業で生まれた材料技術をライセンスで取り込み、光通信や半導体の部品に向けた材料として製造・販売しています。

キーワード「負熱膨張材料」

「負熱膨張材料」は、温度が上がるほど体積が小さくなる材料です。多くの材料は温めると膨らむため、樹脂などに混ぜると全体の膨らみを打ち消せます。同社の代表的な材料「BNFO」は、ビスマス・ニッケル・鉄の酸化物で、室温付近で温めると縮む性質を示します。

市場課題|精密部品は温度変化による膨張でずれる

現状の精密部品の課題

温度変化で部品の位置がずれる

光通信や半導体製造装置は、部品の位置をごくわずかな誤差でそろえる必要がある分野です。ところが多くの材料は温度が上がると膨らみ、データセンターでは光ファイバーどうしの位置に微小なずれが生じる恐れがあります。位置がずれると、通信の損失が増える可能性があります。

充填材だけでは膨張を抑えにくい

樹脂部品の膨張を抑えるため、これまではシリカなどの無機フィラー(樹脂に混ぜる鉱物の粉末)を多く混ぜてきました。ただ、無機フィラーは膨張が小さいものの温めても縮まないため、混ぜる量を増やしても膨張を抑えられる幅には限りがあります。部品に求められる精度が上がるほど、従来の材料の組み合わせだけでは要求に応えにくくなります。

他にも、半導体の封止材、接着剤、導電性ペーストの熱膨張、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 熱膨張温度が上がると物体の長さや体積が大きくなる現象である。原子の振動が大きくなると、結合の伸び縮みのしかたの偏りによって、原子どうしの平均の間隔が広がることで起こる。

日本材料技研の強み|「負熱膨張材料」を開発

日本材料技研が「負熱膨張材料」を開発

電荷移動で縮むBNFO

多くの材料は、温度が上がると原子の振動が大きくなり、原子どうしの間隔が広がって膨らみます。

同社の「BNFO」(ビスマス・ニッケル・鉄の酸化物)は、温度が上がるとビスマスとニッケルの間で電子が移る電荷移動を起こします。この電荷移動によってニッケルと酸素の結合が短くなり、結晶全体が縮みます。縮む割合は、室温付近で温度が1度上がるごとに100万分の187です。鉄の量を変えると、縮む温度の範囲も調整できます。樹脂に混ぜると全体の膨張が小さくなるため、精密な位置合わせが要る部品の材料として使えるようになります。

縮む粉末で樹脂の膨張を相殺

シリカなどの無機フィラーは膨張が小さいものの、温めても縮まないため、樹脂の膨張を打ち消すまでには至りません。

BNFOは温めると縮む粉末として、エポキシやシリコーン、PPS(耐熱性の高い樹脂)などに混ぜて使えます。使う温度に合わせて、0〜60℃程度、40〜150℃程度、150〜180℃程度で働くグレードをそろえています。高耐熱グレード(HT24・HT40)は400℃以上の環境に耐えるため、樹脂を高温で溶かして練り込む工程でも使える材料です。使う温度に合わせてグレードを選べるため、精密部品の温度による寸法の変化を小さくできるようになります。

FrontJournalの解説
  • 電荷移動結晶の中で、ある原子から別の原子へ電子が移る現象である。原子の電荷が変わると原子どうしの結合の長さも変わり、結晶の体積が変化することがある。

負熱膨張材料の未来|光通信と半導体部品への応用

負熱膨張材料が変える未来

年産1トン以上の量産体制

同社は2025年、BNFOを年に1トン以上製造できる体制を整えました。2020年2月のサンプル販売開始から5年あまりで、年産1トン以上の生産体制を整えたことになります。想定する用途は、樹脂部品や導電性ペースト、接着剤です。2026年3月には、40〜150℃程度で連続して縮むグレードの販売も始めています。

光通信コネクタ向け樹脂を開発

現在は、BNFOをPPSに混ぜた光通信コネクタ向けの樹脂材料を開発しています。データセンターで光ファイバーをつなぐ部品の膨張を抑え、通信の損失を防ぐことがねらいです。この開発は、東京都中小企業振興公社の2026年度の助成事業に採択されました。PPSは熱で溶かして成形できる熱可塑性樹脂で、精密な部品を量産する射出成形に向いています。

寸法が安定した部品を目指す

同社は、光通信や半導体の部品に向けて、温度で寸法が変わりにくい材料の提供を目指しています。2026年には住友化学と、室温から300℃まで縮む酸化チタン系材料のライセンス契約を結びました。この材料は縮む割合がBNFOより小さいものの、より広い温度で働き、焼き固めた後も性質を保つため、半導体の封止材や封着用のガラスへの応用が見込まれます。BNFOは電気抵抗や熱の伝わり方も温度で変わるため、スイッチやセンサーの材料としても期待されています。

会社概要|日本材料技研の事業内容・設立背景

ライセンス型の材料企業

日本材料技研株式会社は、2015年8月に設立され、本社を東京都中央区日本橋本町に置く機能材料の企業です。代表取締役社長は浦田興優氏です。国内の企業や大学、研究機関で生まれた技術をライセンスやカーブアウト(事業の切り出し)で取り込み、事業化しています。負熱膨張材料のほかに、MXene(チタンと炭素からなる層状の材料)の製品も扱っています。子会社の一つが、ベンチャーキャピタルのJMTCキャピタル合同会社です。

採択・連携

BNFOは、東京工業大学(現・東京科学大学)の東正樹教授らの研究から生まれた材料です。同社は2018年、東京工業大学と神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)との共同研究契約を結び、2020年には東京工業大学から特許の独占的な実施権の許諾を受けました。2022年には、KISTEC・東京工業大学と共同で進める次世代半導体向けの負熱膨張材料の開発が、Go-Tech事業(中小企業の研究開発を支える国の事業)に採択されています。2020年10月には日本政策投資銀行と業務資本提携を結びました。

ビジネスモデル

同社は、ライセンスで取り込んだ材料を自社の製品として販売しています。BNFOはサンプル販売から始まり、量産体制の確立を経て、用途に合わせた複数のグレードを販売しています。資本金は1億円です。Go-Tech事業では、2022年度に約1,260万円、2023年度に約2,430万円の補助金の交付が決定しています。

会社情報

会社名日本材料技研株式会社(Japan Material Technologies Corporation)
所在地東京都中央区日本橋本町2丁目3番4号 江戸ビル6階
設立2015年8月
代表代表取締役社長 浦田 興優
資本金1億円
事業機能材料の開発・製造・販売(ライセンス導入・カーブアウトによる事業化)
技術領域負熱膨張材料「BNFO」(BNFO-HT24:0〜60℃程度/BNFO-WT08:40〜150℃程度/BNFO-HT40:150〜180℃程度)、酸化チタン系負熱膨張材料(室温〜300℃・最大-50ppm/K)、MXene
連携東京科学大学(旧・東京工業大学)、神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)、住友化学(ライセンス契約)、日本政策投資銀行(業務資本提携)
採択Go-Tech事業(2022年)、東京都中小企業振興公社 新製品・新技術開発助成事業(2026年度)
URLhttps://www.jmtc.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

部品の精度を上げる方法として、温めると縮む材料で膨張そのものを打ち消すという発想に注目しました。データセンターの光通信や半導体の製造装置では、わずかな位置のずれが性能に影響しえます。膨張を抑えるのではなく打ち消すという考え方は、部品設計の選択肢を広げます。

大学の研究成果をライセンスで取り込み、量産とグレードの拡充まで進めてきた点も特徴です。温度域の異なる材料がそろうことで、使える部品の幅も広がります。今後、どの部品に採用が広がるかに注目します。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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